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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<258>ロードレース新チャンピオンが次々と誕生! 主要国の国内選手権を総まとめ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 7月1日までに多くの国でロードレース国内選手権が開催された。その年のナンバーワンを決める、1年に1度のビッグレース。この戦いを制することによって、1年間、自国の国旗やカラーをあしらったチャンピオンジャージに袖を通してレースに出場する権利が与えられる。その栄誉にあずかった選手は誰なのか。今回は、主要国を中心に国内選手権に目を向け、各国チャンピオンを一覧としてまとめていく。

イタリア選手権ロードレースを制し、晴れのチャンピオンジャージに袖を通したエリア・ヴィヴィアーニ =2018年6月30日 ©︎Sirotti

“番狂わせ”が多発!?

 現在行われているサッカー・ワールドカップロシア大会と日程が部分的に重なることに配慮し、2018年シーズンの国内選手権は6月24日前後と7月1日前後と、UCI(国際自転車競技連合)の指示のもと各国連盟が開催時期を設定。ここまでで多くの国でロード2018年チャンピオンが決まっている。

 国内チャンピオンに輝くと、王者だけが着用できるスペシャルジャージを翌年の国内選手権まで、おおよそ1年間にわたって着用する義務が与えられる。どんなに実績や経験が豊富な選手と言えど、年に1人しか獲得できないチャンピオンジャージを手に入れることは至難の業。獲得がかなわないまま、キャリアを終える選手の方がはるかに多い。それだけ、名誉あるジャージなのである。

 国内選手権ロードレースの特徴は、当該国籍を有していれば1チームあたりの出走人数に上限がない点。UCIワールドチームの中には、自国選手をメインに編成するケースも多いが、そうしたチームがチャンピオンジャージを目指して20人近いメンバーでスタートラインにつく、といったことも起こり得るのである。

 Cyclist内で紹介されているフランス、イギリスの両国選手権のほか、主要国のチャンピオン決定戦を見ていこう。

 6月24日に開催されたレースのうち、スペインはゴルカ・イサギレ(バーレーン・メリダ)が初優勝。丘陵地帯で行われた戦いにあって、残り17kmでメイン集団からアタック。逃げていた選手をそのままパスし、独走勝利を挙げた。弟のヨン(バーレーン・メリダ)は2014年にスペインチャンピオンに輝いているが、兄もついに続くことになった。

ベルギー選手権ロードレースではイヴ・ランパールト(右)が独走勝利。フィリップ・ジルベール(左)も2位に続いた =2018年6月24日 Photo: Luc Claessen/Getty Images

 ベルギーでは、イヴ・ランパールトとフィリップ・ジルベールのクイックステップフロアーズ勢がレースを席巻。UCIワールドチーム勢を中心に人数が絞り込まれた中、2人はジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)とともにリードを広げていき、残り4kmを切ったところでランパールトがアタック。そのまま独走に持ち込み、初の同国チャンピオンとなった。

 この日は、チェコで世界王者の証・マイヨアルカンシエルを着るペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)が圧勝。ポーランドではミカル・クウィアトコウスキー(チーム スカイ)が5年ぶりのチャンピオンに。

 バーレーン・メリダ勢が上位を独占したスロベニアはマテイ・モホリッチ、ノルウェーではヴェガールステイク・ラエンゲン(UAEチーム・エミレーツ)、エリトリアではメルハウィ・クドゥス(ディメンションデータ)、リトアニアではゲディミナス・バグドナス(アージェードゥーゼール ラモンディアル)と、UCIワールドチーム勢が結果を残している。

エリア・ヴィヴィアーニ(左)はジョヴァンニ・ヴィスコンティ(右)とのマッチスプリントを制してイタリアチャンピオンに輝いた =2018年6月30日 ©︎Sirotti

 イタリアは6月30日にロードレースが行われ、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(バーレーン・メリダ)との一騎打ちを制したエリア・ヴィヴィアーニ(クイックステップフロアーズ)が新チャンピオンに就いている。

 7月1日に開催された分では、スプリント王国・ドイツでパスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)が優勝。ジョン・デゲンコルブ(トレック・セガフレード)、マキシミリアン・ヴァルシャイド(チーム サンウェブ)、アンドレ・グライペル(ロット・スーダル)らを破って価値ある勝利を挙げた。

 今年4月のリエージュ~バストーニュ~リエージュを制したボブ・ユンゲルス(クイックステップフロアーズ)は、ルクセンブルク選手権を4連覇。2位に14分近い差をつける圧巻の独走劇。スイスではベテランのスティーヴ・モラビト(グルパマ・エフデジ)、スピードマンひしめくデンマークではミケル・モルコフ(クイックステップフロアーズ)、オーストリアではルーカス・ペストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)、カザフスタンではアレクセイ・ルツェンコ(アスタナ プロチーム)が地力の差を見せつけている。

激戦のドイツを制したのはパスカル・アッカーマン =2018年7月1日 Photo: Hennes Roth/BettiniPhoto
ルクセンブルク選手権ロードレースで圧勝したボブ・ユンゲルス =2018年7月1日 © Cyclingpix by Serg

 “ジャイアントキリング”ならぬ大番狂わせが起こったのは、同日開催のオランダ。シクロクロスの同国ならびにヨーロッパチャンピオンであるマチュー・ファンデルプール(コレンドン・シルクス)が約15人の争いを制してエリートカテゴリーでは初となるロード国内選手権制覇。

 シクロクロスでは2015年にマイヨアルカンシエルを獲得するなど、23歳にして第一人者の地位を築くファンデルプールだが、ロードはシクロクロスの“シーズンオフ”にあたる春から夏にかけて数レース走るのみ。とはいえ、2013年にはロード世界選手権のジュニアカテゴリーで優勝するなど、万能型選手としてロードでも非凡なところを見せてきた。将来的なロード転向を見据えていることは本人も認めているが、この勝利に大きな自信を得たことだろう。

シクロクロス界の若きスター、マチュー・ファンデルプールがロードでもオランダチャンピオンに。大激戦を制した =2018年7月1日 Photo: Photopress.be

 ファンデルプールに限らず、今年は各地で番狂わせが発生。イギリスのコナー・スウィフト(マディソン・ジェネシス)のほか、アメリカでは21歳のジョニー・ブラウン(ヘーゲンズバーマン・アクセオン)がUCIワールドチーム、同プロコンチネンタルチームの選手たちを撃破するなど、新星も現れている。

 世界的には無名のライダーが、普段はトップシーンで活躍する選手を打ち破ることもあるのが、国内選手権の魅力であり、戦いの難しさでもある。

個人TTは実力者が順当に勝ち名乗り

 個々の走力が試される個人タイムトライアルは、実力者が順当に勝利を収めた印象だ。

 6月21日に行われたベルギーでは、ヴィクトール・カンペナールツ(ロット・スーダル)が2年ぶり、ノルウェーではエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ディメンションデータ)が4年連続10回目の優勝。アメリカでは、ジョーイ・ロスコフ(BMCレーシングチーム)が2連覇。スペインでは翌22日に行われ、ヨナタン・カストロビエホ(チーム スカイ)がこちらも2連覇を達成している。

フランス選手権個人タイムトライアルは、ピエール・ラトゥール(中央)が2連覇 =2018年6月28日 Photo:Frédéric Machabert / www.ypmedias.com

 多くの国が6月27~29日に競技を行っており、オランダではディラン・ファンバーレ(チーム スカイ)、スイスではシュテファン・キュング(BMCレーシングチーム)、フランスではピエール・ラトゥール(アージェードゥーゼール ラモンディアル)、イギリスではゲラント・トーマス(チーム スカイ)といったおなじみの顔がチャンピオンジャージを獲得。ドイツではトニー・マルティン(カチューシャ・アルペシン)が貫録勝ちしている。

 個人タイムトライアルのチャンピオンジャージは、着用の場が限定されるだけに、貴重な機会にその姿を目にしておきたいところ。まもなく開幕のツール・ド・フランスが初お目見えとなる選手も多くなりそうだ。

主要国国内選手権者一覧

 表記はロードレース/個人タイムトライアルの順

【スペイン】 ゴルカ・イサギレ(バーレーン・メリダ)/ヨナタン・カストロビエホ(チーム スカイ)
【ベルギー】 イヴ・ランパールト(クイックステップフロアーズ)/ヴィクトール・カンペナールツ(ロット・スーダル)
【イタリア】 ファビオ・アル(アスタナ プロチーム)/未実施
【フランス】 アントニー・ルー(グルパマ・エフデジ)/ピエール・ラトゥール(アージェードゥーゼール ラモンディアル)
【オランダ】 マチュー・ファンデルプール(コレンドン・シルクス)/ディラン・ファンバーレ(チーム スカイ)
【ノルウェー】 ヴェガールステイク・ラエンゲン(UAEチーム・エミレーツ)/エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ディメンションデータ)
【ドイツ】 パスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)/トニー・マルティン(カチューシャ・アルペシン)
【イギリス】 コナー・スウィフト(マディソン・ジェネシス)/ゲラント・トーマス(チーム スカイ)
【ポーランド】 ミカル・クウィアトコウスキー(チーム スカイ)/マチェイ・ボドナル(ボーラ・ハンスグローエ)
【アメリカ】 ジョニー・ブラウン(ヘーゲンズバーマン・アクセオン)/ジョーイ・ロスコフ(BMCレーシングチーム)
【ポルトガル】 ドミンゴス・ゴンカルベス(レディオポプラー・ボアヴィスタ)/ドミンゴス・ゴンカルベス(レディオポプラー・ボアヴィスタ)
【スロバキア】 ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)/マレク・チャネツキー(デュクラ・バンスカ・ビストリカ)
【スロベニア】マテイ・モホリッチ(バーレーン・メリダ)/ヤン・トラトニク(CCCスプランディ・ポルコヴィチェ)
【ウクライナ】オレクサンドル・ポリヴォダ/アンドリー・グリヴコ(アスタナ プロチーム)
【チェコ】 ヨゼフ・チェルニー(エルコフ・アーサー)/ヨゼフ・チェルニー(エルコフ・アーサー)
【スイス】 スティーヴ・モラビト(グルパマ・エフデジ)/シュテファン・キュング(BMCレーシングチーム)
【デンマーク】 ミケル・モルコフ(クイックステップフロアーズ)/マルティン・トフト(BHS・アルメボルボーンホルム)
【ロシア】 イヴァン・ロヴニー(ガズプロム・ルスヴェロ)/アルテム・オヴェチキン(トレンガヌサイクリングチーム)
【アイルランド】 コナー・ダン(アクアブルースポート)/ライアン・マレン(トレック・セガフレード)
【オーストリア】 ルーカス・ペストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)/ゲオルク・プライドラー(グルパマ・エフデジ)
【ルクセンブルク】 ボブ・ユンゲルス(クイックステップフロアーズ)/ボブ・ユンゲルス(クイックステップフロアーズ)
【カザフスタン】アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ プロチーム)/ダニイル・フォミニフ(アスタナ プロチーム)
【カナダ】アントワーヌ・デュシェーヌ(グルパマ・エフデジ)/スヴェイン・タフト(ミッチェルトン・スコット)
【スウェーデン】ルーカス・エリクソン/トビアス・ルドヴィグソン(グルパマ・エフデジ)
【リトアニア】 ゲディミナス・バグドナス(アージェードゥーゼール ラモンディアル)/ゲディミナス・バグドナス(アージェードゥーゼール ラモンディアル)
【エリトリア】メルハウィ・クドゥス(ディメンションデータ)/ダニエル・テクレハイマノ(コフィディス ソリュシオンクレディ)
【ベラルーシ】スタニスラウ・バスコウ(ミンスク サイクリングクラブ)/ヴァシル・キリエンカ(チーム スカイ)
【エストニア】ミッケル・ライム(イスラエルサイクリングアカデミー)/タネル・カンゲルト(アスタナ プロチーム)
【ラトビア】クリスツ・ネイランズ(イスラエルサイクリングアカデミー)/トームス・スクインシュ(トレック・セガフレード)
【日本】 山本元喜(キナンサイクリングチーム)/窪木一茂(チーム ブリヂストンサイクリング)

今週の爆走ライダー−クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 フランスが誇る伝統のチームが自信をもって送り出す、目下売り出し中の25歳。7月2日にチームが発表したツール・ド・フランスのメンバーにも堂々名を連ね、4年連続の出場が決まった。

気鋭のスプリンター、クリストフ・ラポルト。ヘント〜ウェヴェルヘムでは4位に食い込み一躍注目を集めた =2018年3月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのツールでは、スプリンターとして台風の目となるかもしれない。今シーズンはすでに6勝。この春は北のクラシックでも躍進し、ヘント~ウェヴェルヘムでは4位入賞。名立たるスプリンターにも引けを取らない、フィニッシュ前でのスピードに注目が集まっている。

 これまではチームメートのナセル・ブアニ(フランス)の発射台を務めてきた。ブアニの行くところには必ずラポルトが同行するほどの信頼を得てきたが、チーム首脳陣の評価はいつしか逆転。体調が上がらないブアニに対し、安定して好成績を残しているラポルトを選ぶのは自然なことだろう。ブアニのためのリードアウト要員を減らしてまで、ラポルトが勝負しやすい環境づくりに努めたあたりに、今年のチーム姿勢が表れている。

 このほど、2021年までの契約延長に合意。「勝つための後押しを惜しまないチームの在り方に心から感謝している」とチーム愛を強調。満を持して臨むツールに集中できる状況が整った。ライバルひしめくフランスのスプリンター争いを飛び越えて、世界への扉を開く可能性さえある彼の勢いはこのツールの見どころとして押さえておいてもよさそうだ。

このほどチームと2021年までの契約延長に合意したクリストフ・ラポルト。ワールドクラスのスプリンターとなるか、俄然楽しみな存在だ =バロワーズ・ベルギー・ツアー2018第3ステージ、2018年5月25日 Photo: Baloise Belgium Tour
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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