門田基志の欧州XCマラソン遠征記2018<3>世界選手権につながる大きな一歩 チェコ「Malevil Cup 2018」出走リポート

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 マウンテンバイク(MTB)・クロスカントリー(XC)の門田基志選手(チームジャイアント)と、まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)が繰り広げる欧州遠征デコボコ珍道中。今回は1つめのXCレース「Malevil Cup 2018」の出走した様子をお伝えします。日本とは異なる欧州レースのアットホームな会場、実走中の緊迫感などが伝わってくる臨場感あるリポートです。

←<2>攻略なるか?チェコのローカルレストラン

1つめのレース「Malevil Cup 2018」に出走する門田基志(写真中央、ブルーのジャイアントジャージ)  ©Miloš Lubas (MTBS.CZ)

さすがチェコ!ビール片手に前日ミーティング

 夕方の4時半〜という前例のない受付開始時間に「意味が分からない」とボヤキながら会場入りし、受付に行って見るとすでに始まっていた。日本では考えられないが、ここはヨーロッパ。開始できるから始めようかな〜というこの緩さが、個人的には好きだ。

受付前の会場、レストランは受付待ちの人で溢れている Photo: Motoshi KADOTA

 次に午後6時30分からのマネージャーズミーティングに行くと、今度は誰もいない…。10分ほど遅れて数人入って来たが、その少なさ(運営側と聞く側が同じ程度の人数)にびっくり!もっと驚いたのは皆ビール片手に部屋に入って来ていたことだ。大半の人がビール飲みながらミーティングに臨む様は異様だったが、それはそれで面白い。

ビール片手にチームマネージャズミーティング!初めて見る(笑)ビール飲みながらのミーティングにチェコは水代わりにビールなんだと確信した Photo: Motoshi KADOTA

 さらに部屋の窓から外を見ると大勢がビールを飲みながら楽しんでいた。日本でいうなら繁盛しているビアガーデンさながら。ただ、僕らはさすがに明日のレースの備え、真似するのはやめておいた。

 レース当日の朝は5時前に起床して食事をとるが、この時間ですでに空は明るい。レース前の食べ物には強いこだわりはなくバナナやパンを食べたが、補給食は「メイタンサイクルチャージ」が自分に合っている。海外で現地調達だとフレーバーが合わないことがあるので、補給食はたいがい日本から持ち込むようにしている。

基本的な補給食は日本から持ち込んだものが合う。限界状態での補給は慣れたものが良い! Photo: Motoshi KADOTA

 出発前にタイヤの空気圧などを最終調整し、レース30分ほど前に会場に着くようホテルを出発。アップを兼ねて足を回すが道中は少し肌寒い。気温は上がるらしいが、雨も降りそうな予報なので背中のポケットにベストをしのばせて招集エリアに入った。1000人以上の参加者と聞いていたが、UCIクラスは最前列からトップ10、それ以外はミーティングの内容通りで来た順に並び、自分は前から4、5列目辺りに並んだが、一列あたりの人数も決まってないアバウトぶりだ。

©Miloš Lubas (MTBS.CZ)

 号砲とともにレースが幕を開けた。一気に踏み込みスタートを切る。集団は比較的安定して、我先にという感じでもなく緩い上り坂で少しずつふるいにかけられ、きれいにまとまって最初の直角カーブを曲がり2列になる。

 この辺りから細かなアップダウンが始まり、パワーで上り切った先には平坦でフル加速して集団走行という、XCとロードレースが混ざったような展開に。路面は土煙でほぼ見えないので前の選手を信じて進むのみ!前の選手もまたその前を信じているに違いない。自転車競技の集団は種目関係無く前を行く選手を信頼しないとレースにはならない。

©Miloš Lubas (MTBS.CZ)

 後ろなんて気にする余裕はなく、何とか先頭集団に残り続けなければいけない! 集中力を保ち、登坂で切れそうになりながらも耐え、平坦では休んで、を繰り返しているとやがて限界が来る。そうなると登坂で軽く千切れ、下りで追いつく展開になる。さらにレースが進むと下りでも追いつけなくなり、先に平坦区間でなんとか…とやっていると、30kmを過ぎた辺りで完全に先頭集団から引き離され、単独での走行となってしまった。

西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング) ©Miloš Lubas (MTBS.CZ)

 このコースはドラフティングがきくので、単独走行はレース的にきつくなる。ペースを保ったまま補給も意識しながら、前から落ちて来る選手、後ろから来る選手と合流しつつ、とにかく走りやすい集団を作ることを考えながら走る。すると、序盤のアップダウンで千切れていた10人程度の集団が追いつき、ペースも合いそうなのでその集団で走ることにした。

 程なくしてテクニカルなシングルトラックの下りに。僕が先頭で入る展開になり、気持ちよく下っていると集団がばらけてしまった。この集団は登坂力は同程度だがテクニックが落ちる選手が多いということを理解した矢先に、何語か分からないが、多分「ナイスな下り」などと言っていたんだろう。親指を立てて「GOOD」のサインを出してきた。その後も、下りに入る前には譲ってくれて最初に入ることが多くなった。

©Miloš Lubas (MTBS.CZ)

 上昇する気温が予期せぬ事態を引き起こした。一気に暑くなったことでタイヤの空気圧が高くなり、バイクが跳ね始めたのだ。こうなると下りでも凸凹の平坦でも体に衝撃が直接来るので、短時間なら耐えられても徐々に限界がやって来る。

UCIクラス34位でゴール

 ヨーロッパのXCMのレースはフィードゾーンがしっかりしている。このレースも充実したエイドがあり、ドリンクもボトルで渡してくれるしバナナや食べ物も手馴れたスタッフが走っている選手に渡してくれる。そして先の長いレースでは集団内でも譲り合いながらみんなが補給を取れるようにするのがマナーのようだ。

©Miloš Lubas (MTBS.CZ)

 補給をとって何とかペースを維持しようとしたのも束の間、根っこの激しいセクションでエア圧が高過ぎて思うようにペダリングできず連続する根っこで失速。さらに滑りやすい根っこの下りで集団がバラバラになり、前を走る選手に詰まって集団から大幅に遅れをとって、再び単独走行を余儀なくされた。

 森から出て周りが明るくなり、視線の前には見覚えのある街並みが。ここは試走時にシュニッツェルを食べたドイツの街オイビン。ということは抜けた先が激坂やん!!

 ここまで来るとペースを上げたり一気に攻めることもできず、ただ維持できる最大のペースを維持して走るのみ! ボロボロになりながらも、後半に何人かの選手とドッキングしては離れを繰り返す。入り乱れた走行は抜くのが大変だったがゴールはもうすぐそこだ!!

©Miloš Lubas (MTBS.CZ)

 一般クラスの選手達に応援されながら最終のエリア差し掛かると、ゴルフ場とカフェの建物が見えて一気に元気が出た。がペースはもう上がらない。ゴールエリアはコンパクトにまとまっているが観客が近寄れる作りになっていて大観衆の中ゴールとなった。UCIクラス34位とポイント圏内でゴールできた。次のレース、そして世界選手権にも繋がる小さいけど大きな一歩となった。

西山選手、まさかの…

ゴールゲート中央に「日の丸」は本当に嬉しいリスペクト! Photo: Motoshi KADOTA

 レース中に会うことがなかった西山を待っていると、なかなか帰ってこない。しばらくはゴールエリアで待ったが、お腹も減ってフラフラなのでフィニッシュフードをもらいにゴール横のテントへと移動した。食べ終わっても西山は現れない。そういえば終盤に救急車を見たなぁ〜などと心配になってきた。

 とりあえずゴールが見える範囲内で、飲み物を求める人の列に並んでみると、なんとビールの列だった。周りを見ると、ほとんどの参加者や関係者がビールを飲んでいた。さすがはビールの国、チェコ!

ゴール後に長蛇の列はビール!レース参加者にはビールのサービス券が配布されていて、ほとんどの人が並んで飲んでいた!やはり水とビールは同じような扱いなのか? Photo: Motoshi KADOTA
ゴール後はしょっぱいものも食べたくなるので、ゴールエリアで売ってるバーベキュー!これも迷わす食べる!甘いものも食べて次はしょっぱいものでエンドレスだ Photo: Motoshi KADOTA

 そこに西山がボロボロの姿で帰ってきて一安心!ボロボロ過ぎてるのでレース展開を聞くと補給失敗からのハンガーノックだと…。フィニッシュフードを食べるように促し、少し落ち着いてからホテルへと移動した。

 40位までUCIポイントが付くので順位を確認しに行こうと、意気消沈中の西山を連れて会場に行く道中、「40位だったらラッキーだけど41位とかだったらめっちゃ残念やな!」なんて話をしていたら、そのまさかで西山は41位に…。あと一人あと数分…これもレースである。

バイクはそのまま積載して、evocのバイクトラベルバッグは畳めるからこういう時に便利!一人旅なら普通車でも積載できる Photo: Motoshi KADOTA

 西山もこの経験を生かして、ここから残り2戦では成長してほしい。そして、UCIポイントを獲得し、そして9月の世界選手権ではともにレースを戦いたいと思う。

 さあ明日から長距離移動だ!どこかの街で一泊し、僕らがXCMに魅了された「原点」といっても過言ではないドロミテへ向かう。

<つづく>

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

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