工具はともだち<最終回>素材・機構・インターネット 未来へ向けて進化する工具 【読者プレゼントあり】

by 重田和麻 / Kazuma SHIGETA
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 2012年6月にスタートしたこの連載「工具はともだち」も早や6年が経ちました。スタートした時に小学1年生だった子供が中学生になってるんだなぁと考えると感慨深いものがあります。これからも、その子たちが高校、大学となるまで続けていたかったのですが、訳あって、今回をもって「工具はともだち」を終了させていただくことになりました。6年の長きに渡り、制作を支えていただいたスタッフの皆様、そして何よりこのつたない文章を読み続けていただいた読者の皆様に心から感謝をいたします。そして読者の皆様には、ささやかではございますが最後に「プレゼント企画」をご用意しましたので、是非ご応募ください。

KTC自転車向け薄口コンビネーションレンチ ©KTC

大きく進化を遂げてきた工具

 さて、連載の最後は「工具の未来」について少しお話ししたいと思います。工具というものは、あまり変わらないものだと思われている方も少なくないと思いますが、実は、工業の発展と共に工具も大きく進化してきた歴史があります。

ネプロス6.3sq.ソケット ©KTC

 昔は切ったり叩いたりしていた道具が、「ねじ」という締結物の登場により「回す」という動きに変わり、その回し方もスパナのようなもので外側からくわえて回していたのが、「ソケット」が発明され、さらには「ラチェット」なるものが登場し、より効率的に作業ができるように進化していきます。

KTCのヘキサゴンレンチ ©KTC

 また、単純な横一線の切欠きで回していたねじは十字になったり、六角ボルトはより頭を小さくして軽量化を図れるように内側に六角ができ、それを回す「アーレンキー」が登場したり、そして十字や六角よりも、よりトルクの伝達性に優れたトルクスが発明されたりと、時代の変化と技術の向上、素材の変化などいくつかの要素が絡み合いながら、ねじや工具はより良いものへと開発されてきました。

 こうして見ただけでも結構進化してきていると思うのですが、そこに長さ、大きさ、機構、など数多くの変数が加わり、工具のバリエーションは何千、何万と今も増え続けています。

より軽く強い素材へ

 では、今後どのような進化が考えられるかというと、いろいろな方向性がありますが、一つは素材です。現在は合金鋼を主たる材料としていますが、より軽く強い素材へ移行することは十分考えられます。

KTCのソフトドライバ ©KTC

 以前からチタンや樹脂などを工具に採用するなど、新素材を利用する取り組みはされてきており、チタン製品は価格的な課題はあるものの実用化されていますし、樹脂についても部分的ではあるものの、ドライバ等では普通に使われているなど、今では工具にとって無くてはならない存在になっています。そしてそこに工法も組み合わさって、鋼の鍛造品からアルミや亜鉛のダイキャストを使うなど、いつの間にか工具にもさまざまな素材や作り方が実用化されているのが実態です。

セルロースナノファイバー ©KTC

 そんな中、KTCでは京都市産業技術研究所さんや利昌工業株式会社さんとの産公連携体制により、鋼鉄より軽くて強度の高い特徴を持つ植物由来の新素材「セルロースナノファイバー」(CNF)を作業工具へ応用することについて共同研究を開始しています。今はまだ、重量のある工具セットも、片手で楽々持ち運べる時代が来る日も遠くないかもしれません。

より便利な工具が誕生する可能性も

ネプロスのラチェット機構 ©KTC

 次に考えられるのが、機構です。工具の歴史で考えると「モンキレンチ」のようなサイズ調整を可能にする「アジャスタブル機構」や、「ラチェットハンドル」を代表とする回転を効率的に行う「ラチェット機構」、そしてボルトクリッパーのような、より小さな力で大きな力を生み出す「倍力機構」が工具における三大機構ではないかと勝手に考えています。

ネプロスのモンキレンチ ©KTC
倍力機構を採用したKTCの倍力ペンチ ©KTC

 ところが、そもそもこれらの機構は工具専用の機構ではないことを考えると、まだまだ世の中にはさまざまな機構が存在しますので、そうした機構を工具に取り入れれば、より便利な製品が開発される可能性は十分にあります。

 そして最後に挙げるのが、センシング技術や動力技術との融合です。センシング技術とは、センサーにより距離や重さ、温度、硬さなどさまざまな事象を計測・数値化する技術で、すでに皆さんの生活に広く溶け込んでいる技術です。

KTCのデジラチェ ©KTC

 実のところ、工具というか測定具にはすでに取り入れられていて『Cyclist』読者の皆さんにはおなじみの「デジラチェ」もその一つなんです。「デジラチェ」はセンサーを用いてトルクを測定するデジタルトルクツールですが、そもそもの発想は「トルク計測機能が付いたラチェットハンドル」つまり、日頃の作業と測定作業との融合を狙ったものでした。動力工具も同じで、現在では人力を使う「作業工具」とエアや電気等を使う「動力工具」に区分けされていますが、目指す先は動力が小型化され、より普通に作業ができるパワーツール、自転車で言えば電動アシストのようなものだと思っています。

工具をインターネットの世界へ

KTCトレサスシリーズの第一弾トルクル ©KTC

 また、センサーを用いた工具は「工具をインターネットの世界に繋げる」という大きな可能性を秘めたものだと私たちKTCでは考えていて、その実現のために、この度、工具や測定具にセンシングの要素を取り込み、その測定データをデバイスに送信できるシステム「TRASAS」(トレサス:TRAceability Sensing and Analysis System)シリーズの発売を発表しました。

 このTRASASシリーズの第一弾で発売を予定している「トルクル」は、今お持ちの工具をトルクレンチに早変わりさせる「コンバーターデバイス(変換器具)」ともいえるもので、お手持ちのラチェットなどをスマートフォンやタブレットと繋げてトルク管理することができるようになります。すでにセンシング技術と工具の融合は始まっていて、これからどんどん加速していきますので皆さんも楽しみにしていてください。

ラチェット装着時のトルクル ©KTC
お手持ちの工具がトルクレンチに早変わりし、スマホにつながる ©KTC

最後に

 最後に、私がKTCに入社したのが1992年。それから四半世紀が過ぎたことになりますが、工具の世界も大きく変わってきました。その間、企画、販売、開発とさまざまな形で工具に携わってきましたが、その中でもこの「工具はともだち」の執筆は私にとってこれまでのことを振り返ったり、頭を整理したりと自分と工具の立ち位置を実感させてくれる良い機会になったと思っています。

 長い間工具の仕事をしていると、時には自社の工具にいらだったり、他社の工具を羨んだり、でも、やっぱり自社の工具は好きだったりと、まるで人との付き合いのように思えてきます。ですから、このコラムのおかげで、私にとって工具とは「ともだち」みたいなものなんだと感じることができました。これまでご愛読いただき、ありがとうございました。

ネプロス「ラチェットレンチ」を抽選で3名に

ネプロス6.3sq.ラチェットハンドル ©KTC

 さて、皆様お待ちかねの「工具はともだち最終回記念プレゼント企画」。大変ささやかではございますが、「ネプロス6.3sq. ラチェットレンチ」を抽選で3名様にプレゼントいたします。応募要領は以下の通りですので、皆さんのご応募をお待ちしております!

「工具はともだち最終回記念プレゼント企画」応募要項

郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記し、メールでご応募ください。よろしければ、このコラムの感想などお書きいただけると幸いです。
■応募先メールアドレス:pr@ktc.jp(※@は半角に置き換えてお送りください)
■応募締め切り:7月16日(月・祝)
※応募に対する注意事項をよくお読みいただき、同意のもとご応募ください。
<応募に対する注意事項>
・当選は賞品の発送をもって発表に代えさせていただきます。
・ご応募は日本国内にお住まいの方に限らせていただきます。
・ご応募はお一人様一回限りとさせていただきます。
・ご当選権利はご本人に限り有効で、第三者への譲渡および換金はできません。
・応募内容に不備がある場合、ご応募を無効とさせていただく場合がございます。
・住所の不備や転居等により賞品が不達となった場合、ご当選の権利を取り消させていただくことがございます。
・賞品並びに応募状況や抽選結果等本企画に関するご質問にはお答えいたしかねます。
・お送りいただいた個人情報は弊社プライバシーポリシーに則り、お取り扱いいたします。

重田和麻(しげた・かずま)

KTC(京都機械工具)入社後、同社の最高級ツール「nepros」(ネプロス)の立ち上げに携わった後、販売から企画、商品開発とさまざまな立場で同商品と歩みを共にしてきた。スポーツ自転車は初心者だが、工具についてはプロフェッショナル。これまでの経験を生かして、色々な角度からサイクリストに役立つ工具の情報を提供する。

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