ツール・ド・フランス2018 第11ステージトーマスがアルプスショートステージを劇的勝利 マイヨジョーヌ獲得で総合争いでも一歩リード

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2018は7月18日、第11ステージを行い、フィニッシュ直前の大逆転でゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)がステージ優勝。前日まで個人総合2位につけていたトーマスは、マイヨジョーヌでこのステージをスタートしたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が大きく遅れたこともあり、個人総合首位に浮上した。そのほか、総合系ライダーが上位に入り、トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)が2位、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が3位。フィニッシュ直前までトップを走ったミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)は5位に終わった。

ツール・ド・フランス2018第11ステージ。フィニッシュ前400mでの逆転でステージ優勝したゲラント・トーマス Photo: Yuzuru SUNADA

108.5kmに超級2つを含む4つの山岳

 アルプス3連戦の中日となる第11ステージ。この日のレース距離108.5kmは、大会2番目のショートステージ。その短い距離の中に、2カ所の超級山岳を含む4つのカテゴリー山岳が詰め込まれた。

 アルベールヴィルをスタート後、まずは11.5km地点に設けられた中間スプリントへ。これを通過すると、いよいよ険しい山々へと進んでいく。

モンテ・デ・ビザンヌに現れた“悪魔おじさん”ことディディさん Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 1つ目は、超級山岳モンテ・デ・ビザンヌ(登坂距離12.4km、平均勾配8.2%)。上りは後半へ行くほど厳しくなり、頂上を目の前にして10%の勾配が待つ。頂上はスタートから26km地点。

 約15km下ったのち、2つ目の上りへ。これまた超級のコル・デュ・プレ(登坂距離12.6km、平均勾配7.7%)。頂上の約2km手前が最大勾配の11.3%ととなる。3kmほど下り、少しばかりの平坦区間を抜けると、2級山岳コルメ・ド・ロズラン(登坂距離5.7km、平均勾配6.5%)を上る。頂上はこの日最高標高となる1968m。コル・デュ・プレからコルメ・ド・ロズランの間には、ロズラン橋を通過。ダム湖であるロズラン湖とのコントラストが美しく、アルプス3連戦のハイライトの1つとなるであろう絶景だ。

ロズラン湖とレースで通過するロズラン橋 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 それらを経て迎える最後の上りで、1級山岳ラ・ロジエールの頂上フィニッシュを目指すことになる。登坂距離17.6kmで平均勾配5.8%。フィニッシュまで残り10kmを切ってから5kmほど急勾配の区間が続き、その後は緩やかになる。攻撃を仕掛けるならば、勾配の厳しい箇所でとなるか。

 いずれの山岳も、上りも下りも問わず道幅の狭い箇所や路面が荒れているポイントがあり、落車やトラブルに注意が必要だ。また、テクニカルな下りでは選手たちのダウンヒルテクニックが求められる。レース展開次第では、リスクを負ってでも下りで攻撃に出る選手が現れるかもしれない。

 何より、レース距離が短いことから、序盤からハイペースで展開となることも考えられる。そうなると、1つ目の山岳からサバイバル化することになる。そして、それはマイヨジョーヌ争いに何らかの変化が起こることを意味する。

 どんなことが起こっても不思議ではない1日。1992年の冬季五輪開催地であり、ツールでもおなじみの街となっているアルベールヴィルを、現地時間午後2時にプロトンが出発。世界中から集まった熱狂的ファンが待つ、アルプスの険しい山々へと向かった。

最大31人がレースをリード

 1.7kmと短めのニュートラル区間を抜けてアクチュアルスタートを切ると、ロマン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー)がファーストアクションを見せた。これにマイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシングチーム)、ワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)、ダニエル・ナバロ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ)の4人が同調。その流れのまま中間スプリントへと到達し、サガンが1位通過。目的を果たしたサガンは逃げ続けることはせず、メイン集団へと戻ることに。

マイヨアポワを着て逃げに加わったジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 4人で始まった逃げだったが、大人数の追走グループも形成される。そのなかから、前日の勝者でありマイヨアポワを着るジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)が前の4人へのブリッジに成功。その後、パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)とアントニー・ペレス(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)も追いつくが、モンテ・デ・ビザンヌの上りに入って他の追走メンバーが先頭にジョイン。20人の先頭グループとなり、この中に入ったセルジュ・パウェルス(ベルギー、チーム ディメンションデータ)がバーチャルマイヨジョーヌとなる。

 モンテ・デ・ビザンヌの頂上は、山岳賞争いでトップを走るアラフィリップが1位通過。さらに山岳ポイント20点を追加し、ジャージキープに向けて視界良好だ。一方のメイン集団はチーム スカイがコントロールする。約6分の差で、1つ目の山岳を終えた。

先頭グループを率いるワレン・バルギル Photo: Yuzuru SUNADA

 一度下ったのち、2つ目の上り、コル・ドゥ・プレへ。先頭グループからバルギルとアラフィリップ、トマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)の3人が先行を開始するが、上りを進んでいくうちに他のメンバーも再合流。さらに発生していた追走グループも追いつくこととなり、一時はこのステージで最大となる31人が先行する形に。ただ、その時間帯は長くはならず、頂上に近づくにつれて前を行く選手の人数は減っていった。

 コル・ドゥ・プレの中腹で、メイン集団に変化が訪れる。マイヨジョーヌのヴァンアーヴェルマートが遅れはじめ、集団との差があっという間に開いていく。こうなると前への復帰は難しくなり、ジャージを明け渡す可能性が高まっていった。

 57.5km地点、超級山岳コル・ドゥ・プレの頂上はバルギルが1位通過。上りの後半からは複数メンバーを先頭グループに送り込んだフォルトゥネオ・サムシック勢がペースをコントロール。要所でバルギルをトップに立たせた。

 メイン集団はヴァンアーヴェルマートが後退した直後に、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)がアタック。当初先頭グループを走っていたマルク・ソレル(スペイン)が前待ちのスタイルとなり、後方から合流したバルベルデの牽引を担う。メイン集団に1分15秒差でコル・デュ・プレを通過した。

 続く2級山岳コルメ・ド・ロズランもバルギルが1位通過。メイン集団はバーレーン・メリダがペーシング。先頭グループとのタイム差は5分30秒前後で推移させ、レース終盤へと進んでいく。

 18.5km続く下りで動きが見られたのはメイン集団。個人総合11位につけるデュムランが抜け出すことに成功。ソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク)とともに前を目指す。その頃、先頭グループでもダウンヒルテクニックの差からか、中切れが発生。ニエベやバルギルら5人がトップで最後の上り、ラ・ロジエールに入った。

ロズラン湖を見ながら進むプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

残り400mでの逆転劇

 ラ・ロジエールの上りが始まると、バルギルのアシストに従事したアマエル・モワナール(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)が役目を終えて後退。先頭グループは4人となる。直前の下りで先頭グループから遅れた選手たちをはさみ、実質の第3グループではバルベルデにデュムランが合流。数十秒差でメイン集団が続く状況となる。

残り9kmで単独先頭に立ったミケル・ニエベ Photo: Yuzuru SUNADA

 逃げ切りの可能性に賭けて上りを攻める先頭グループでは、残り11kmでミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ プロチーム)が脱落。さらに2kmほど進んだところでナバロとアントニー・ペレス(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)が後方から追いつくが、これとタイミングを同じくしてニエベがアタック。独走へと持ち込んだ。

 後続では、バルベルデがデュムランのペースに続けず遅れると、しばらくしてやってきたメイン集団に捕まった。その集団は依然チーム スカイがコントロール。残り距離を減らしてペースが上がっていくなか、アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)、マイヨブランのピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)らが遅れ始める。

総合ジャンプアップに向けて攻めたトム・デュムラン Photo: Yuzuru SUNADA

 精鋭に絞られたメイン集団だが、残り5kmを目前に大きな局面が訪れる。トーマスのアタックに誰も反応できず、差が開いていく。何とか追いつこうとロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)が追撃を試みるが、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNL・ユンボ)がチェック。個人総合優勝候補同士がお見合い状態となり、アタックと牽制が繰り返される状態。ペースが緩むたびに、ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ)やステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ)が追いつく。

終盤に追い上げたクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 その均衡を破ったのはマーティン。残り4kmのアーチを前に、緩斜面を利用してアタック。フルームが上手く反応し、バルデらを置き去りにする。その前方では、デュムランと懸命に食らいつくカルーゾにトーマスが合流。トップのニエベに続く、2番手グループを形成。主に牽引するのはデュムラン。総合タイムを稼ぐべく、TTフォームで先を急ぐ。

 そして、攻撃的なレースに終止符が打たれる決定的瞬間がやってきた。残り1kmのフラムルージュをニエベが最初に通過。その数秒後、トーマスがこの時を待っていたとばかりに第2グループからアタック。デュムランらを振り切ると、別次元のスピードで残り距離を進む。残り400m、ここまで逃げてきたニエベを労せずパスすると、あとはフィニッシュへ突き進むだけ。最後の力強いガッツポーズでステージ優勝を決めた。

一番にフィニッシュ地点へとやってきたゲラント・トーマス Photo: Yuzuru SUNADA

 トーマスから20秒後、2番手争いが姿を現した。フラムルージュ手前でマーティンを振り切ったフルームがデュムランを猛追。2人のマッチスプリントとなり、デュムランが辛くもステージ2位を死守。フルームが3位だった。

マイヨジョーヌに自信を深めるトーマス

 今大会は序盤から個人総合上位につけ、第1週を終わる頃にはマイヨジョーヌが視野に入る位置を確保していたトーマス。レース中盤でヴァンアーヴェルマートが遅れ、個人総合2位でスタートしたトーマスが自ら勝利を収めたとあり、この日を終えて文句なしのマイヨジョーヌ着用となった。

記者会見でレースについて振り返るゲラント・トーマス Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 記者会見では、「マイヨジョーヌが手に入りとてもうれしい」と切り出したトーマス。それでも、「このステージを終えてマイヨジョーヌを着ることについて深く考えていなかった。他チームの攻撃を予想していたし、いずれ手に入れられればと考えていた」と続け、自身でも予想以上の出来だったとのこと。それでも、マイヨジョーヌが手に入ったいま、この先の戦いについて聞かれると「かつてはマイヨジョーヌを着てどう戦うか理解できていなかった。しかし、昨年の第1ステージで勝って着用機会に恵まれたことで、今回は上手く戦っていけると思う」と自信を口にする。

 レースを振り返って、「バルベルデがアタックしたときにどう対処するか難しい判断だった。1分30秒まで差が広がったと聞いたときは、チームとして追うことを選択しなければならなかった」と説明。激しく争ったデュムランについても「驚異だ」とし、「ニバリやモビスター チーム勢とともにライバルになるだろう」と語った。

 現時点で、チームメートのフルームと個人総合でワン・ツー。1分25秒差で続くフルームについては、「6度のグランツール制覇を経験し、3週間の戦い方を知り尽くしている。一方で私はそこまで届いていない」と謙遜。数日間はマイヨジョーヌを着て走りたいとしながらも、「クリス(フルーム)はわれわれのリーダーに変わりはない。もしクリスのために走るようチームから求められたら、それに従うよ。チームはいま理想的な状態にある」と話し、ダブルリーダー態勢が奏功していることを強調した。

個人総合首位に立ったゲラント・トーマス Photo: Yuzuru SUNADA

 このステージを終えての個人総合順位は、トーマス、フルームに続いてデュムランが1分44秒差の3位に浮上。ニバリ、ログリッチェがそれぞれ4位、5位と続く。地元フランス期待のバルデは、2分58秒差の8位とした。

キッテル、カヴェンディッシュがタイムアウトに

 マイヨジョーヌでレースをスタートしたヴァンアーヴェルマートは、22分23秒差のグルペットでフィニッシュ。第3ステージ以降、8日間にわたって着続けたジャージとの旅は終わりを迎えた。

タイムアウトに終わり、大会を去ることとなったマーク・カヴェンディッシュ Photo: Yuzuru SUNADA

 なお、このステージでは、マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)、マーク・レンショー(オーストラリア、チーム ディメンションデータ)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チーム ディメンションデータ)の3人がタイムアウトで大会を去ることになった。フィニッシュ有効タイムはトップから31分27秒差。キッテルは42分52秒差、レンショーは44分9秒差、カヴェンディッシュは1時間5分33秒差だった。

 19日に行われる第12ステージは、アルプス3連戦の最終日にして大会中盤のヤマ場となりそう。ブール=サン=モーリス レザルクからアルプデュエズまでの175.5kmは、前半に超級マドレーヌ峠(登坂距離25.3km、平均勾配6.2%)、中盤には超級クロワ・ド・フェール峠(登坂距離29km、平均勾配5.2%)と、ツールではおなじみの上りが登場。そして最後は、名峰・アルプデュエズの頂上を目指す。上り始めからやってくる10%前後の勾配と、大小21ものコーナーが選手たちの力を測る。フィニッシュ前約3kmは緩斜面となるが、風が強いと波乱が起きることも。登坂距離は13.8kmで、平均勾配8.1%。このステージの攻略が、その先のマイヨジョーヌ争いを優位にするものとなるだろうか。

第11ステージ結果
1 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) 3時間29分36秒
2 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) +20秒
3 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)
4 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシングチーム) +22秒
5 ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)
6 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ) +27秒
7 ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ) +57秒
8 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +59秒
9 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
10 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) 44時間6分16秒
2 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) +1分25秒
3 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) +1分44秒
4 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +2分14秒
5 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNL・ユンボ) +2分23秒
6 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +2分40秒
7 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +2分56秒
8 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +2分58秒
9 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +3分16秒
10 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ)

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 339 pts
2 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 218 pts
3 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNL・ユンボ) 132 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 61 pts
2 セルジュ・パウェルス(ベルギー、チーム ディメンションデータ) 49 pts
3 ワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック) 40 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 44時間18分2秒
2 ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール) +2分3秒
3 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム スカイ) +7分35秒

チーム総合
1 モビスター チーム 133時間9分11秒
2 バーレーン・メリダ +1分37秒
3 チーム スカイ +5分45秒

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