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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<259>ツール2018現地最新情報 ハンスグローエの契約延長とBMCの今後…ボーナスポイントの影響は

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 全世界を熱狂させるツール・ド・フランス。2018年大会はまだまだ序盤戦。この先に控える難関ステージでの戦いや、マイヨジョーヌをはじめとした各賞争いなど、見どころは盛りだくさん。そんな楽しみ満載のツールの現場から、今回は最新の情報をお届け。レース内外で飛び交うあらゆる話題の中から、注目したいトピックをお知らせしよう。

ツール・ド・フランス2018序盤戦はスプリント中心の展開となった。写真はペテル・サガン(左)が制した第2ステージ Photo: Yuzuru SUNADA

ハンスグローエ社が2020年までのタイトルスポンサー契約延長

 このツールでもペテル・サガン(スロバキア)の活躍が光るボーラ・ハンスグローエだが、この大会が始まる前日の7月6日、共同記者会見においてハンスグローエ社との2020年シーズンまでのタイトルスポンサー契約延長に合意したと発表した。

7月6日に行われたボーラ・ハンスグローエの共同記者会見 Photo: Yuzuru SUNADA

 サガンのほか、総合エースのラファル・マイカ(ポーランド)らも出席した記者会見で行われた今回の発表。ドイツ人チームマネージャーのラルフ・デンク氏は、「このような場で素晴らしいニュースを発表でき光栄だ。チームとしては、選手たちに最高の環境を構築するとともに、スタッフを含めた日々の取り組み、そしてスポンサーへいかに還元するかも常に考えている」と、喜びと感謝のコメント。

マークス・ブルグハート(右)と談笑するラルフ・デンク氏 © BORA - hansgrohe / VeloImages

 チームはこの4月に、ボーラ社とも2021年までのタイトルスポンサー契約延長に合意をしており、「ボーラ・ハンスグローエ」としての現体制は、これにより2020年シーズン終了まで確約されたことになる。デンク氏はこれについても述べ、「長期的視野での結びつきは、われわれの(チーム存続にかかる)安全性と計画性をもたらしてくれる。UCIワールドツアーでの野心的な目標を持っているので、いまの取り組みはこの先も継続していく」とした。

 スーパーエースのサガンは、「両社がわれわれに寄せてくれる信頼には本当に感謝している」と喜びを口にした。

 ちなみに、ボーラ社は正式には「ボーラ・クッキングシステム」との名で運営されるシステムキッチン製造メーカー。また、ハンスグローエ社は水道の蛇口やシャワーヘッドなどを製造する水栓器具メーカー。どちらも世界的シェアを誇り、特にヨーロッパの住宅や高級ホテルなどの水栓器具として多く選ばれている。

ペテル・サガン擁するボーラ・ハンスグローエは、ハンスグローエ社との2020年シーズン終了までのタイトルスポンサー契約に合意した © BORA - hansgrohe / VeloImages

BMCレーシングチームは後継スポンサー探しが難航

 昨年はツール開幕に前後して、多くの有力選手がチームとの契約延長を発表したが、今年はそうした動きは少なめ。考えられる理由は単純で、昨年がチームとの契約最終年となっていた選手が多かったという実態。

 そんな選手動向は昨年ほどではない一方で、今年のツールではある特定のチームの周辺が騒がしい。

第3ステージのチームタイムトライアルを制したBMCレーシングチーム。チームの先行きは不透明なままだ =2018年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 それは、プロトン屈指のビッグチームであり、自転車メーカー直属のチームとしてその利点をフルに生かしてきたBMCレーシングチームだ。

 毎年のようにビッグネーム、さらには将来性十分の若手を獲得し、その期待に違わない活躍で選手・チームともにトップシーンを駆け巡ってきた。ジム・オショウィッツ氏がマネージャーを務めるチームは、今年限りでBMC社との契約が満了することが確定している。

 手塩にかけて育ててきたチーム・選手を守るべく、後継スポンサー探しに励むオショウィッツ氏だが、その状況は芳しくない。6月中をめどにスポンサー募集を行ったが、大型スポンサーとして申し出る企業はなかったことを認めている。

BMCレーシングチームのマネージャー、ジム・オショウィッツ氏。ツール開幕以降、毎日のようにメディアからの質問を受けている Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 大会開幕以降、レース前のチームパドックではメディアに囲まれるオショウィッツ氏の姿を毎日のように目にする。「希望は捨てていなし、このところ信頼し合える結びつきもあった。各所と話し合いを続けており、素晴らしい機会を見出したい」とスポンサー探しを継続していく意思を示している。

 かたや、いまだ次期スポンサーが決まっていない状況を選手たちは不安視。総合エースのリッチー・ポート(オーストラリア)はかねがね「5月をタイムリミット」と述べ、それまでにスポンサーが決まらなかったため、移籍に向けて動いているとの見方もある。また、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)らのエースクラスにも移籍先の具体名が挙がるほどの噂が出てきており、選手たちの周囲も慌ただしくなっていることがうかがえる。

 そんなチームは、ツール第3ステージのチームタイムトライアルで快勝。ヴァンアーヴェルマートがマイヨジョーヌに袖を通した。勝利を喜ぶオショウィッツ氏や選手たちの様子からは、それぞれの関係性には問題がないように見受けられた。この活躍が状況の好転に結びつくのか。選手・チームとも、このツールが正念場と見てもよいのかもしれない。

ボーナスポイントの効果はいかに?

 今大会から導入された「ボーナスポイント」。上位通過3選手に3秒、2秒、1秒のボーナスタイムがそれぞれ付与され、総合タイムから減算されるシステムとなっている。フィニッシュでは上位3選手が10秒、6秒、4秒のボーナスタイムが与えられるが、同様の恩恵をレース途中でも受けられることになる。

今大会から導入されたボーナスポイントはレース展開にどう影響するか? 写真は第1ステージを走るプロトン =2018年7月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 特筆すべきは、第9ステージまでのセッティングである点(チームタイムトライアルの第3ステージは除く)。つまりは、平坦や中級山岳ステージのみで構成される大会前半限定のルールであるのだ。

 昨年秋に今大会のルートが発表された段階から、多くの総合系ライダーが「大会前半をどうクリアするか」をポイントに挙げ、チームタイムトライアルの第3ステージ、パヴェを走る第9ステージに加えて、同地特有の風もレース展開に影響を与えると見られてきた。そこに加わったのが、このボーナスポイント。

 総合系ライダーにとっては、ここで上位通過することで、大会中盤から後半にかけての総合争いを優位に進められる可能性も秘める。もっといえば、ここはタイムのみの扱いとなるため、関係するのは総合争いだけというところで、総合系ライダーの動きが活性化しても不思議ではないのだ。

第2ステージを走り終えるゲラント・トーマス(中央)。この日はボーナスポイントを3位通過したが、その理由を誰も動きを見せなかったからだとした Photo: Yuzuru SUNADA

 ただ、いざふたを開けてみると、総合系ライダーでボーナスポイントに向けて動きを見せたのは、第2ステージで3位通過したゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)のみ。第1ステージでは上位2選手が逃げグループから、3位通過はオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)だった。ナーセンの場合は、チームの総合エースであるロマン・バルデ(フランス)のライバルとなり得る選手の動きを封じるためのアタックだったと見ることもできる。

 トーマスによれば、自身が動いたのは結果的に2位通過となるフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)に誰も追随しなかったから、なのだとか。だとすると、実情としてはこのポイントに興味を示している選手が少ないのかもしれない。

 もっとも、ボーナスポイントが設定される地点がフィニッシュから近いため、プロトンではすでに最終局面を意識した動きになっており、レーススピードや集団全体の状況的にボーナスタイムどころではないのかもしれない。

 このシステムが後々の戦いに影響を与えるものとなるのかは、もう少し様子を見ていく必要がありそうだ。

グランデパール取材記

 ツール取材中ということで、筆者からも現地の話題を。

 7月7日の第1ステージ。栄えあるグランデパール(開幕地)となったのは、ノワールムティエ=アン=リル。大西洋に浮かぶノワールムティエ島の北部を占める地域で、会話や道路標識などで「ノワールムティエ」と出てきたら、基本はこの地を指すのだそう。

ノワールムティエ=アン=リルのスタートに並んだ選手たち。3週間の戦いがここから始まった =ツール・ド・フランス2018第1ステージ、2018年7月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 季節を問わず温暖で、観光地としても人気のあるこの場所。ツールの開幕地なのだからさぞかし賑わっていることだろうと思いきや…案外そうでもなかったのである。

 昨年のグランデパールがドイツ有数の都市であるデュッセルドルフだったので、それと比較するのはナンセンスという見方もできるが、それにしてもである。

 その理由は実に明快。交通規制である。

 フランス本土からノワールムティエにわたるルートは、地図上では2カ所あるのだけれど、潮の満ち引きの関係で今の時期は島の南部にかかるノワールムティエ橋に限定。さらには、当日は「関係車両のみ午前8時15分まで通行可能」と決まっていたため、一般の人たちの往来が許されなかった。

レース当日の人々の足は自転車。スタート会場に向かう人たちが列をなして走っていく =2018年7月7日 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 実際にノワールムティエに入ってみると、沿道やスタート地点にファンの姿があったのだが、キャンピングカーなどで“前乗り”した人たちか、ノワールムティエ島に在住している人たちなのだと思われる。また、島内での自動車通行も制限されていたので、彼らの移動はもっぱら自転車。車道脇の自転車通行道路は、スタート地点に向かう人たちがそれこそ「隊列を組んで」走っていたのだった。

 そんなわけで、いつもより少々人の入りが少なめだったグランデパール。それでも足を運んだ、いや運べた人たちは、きっと「やっとの思い」でツールの開幕に寄り添うことができたのだろうと、筆者は感心しきりなのである。

 ちなみに、本土と結ばれるもう一方のルートは、過去のツールで数々の名場面が生まれた「パサージュ・デュ・ゴワ」。満潮になると海面下に沈んでしまう海の中道は、今大会のルート発表当初はプロトンの通行を予定していたが、時期的な潮の干満の都合でコース変更となった。

2011年大会はパサージュ・デュ・ゴワで開幕した Photo : Yuzuru SUNADA

今週の爆走ライダー−ケヴィン・ルダノワ(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今年のツールは大会4日目にして、チームの本拠地・ブルターニュ地方へとやってきた。第4ステージのスタート地となったラ・ボールには、友人や家族が駆け付け、ひとときの安らぎを楽しむフォルトゥネオ・サムシックの選手たちの姿があった。

 この大会前半戦をひときわ高い意欲で臨んでいる選手が存在する。24歳のケヴィン・ルダノワは、キャリア初のツールを戦う。実は、彼自身の拠点はヴァンデ地域に位置するサン=ジャン=ド=モン。第1ステージの序盤に通過した街である。

第1ステージ終了後にマイヨアポワに袖を通したケヴィン・ルダノワ。住む街を通過するとあって、人一倍モチベーション高くレースに臨んでいた Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな個人的な理由もあり、大会初日はアピールしないわけにはいかなかった。プロトンの容認もあり、スタートアタックを決めると、多くの友人の前でよいところをしっかりと見せた。さらには、「実は狙っていた」という山岳ポイントも1位通過。1日で手放すことになったが、山岳賞のマイヨアポワにも袖を通した。

 落車負傷もあり、ベストコンディションとは言えないが、モチベーションはまだまだ上々。マイヨアポワ着用に気を良くし、「山岳賞争いにも本気でトライしたい」とも。得意の逃げとスプリント力で、山岳ポイントの積み重ねを狙っていこうとの構えだ。

 2015年にはアンダー23カテゴリーでロード世界王者となった、フランス自転車界の至宝の1人。父は元選手で、マイヨジョーヌ着用経験もあるイヴォン氏。いまはチームのスポーツディレクターを務めており、日本的に言えば「父子鷹」としても注目が集まるが、イヴォン氏は「息子だからといって特別扱いはしない。むしろ他選手以上に厳しく接する」と就任時に宣言。このツールでもハイクオリティな走りを息子に求めていることだろう。

 よい面も悪い面も日ごとに経験しているツールだが、第7ステージが行われる7月13日は25歳の誕生日。自らを祝う快走なるだろうか。

第4ステージのスタート前。筆者の向けたカメラに気づき笑顔を見せるケヴィン・ルダノワ。山岳賞争いに参戦する意欲を示した =2018年7月10日 Photo: Syunsuke FUKUMITSU
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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