ツール・ド・フランス2018直前 注目選手プレビュートラック競技で培ったパワーとテクニック 今季7勝のガビリアのスプリントを分析

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 7月7日に開幕するツール・ド・フランスに出場する注目選手特集として、今回はシーズン7勝をあげている好調フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)の走りを分析。強さのルーツ、強力アシストの存在、そして長所だけでなく弱点についても解説したいと思う。

23歳ながら通算32勝を誇るフェルナンド・ガビリア。写真は2017年ジロ・デ・イタリア第13ステージにて Photo: Yuzuru SUNADA

トラック世界選手権2連覇

 ガビリアのプロレーサーとしてのキャリアはトラック競技から始まっている。

 2012年UCIジュニアトラック世界選手権のオムニアムとマディソンで優勝し、さらに2015年シーズンではツール・ド・サンルイス第1、3ステージでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を倒してステージ優勝を飾った。そして同年2月のUCIトラック世界選手権エリートオムニアムで世界王者となったのだ。

2016年、ロンドンで開催されたトラック世界選手権のエリートオムニアムで優勝したフェルナンド・ガビリア Photo : Yuzuru SUNADA

 オムニアムはスクラッチ(15km走って着順を争う)、個人パーシュート(実質的には4kmのタイムトライアル)、エリミネーション(周回ごとに最下位の選手が脱落)、1kmタイムトライアル、フライングラップ(2〜3周の助走の後、最後の1周のタイムを争う)、ポイントレース(40km走り、規定周回ごとに設定されたポイント数で争う)の6競技の合計ポイントで争われるため、短距離・中距離どちらの能力も必要となる。

(※現在のオムニアムはルール改正があり、スクラッチ・テンポレース・エリミネーション・ポイントレースの4種目で争われる)

トラック競技で培ったパワー、バランス感覚が、ガビリアのスプリントに存分に生かされている Photo: Yuzuru SUNADA

 ガビリアは全ての競技でそつなく上位に食い込みポイントを稼ぎ、弱冠20歳で世界チャンピオンとなり、翌年もオムニアム連覇を果たした。

 この短距離・中距離に幅広く対応できるパワーと、狭い空間で抜きつ抜かれつの接近戦を繰り広げるトラック競技で培ったテクニックが、今のガビリアのスプリントに大いに生かされている。

 例をあげると、2016年パリ〜トゥールでは、ラスト500mでスプリントを仕掛けて、そのまま集団を振り切って勝利を飾るという圧巻のロングスプリントを披露した。

 一方で2017年ジロ・デ・イタリア第13ステージでは、あわやコース端のフェンスに接触しかねないギリギリのライン取りでスプリントを仕掛けてステージ優勝を飾る一幕を見られた。

 またVelon社が公開する「2017年シーズン、最もパワフルなスプリント」ランキングでは、ペテル・サガン(スロバキア)に次ぐ2位となった。

 このように、ガビリアはパワーとテクニックに優れたスプリンターなのだ。

ガビリアの好成績に欠かせない相棒

 今シーズン、ガビリアが集団スプリントに絡んだ際のステージ成績と状況を振り返ってみたい。

■ブエルタ・サンフアン第1ステージ

 マクシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)のリードアウトにより、先頭でスプリント開始してステージ優勝。

■コロンビア・オロ・イ・パス第1ステージ

 リケーゼのリードアウトにより、先頭でスプリント開始してステージ優勝。

■コロンビア・オロ・イ・パス第2ステージ

 リケーゼのリードアウトにより、先頭でスプリント開始してステージ優勝。

■コロンビア・オロ・イ・パス第3ステージ

 リケーゼのリードアウトにより、先頭でスプリント開始してステージ優勝。

■ティレーノ〜アドリアティコ第2ステージ

 リケーゼは遅れてしまいリードアウトに参加できず。ガビリアは位置取りで埋もれてしまい、前に出れずステージ7位。

■ツアー・オブ・カリフォルニア第1ステージ

 リケーゼのリードアウトにより、先頭でスプリント開始してステージ優勝。

■ツアー・オブ・カリフォルニア第5ステージ

 リケーゼのリードアウトにより、先頭でスプリント開始してステージ優勝。

■ツアー・オブ・カリフォルニア第7ステージ

ツアー・オブ・カリフォルニア第7ステージでは、マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、チームサンウェブ)の猛烈な追い上げを受け、ハンドル投げの差でわずかにガビリアが先着した Photo : Yuzuru SUNADA

 リケーゼのリードアウトにより、先頭でスプリント開始してステージ優勝。ただし、早めに仕掛けたためか、写真判定により勝利が決まるほどわずかな差だった。ハンドル投げの差でガビリアがほんのわずかに先着した。

■ツール・ド・スイス第2ステージ

 リケーゼのリードアウトにより、先頭でスプリント開始したものの、付き位置にいたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)にかわされてステージ2位。

■ツール・ド・スイス第3ステージ

ガビリアはロングスプリントを仕掛けたが、同じくロングスプリントを仕掛けたソニー・コルブレッリがわずかに先着 Photo: Yuzuru SUNADA

 アップダウンの激しいステージで、リケーゼは終盤に遅れていたためリードアウトに参加できず。残り250m付近からロングスプリントを仕掛けるも、逆サイドで同じくロングスプリントを仕掛けたソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が先着し、ステージ2位。

■ツール・ド・スイス第8ステージ

 リケーゼのリードアウトにより、先頭でスプリント開始するも、アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ)の追い上げを許してステージ2位。フィニッシュ後は悔しさのあまり、路上に座り込んでしまっていた。

 今シーズンあげた7勝全てにおいて、リケーゼのリードアウトにより、ガビリアが先頭でスプリントを開始していることがわかる。

いまや世界ナンバーワンリードアウトといっても過言ではないマクシミリアーノ・リケーゼ Photo: Yuzuru SUNADA

 さらにリケーゼが集団に生き残っている場合、9回中9回とも先頭でガビリアを解き放っている。リケーゼはまさに世界最高のリードアウトマンにして、ガビリアにとって欠かすことのできない相棒なのだ。

 またリケーゼがリードアウトに参加できなかった時、ガビリアは2戦0勝だ。

 ガビリアの才能と、リケーゼのリードアウト技術がドンピシャで組み合わさった結果、抜群のコンビネーションを発揮して勝利を量産しているのだ。

 カヴェンディッシュとマーク・レンショー(オーストラリア)や、マルセル・キッテル(ドイツ)とファビオ・サバティーニ(イタリア)のように黄金タッグといえる活躍を見せている。

ガビリアは落車が多く、まだ粗さが目立つ

 しかし、ガビリアのスプリントにも穴がないわけではない。

 一つはやや早めに仕掛ける傾向にあり、フィニッシュ間際にライバルスプリンターの追い上げを許しがちなことだ。

 追い上げられてもパワーで押し切ることができれば問題ないが、スイス第2ステージのサガン、第8ステージのデマールのようにガビリアより体格が良く、よりパワーを持ったスプリンターにまくられる危険をはらんでいる。

 ツールに参戦する選手では、サガン、デマールだけでなく、付き位置からの飛び出しを得意とするディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNL・ユンボ)や、後方からのスプリントが得意なキッテルやカヴェンディッシュなど要注意だろう。

リケーゼのリードアウトは完璧だったが、デマールの加速が素晴らしく、ガビリアは力負けを喫した Photo : Yuzuru SUNADA

 もう一つの弱点は、落車が多いことだ。特に前を走る選手の後輪に自分の自転車の前輪が触れて落車する、いわゆる「ハスる」ことが多い。

 2016年ミラノ〜サンレモでは、スプリントに向けた位置取り争いのなかでハスって落車。あまりのショックに涙を流しながら、チームメイトに付き添われたままフィニッシュした。2017年パリ〜トゥールではフィニッシュまで20km地点で、雨に濡れたコーナーでスリップして単独落車して勝負に絡めなかった。

 今年のブエルタ・サンフアン第4ステージではフィニッシュまで残り50km地点でハスって落車してリタイアを余儀なくされた。ティレーノ~アドリアティコ第6ステージではフィニッシュまで残り7km地点でまたもやハスって落車し、左手を骨折してしまい春のクラシックを欠場する始末だった。

 このように勝負どころで集中を欠いてしまうことが多い点が玉にキズである。

 型にはまったときは誰にも手を付けられないほどの爆発力を発揮する一方で、早めに仕掛けすぎてライバルの追い上げを許したり、負けて涙を流して悔しがったり、集中力を欠いて落車したりと、粗さも目立つ選手なのだ。

 だが、その粗さこそがガビリアの魅力ではないだろうか。まだ23歳であり、これからもっと多くの経験を積むことで、より完成されたスプリンターへと成長していくことだろう。

 今年のツール・ド・フランスはガビリアが偉大なトップスリンターへの足跡を残す大会となるかもしれない。

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