ツール・ド・フランス2018 第6ステージマーティンが激坂頂上フィニッシュを制す フルーム、バルデらがタイムを失う

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2018は7月12日、第6ステージが行われた。前日に続いて中級山岳ステージとして行われ、ミュール=ド=ブルターニュの頂上フィニッシュをダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ)がトップでフィニッシュ。残り1.2kmからのアタックで勝負を決めた。個人総合ではグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が首位を守った一方、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)といったマイヨジョーヌ候補がタイムを失う結果となった。

ツール・ド・フランス2018第6ステージ、ミュール=ド=ブルターニュの頂上フィニッシュはダニエル・マーティンが制した Photo: Yuzuru SUNADA

3年ぶり登場の「ブルターニュの壁」

 フランス北部を進行中のツール序盤戦。ブルターニュ地域に入り、美しい大西洋岸を主に走行してきたが、この日からは内陸部へと針路をとり、海とはお別れとなる。

 この日のスタート地点がブレストと聞いて、サイクリストならばピンとくる方も多いのではないだろうか。そう、ここは世界最古のサイクルイベントであり、ブルべの最高峰といわれる「パリ・ブレスト・パリ」の折り返し地点となる街。フランス海軍の主要港があり、ブレスト城は海軍が所有する要塞でもある。そして何より、2008年のツールが開幕した地でもある。

 ブレストを出発し、東へと進行。前半に3級と4級の山岳ポイントを1カ所ずつ通過するが、大勢に影響は出ないと見られる。何より、この日最重要ポイントとなるのが終盤に控えているからだ。

 2015年以来のツール登場となるミュール=ド=ブルターニュは、登坂距離2kmで、平均勾配は6.9%。上りはじめの500mが最も勾配が厳しい10.1%。それからは徐々に緩やかになっていき、頂上付近は2.4%。3年前には急勾配の区間で人数の絞り込みがあり、最後はアレクシー・ヴィエルモーズ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)が抜け出してステージ優勝を挙げた。

 その名の通り「ブルターニュの壁」は今回、2回通過する。フィニッシュ前16kmでやってくる1回目の上りと合わせ、この区間で有力選手たちはどんなアクションを起こすだろうか。なお、2回の通過ともに、3級山岳にカテゴライズされている。

ブレストの街を出発するプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

1回目のミュール=ド=ブルターニュでレースはふりだしに

 多くの観衆が見送る中出発した選手たち。ファーストアタックは、ダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー)。この動きがプロトンの容認を得られると見るや、4選手が追随。逃げはゴダンのほか、ローラン・ピション(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)、ファビアン・グルリエ(フランス、ディレクトエネルジー)、アントニー・テュルジス(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)、ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンティ・グループゴベール)となる。また、レース序盤には、ホームタウンを通過するオリヴィエ・ルガック(フランス、グルパマ・エフデジ)の先行を集団が一時的に容認。ルガクは沿道に挨拶をしながら通過し、地元に錦を飾った。

5人の逃げグループ Photo: Yuzuru SUNADA

 逃げの5人は快調にリードを広げ、スタートから50km地点を過ぎる頃には、この日最大となる約7分のリードを得た。その間に迎えた44km地点の3級山岳、68.5km地点の4級山岳はいずれもスミスが1位で通過している。

 レースに最初の大きな変化が訪れたのは、残り100km切ろうかというタイミング。強風の影響で、メイン集団がおおよそ3つに分断。マイヨジョーヌのヴァンアーヴェルマートら多くの有力選手は前方をキープしたが、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)など、一部の総合系ライダーが後方に取り残されてしまう。

 この状況を知ってか、メイン集団はクリックステップフロアーズを中心にペースアップ。逃げとの差もあっという間に縮まっていく。レースの進行方向が変わったこともあり、やがて後続は集団へと復帰したが、こうした動きで、逃げとメイン集団とのタイム差は2分台となった。

 135km地点に設定された、この日の中間スプリントポイントは、ピションが1位通過。約2分差でメイン集団が到達し、スプリンターによる争いはライン手前で抜け出したアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチーム・エミレーツ)が先頭となり、全体の6位通過。ポイント賞首位のマイヨヴェールで走るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は8位で通過している。

逃げグループから飛び出したダミアン・ゴダン Photo: Yuzuru SUNADA

 中間スプリントポイントを通過した直後に、逃げグループからゴダンがアタック。そのまま独走へと移る。一方、逃げる選手たちを射程圏にとらえているメイン集団では、残り27kmで落車が発生し、フルサングらが巻き込まれてしまう。いずれも大事には至らず、フルサングもアシスト陣の引き上げによって集団へと戻っている。

 しばしトップを走ったゴダンだったが、残り25kmとなったところで他のメンバーが再び合流。その後ゴダンのみ遅れ、逃げは4人となったところで1回目のミュール=ド=ブルターニュへと突入する。

 上りが始まろうかというところで逃げから飛び出したのはグルニエ。その頃にはメイン集団も前を走る選手たちが見えるところまでやってきており、吸収されるのは時間の問題。実際に、頂上まであと600mのところでグルニエは捕まり、レースはメイン集団による勝負にゆだねられることとなる。3級山岳に設定された頂上は、山岳賞のマイヨアポワを着るトームス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)が1位で通過している。

マーティンが切れ味鋭いアタック

 1回目のミュール=ド=ブルターニュ通過直後、スクインシュを追うようにして集団から飛び出したのはジャック・バウアー(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット)。一度はスクインシュも食らいつく姿勢を見せたが、やがて集団へと戻り、バウアー単独先頭となる。168km地点に設けられたボーナスポイントは、そのままバウアーがトップ通過。約20秒の差で続くメイン集団からは、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)が抜け出し2位通過。これで2秒のボーナスタイムを獲得する。

1回目のミュール=ド=ブルターニュを終えて飛び出したジャック・バウアー Photo: Yuzuru SUNADA

 残り10kmを切ると、集団はボーラ・ハンスグローエが牽引。2回目のミュール=ド=ブルターニュまでしばらく下り基調となるが、そこで一気にペースアップを図る。

 その矢先に総合勢にトラブルが発生した。残り6kmでデュムランがパンク。車輪を交換して集団を追うが、勢いに勝る集団との差は思うように縮まらない。また、残り4kmではバルデの後輪が故障。アシストのバイクを借りて再出発すると、オリバー・ナーセン(ベルギー)とともに前を追った。

 しかし、デュムランやバルデをよそに集団のペースは上がる一方。本格的な上りまでにバウアーを捕まえると、残り3kmを切ったところからはチーム スカイ勢が前方へ。その逆サイドからはディメンションデータも応戦。さらに、2回目のミュール=ド=ブルターニュの上りが始まると、ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)がスピードアップ。これにジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らが続く。さらに背後にはトーマスやヴァンアーヴェルマートの姿も見える。

残り1.2km、ダニエル・マーティンが決定的なアタックを決める Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、決定的な瞬間はフィニッシュまで1.2kmのところでやってきた。一度ポートがアタックを試みるが決まらず、ほんの一瞬牽制状態となる。有力選手が見合う間隙を縫ってカウンターアタックを仕掛けたのはマーティン。集団は探り合いが続き、マーティンとの差が広がっていく。

 残り1kmを切ってようやく集団も動き出し、ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)が単独で前を追い始める。だが、マーティンは後続が近づいてきていると見るや、残り400mでもう一度踏み直してトップをキープ。最後はラトゥールに1秒差まで迫られたが、逃げ切り勝利を挙げた。

総合上位進出に自信を深める快勝

 鮮やかなアタックを決めたマーティンは、実に5年ぶりとなるツールのステージ優勝。2015年のミュール=ド=ブルターニュステージでは2位だったこともあり、3年越しの雪辱となった。今シーズンは、6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでステージ1勝を挙げるなど、ツールを視野に調子を上げてきた印象だ。

ステージ優勝を決めたダニエル・マーティン。フィニッシュ後に喜びを爆発させる Photo: Yuzuru SUNADA

 レース後の記者会見では、「総合成績にこだわりたい」ときっぱり。そんななかでの勝利に「総合を目指すうえで自信となる今日の結果だ」と喜ぶ。今大会は第3ステージのチームタイムトライアルで下位に終わってタイムを失ってしまっているが、ここまでは落車や大きなトラブルなく順調にレースをこなしている。今後に向けてはリラックスに努めながら戦いたいとし、「今日の勝利でツールは成功したようなもの」とも述べている。

 マーティン、ラトゥールに続き、メイン集団は5秒差でフィニッシュ。先頭はアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)が確保している。このグループには、トーマスやポート、キンタナ、フルサング、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)といった選手たちが順当に含まれている。

メイン集団からわずかに遅れたクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で、フルームは集団から3秒差、リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)は8秒差と、昨年の個人総合上位2人がこのステージで苦戦。終盤のトラブルに泣いたバルデとデュムランは集団復帰を果たせず、それぞれマーティンから31秒差、53秒差でフィニッシュラインを通過した。デュムランに至っては、集団復帰を試みた際にチームカーを風よけに使ったとして20秒のペナルティ。このステージだけで1分13秒後退したことになる。

 マイヨジョーヌのヴァンアーヴェルマートはステージ12位に終わったものの、他の総合上位陣とともにフィニッシュしたこともあり、ジャージはキープ。「リッチー(ポート)と協力して勝利を目指したが、クライマー優位のコースでスプリントすることはできなかった」とレース後はさばさばした様子。パヴェを走ってルーベにフィニッシュする第9ステージまではマイヨジョーヌを着続けたいとし、「イエローのジャージをまとってベルギー国境近く(ルーベ)で勝つことは美しいに違いない」と、次なるターゲットに思いを馳せた。

 このほか個人総合では、トーマスが2位に浮上。途中のボーナスポイントを効果的に利用して、マイヨジョーヌに手が届くところまでやってきている。各賞はポイント賞のマイヨヴェールはサガン、山岳賞のマイヨアポワはスクインシュ、新人賞のマイヨブランはソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク、チーム サンウェブ)が、いずれもジャージを堅守している。

マイヨジョーヌを守ったグレッグ・ヴァンアーヴェルマート Photo: Yuzuru SUNADA

 13日に行われる第7ステージは、今大会最長となる231km。3日ぶりの平坦ステージとなり、再び主役の座はスプリンターになると予想される。山岳ポイントも中盤の4級1カ所と、コースレイアウトだけ見れば難易度は低いように感じるが、フランス北部特有の強風が吹きやすいポイントでもあり、決して気を抜くことはできない。天候や風向き次第で、レースが思わぬ方向へと転がっていく可能性もある。

第6ステージ結果
1 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ) 4時間13分43秒
2 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +1秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +3秒
4 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)
5 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
6 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
7 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
8 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
9 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)
10 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNL・ユンボ)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) 22時間35分46秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) +3秒
3 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) +5秒
4 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) +6秒
5 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) +12秒
6 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +18秒
7 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +45秒
8 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +51秒
9 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +52秒
10 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +53秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 199 pts
2 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 156 pts
3 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチーム・エミレーツ) 88 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 トームス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) 6 pts
2 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー) 4 pts
3 ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンティ・グループゴベール) 4 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 ソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク、チーム サンウェブ) 22時間36分49秒
2 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム スカイ) +27秒
3 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +2分17秒

チーム総合
1 クイックステップフロアーズ 68時間26分56秒
2 BMCレーシングチーム +8秒
3 チーム スカイ +1分50秒

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