ディスクブレーキモデルがついに登場トレックの新型マドン・ファーストインプレッション トップチューブIsoSpeedを大解剖

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 トレックが誇るエアロロードバイク「MADONE」(マドン)が今年7月、3年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。新しいマドンSLRは、振動吸収性を高めた新しいトップチューブIsoSpeed(アイソスピード)を搭載し、また待望のディスクブレーキモデルが登場した。日本に届いたばかりの、注目のディスクブレーキモデルをファーストインプレッションした。

3年ぶりのフルモデルチェンジでディスクブレーキ対応となったトレック・マドン。写真はアルテグラ仕様の「MADONE SLR 6 Disc」 Photo: Ikki YONEYAMA

15年の歴史はフラッグシップの系譜

 マドンの初代モデルが登場したのは2003年。その後15年に渡りモデルチェンジを続けながら、トレックのフラッグシップロードに君臨し続けている。レースモデルがエンデュランス用のDomane(ドマーネ)、軽量でクライム向けのÉmonda(エモンダ)と細分化するなかで、マドンは2015年に登場した5代目からエアロロードとしてのアイデンティティを強化。空力性能をより先鋭化する一方で、ドマーネで採用していた振動吸収システムのIsoSpeedを搭載した。

2015年にデビューした5代目のマドン Photo: Naoi HIRASAWA

 空力性能を重視するため、パイプ断面が進行方向に縦長となるエアロロードバイクは、縦方向に固い乗り心地となりやすい。そうしたエアロロードの“常識”に、マドンは真っ向から挑んだ。2重構造のシートチューブ内にIsoSpeedの機構を詰め込み、シートマストと接続。「乗り心地の良いエアロロード」という新しいアイデンティティを確立したのだ。

6代目マドンは「大きな正常進化」

 6代目となった新型マドンも、コンセプトは先代をほぼ受け継ぐ形となっている。すなわち「究極の空力性能にIsoSpeedを搭載した、乗り心地の良いエアロロードバイク」というものだ。先代の空力性能が良すぎたのか、シルエットはほぼ変わってはいない。空力性能は風洞実験の結果、新たなパーツを追加しながらも、先代と同レベルになっているという。

正面から見ると空気抵抗の少なさを実感できる。トレンドに合わせてタイヤクリアランスは大きくなり、ディスクブレーキモデルでは28Cタイヤに正式対応する。実際にはもう少し太いタイヤも入りそう Photo: Ikki YONEYAMA
ハンドルとステムが2ピース構造となった専用エアロハンドルシステム。ポジションの調整幅が先代よりはるかに広がった Photo: Ikki YONEYAMA
新型の調整式トップチューブIsoSpeedを搭載。シートマストからL字型に曲がってトップチューブに接続する Photo: Ikki YONEYAMA

 大きく変わったのが、IsoSpeedの機構部分だ。先に登場したドマーネSLRの調節式IsoSpeedを、マドンのボディに合う形に進化させ、シートチューブではなくトップチューブに接続する、新しいIsoSpeedが誕生した。ドマーネSLRと同様、スライダーを移動して振動吸収性を調節できるほか、トレックのIsoSpeed初となるダンパーを搭載し、リバウンドを13%抑制している。

 もちろん振動吸収性は先代より向上。またIsoSpeedを司るパーツが全てのフレームサイズでほぼ同じになったことで、シートチューブの長さに依存していた先代のそれに比べて、フレームサイズによる振動吸収性能の差異がなくなっている。この恩恵は、小さいフレームサイズで顕著になっているという。

IsoSpeedの集合部のカバーを外した状態。シートチューブ後方のフタの中にはダンパーが隠されている Photo: Ikki YONEYAMA
ダンパーネジを緩めるとシートマストをトップチューブから浮かせ、振動吸収調整スライダーを動かせるように Photo: Ikki YONEYAMA
完全に取り外した状態のシートマスト。先端部がしなることで振動を吸収する Photo: Ikki YONEYAMA
シートチューブ内にはダンパーを設置 Photo: Ikki YONEYAMA

 ハンドルバーは先代マドンでは、ステム一体型の専用エアロハンドルが装備。高い空力性能をもつ一方で、ポジションの選択肢が少ないという欠点もあった。新型マドンでは高い空力性能を保ちながら、ハンドルとステムが別体となり、サイズやポジションの選択肢を大幅に増やしている。ハンドルは前後に角度調整も可能になった。

ハンドルバー&ステム。ステムの重量は203gだった Photo: Ikki YONEYAMA
ハンドルクランプ部を円形断面とすることで、角度調整が可能になった。ハンドルとステムにはケーブル内蔵のルートが確保されている Photo: Ikki YONEYAMA

 待望のディスクブレーキモデルは、フラットマウントのディスクブレーキを搭載し、12mmスルーアクスルを採用する。ケーブル類はスマートに内蔵され、外側に露出するのは末端のほんのわずかな部分のみだ。新型マドンの登場によりトレックのロードバイクの3本柱、マドン、ドマーネ、エモンダの全てがディスクブレーキ対応を完了した。

フロントフォークのケーブルもスマートに内蔵される Photo: Ikki YONEYAMA
シートポストの固定機構は内蔵型になった Photo: Ikki YONEYAMA

 最新のエアロロードバイクはディスクブレーキ対応と同時に、ディスクブレーキ専用となる例もあるが、マドンではリムブレーキモデルも継続してラインナップする。リムブレーキモデルでは、フロントブレーキがフォークの後ろ側のマウントとなり、より空力性能が高まっている。先代マドンの特徴的ギミックだった「ベクターウィング」は廃止となったが、完成度はより高まっている。

実走インプレッション BY 野口忍・米山一輝

 新型マドンを兵庫県尼崎市のトレック・コンセプトストア、「THE EARTH BIKES」(アースバイクス)代表の野口忍さんとともに試乗。ファーストインプレッションを話し合った。今回使用した「マドンSLR 6 ディスク」は、アースバイクスで試乗可能だ。

◇      ◇

野口忍(のぐち・しのぶ)。元MTBクロスカントリーのプロライダーで、トレックのバイクを駆り日本チャンピオン、アジアチャンピオンなど輝かしい実績を残した。引退後はトレック・ジャパンでマーケティングを10年担当する中、トライアスロンにも挑戦。2018年に独立し「THE EARTH BIKES」を創業 Photo: Ikki YONEYAMA

米山:野口さんの今のメインマシンは先代マドンですよね。新型マドンに乗ってみてどうでしたか?

野口:それぞれ乗ってみて感じるのは、まずIsoSpeed機構がトップチューブに搭載されたことが大きいです。メーカーの検証結果としては、50cmのフレームでは最大27%も衝撃吸収性が高まっているそうで、それは乗ってみても、前作よりもさらに障害物にヒットした際に角が取れたような、ドマーネにも近づいた感じでした。

米山:自分は久々にマドンに跨がったのですが、良い意味でまず変わらないなぁという印象。優れたエアロ性能とスピード性能がありつつ、乗り心地も良い。身体へのダメージを減らすことで、エンジンである人間部分の性能を最大限に引き出せる。振動吸収性能がアップしたのはうれしいですね。

野口:障害物だけでなく、コーナーリング時の安定性や路面に食らいつく感じもこれが影響しているのか、前作よりもコーナーリング時のハネが抑えられて安定性も高まっている感じがします。

米山:ピカピカの新品だったので、最初ちょっとビビりつつコーナーを走りましたが、確かに直線だけじゃなくコーナーリングの安定性も感じられました。今回はついに登場のディスクブレーキ仕様ですが、どうでしたか?

野口:マウンテンバイクでは当たり前なので扱いには慣れているのもあり、自然にディスクブレーキを受け入れることができました。前作のマドンのオリジナルブレーキにも全く不満や不安はないですが、ディスクになることで、手、腕への疲労が大幅に軽減されます。下りが苦手という方には絶対に使ってもらいたい機能の一つです。

米山一輝(よねやま・いっき)。元ロード選手で全日本個人TT入賞経験もあるスピードマン。バイクインプレッションでは5年間で200モデル以上のバイクに試乗してきた Photo: Ikki YONEYAMA

米山:トレック3本柱の中では最後発とあって、ディスクブレーキのフィーリングはよく練られていると感じました。ディスクブレーキ版は仕組み上の理由とスルーアクスルから、足回りの剛性感は必然的に上がりますが、違和感を感じる固さではなかったです。

野口:もはや手持ちのホイールが使えない以外のデメリットを見出すのが難しいです。ただ、トレックはこれまでのユーザーのことを考え、ディスクだけでなく同時にリムブレーキモデルも発表しています。既存のバイクからのフレーム乗せ換えもできるため、ユーザーフレンドリーを感じます。

米山:ハンドルバーがステムとの2ピースになった部分はどうですか?

野口:新作ではハンドル周りのしなやかさが改善され、リアのIsoSpeedと相まってバランスのいい乗り味を提供してくれています。コーナーリングでの安定性にも間違いなく影響していると感じますね。

米山:確かに前作の一体型エアロハンドルは硬かった! ポジション調整の自由度が上がったのもうれしいですね。

野口:ハンドルを±5°の調整幅が設けられているのも嬉しい機能。若干ハンドルをしゃくったり、送ったりできるのは、全サイクリストにとってプラスな点だと感じます。

米山:モデルチェンジしても、変わらず最強のスピードバイクの一つでした。現代的なテクノロジーや扱いやすさをプラスしつつ、その特徴はより深化したと感じました。先代をプライスダウンしたマドンSLも含め、ラインナップが幅広くなったのもうれしいですね。

(取材協力:THE EARTH BIKES)

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