ツール・ド・フランス2018直前 全チームプレビュー<2>サガンはマイヨヴェール奪還なるか? ボーラ、ロット、カチューシャの戦力をチェック

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 7月7日に開幕するツール・ド・フランスの出場全チームプレビューの第2弾はボーラ・ハンスグローエ、ロット・スーダル、カチューシャ・アルペシンを特集。各チームの狙いがわかりやすく見えるように、得意シーン4項目とチーム力3項目について★5段階で評価した。

今回プレビューするボーラ・ハンスグローエ(中央)、ロット・スーダル(右)、カチューシャ・アルペシン(左) Photo: Yuzuru SUNADA

サガンが6度目のマイヨヴェールを狙う

ボーラ・ハンスグローエ出場メンバー

ペテル・サガン(スロバキア)
ラファル・マイカ(ポーランド)
マチェイ・ボドナル(ポーランド)
ダニエル・オス(イタリア)
ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア)
パウェル・ポリャンスキー(ポーランド)
グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア)
マークス・ブルグハート(ドイツ)

■得意シーン

集団スプリント :★★★★★
山頂フィニッシュ:★★★★☆
ロングエスケープ:★★★★☆
石畳・未舗装路 :★★★★★

 通算ステージ8勝、マイヨヴェール5回獲得のサガンがエーススプリンターを務める。ピュアスプリンターと互角に戦えるスプリント力を持ちながら、登坂力も独走力も高い。直近ではスロバキア選手権で170km以上も独走して逃げ切り勝利を飾っている。さらにパリ〜ルーベで勝利したように、石畳も得意としている。

パリ〜ルーベで優勝したペテル・サガン Photo : Yuzuru SUNADA

 総合エースはマイカが担う。昨年大会は落車負傷の影響で途中リタイアだった。

 ボドナルは昨年大会の第11ステージで大逃げを見せて、フィニッシュまであと200mのところで集団に吸収されてしまった。ポリャンスキーは昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第6、7ステージで逃げ切るも共に2位。ミュールベルガー、ペストルベルガー、オスも逃げを得意としており、サガンとマイカのアシストが優先されるが、逃げ切り勝利を狙うことも十分可能なメンバーだ。

 オス、ブルグハートは石畳のスペシャリストといえる選手で、サガンのパリ〜ルーベ優勝の立役者といっても過言ではない存在だ。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★★★
山岳アシスト  :★★☆☆☆
タイムトライアル:★★★★☆

 サガンはリードアウトを活用しなくても勝てるスプリンターだ。そのため終盤の位置取り争いで好位置を確保できればいいので、アシストには発射台を務めるスプリンタータイプの選手よりもルーラータイプの選手がフィットする。ボドナル、オス、ミュールベルガー、ペストルベルガー、ブルグハートと強力なルーラーが揃っており、万全の布陣でサガンをサポートする。

2年前にはツールの山岳賞を獲得したラファル・マイカ Photo : Yuzuru SUNADA

 一方でクライマーはポリャンスキーのみ。2013年シーズン後半からマイカとはずっとチームメイトで、マイカ専属アシストといえる存在だ。しかし1人では、戦局に決定的な影響を与えるほどの仕事は厳しいかもしれない。

 チームTTに関しては、サガン、ボドナル、オス、ミュールベルガー、ブルグハートが出場したツール・ド・スイスのチームTTでステージ4位となった。ボドナルは昨年大会の第20ステージの個人TTで勝利し、ポーランドTTチャンピオンにも輝いている。

■総評

 平坦に強いルーラータイプの選手を多くそろえていることから、チームの最優先目標はサガンのステージ優勝量産と大会史上最多タイ記録となる6度目のマイヨヴェール獲得だろう。

 マイカは実質単騎での戦いを強いられるかもしれない。一方でTTに強いメンバーがそろっているので、チームTTで上位に入ることができれば、総合上位を狙うマイカにとって大きな支援となる。

“逃げの達人”デヘントに注目

ロット・スーダル出場メンバー

ティシュ・ベノート(ベルギー)
トマス・デヘント(ベルギー)
アンドレ・グライペル(ドイツ)
イェンス・クークレール(ベルギー)
ジャスパー・デブイスト(ベルギー)
トーマス・マルチンスキー(ポーランド)
マルセル・シーベルグ(ドイツ)
イエール・ヴァネンデル(ベルギー)

■得意シーン

集団スプリント :★★★★☆
山頂フィニッシュ:★★★☆☆
ロングエスケープ:★★★★★
石畳・未舗装路 :★★★★☆

 グライペルはツール通算11勝をあげている名スプリンターだ。2008年ジロ・デ・イタリア以来、出場したグランツールで12大会連続ステージ優勝を飾ってきたが、昨年のツールではその記録が途切れてしまった。難病を抱える母親の看病をしながら、レースに出場していたこともあり、シーズン5勝と2008年シーズン以降では最低の成績に終わった。だが、今季はすでに6勝をあげており復調を感じさせる走りを見せている。

大会期間中に36歳の誕生日を迎えるベテランスプリンターのアンドレ・グライペル。写真は2017年ツール・ド・フランス第10ステージにて Photo : Yuzuru SUNADA

 総合エースは不在だが、昨年大会ではベノートが初出場ながら総合20位と健闘した。本来はクラシックレースを得意としている選手だが、今年のティレーノ~アドリアティコで総合4位&新人賞を獲得したように上りでも強さを見せている。

 ヴァネンデルは今シーズン、山岳アシストとして起用されながらもフレーシュ・ワロンヌ3位、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ11位といった好成績を残しており、とても好調だ。ツールでもステージ勝利を狙った走りが期待できるだろう。

 デヘントは昨年大会で合計1000km以上も逃げた。集団から逃げ切るためには運の要素を多く含むが、デヘントの場合、狙ったステージで逃げ切るような達人の走りをすることができる。今シーズンもカタルーニャ一周レース第3ステージ、ツール・ド・ロマンディ第2ステージで独走逃げ切り勝利を飾っている。

 マルチンスキーは昨年のブエルタでいずれも逃げ切り勝利となるステージ2勝をあげた。その実績が認められて、ツールに初出場を果たすことになった。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★★☆
山岳アシスト  :★★☆☆☆
タイムトライアル:★★★☆☆

 グライペルのリードアウトトレインは、デブイスト、クークレール、シーベルク、デヘントが務めるだろう。グライペルが生き残れないような状況では、上れるスプリンターであるクークレールで勝負する展開も考えられる。

ツール・ド・ロマンディ第2ステージで独走逃げ切り勝利を飾ったトマス・デヘント Photo: Yuzuru SUNADA

 総合エースが不在のため、明確に山岳アシストとして起用される選手はいないだろう。しかし、例えば山岳ステージでマルチンスキーとヴァネンデルが逃げに乗ったという場合には、お互いのコンディションや状況に応じて、勝つ見込みが高い方をアシストするといったことが考えられる。

 ベノート、クークレール、マルチンスキー、ヴァネンデル、デヘントが出場したクリテリウム・デュ・ドーフィネのチームTTではステージ3位に入る走りを見せた。しかし、欧州TTチャンピオンのヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)がツールに出場しないことで、チームTT力は大きく削がれているといえるだろうが、総合は狙わないので特に問題にはならない。

■総評

 復調気配のグライペルが、どれだけの走りをできるかが注目ポイントだ。特に最終日のシャンゼリゼのスプリントを得意としており、直近3年間で1位2回・2位1回と上位に食い込んでいる。

 ベノート、ヴァネンデル、マルチンスキー、デヘントとステージ優勝を狙えるアタッカーが揃っており、中盤から終盤の山岳ステージでは積極的に逃げに選手を送り込むのではないかと思われる。

 デヘントの逃げのスペシャリストぶりは、もはや多くの人々に知れ渡っており、逃げ集団内でもデヘントを警戒する動きは生まれることだろう。そのなかで、いかに協調体制を築き上げ、マークされながらも独走に持ち込む職人技に期待したい。

キッテル復活の鍵はトレインとの連携

カチューシャ・アルペシン出場メンバー

マルセル・キッテル(ドイツ)
イルヌール・ザカリン(ロシア)
トニー・マルティン(ドイツ)
パヴェル・コチェトコフ(ロシア)
イアン・ボズウェル(アメリカ)
ロベルト・キセルロウスキー(クロアチア)
ニルス・ポリッツ(ドイツ)
リック・ツァベル(ドイツ)

■得意シーン

集団スプリント :★★★★☆
山頂フィニッシュ:★★★★☆
ロングエスケープ:★★★☆☆
石畳・未舗装路  :★★★☆☆

 昨年大会ではステージ5勝をあげる鮮烈な活躍を見せたキッテルだが、カチューシャへ移籍した今シーズンはここまで2勝しかあげられていない。スプリントに絡めないままステージを終えるような走りが目立っている。キッテル自身も新しいスプリントトレインへの順応ができていないことを認めており、ツールまでに修正できるか注目だ。

ティレーノ~アドリアティコ第2ステージで移籍後初勝利を飾ったマルセル・キッテル Photo : Yuzuru SUNADA

 総合エースは昨年ブエルタで総合3位に入ったザカリンが務める。しかし、ザカリンも今シーズンは低調な成績が続いていることが懸念点だ。

 ポリッツはパリ〜ニース第5ステージで逃げ切って2位に入った。ある程度上りもこなせるため、山岳ステージで逃げ切りを狙うこともできるだろう。さらにパリ〜ルーベで7位に入ったように、石畳のコースも得意としている。

■チーム力

平坦アシスト  :★★★★☆
山岳アシスト  :★★★☆☆
タイムトライアル:★★★★☆

2年前のツールではステージ1勝をあげ、昨年のブエルタでは総合3位となったイルヌール・ザカリン Photo : Yuzuru SUNADA

 マルティン、ポリッツ、ツァベルがキッテルのリードアウトトレインを支えることになる。いずれも強力なメンバーであることに違いないが、前述のとおりキッテルとのコンビネーションが噛み合っていない様子だ。シーズン序盤からキッテルとずっとコンビを組んでいたマルコ・ハラー(オーストリア)がトレーニング中の事故により、膝蓋骨骨折の重傷を負い、ツールの欠場を余儀なくされたことも痛手だ。

 山岳アシストはキセルロウスキー、ボズウェル、コチェトコフが務める。昨年のジロ・デ・イタリア第20ステージの上り区間では、キセルロウスキーが集団を完全に崩壊させるほどの働きを見せており、頼もしい存在となるだろう。

 チームTTでは4度のTT世界チャンピオンに輝いたマルティンを筆頭に、TTに強いメンバーが揃っているので好タイムが期待できそうだ。

■総評

 今シーズン、ここまでにあげた勝利の数は3つ。これは全ワールドチーム中最下位の記録である。キッテルだけでなく、チーム全体として歯車が狂っている印象を受けるだけに、不安の種は尽きない。

 ハラーは不在でも、マルティン、ポリッツ、ツァベル、キッテルとドイツ人同士、コミュニケーションも円滑になるのではないかと思う。シーズン前半の不調は、ツールで爆発するための熟成期間だった、となることを期待したい。

 ザカリンは昨年出場したジロとブエルタでは、3週目にトップコンディションに持ってくる調整をしており、それぞれ総合5位・3位と好成績を残した。そして前哨戦の成績も必ずしも良いわけではなかった。今シーズンも低調な成績とはいえ、過去のザカリンの戦績から見ると低調に見えるだけで、よくいえばマイペース調整ともとらえられる。

 良いメンバーがそろっていることは間違いないので、歯車さえ噛み合えば好成績が期待できるだろう。

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