ツール・ド・フランス2018直前 全チームプレビュー<5>巨大戦力はステージ何勝できるか? クイックステップ、アスタナ、バーレーン・メリダの戦力をチェック

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 7月7日に開幕するツール・ド・フランスの出場全チームプレビューの第5弾はクイックステップフロアーズ、アスタナプロチーム、バーレーン・メリダを特集。各チームの狙いがわかりやすく見えるように、得意シーン4項目とチーム力3項目について★5段階で評価した。

今回プレビューするクイックステップフロアーズ(中央)、アスタナプロチーム(左)、バーレーン・メリダ(右) Photo: Yuzuru SUNADA

誰でも勝てるメンバーが揃った巨大戦力

クイックステップフロアーズ出場メンバー

フェルナンド・ガビリア(コロンビア)
ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
フィリップ・ジルベール(ベルギー)
イヴ・ランパールト(ベルギー)
ニキ・テルプストラ(オランダ)
マクリミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)
ティム・デクレルク(ベルギー)

■得意シーン

集団スプリント :★★★★★
山頂フィニッシュ:★★★★☆
ロングエスケープ:★★★★★
石畳・未舗装路 :★★★★★

 各国のナショナル選手権が終わった7月1日時点で、クイックステップのシーズン勝利数は47(※ハンマーリンブルフ総合優勝を含む)となった。2009年シーズンに年間83勝をあげたチームコロンビア・HTCは同時期で46勝だったため、過去10年では最多となるペースで勝利を量産している。

 ツール出場メンバーの勝利数は、ガビリア7勝、アラフィリップ5勝、ユンゲルス3勝、テルプストラ3勝、ランパールト2勝、リケーゼ1勝の計21勝だ。今季未勝利のジルベールもいるため、本当に誰でも勝ちが狙える布陣となっている。

エーススプリンターのガビリアは今季7勝をあげ、ツール・ド・フランスのマイヨヴェール候補にあがっている Photo: Yuzuru SUNADA

 エーススプリンターはガビリア、総合エースはユンゲルスが務める。ガビリアは前哨戦のツール・ド・スイスでは未勝利に終わったものの、今大会のマイヨヴェールの有力候補だ。ユンゲルスはリエージュ~バストーニュ~リエージュ、ルクセンブルク国内選手権でどちらも終盤独走に持ち込んで勝利している。

 テルプストラはE3ハーレルベーケ、ツール・デ・フランドルともに独走逃げ切り勝利、ランパールトはベルギー国内選手権で独走逃げ切り勝利を飾っている。ジルベールは昨年のツール・デ・フランドルで55km独走逃げ切り勝利を飾っており、逃げのスペシャリスト揃いである。

 さらに2014年パリ〜ルーベ優勝のテルプストラを筆頭に、ジルベール、ランパールト、デクレルクと石畳のスペシャリストがずらりと揃っているため、ステージ優勝を狙うチームとしての戦力は全チームと比較しても抜きん出ているといえよう。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★★★
山岳アシスト  :★★★☆☆
タイムトライアル:★★★★★

総合エースを担うボブ・ユンゲルスは、モニュメントの一つであるリエージュ~バストーニュ~リエージュで優勝した Photo: Yuzuru SUNADA

 ガビリアのリードアウトはリケーゼが務める。トレインには、アラフィリップ、ランパールト、ジルベール、テルプストラ、デクレルクも加わるため、集団コントロール力は随一だ。余裕があればユンゲルスもスプリントトレインの一員として加わることもあるだろう。

 一方で総合エースのユンゲルスを支える山岳アシストは、アラフィリップのみだ。そのアラフィリップも上りスプリントや、短い上りを含むコースではステージ優勝を狙える存在のため、ユンゲルスは実質的には一人で何とかしなければならない状況が多くなると思われる。

 ジルベール、ガビリア、ランパールト、リケーゼ、デクレルクが出場したツール・ド・スイスのチームTTではステージ3位で、ここにルクセンブルクTTチャンピオンのユンゲルス、2017年パリ〜ニース個人TTステージ優勝のアラフィリップ、テルプストラが加わるため、チームTT力はかなり高い。

■総評

 やはりシーズン最多勝チームの戦力はずば抜けている。

 元々総合に特化したチームではないため、総合が弱点といえば弱点だが、ジロでは2016・2017年と2年連続して新人賞を獲得したユンゲルスがいるため、他のチームからすれば十分強みだといえる。

 そのなかでもツール初出場となるガビリア、昨年は怪我のため欠場して2年ぶりの出場となるアラフィリップがステージ優勝を量産できるか注目だ。

穴のないバランスの良い布陣で総合優勝を狙う

アスタナプロチーム出場メンバー

ヤコブ・フルサング(デンマーク)
マグナス・コルトニールセン(デンマーク)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク)
ジェスパー・ハンセン(デンマーク)
オマール・フライレ(スペイン)
ルイスレオン・サンチェス(スペイン)
タネル・カンゲルト(エストニア)
ドミトリー・グルズジェフ(カザフスタン)

■得意シーン

集団スプリント :★★★★☆
山頂フィニッシュ:★★★★★
ロングエスケープ:★★★★★
石畳・未舗装路 :★★★★☆

 エーススプリンターはコルトニールセンが務める。ピュアスプリンターというよりは、パンチャー的要素もあわせ持った脚質なので、上りスプリントやピュアスプリンターが生き残れないような山岳ステージでの集団スプリントなどに勝機がある。

 昨年大会を落車骨折リタイアで去ったフルサングが再び総合優勝を狙う。課題の個人TTに大きく改善が見られ、ツール・ド・スイスでは総合2位と好調ぶりをアピール。ツール・ド・ロマンディ第4ステージでは独走逃げ切り勝利を飾っており、ここ一番のアタックポイントの見極めが非常にうまい選手だ。

昨年も前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合優勝を飾り、ツールではマイヨジョーヌ候補にあがっていたヤコブ・フルサング Photo: Yuzuru SUNADA

 今季2勝を飾っているフライレ、同じく2勝のサンチェスは、逃げを得意とする選手だ。エースのアシストだけでなく前待ちやステージ狙いなど様々な役割を担うことになるだろう。

 石畳では北のクラシックで実績のあるヴァルグレン、グルズジェフを筆頭に、フルサング自身も2014年ツールに登場した石畳のステージで区間2位となっており、石畳への適性は高い。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★★☆
山岳アシスト  :★★★★☆
タイムトライアル:★★★★☆

独走力・登坂力に優れたオールラウンダーであるルイスレオン・サンチェス Photo: Yuzuru SUNADA

 ヴァルグレン、グルズジェフがルーラーとして平坦ステージでのエース護衛にあたるだろう。サンチェス、カンゲルト、フライレもけん引力のある選手なので、平坦アシストの陣容は厚いといえる。

 しかし、コルトニールセンの発射台に適した選手が見当たらず、集団スプリントに参加する場合は単騎でライバルチームのトレインにタダ乗りすることが多くなりそうだ。

 山岳アシストには、ハンセン、フライレ、サンチェス、カンゲルトが適任だ。特にサンチェスは、今シーズンのステージレースで好成績をあげており、例年よりも登坂力が向上している印象を受ける。オールラウンドに活躍できるアシストとして、フルサングを強力にサポートすることだろう。

 エストニアTTチャンピオンに輝いたカンゲルト、過去4回スペインTTチャンピオンになったサンチェス、過去3回カザフスタンTTチャンピオンになったグルズジェフ、過去2回デンマークTTチャンピオンになったフルサングとTTに強い選手が揃っている。特にフルサングはツール・ド・スイス最終ステージとなった個人TTで総合6位から一気に2位に浮上する走りを見せた。

■総評

 フルサングの総合がチームの最優先目標であり、コルトニールセンのスプリントやフライレやサンチェスによる逃げ切りはあくまでオプションといったところか。

 平坦・山岳・TTとバランス良く強いメンバーを揃えているため、トラブルさえ無ければ総合上位に食い込む戦いができると思われる。

 今シーズン前半のアスタナは、チーム力の高さと連携の良さが際立っていた。特にヴァルグレンが勝利したアムステルゴールドレースでは、フルサングがアシストとして、素晴らしい働きを見せていた。フルサング自身もアムステルゴールドレースでは優勝候補の一角だったにもかかわらず、エース格の選手でも目的達成のためにはアシスト的な働きをいとわないことがチームの価値観として浸透しているのだろう。その点がアスタナの最も重要な強みかもしれない。

ニバリのためにエース級をずらりと揃えた布陣

バーレーン・メリダ出場メンバー

ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
ヨン・イサギレ(スペイン)
ゴルカ・イサギレ(スペイン)
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)
ソニー・コルブレッリ(イタリア)
フランコ・ペリツォッティ(イタリア)
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)
クリティアン・コレン(スロベニア)

■得意シーン

集団スプリント :★★★★☆
山頂フィニッシュ:★★★★★
ロングエスケープ:★★★★☆
石畳・未舗装路 :★★★★☆

 コルブレッリがスプリントを狙える力を持っているが、このチームはニバリの総合が何よりも優先される目標だろう。

 そのニバリは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合24位に沈んだ。とはいえ過去のグランツールでは最終週にコンディションを上げて、逆転優勝を飾ることもあり、ツール本戦から1カ月も前のレースでのコンディションが悪かろうと、本人もチームも全く問題視していないだろう。

スプリンター向けのクラシックと呼ばれるミラノ〜サンレモで、独走勝利を飾ったヴィンチェンツォ・ニバリ Photo: Yuzuru SUNADA

 ゴルカ・イサギレは最近はステージレーサーとしても頭角を現してきたが、2017年ジロ・デ・イタリア第8ステージでは逃げ切りを決めて、激坂フィニッシュを制してステージ優勝を飾ったり、今年のスペイン選手権で優勝するなどパンチャー的な脚質を持つ選手だ。アシストだけでなく、アタッカーとして遊撃隊のような役割を果たすこともできるだろう。

 パリ〜ルーベへの出場経験が豊富なハウッスラー、コレン、そして北のクラシックで好成績を残しているコルブレッリが石畳ステージでのチームを守る。さらにニバリ自身が総合優勝を飾った2014年ツールの石畳ステージで3位に入っているため、今年も石畳ステージでむしろ仕掛けることもあるかもしれない。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★☆☆
山岳アシスト  :★★★★★
タイムトライアル:★★★☆☆

 スプリンターのコルブレッリを除くと、平坦アシストと呼べる選手がハウッスラーとコレンだけとなり、手薄感が否めない。コルブレッリをリードアウトすることも難しいため、集団スプリントに参加する際は、コルブレッリが単独で挑む必要がありそうだ。

互いに単独エースとして参戦しても総合上位が狙えるであろうイサギレ兄弟。左が弟のヨンで、右が兄のゴルカ Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で山岳アシストは凄まじい充実ぶりを見せている。ヨン&ゴルカのイサギレ兄弟、ジロではエースとして出場して総合5位だったポッツォヴィーヴォ、そして40歳になっても第一線級の山岳アシストとして強烈なけん引を見せているペリツォッティと、とてつもなく豪華なメンバーを揃えてきた。ジロから連戦となるポッツォヴィーヴォの疲労が気になるところではあるが、山岳での支配力は全チーム中トップクラスだといえよう。

 クリテリウム・ドゥ・ドーフィネのチームTTでは連携の乱れが露呈してステージ16位に沈んだ。ツール・ド・スイスのチームTTではステージ7位だった。決してTTが苦手な選手が多いというわけではないが、やや低調な結果が続いていることが懸念材料だ。

■総評

 ニバリの総合狙いに特化したチーム編成になっている。特に山岳アシストの充実ぶりには目を見張るものがある。ニバリはダウンヒルを得意とする選手であり、ヨン・イサギレも世界屈指のダウンヒラーである。ダウンヒルで勝負を仕掛けるために豊富な山岳アシストを使ってお膳立てをするような展開が期待できる。

 平坦アシストが少ないが、ニバリのコンディションが3週目に最高潮を迎えることを見越せば、大会前半にマイヨジョーヌをキープするような展開にはなりにくいだろう。そのため、平坦アシストが少なくてもエースの護衛には事欠かないという判断かもしれない。

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