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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<260>BMCレーシングの後継スポンサーはCCCに ツールはアルプスで総合勢の争いへ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 今年のツール・ド・フランスは、第1週から緊張感のある戦いが続き、フランス北部を走った9ステージでは、落車やトラブルが毎日のように発生した。それらを乗り越えた選手たちは、続くアルプスでの1週間へ。いよいよ、マイヨジョーヌをかけた勝負が本格的に幕を開ける。また、1回目の休息日となる7月16日には、BMCレーシングチームの後継スポンサーとして、CCCが2019年シーズンから就くことが発表された。その速報も合わせて、現地からのレポートをお届けする。

ツール・ド・フランス2018第1週の主役となったグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(左)とペテル・サガン。大会は次なる局面へと突入する =2018年7月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

ポーランド企業CCCがBMCレーシングチームの後継スポンサーに

 前回お届けした、BMCレーシングチームの後継スポンサー探しに関して、新展開があった。

 ツール1回目の休息日となった16日、チームはプレスカンファレンス(記者発表)を行い、2019年シーズンからのタイトルスポンサーとしてポーランド企業のCCC社が就くことを発表した。

新チームのゼネラルマネージャーを務めるジム・オショヴィッツ氏。写真はツール・ド・フランス2018第1ステージレース前 Photo: Yuzuru SUNADA

 カンファレンスには、CCC社のオーナー兼社長のダリウシュ・ミレク氏、BMCレーシングチームのゼネラルマネージャーであるジム・オショヴィッツ氏、ツールで現在マイヨジョーヌを着るグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)が出席。そのなかで、BMCレーシングチームの運営会社であるコンティニュアム・スポーツ社とCCC社が、来シーズンからのタイトルスポンサーとして契約を結ぶことを明らかにした。ミレク氏がチームオーナーとなり、オショヴィッツ氏がゼネラルマネージャー職に就く。新チームにはセカンドスポンサーはつかず、CCC一社のみがタイトルスポンサーになる。

CCC・スプランディ・ポルコヴィチェの選手たち。写真は7月15日のツアー・オブ・オーストリア第8ステージ Photo: STIEHL PHOTOGRAPHY

 CCC社は現在、ポーランド籍のUCIプロコンチネンタルチーム「CCC・スプランディ・ポルコヴィチェ」のタイトルスポンサーであるが、このチームとBMCレーシングチームは合併ではないことをミレク氏が説明。また、BMCレーシングチームとしての活動実態もリセットされる形となり、選手・スタッフの雇用については見直されることも明かした。来シーズンは23~25選手の採用を予定しているという。

新チームのエースとしてクラシック制覇を目指すことを決意したグレッグ・ヴァンアーヴェルマート =ツール・ド・フランス2018第9ステージ、2018年7月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、同席したヴァンアーヴェルマートが、新チームのエースとして春のクラシックレース制覇を目指すことを正式に発表した。「自らの今後について発表ができて本当にうれしい。チームとは8年間一緒に過ごしてきて、クラシックレースに集中させてもらった。これからはCCCがタイトルスポンサーとなる新チームで走るシーズンを楽しみにする」と喜びを語った。

 そのほか、バイクサプライヤーはBMC社以外のブランドになるであろうこと、スイスの高級時計メーカーであるタグ・ホイヤー社とのパートナーシップが継続されること、コンピューターセキュリティ企業のソフォス社とのパートナーシップも現在交渉中にあることも明らかになった。

 CCC社はポーランドの靴・バッグブランド。ミレク氏は2017年の同国長者番付において4位。このツールでは、第9ステージでBMCレーシングチームに同行し、ヴァンアーヴェルマートらと記念撮影に収まっていたことが話題になっていた。

ツール・ド・フランス第1週総括と第2週への期待

 フランス北部をめぐったツール第1週は、毎ステージのように大きなトラブルが発生し、波乱も多かった。とはいえ、マイヨジョーヌ争いにおいてはまだまだ序盤戦。ここまでの印象としては、「タイム差こそあれど、選手間に明確な差はまだ生まれていない」というものである。

ツール2018第1週はコースに合ったレースが展開された =ツール・ド・フランス2018第4ステージ、2018年7月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 その要因としては第一に、落車が多発したとはいえ、コースレイアウトに則したセオリー通りのレース展開だったことを挙げたい。風や天候を心配する見方もあったが、好天のもとステージが進み、風もさほど強くはならなかった。もちろん、平坦ステージでのスプリンターチームも含めて、定石通りのレースを構築したことも大きいだろう。

 もう1つは、第1週のヤマ場とみられた第9ステージで、結果的に“2つのレース”が展開されたこと。パヴェステージでは過去に総合勢に大きな差が発生したこともあったが、今回は残り17kmでステージ優勝するジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)ら3選手が抜け出して以降、メイン集団では多くの総合系ライダーが「無事にフィニッシュすること」を選択。前方でステージ優勝争いが展開された一方で、集団に待機した総合系ライダーによるリスクを負わない判断は、第2週以降に控える山岳や個人タイムトライアルといった、彼らの“本職”にいかにつながるかが見ものとなる。

総合系ライダーの中では唯一トラブルなく第1週を乗り切ったゲラント・トーマス Photo: Yuzuru SUNADA

 チームタイムトライアルで争われた第3ステージで苦戦した選手も含め、多くの総合系ライダーが何らかの理由でタイムを失い、ほぼノートラブルで走り終えているのは個人総合2位のゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)くらい。ツール現地では、ひとまず事実上のマイヨジョーヌはトーマス、という見方が多い。

 昨年10月に今大会のコースが発表されてからというもの、多くのマイヨジョーヌ候補が第1週をどう乗り切るかをポイントに掲げていたが、いまツールを戦っている選手たちはアクシデントやトラブルありながらも、どうにかクリアしたと見てもよいだろう。

 それでも、数字の上では大なり小なり差が出ており、それを埋め、さらには上をゆくためにはより攻撃的な姿勢が求められる。まだまだ総合争いの形勢は見えていないだけに、アルプスでの第2週ではノーガードの打ち合いに期待したい。有力選手の戦いのスタンス、そしてアシストを含めたチーム力といった面も、はっきりしてくるはずだ。

 参考までに、マイヨジョーヌ争いの主要選手とそのタイム差を以下にまとめたい(第1週を終えての個人総合順位・選手名・トーマスを基準としたタイム差、の順)。

2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) 36時間8分0秒
4 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +50秒
5 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +1分31秒
6 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +1分32秒
7 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +1分33秒
8 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) +1分42秒
9 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +1分42秒
10 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +1分42秒
12 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1分48秒
13 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNL・ユンボ) +1分57秒
14 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +1分58秒
15 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) +2分3秒
16 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +2分6秒
17 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +2分32秒
18 ワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック) +2分37秒
19 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +2分42秒
20 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) +2分48秒
21 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +2分50秒
22 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +2分53秒
24 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ) +3分11秒

第9ステージ取材記

 3年ぶりのパヴェステージとなった第9ステージ。

 世界遺産にも登録されるスタート地、アラス・シタデルに早朝から多くのファンが駆け付け、緊張感も含んだ異様な雰囲気を感じずにはいられなかった。どこか特別な一日になりそうな感覚は、パヴェセクションへ足を運ぶことで確信に変わった。

選手たちの通過を待つパヴェ Photo: Syunsuke FUKUMITSU
レース前の第4セクター・シワソン~ブルゲルを走行するサイクリスト Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 全セクターを見たわけではないが、少なくとも筆者が目にした3つのセクターは、まさに4月のパリ~ルーベにタイムスリップしたかのようなムード。第4セクター・シワソン~ブルゲルでは、幾人もの一般サイクリストがレース前のパヴェを走行していた。大会スポンサー企業が独自に企画したサイクリングイベントの参加者が一団となって通過したり、レースさながらのスピードで攻めるライダーの姿、そんなチャレンジャーが次々やってくると思いきや、日本でいうところの「ママチャリ」で淡々と走っていく女性の姿も…。パヴェ文化恐るべし!

第2セクターのカンファン・アン・ペヴェルにやってきたベルギー応援団 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 第3セクター・ブルゲル~ワヌアンと、実際のレースでは大きな局面を迎えた第2セクターのカンファン・アン・ペヴェルは、ベルギー国境に近いこともあり、同国の国旗がたくさんなびいていた。熱心にレースを追っている方ならよく知っているであろう、黄色にライオンが描かれたフランドル旗を、せっせとコース脇に立てている男性も。そこにいたのは、みんなパヴェを愛する人たち。朝早くから、もしかすると前夜から…なんて人もいたのかもしれない。それでもみんな、レースの数時間前からビール片手に上機嫌なのである。前日には、サッカー・ワールドカップロシア大会の3位決定戦で同国代表が勝利。それに続けと、ベルギー人ライダーに期待を込めた人も多かったことだろう。

第9ステージのサルドプレスが設けられた250mトラックの室内競技場。奥に見える白いテーブル群がサルドプレス Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 そしてルーベのフィニッシュ地点に着いてみると、われわれのサルドプレス(プレスセンター)は、フィニッシュ地点脇のヴェロドローム。ヴェロドロームといっても、「あの」ヴェロドロームではなく、250mトラックの室内競技場。そう、パリ~ルーベがフィニッシュするヴェロドロームとは別に、国際規格の競技場も置かれているのだ。場内にいる間、仕事をしながら不思議とワクワクしてしまったのは、きっと筆者だけではなかったはず。

 ちなみに、パリ~ルーベでおなじみのヴェロドロームはというと、今回は各国テレビ局の中継ブースが置かれる放送スペースとして活用されたのだった。

4月にはパリ〜ルーベのフィニッシュ地点となるヴェロドロームは今回、各局テレビ局の放送ブースが設けられた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

今週の爆走ライダー−アンドレーア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 2回目のツールを戦うワンティ・グループゴベールにあって、エーススプリンターを任されるイタリアン。第1週は5度のトップ10フィニッシュと、トップスプリンターにも臆せず真っ向勝負を挑み続けている。

ツアー・オブ・ルクセンブルクの個人総合優勝で一躍注目を集めたアンドレーア・パスクアロン。その勢いはツールにも続いている Photo: Serge Waldbillig

 昨年現チームに合流すると、早速ツール初出場。そんな彼が一躍注目を集めたのが、今年6月のツール・ド・ルクセンブルクだ。多くの名選手が活躍した伝統の大会を、ステージ2勝を挙げて個人総合優勝。その勝負強さが高く評価され、2度目のツール出場も文句なしで決めた。

 ここまでは満足できる走りを続けてきたというが、重要なのは総合エースのギヨーム・マルタン(フランス)をサポートすること。でもやっぱり自らの結果にもこだわりたい。個人的な目標を問うと「次はステージトップ5入り」と、正直なところも見せる。

 かつてはイタリアやスイスの小さなチームを渡り歩き、ようやく勝負を任される「自分の居場所」を見つけた30歳。ビッグネームと比べると地味さは否めないが、それを打ち破ることができるか。ツールという世界最高の舞台で、大きなサプライズを演じる可能性の高い1人として、注目しておくとよさそうだ。

ツール第1週は5度のステージトップ10入り。スプリンターとして、今大会の台風の目となりそうなアンドレーア・パスクアロン =2018年7月5日、ツール・ド・フランス2018チームプレゼンテーション Photo: Syunsuke FUKUMITSU
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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