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門田基志の欧州XCマラソン遠征記2018<4>次なる戦いの地、イタリア・ドロミテへ 転戦の疲れを癒すのは元修道院

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 チェコで開催された1つめのXCレース「Malevil Cup」を終えた門田基志選手(チームジャイアント)とまな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)。次なる戦いの地、イタリア・ドロミテを目指します。レースの合間の移動や生活も自力でこなす2人。選手としての自己管理を行う一方で元修道院だったというホテルで宿泊を楽しむなど、ヨーロッパでのユニークな転戦生活が伝わってくるリポートです。

←<3>チェコ「Malevil Cup 2018」出走リポート

次なるステージ、イタリアのドロミテへ Photo: Motoshi KADOTA

◇         ◇

自転車4台、バイクケース4つ、スーツケース諸々を詰め込むと大きな車でも空きスペースは無い!こんな時に折り畳める「evoc」のバイクトラベルバッグは便利だ Photo: Motoshi KADOTA

 チェコのレースから一夜明け、イタリアのドロミテに向かうために朝から膨大な荷物を車に積み込む。組み立てたバイクもバイクバッグもそのまま入れようと、知恵の輪のような感覚で入れては出してを繰り返し、最良の積み方を編み出した。こういう場合、たためるバイクトラベルバッグは最高に便利だ。

 さてヨーロッパは陸続きでどこまでも車移動で行ける。が、それは体力と気力次第だ。体力も気力も前日のレースで使い果たした僕らが取った策は、移動する中間で一泊挟むこと。行けるところまで行き、宿は走りながら決めるという“行き当たりばったり”が遠征のルールだ。

途中で立ち寄ったローゼンハイムの元修道院 Photo: Motoshi KADOTA
きれいに改装されているが、ベッド付近の壁画が喋りかけて来そうで少しビビった Photo: Motoshi KADOTA

 気力も尽きてお尻の筋肉も痛いレース翌日は、名を聞いたことがあるという理由だけでローゼンハイムという町を宿泊地に決定。次はどのホテルに泊まるか? 僕の独断と、悪ノリの西山のイメージだけで即断した「サンガブリエラ」という元修道院を改築したホテルに決めた。去年は城に泊まったから今年は修道院!と、テンション上げ上げだけど体はシンドイ。

レストランでは男2人の僕らをヤケにカップル扱いしてくれた(笑) Photo: Motoshi KADOTA

 そして泊まってみて気が付いたが、日本でいうお寺の宿坊みたいなことよね? 泊まった部屋の壁の絵が喋りかけてきそうだし、レストランのスタッフも修道服を着ていて映画のようだったりで少しびっくりしたけれど、古いものが美しく残された印象的なホテルだった。

年に一度は来なければならない場所

ヨーロッパの高速道路は無料、もしくは「ヴェニエット」という高速道路通行手形のようなステッカーをフロントガラス内側に貼る Photo: Motoshi KADOTA

 翌朝、いよいよドロミテ山脈を目指す。ドイツから高速道路でオーストリアを通り抜け、イタリアに入るのだが、ここで気をつけておきたいのはオーストリアに入る前にヴィニエットという高速道路通行券を買わなければならない。シールでフロントガラスに貼り付けるシステムがユニークだ。

 いつもの定宿「Hotel condor」に到着すると、お馴染みのオーナーと美人の奥さんが出迎えてくれた。ここを利用するのは4回目。西山も3回目で、立派なリピーターだ。オーナーもMTBライダーなので色々と分かってくれて、自転車に乗る人には最高の宿だ。この日もバイク用の洗車場を玄関先に作ってくれていた(この後、牛のフンやドロ、色々なものを洗うのにお世話になった)。

ドロミテの定宿「hotel condor」 Photo: Motoshi KADOTA

 荷物を部屋に入れたら早速走るためにバイクを組む。今回、ジャイアントの「ANTHEM」はフロントをチェコ用フロント34Tで組んでいたのでドロミテ仕様の30Tに変更し、ガルデーナ峠に向けて出発。あまりにきついコースでレース的には苦手だが、自分にとっては1年に1度は来なければならない場所になった。

電子ロック付きの自転車保管庫 Photo: Motoshi KADOTA
玄関先に設けられたバイク用の洗車場 Photo: Yasuaki NISHIYAMA

 「曇りでも絶景は本物の証!」などといいながら、超曇天の中で峠に向かう途中にも多くのサイクリストとすれ違う。そして誰とでも「チャオ」と笑顔で挨拶を交わすイタリア人は本当に素晴らしい(ドイツやチェコでは挨拶し合うことが少ない気がした)。

バイクを組んで軽く足慣らしはガルデーナ峠へ Photo: Motoshi KADOTA
雷が鳴り始めた直後、超大粒の雨が降り始めた Photo: Motoshi KADOTA

 ほどなくして「ゴロゴロ…ゴゴゴ…!」と近くで雷鳴が轟いた。そうなるとあっという間に降り出すのがドロミテだ。数分後に大粒の雨が降り始めたのですぐさまホテルへとUターンしたが、降り出すと強烈に寒い! 震えながら下る峠はまるで冬のよう。気温計に目をやると、なんと一桁台の8℃を示していた(愛媛だったら真冬やんか!)。

絶景を前にトレーニングで酸欠

 そして翌朝も天気はまた雨…。降ってない午前中に、昨日の峠とは違うセラ峠に向かって上り始めると曇天で降りそうなのに、またサイクリストが多い。

カメラを持ってサイクリングもドロミテの楽しみ方の1つ Photo: Yasuaki NISHIYAMA

 カメラを背負って撮影しながら他のサイクリストに声を掛け、景色を楽しみつつ標高を徐々に上げていった。これも体を高地に慣らすために必要なことだ。

近場のガルデーナ峠でトレーニング Photo: Yasuaki NISHIYAMA

 雨が続き、いいかげん雨にウンザリしていた4日目、ついに朝から晴天! トレーニング日ということでガルデーナ峠へインターバルトレーニングで出かけた。今回出場する「HERO」(ヒーロー)というレースは4回目の参加なので、もうコースを試走する必要はない。効率良く近くの峠で走ってみると、8本ダッシュのうち驚いたことに4本目以降のパフォーマンスが劇的に落ちていく。

 後半は踏んでる感じもしないし、ハンドルを握ってる腕も千切れそうで視界も狭くなって耳も聞こえにくい感じに。高所に適応できていない体に「やばい感じやなぁ〜」と思いつつも、着いてくる西山を振り切ろうともがく! 最後までやり切ったが、本当に自転車の上に乗っかっているのがやっとで途中のベンチでうなだれてしまった。

酸欠で目眩がするほどに追い込まれて、道端にあるベンチで休憩…。雄大な景色を前に、地面しか見れない状態 Photo: Yasuaki NISHIYAMA

 こうしてトレーニング日も終わったが、毎年お願いしてたマッサージャーが今年は子供が生まれて休んでいるとのことだった。ホテルの奥さんがどうにか頼んでくれ、金曜だけは来てくれるということになったが、毎日でも受けたいくらいに僕らの体には疲労が溜まっていた。スポーツアロマのマッサージオイルを使ったセルフケアと、ストレッチポールを駆使するほか術はなかった。

 日本ではマッサージを受けたければすぐにでも受けに行ける。何か飲みたけば自販機ですぐ買える。なんでも24時間コンビニで手に入る。たしかに便利だ。しかし、それが全くないドロミテは一見不自由に見えて、その中に幸せな人間らしい生活を垣間見ることができる。

戦いに備える前日

 レース前日はマッサージを受けて、出走受付を済ませる。受付はお国柄が出て楽しい。イタリアは過去の経験からして緩い、ドイツはまあまあ厳しく、日本は“キッチキチ”だ。

受付会場には多数の国の選手が大勢集まり、他のMARATHON系レースのブースも出ている Photo: Motoshi KADOTA

 今年は例年になくすんなりライセンスコントロールが終了。ただ、なぜかエントリーフィーが倍近くになって高くなったな〜?なんて思ってたら、手渡されたバッグに「HERO」のウエアやGPS、チョコレートやらが入っていて納得! 去年まではゼッケンを手渡しされて終わりだったので、何だかイベント感が出て嬉しい。

街のメインストリートには子供用スペースとメインスポンサーのBMWが展示されていた Photo: Motoshi KADOTA

 受付を済ませ、ホテルでバイク整備を行い、過酷なドロミテの山に挑む準備をする。翌朝はホテルの朝食時間前に出発するので、それを知っているオーナーは、リクエストした食べ物を大量に用意して持って来てくれる。こんなイレギュラーな依頼にも全て対応してくれる「Hotel condor」は、本当にドロミテの我が家のようだ。

ゼッケンをつけて用意万端!名前と国旗が入るのが嬉しい。レース中はこれを見て沿道の観客が「ジャポン!」「モトシ!」と応援してくれる Photo: Motoshi KADOTA
朝ごはんで食べたいものをいうと、大量に用意してくれる。毎年だけど食べ切れません(笑) Photo: Motoshi KADOTA

 翌朝のスタートは7時20分。早く寝てレースに備える

<つづく>

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

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