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ツール・ド・フランス2018 第5ステージサガンが圧倒的パワーで今大会初の中級山岳ステージを制す 総合上位陣は変わらず

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2018は7月11日に第5ステージが実施された。今大会初めてとなる中級山岳ステージで争われ、ポイント賞のマイヨヴェールを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が上りスプリントを制して優勝。8日に行われた第2ステージに続く今大会2勝目を挙げた。また、総合上位陣には大きな変動はなく、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)がマイヨジョーヌを守っている。

ツール・ド・フランス2018第5ステージ。今大会最初の中級山岳ステージは、上りスプリントでペテル・サガンが勝利 Photo: Yuzuru SUNADA

さいたま発ツール行 今年も千羽鶴が選手たちのもとへ

 前日のフランスは、夕方までツールに熱狂し、夜はフランス代表が勝ち上がっているサッカー・ワールドカップロシア大会に沸いた。特にサッカーフランス代表に至っては、隣国ベルギー代表を1点差で下して、決勝戦へ進出。街のバルやマルシェには人々が集まり、選手たちのプレーに一喜一憂。そして勝利の瞬間から日付が変わる頃まで、チャントやフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の大合唱が続いた。決勝戦は15日。もう少し、人々の関心はツールとサッカーが並行することになる。

 大会は5日目。今大会最初の中級山岳ステージは、204.5kmとツールにしては長丁場。フランス北西部・ブルターニュ地域の港町であるロリアンをスタートして、カンペールを目指して走る。

レース序盤はブルターニュの大西洋岸を走る Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 レース展開を左右すると見られるのは、中盤以降に控える3級と4級合わせて5つが連続するカテゴリー山岳。いずれも登坂距離こそ短いものの、勾配にして6%前後の上りをこなすことになる。コースレイアウトを見る限り、春に開催されるアルデンヌクラシックを得意とするタイプの選手に有利なイメージ。極めつけは、山岳カテゴリーこそつかないものの、4.8%の上りが待つフィニッシュ前の1km。最後の400mで緩斜面となることから、パワーとともに緩急の上りに対応する脚の切り替えができるかが、ステージ優勝の条件となってくる。

 この日は、スタート2時間前にツールではすっかり恒例行事となった、千羽鶴贈呈式が実施された。「鶴 de France」(つる・ど・ふらんす)と銘打った催しは、今年11月4日に開催が決まっている「J:COM presents 2018 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」のPR企画として行われ、開催地さいたま市の職員が出席した。

 千羽鶴は、ツール出場中の選手たちの安全と健康を祈念したもので、関連イベントの来場者や地元さいたま市の小学生などの参加により、今年は合計4096羽が集まった。4賞ジャージ柄になっていて、さいたまの人たちの思いがこもった千羽鶴は、ロリアンからレースとともにフランスをめぐっていくことになる。

レーススタート前に行われた催し「鶴 de France」。今年もさいたま市から千羽鶴が大会あてに送られた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

7人の逃げがブルターニュの沿道を盛り上げる

 この日は、驚きとともにレーススタートを迎えることとなった。未出走者リストに名が記されていたのは、マイヨヴェール2連覇がかかっていたマイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)と、成長株のティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)。マシューズは体調不良、ベノートは前日の落車によりレース続行が不可能になってしまった。ともにチームの軸となる存在だけに、本人たちはもとよりチームとしても戦力ダウンとなり得る厳しい決断となった。

7人による逃げグループ Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな中で始まったレースは、2km地点でリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)がアタックに成功。これに追随した選手たちがそのまま逃げグループを形成し、7人のリードでレースが進行した。

 先行したのはカルメジャーヌのほか、エリー・ジェベール(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)、ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー、チーム ディメンションデータ)、ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)、トームス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)。このうち、ジェベールはブルターニュ出身。地元に錦を飾るべく、逃げでの好走をもくろむ。

 逃げとメイン集団とのタイム差は、80km地点で最大となる4分25秒差。以降はBMCレーシングチームが集団のペースメイクを本格化させ、逃げグループを射程圏にとらえながら次なる展開へと備える。

 92.5km地点に設定された中間スプリントポイントでは、逃げグループは競うことなく、シャヴァネルが1位で通過。その3分50秒後にやってきたメイン集団は、ポイント賞争いを繰り広げるサガンとフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が接戦。ここはガビリアが先着し、全体の8位通過とした。

山岳ポイント獲得を狙って独走態勢に持ち込んだシルヴァン・シャヴァネル Photo: Yuzuru SUNADA

 淡々と進んでいるかに見えた逃げグループだったが、106km地点に設けられた、この日最初の山岳ポイントとなる4級の上りでシャヴァネルがペースアップ。1位で通過するとともに独走に持ち込む。それまで逃げてきたメンバーとは約40秒差とし、山岳ポイントの複数獲得を目指す。追走の形となった6選手では、ジェベールがコース脇に突っ込む形で落車してしまうハプニングも含め、少しずつ脚の差が表れ、人数が絞られていく。

 シャヴァネルは4級2つ、3級1つをそれぞれ1位通過し、この日だけで山岳ポイント4点を獲得。残り60kmを迎えようかというところでカルメジャーヌ、スクインシュ、エデに追いつかれ、やがて遅れてしまうが、山岳賞争いで上位を狙える状況を作り出した。

メカトラによりバイクを交換して再出発するクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団では、この日も大小あらゆるトラブルが発生。クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)にメカトラブルが発生し、バイクを交換。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)らのケアを受けながら集団へと戻る。また、残り50kmを前にしたところで5人程度が絡む落車が集団内で起きている。これに大きなダメージを負った選手はいなかったものの、レースが進むにつれて緊張感が漂い始めた。

 3人に減りながらもなおも逃げ続けた先頭。ともに3級に設定された最後の山岳2つはスクインシュが1位通過。シャヴァネルとならび山岳ポイント4点とし、上級獲得数の差で山岳賞のマイヨアポワを手にすることが決定。カルメジャーヌとスクインシュはその後も先頭で粘ったが、メイン集団の勢いには勝てず。198km地点に設定されたボーナスポイントを迎えたところで吸収された。

サガンのパワー炸裂 ライバルは並ぶことすらできず

 残り12kmでふりだしに戻ったこの日のレース。ボーナスポイントへの上りで飛び出したのは、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)。ヴァンアーヴェルマートがこれを追ったが、アラフィリップは寄せ付けず1位で通過し、ボーナスタイム3秒を獲得。ヴァンアーヴェルマートも2位で続き、2秒のボーナスを得た。

残り10kmでレイン・タラマエが集団からアタックする Photo : Yuzuru SUNADA

 ここからスピードを上げたのはチーム スカイ。フィニッシュに向けて状況を整える。残り10kmでレイン・タラマエ(エストニア、ディレクトエネルジー)がアタックし、約5kmにわたって逃げたが、集団を引き離すまでには至らない。タラマエを吸収したメイン集団は、クウィアトコウスキーが牽引するチーム スカイトレインを先頭に、残り2kmのバナーを通過した。

 先頭のポジションを譲らないチーム スカイは、最終局面に向けてエガン・ベルナル(コロンビア)の引きによってフルームを好位置に送り出す。その背後にはサガン、さらにアラフィリップ、ヴァンアーヴェルマートらが勝負のときを見計る。そして残り800m、急勾配となったところでアタックを仕掛けたのはフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)だった。

 ジルベールの飛び出しに、ヴァンアーヴェルマートとサガンがすかさずチェック。他の有力選手も続く。しばらくジルベールが先頭を走るが、緩斜面に変わる残り400mで牽制状態となる。この動きで、ヴァンアーヴェルマートが先頭へ押し出される形になってしまった。

 やむなくスピードを上げたヴァンアーヴェルマートだったが、いまひとつスピードに乗せきれない。残り200m、ここでついにサガンがスプリントを開始。これを待っていたかのようにソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が追いかける。

 だが、最後はサガンが持ち前のパワーでライバルを圧倒。誰も横に並ばせることなく、今大会2つ目となるステージ優勝を決めた。

スプリントによる優勝争い。最後はペテル・サガンが圧倒的なパワーで制した Photo: Yuzuru SUNADA

サガンはマイヨヴェール争いで一歩リード

 前日の第4ステージ以降、ポイント賞のマイヨヴェールを着用してレースを進めるサガン。ステージ優勝と中間スプリントとでの獲得分を合わせて、今日だけで37点を加点した。中間スプリントでは先着を許したガビリアは、最終局面を前に集団から遅れたこともあり、さらなるポイント加算はならず。マイヨヴェールを争う両者の差は33点と広がった。

ポディウムで勝ち名乗りを受けるペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADA

 レース後の記者会見で最終局面を振り返り、「残り2kmでチーム スカイトレインの後ろに入ることができ、どんな状況にも対応できる態勢を整えた。ジルベールがアタックしたときにしっかりと対応ができ、ヴァンアーヴェルマートの早めに仕掛けにも慌てることはなかった」と説明。好調な走りは冗舌にもつながっているようで、「レース中にコルブレッリが勝ちを譲ってくれと頼みに来たので、すぐに断った。また、最後のスプリントはグレッグ(ヴァンアーヴェルマート)のリードアウトに感謝しないといけないね」と笑顔。ライバルの動きを見ながら、自身のタイミングを図った末の勝利であることをユーモアとともに示した。

 最終的に、ステージ38位までがサガンと同タイムフィニッシュに。総合上位陣はきっちりこの中でレースを終えており、ヴァンアーヴェルマートのマイヨジョーヌも変わらず。ステージ争いは7位に終わり、残り400mを切って先頭に出てしまった状況を悔やんだが、すでに視線は先のステージへ。翌日、そしてパヴェを走る15日の第9ステージでは、「クイックステップフロアーズ勢が脅威になる」と述べ、マイヨジョーヌキープにおける最大のライバルになるとした。

 このステージでは、ロベルト・キセルロウスキー(クロアチア、カチューシャ・アルペシン)が序盤の落車で鎖骨を骨折しリタイア。開幕から6選手が姿を消したことになる。

マイヨジョーヌを守ったグレッグ・ヴァンアーヴェルマート。最終局面でのミスを悔やんだが、ジャージのキープに依然意欲を見せる Photo: Yuzuru SUNADA

 12日に行われる第6ステージも中級山岳。ブルターニュ半島西端のブレストを出発し、ミュール=ド=ブルターニュ・ゲルレダンを目指す181km。斜度10%を超える区間が待ち受けるミュール=ド=ブルターニュは、3年前のツール登場時には激しい人数の絞り込みが起こった。今回はこの上りをフィニッシュ前16kmと頂上フィニッシュとの2回通過する。これがどのようにレース展開に影響するかが焦点。最終局面となる2回目の上りも含めて、タフなステージとなることは確実だ。

第5ステージ結果
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 4時間48分6秒
2 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +0秒
3 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
4 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)
5 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)
6 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ)
7 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
8 ソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク、チーム サンウェブ)
9 アンドレーア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
10 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) 18時間22分0秒
2 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) +2秒
3 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) +3秒
4 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) +5秒
5 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) +6秒
6 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +9秒
7 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) +13秒
8 ソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク、チーム サンウェブ)
9 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +37秒
10 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +52秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 180 pts
2 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 147 pts
3 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチーム・エミレーツ) 78 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 トームス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) 4 pts
2 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー) 4 pts
3 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー) 3 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 ソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク、チーム サンウェブ) 18時間22分13秒
2 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム スカイ) +1分8秒
3 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ プロチーム) +1分39秒

チーム総合
1 クイックステップフロアーズ 55時間45分20秒
2 BMCレーシングチーム +23秒
3 チーム サンウェブ +44秒

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