ツール・ド・フランス2018直前 全チームプレビュー<3>トリプルエースは機能するのか? BMC、モビスター、EFドラパックの戦力をチェック

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 7月7日に開幕するツール・ド・フランスの出場全チームプレビューの第3弾はBMCレーシングチーム、モビスター チーム、EFエデュケーションファースト・ドラパックを特集。各チームの狙いがわかりやすく見えるように、得意シーン4項目とチーム力3項目について★5段階で評価した。

今回プレビューするBMCレーシングチーム(中央)、モビスター・チーム(左)、EFエデュケーションファースト・ドラパック(右) Photo: Yuzuru SUNADA

最高の戦力を整え、ポート悲願のマイヨジョーヌを狙う

BMCレーシングチーム出場メンバー

リッチー・ポート(オーストラリア)
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)
グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド)
サイモン・ゲランス(オーストラリア)
シュテファン・キュング(スイス)
ミヒャエル・シェア(スイス)

■得意シーン

集団スプリント :★★★☆☆
山頂フィニッシュ:★★★★★
ロングエスケープ:★★★☆☆
石畳・未舗装路 :★★★★★

 ヴァンアーヴェルマート、ベヴィンがスプリント力の高い選手ではあるものの、2人がステージ勝利を狙って集団スプリントに挑む機会はほとんどないだろう。

 このチームの主役はなんといってもポートだ。ポートが総合優勝が最優先目標となる。昨年大会は雨で濡れたダウンヒルで落車リタイアとなあった。後に「調子が良かっただけに本当に残念」と悔しさを語っていた。今シーズン序盤はツアー・ダウンアンダーでステージ1勝したもののヨーロッパでのレースでは低調な走りが見られていた。しかし、前哨戦のツール・ド・スイスでは見事に総合優勝を飾り、ツールに向けた仕上がりは上々の様子だ。

ツアー・ダウンアンダー第5ステージ、ウィランガヒルの上りで5年連続ステージ優勝を飾ったリッチー・ポート Photo: Yuzuru SUNADA

 ヴァンアーヴェルマートはポートのアシストを最優先としながらも、自分に合ったステージでは勝利を狙っていく。となると、2017年パリ〜ルーベ覇者のヴァンアーヴェルマートにとって、石畳の第9ステージを狙ってくるかもしれない。

 石畳区間でのポートの護衛は、ヴァンアーヴェルマートだけでなく、キュングとシェアの身長190cmオーバースイス人コンビが手厚くサポートできるだろう。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★★★
山岳アシスト  :★★★★☆
タイムトライアル:★★★★★

 平坦アシストとしてはヴァンアーヴェルマート、ベヴィン、キュング、シェアら超強力なルーラーが揃っており、リーダージャージを確保した後の集団コントロールも安心して任せられる陣容だ。

2017年パリ〜ルーベで勝利したグレッグ・ヴァンアーヴェルマート Photo : Yuzuru SUNADA

 山岳アシストにはヴァンガーデレン、カルーゾを起用。ヴァンガーデレンはツアー・オブ・カリフォルニアで総合2位に入るなど、今シーズンは好調ぶりが目立つ。カルーゾはクリテリウム・デュ・ドーフィネ総合5位、昨年のツールでも総合11位と総合上位を狙える実力者だ。

 さらにヴァンアーヴェルマートとゲランスも高い登坂力を持つ選手であるため、山岳の上り口で集団を絞り込むアシストや、序盤からカテゴリー山岳が続くような難関ステージでの集団コントロールなど重要な役割を果たすことになるだろう。

 そしてなんといっても、BMCレーシング最大の強みがチームTTだ。ポート、ヴァンガーデレン、ヴァンアーヴェルマート、ゲランス、キュング、シェアが出場したツール・ド・スイス第1ステージのチームTTでは圧巻のスピードでステージ優勝を飾った。ツールではTTスペシャリストとして実力を伸ばしているベヴィンが加わるため、チームTT力は全チームナンバーワンといっても過言ではないだろう。

■総評

 BMCレーシングの戦略は、チームTTでアドバンテージを稼ぎ出し、山岳ステージではポート自身の攻撃力を活かしてレース展開していくものである。

 ポートの最大の武器は、なんといってもダンシングを多用するヒルクライムにある。ツール・ド・スイスでもその強烈なヒルクライムの片鱗を見せており、ツールの厳しい山岳ステージでもポートのアタックが期待できる。アグレッシブにタイムを稼ぐスタイルで総合優勝を狙ってくるだろう。

 ただし、ポートはダウンヒルを苦手としている。下ってフィニッシュするようなコースレイアウトも多いため、ポート単独だとライバルから遅れを喫してしまう恐れがあるため、ヴァンガーデレンやカルーゾの働きが鍵を握るかもしれない。

トリプルエースが機能するかどうかが全て

モビスター チーム出場メンバー

ナイロ・キンタナ(コロンビア)
ミケル・ランダ(スペイン)
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
マルク・ソレル(スペイン)
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
イマノル・エルビティ(スペイン)
ホセ・ロハス(スペイン)
アンドレイ・アマドール(コスタリカ)

■得意シーン

集団スプリント :★★☆☆☆
山頂フィニッシュ:★★★★★
ロングエスケープ:★★★★☆
石畳・未舗装路 :★★★☆☆

 キンタナ、ランダ、バルベルデと、いずれも総合優勝を狙えるようなトリプルエース戦略に注目が集まるモビスター。総合に特化したチーム編成となっており、かつてはスプリンターとして活躍したロハス、ベンナーティはルーラー的な役割として起用されると思われる。

 トリプルエース戦略は、誰が総合優勝を狙うということを決めずに、お互いに連携しながらライバルチームに攻撃していくスタイルをとるとのこと。例えば、上り区間で最初にキンタナが仕掛け、ライバルがチェックに入って落ち着いたところでカウンターでランダが飛び出す。ランダを追いかけた選手をバルベルデがチェックに入る、というような連動した波状攻撃を見せることができれば、ライバルチームにとって非常に脅威である。

ツール・ド・スイス第7ステージ、終盤に独走に持ち込んだナイロ・キンタナがステージ優勝を飾った Photo: Yuzuru SUNADA

 石畳では2016年パリ〜ルーベ9位のエルビティがエースたちを護衛する。バルベルデ自身も石畳をそつなく走る力を持っており、小柄なキンタナとランダを護衛することになるだろう。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★★☆
山岳アシスト  :★★★★★
タイムトライアル:★★★☆☆

 ベンナーティ、ロハス、エルビティ、アマドールはルーラー的な脚質を持っており、集団コントロール力は十分といえそうだ。

ティレーノ~アドリアティコ第4ステージで勝利したミケル・ランダ Photo: Yuzuru SUNADA

 パリ〜ニースで総合優勝したソレルが山岳アシストに回る公算が高い。ソレル自身もグランツールで総合トップ10を狙えるような実力者であるため、山岳での強烈なけん引が期待できる。またアマドールも登坂力が高くオールラウンドに活躍できる選手で、山岳ステージでの集団コントロール要員として重宝されるだろう。

 キンタナ、ランダ、アマドール、ベンナーティ、ロハスが出場したツール・ド・スイスのチームTTではステージ6位だった。スイスのメンバーからはTTスペシャリストのネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)が抜けて、TTを得意とするソレルとバルベルデが加わるため、なかなか良いメンバーが揃っているといえそうだ。

■総評

 チームTTをうまく乗り切ったとしても、肝心のキンタナとランダは個人TTで大きくタイムを失うことが予想される。そのため山岳ステージでいかにタイムを稼ぎ出すかが重要となる。だからこそ、トリプルエースという奇策を用いて山岳ステージでの攻撃力を高める戦略を採用したのだろう。

 トリプルエースが本当に機能すれば、総合優勝の可能性はぐっと高まることだろう。しかし、マイヨジョーヌになることができるのは一人だけだ。キンタナ、ランダ、バルベルデがどれだけ素晴らしい連携を見せたとしても、自分がマイヨジョーヌになりたい気持ちを抑えることは難しいかもしれない。

 総合優勝の可能性が近づいた時こそ、トリプルエースの真価が問われる。

ウランに全てを懸けるチーム

EFエデュケーションファースト・ドラパック出場メンバー

リゴベルト・ウラン(コロンビア)
ピエール・ロラン(フランス)
テイラー・フィニー(アメリカ)
セップ・ヴァンマルク(ベルギー)
ダニエル・マルティネス(コロンビア)
サイモン・クラーク(オーストラリア)
トーマス・スクーリー(ニュージーランド)
ローソン・クラドック(アメリカ)

■得意シーン

集団スプリント :★☆☆☆☆
山頂フィニッシュ:★★★★★
ロングエスケープ:★★★☆☆
石畳・未舗装路 :★★★★☆

 昨年大会で総合2位となったウランを中心とした総合狙いのチームである。スプリントは一切狙わないだろう。

 ウランは前哨戦のツアー・オブ・スロベニアでステージ1勝&総合2位となり、順調な調整ぶりを見せている。昨年はスポンサー問題で揺れたチームだったが、ウランがいなかったらスポンサーは見つからず、チームは解散していたかもしれない。ウランはそれほどの中心選手であり、チーム内外の期待を背負って、ツールで結果を出す使命がウランにはあるのだ。

チームやスポンサーの期待を一身に背負うリゴベルト・ウラン Photo: Yuzuru SUNADA

 クラークは屈指の逃げ屋であり、このチームのキャプテンだ。登坂力も高く、様々な局面でウランを助けることができるだろう。

 石畳区間ではヴァンマルク、フィニー、スクーリーがエースを護衛する。ヴァンマルクはステージ優勝も狙えるが、自身のキャリアで初めて総合優勝を狙えるグランツールを走るということで、ウランのアシストに徹底的に専念するとのことだ。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★★☆
山岳アシスト  :★★★★☆
タイムトライアル:★★★★☆

 平坦路ではヴァンマルク、フィニー、スクーリーが中心となってエースを守る。

本来は石畳のスペシャリストであるセップ・ヴァンマルクは、ウランのアシストに徹する Photo: Yuzuru SUNADA

 かつてツールでマイヨブランを獲得したこともあるロランは、山岳アシストとしてウランのサポートに回る。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは総合8位と好成績を収めており、調子も良さそうだ。さらにマルティネスも山岳アシストとして計算できる選手の一人だ。ツアー・オブ・カリフォルニアで総合3位となるなど、今シーズンはステージレースで多くの好成績を残している。

 ドーフィネとスイスのチームTTではそれぞれステージ12位・15位と低迷したが、フィニー、スクーリーに加えて、カリフォルニアの個人TTでステージ4位となったクラドック、同じくカリフォルニアでステージ10位となったマルティネス、そしてウランと決してTTが苦手なメンバーではないので、好成績が期待できる。

■総評

 スポンサー問題で揺れたチームにとって、ツールで結果を残すことはシーズン最大の目標だ。今シーズンもここまで4勝と、決して戦力が整っているチームではない。それでもウランで勝つために持てる最高の戦力を全て投入した印象を受ける編成となっている。

 昨年、ウランは山岳アシストによるサポートがほとんど無かったにもかかわらず、総合2位となった。今回はロランだけでなく、マルティネスの存在がとても心強い。

 最後はウランがどれだけ難関山岳ステージで戦えるかどうか次第になるだろう。エース・ウランに全てを託すチーム、それがEFエデュケーションファースト・ドラパックだ。

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