パナソニックXU1の現地の評判もレポート世界で一番“イーバイク”が売れる国・ドイツ ユーザー層は若者へ拡大、旅で街でとバラエティー豊か

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 電動アシスト自転車が発売されてから25年、日本国内で新たに「e-BIKE」(イーバイク)ということばが聞かれるようになった。イーバイクと呼ばれるものは、例えばパナソニックサイクルテックが7月から発売を開始した新型「X series」のように、電動アシスト自転車の中でも、よりアクティブでスポーティーな趣向となっている自転車の総称だ。このイーバイクのトレンドを世界的に牽引しているのが欧州、中でも勢いがあるのはドイツだ。ドイツ・ドルトムント在住の筆者が、その人気の理由や実態を探る。

←<1>e-BIKEを席巻 パナソニックサイクルテックの開発・製造の現場に迫る

世界で一番“イーバイク”が売れる国・ドイツ。イーバイクのタイプもバラエティー豊かに出揃ってきた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

にぎわう市場 トレンドが呼ぶトレンド

 ドイツ国内の2017年のイーバイク販売数は、前年比およそ120%増の72万台。欧州で2番目に多いオランダにおよそ2倍という圧倒的な差をつけている。ドルトムント市内のバイクショップを訪ねてみると、店内に陳列されているほとんどがイーバイクだった。

 閑静な住宅エリアにあるバイクショップ「ラート・ゲビート」は、去年引っ越しをして一回り広くなったという。オーナーのジェームスD・オルピンさんは、「引っ越した理由はこれだよ」と大型のカーゴバイクを指さした。もちろん、イーバイクだ。「客の半分はイーバイクを目当てにやってくる。購入する意欲があるというよりも、実際に『この目で見たい』という感じだね。トレンドにも密かに敏感なのがドイツ人。探している理由を聞くと『隣の家の人が乗っていて』なんてこともあったよ。市外からの客も多くて驚いている」

店内に並んだ大型のカーゴバイクは、イーバイク。「客の半分はイーバイク目当て」と店主のジェームスD・オルピンさん Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ドルトムント市内のバイクショップに並んだイーバイク(右列) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
閑静な住宅エリアにあるバイクショップ「ラート・ゲビート」正面 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
カーゴバイクレースは「イーバイク・フェスティバル ドルトムント」の人気イベント Photo: Andi Frank

 兎にも角にも人々のイーバイクへの関心は高い。今年3年目を迎えた「イーバイク・フェスティバル ドルトムント」(4月6〜8日)では、屋外の展示会場に5万5000人の来場者が集まった。150の出展者が持ち込んだイーバイクを見比べ、試乗して乗り比べることができるのが魅力のようだ。

 一般企業が従業員にイーバイク利用を後押ししていることもブームアップに一役買っている。背景にあるのは、リース会社の動向。イーバイクを扱う企業向けリース会社が次々と誕生する中、2012年にはクルマのリースを行うリース会社大手がイーバイク利用にも参入した。リース会社は、イーバイク利用による「社員の健康増進」「環境への配慮(企業のイメージアップ含む)」「通勤手当のコスト減」を謳い各企業へアプローチしている。ユーザーとしても、個人でイーバイクを購入するよりも少ない負担で利用開始できるのがメリットだ。現在、20万台以上のイーバイクがリース会社経由で利用されているとされる。

「イーバイク・フェスティバル ドルトムント」の会場風景。一般企業が従業員にイーバイク利用を後押ししていることもブームアップの理由のひとつ Photo: Andi Frank

すっきりとしたデザインに変化 乗り手はより若く

欧州最大の自転車見本市「ユーロバイク」ではことし初めてイーバイクなどが集められたホールが設けられた Photo: EUROBIKE Friedrichshafen

 ドイツ・フリードリヒスハーフェンで開催された欧州最大の自転車見本市「ユーロバイク」(7月8〜10日)ではことし初めて、電力を用いた移動手段「e-mobility」(イーモビリティー)に特化したホールが設けられ、連日多くの来訪者で賑わいを見せた。イーバイクを含むイーモビリティーは排気ガスを生まず、特に都市部で注目度が高い。会場では、運送会社などで実用化されているカーゴバイク、トップチューブにディスプレイが内蔵された“キーレス”バイク、後部にふたり分のシートを設置した子乗せバイクなどがお目見えした。

 機能面では、アプリとの連携やシステムのハイテク化が目立った。またバイクのデザインは全体的に“どっしり、もったり”から“すっきり、シャープ”へ。モーターの小型化やバッテリーの性能向上がデザイン面に貢献している様子で、軽量化・小型化により、ロードタイプのイーバイクもちらほら。それまでイーバイクというと「スポーツタイプ(MTB)か街乗りか」という大きな分類で語れがちだったが、電力という特長とユーザーのニーズを踏まえ、よりバラエティー豊かに出揃った印象だ。

「ユーロバイク」で展示された運送会社で実用化されているカーゴバイク Photo: EUROBIKE Friedrichshafen
「ユーロバイク」ではアプリとの連携やシステムのハイテク化が目立った Photo: EUROBIKE Friedrichshafen
軽量化・小型化により、ロードタイプのイーバイクもちらほら見かけるようになった Photo: EUROBIKE Friedrichshafen

 デザインが遷移すると共に、従来のユーザー層50代以上からそれ以下へと拡大してきた。とはいえ、筆者友人の母親(50代)世代であっても「一見するとイーバイクとは分からない製品がいい」のだという。乗れば快適で「手放せなくなる」イーバイクも、乗り始めるのは気恥ずかしさがあるのだそうだ。

新発売の電動アシストクロスバイク「XU1」 

 7月2日に発売されたばかりのXU1(パナソニックサイクルテック)は、フレームのダウンチューブと一体化するようにバッテリーが配置され、まさにドイツで人気が高まっているすっきりとしたシルエットが特徴的だ。試しに30代のママ友たちにXU1の画像を見てもらうと、ドイツの市内を走行する自転車としてまったく違和感がないらしく、「青(マットロイヤルブルー)はMTBっぽく見えるけど、白(シャインパールホワイト)なら街乗り自転車っぽい。トップチューブはもっと低いほうが安心できるな」「サドルがコンフォート系なら好みだわ。後ろに子供用トレーラーを付けて乗り回せそう」と盛り上がっていた。

30代のママ友たちにパナソニック・サイクルテックの「XU1」の画像を見てもらうと、「子供用トレーラーを付けて乗り回せそう」などと盛り上がっていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ドイツでは、牽引タイプのトレーラーに子供を乗せる場合が多い(写真は通常の自転車) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
欧州版“子乗せ”自転車は、後部にふたり?(ユーロバイクにて) Photo: EUROBIKE Friedrichshafen

「イーバイク」という言葉がひとり歩き

 一方で、ほそぼそと乗られているうちにはなかった――イーバイクの急激な台頭による問題も見えてきた。言葉やユーザーの理解、制度が追いついていないのだ。

 ドイツ交通安全協会(DVR)では、『自転車の安全走行』というリーフレットの中でイーバイクは「自転車ではなくクルマ」と明記。DVRによれば、自転車として認めているのは「ペデレック」だけ。ペデレックの補助動力は出力250wまで、時速25kmまででペダルを回している間だけ電力が作動するのに対し、イーバイクはペダルを踏まずとも時速25kmまでの加速・停止が可能だ。さらにペデレック、イーバイクの間に出力250w以上、時速45kmまでで乗車には保険番号、運転免許が必要な「S(Schnell=早いの意)ペデレック」という種類が存在するらしい…。

※全体を指す言葉としては、欧州自転車産業連盟(CONEBI)が定める「Electric-Power Assisted Cycles(EPAC)」、すなわち電動アシスト自転車という呼称も存在する。

最左がドイツ交通安全協会によるリーフレット『自転車の安全走行』
「イーバイク進入可」の標識(写真図参照)はどこに設置されている? Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 細かな規定はさらにあるが、学校の授業や講習といったこれらを受動的に学ぶ場はまだ存在せず、すべてを知っている一般のユーザーはいないに等しい。DVRのリーフレットに記されていた「イーバイク進入可」の標識は自転車との区分けをより明確にするために効果的かもしれないが、きょうまで自転車道や街なかで見たことがない。そもそも現状として、店に入れば「イーバイクありますか」で通用するし、イベント名にはイーバイク。線引きは難しい。キャッチーな「イーバイク」が、モーター付き(電動アシスト)自転車全般を指す言葉として完全にひとり歩きしている。

 理解不足あるいは制度の抜け穴による事件・事故も起こりうる。例えばドイツ・ドルトムントの地元紙でことし4月、制限速度が時速30〜50kmとなる市街地を夜間に時速68kmで疾走し速度取締機のフラッシュを浴びて警察行きとなった24歳男性の話が取り上げられた。男性が乗っていたバイクは、出力250w以上、最高時速45km以上のイーバイク。イーバイクに課されるナンバー登録(運転免許必須)がなされていなかったが、男性いわく「EU外から持ち込んだから」。その上男性は、イーバイク乗車時に着用が義務付けられているヘルメットもかぶっていなかった。男性の認識(言い訳)として、同バイクはあくまで自転車だったのだ。

 ドルトムントは、自転車警察隊(Fahrradstaffel)の数が州内で最も多い。自転車警察隊のひとりにこの事件について尋ねてみると、「驚愕のスピードね。事件の後、警察内でちょっとした話題になっていたわ」と振り返った。なお警察隊が所有する自転車10台はアルミフレームのクロスバイクだが、実はイーバイク導入の話は出ていて、「書類上で進んでいるところなの」と教えてくれた。自転車警察隊が一日に走行する距離は10〜40km。「主に街なかでの盗みや喧嘩といった現場に駆けつけているけれど、イーバイクなら郊外へも簡単に行けるようになるわね」

ドイツ・ドルトムントの自転車警察隊。ヘルメットやシューズのほか、専用ジャージ、ベスト、ハーフパンツ(裾はジッパーで付外し可)といったユニフォーム姿 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「なにかあった時のため」に持ち物は多い。罰金支払い用のカード読取機や事故現場を収めるコンパクトカメラも Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

“自転車がイーバイクに置き換わる日”が来る?

 2016年の市場分析で初めて出されたイーバイク販売数のドイツ国内での内訳は、街乗り・都市型バイクが45%、トレッキングバイク(※)が35.5%、e-MTBが15%、カーゴバイクが2.5%、Sペデレックが1%とあった。8割強が、ライフスタイルとして自転車を楽しむためにイーバイクを選んでいるといえそうだ。つまりドイツでイーバイクは、アウトドアが好きで、過酷さよりも楽しさを満喫したい人たちに支持されている。もとより、それこそがサイクリングの醍醐味だ。

※トレッキングバイクは、街乗り装備のあるクロスバイク。ちょうどXU1の雰囲気だ。

ツアー会社「ペデレック・アドベンチャー」創設者スザンネ・ブルッシュさん Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 「イーバイクはドイツ国内でのツーリズムへの影響も大きい。『夏場のスキー』とさえ言う山岳リゾートもあるほど期待が高まっている」と話すのは、スザンネ・ブルッシュさん。ブルッシュさんは、イーバイクの試乗・テスト機関のメンバーとしてその創世記からイーバイクに携わり、2011年にはペデレックを用いるツアー会社「ペデレック・アドベンチャー」を立ち上げた。ブルッシュさんによれば、ドイツでは「年間1億5000万日の日帰り旅行が自転車により行われている」という。少々ややこしい…約するに、毎日40万台を超える自転車が旅路を行き交っているというのだ。

 「イーバイクのメリットは旅でこそ一番享受できます。イーバイクであれば、一般的な自転車や徒歩に比べて次の旅先へスムーズに移動ができます。一日のうちによりたくさんのものを見ることができる上に、その他のモーター付きの乗り物では実現できないほど自然の中にいられるのです。街なかの移動――特にアップダウンがある街では、ササッと移動ができてその後シャワーを浴びずに済む点も気に入っています」

スザンネ・ブルッシュさんはアウトドア関連の見本市「OutDoor」で「アウトドア業界はイーバイク旅の流行でどのように利益を得られるか」をテーマに講演を行った Photo: pedelec-adventures.com

 そんなブルッシュさんはまた、「近い将来自転車はイーバイクに置き換わる」と断言する。「デジタルカメラの時代にあってアナログカメラを愛する人がいるように全て置き換わるのではありませんが、大多数の人にとってイーバイクが主流となってくるでしょう」

 実際にサイクリング風景を見ようと、ドルトムント北部のサイクリングルートへ足を運んでみた。市内からエムズ川に沿って北海まで続く363.8kmのスタート部分で、夏の日差しが強い日でも爽やかな風が抜けて気持ちいい。平日の昼下がりに訪れ、待つこと数分。筆者の前を通り過ぎた15台のうち6台がイーバイクだった。“自転車がイーバイクに置き換わる日”は、あながち遠くないのかもしれない。自身のみがイーバイクで夫とともに走行していた50代の女性は、「サイクリングをもっと楽しめるようになった」と嬉しそうに語った。

<3>「遠くまでツーリングしてみたい」 電動クロスバイク「XU1」→

ドルトムントからエムズ川に沿って北海まで続く363.8kmのサイクリングルート。夫婦でサイクリング中のイーバイクの女性は「サイクリングをもっと楽しめるようになった」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

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