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栗村修の“輪”生相談<131>10代女性「何度も転んで怖いのですが、やはりビンディングペダルの方が良いですか?」

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 初めまして。高校2年の女子です。

 高校1年の夏頃にロードバイクを買ってもらい、長い休みの時には父と走っています。ここで、質問です。昨年の冬にビンディングペダルを購入して走ってみました。しかし、クリートから上手く足が外せず何回も転けてしまいました。

 たまたま車の少ない所で転んだので良かったのですが、車が頻繁に通る所だったらと考えるとそれ以来、自転車に乗るのが怖くなりました。父が心配して普通のペダルに直してくれたのですが、やはり速く走るためにはピンディングペダルの方が良いのでしょうか。

(10代女性)

 ロードバイクの普及を感じるご質問です。

 ビンディングペダルは、プロ選手や、趣味でトレーニングをするホビーレーサーたちの方々が例外なく使っていることからもわかるように、速く走るためには有利です。

 しかし僕は、レーサーを目指すのでもなければ、ビンディングペダルではないフラットペダルを使っても、これはこれでアリだと思いますね。現に、サイクリストでモデルの福田萌子さんは、フラットペダルで走る「フラぺ女子」として活躍されています。無理してビンディングペダルにする必要はないんじゃないでしょうか。

 これはとても重要なことなので触れますが、ビンディングペダルには、ペダルが外れなくて転んでしまう「立ちごけ」というドラマが付きまといます。僕も著書などで、何度も、「立ちごけ」のドラマに触れてきました。

 ご質問者さまの質問内容を拝見する限り、ご質問者さまが何度も陥っている状況はまさにこの「立ちごけ」だと推察されます。少し長くなりますが、まずはこの立ちごけがなぜドラマなのかをご説明いたします。それは、立ちごけでは、転ぶ当人と周囲との複雑な心理戦が展開されるからです。

 まず前提として、立ちごけは誰にでもあり得ます。ツール・ド・フランスを走っているようなプロでも、気を抜くとたまに立ちごけをするくらいです。逃れられない宿命なのです。

 で、立ちごけをしますよね。普通、立ちごけの現場には周囲に人がいるわけですが、それが問題になります。

 周囲のギャラリーがサイクリストだった場合。彼らは何が起こったのかを察してくれます。「ああ、やっちゃったね」と。転んだ側も、「やっちゃいました、へへへ…」くらいの感じです。ここに一種のコミュニケーションが生まれると。

 恥ずかしいのでさっさと立ち上がって走り出したいわけですが、コンクリートに肘や膝を打つので、立ちごけとはいえ相当痛い。しかし悶絶していると格好悪いので、すました表情で曲がったブラケットなどをチェックするふりをしつつ、痛みをこらえる演技が必要です。見ている側も、転んだ人の心理に追い打ちをかけるのは悪いので、紳士なら見て見ぬふりをするでしょう。こういう心理戦が展開されるのです。

プロだって落車は当然痛いもの Photo: Yuzuru SUNADA

 一方、立ちごけのギャラリーが一般人だった場合は悲惨です。サイクリストは、最先端のウェアに身を包み、自慢の脚をすっと伸ばし、ちょっと周囲の目を意識しながら信号待ちなりをしているわけですが、不意にバランスを崩してずっこけ、地面にひっくり返る。この瞬間の恥ずかしさは、言葉に尽くしがたいものがあります。しかも立ちごけ直後は大の字で地面に横たわるような「辱めスタイル」になることも少なくありません…。

 低速なのであまり心配してもらえませんし、周囲がサイクリストだった場合のような暗黙の了解はありませんので、転んだ人は痛みに耐えつつ、「この人格好つけているくせにちょっとイタイ」という視線に耐えなければいけません。

 体の痛みに、心の痛み。こんな屈辱は、人生でもそうはありません。しかしサイクリストとは、こういう痛みを経験して強くなる人々なのです。クリス・フルームだって、様々な逆境を乗り越えて、いま、まさにツール・ド・フランスでの5勝クラブ入りを目指しているのですから。

 ご質問の内容からは少しだけ脱線してしまいましたが、まずは立ちごけの哲学(?)をご理解いただきたいと思い、長々とお伝えした次第です。

 ともかく、ビンディングペダルには立ちごけのリスクがあり、立ちごけには更に大きな事故に繋がる危険性もあるので、慣れないうちは無理に使わない方が良いかもしれません。

 ビンディングペダルのステップインとリリースというのは、力ではなくて「コツ」の世界です。プロ選手でもビンディングペダルの種類を変えた直後などは慣れるまでそれなりに苦労していると思います。

 ビンディングペダルには、それぞれに固有の外し方のコツ、外れやすい方向などがありますので、まずは固定ローラー上などで繰り返し外す練習をして、ビンディングペダルのクセをみつけてください。

 基本的には、斜め上にひねるのではなくて、足の裏についてしまったガムをひねって擦り落とす様な動作で回すのがポイントです。あと、固定力は調整できますから、慣れるまでは最弱にしておくのがいいですね。コツさえつかめれば簡単に外せますよ!

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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