ツール・ド・フランス2018直前 全チームプレビュー<1>アージェードゥーゼール、グルパマ・エフデジ、ロットNL・ユンボの戦力をチェック
7月7日に開幕するツール・ド・フランスの出場全チームを、発表されたメンバー構成からプレビューしていく。各チームの狙いがわかりやすく見えるように、得意シーン4項目とチーム力3項目について★5段階で評価した。今回は、アージェードゥーゼール ラモンディアル、グルパマ・エフデジ、ロットNL・ユンボの3チームについてプレビューを行った。
バルデの悲願成就に向けて強力布陣に
アージェードゥーゼール ラモンディアル出場メンバー
ロマン・バルデ(フランス)
アレクサンドル・ジェニエス(フランス)
オリバー・ナーセン(ベルギー)
アレクシー・ヴィエルモーズ(フランス)
トニー・ガロパン(フランス)
ピエール・ラトゥール(フランス)
アクセル・ドモン(フランス)
シルヴァン・ディリエ(スイス)
■得意シーン
集団スプリント :★★☆☆☆
山頂フィニッシュ:★★★★★
ロングエスケープ:★★★★☆
石畳・未舗装路 :★★★★☆
スプリンターはナーセンのみで、それもエースのバルデの護衛が最優先になるため集団スプリントで勝利を狙う機会はほとんどないだろう。

上りではバルデを筆頭に、ラトゥール、ヴィエルモーズと上れる選手が揃っている。なおバルデは昨年第12ステージのペイラギュードにフィニッシュするステージで勝利し、ヴィエルモーズは2015年第8ステージで、今年も登場するミュール・ド・ブルターニュにフィニッシュするステージで勝利している。
ジェニエス、ガロパン、ドモン、ディリエは逃げに乗るのがうまい選手で上りにも強く、山岳ステージでの作戦の幅を広げる存在になるだろう。
石畳のレースを得意とするナーセン、ディリエに加え、バルデは計65kmもの未舗装路が登場する「ストラーデ・ビアンケ」で2位になっており、万全の準備を整えてきた。
■チーム力
平坦アシスト :★★★☆☆
山岳アシスト :★★★★★
タイムトライアル:★★★☆☆
ナーセンとディリエがルーラーとして集団けん引を担うことになるだろう。だが、平坦でのアシストはこの2人頼みのところがあるので、もしマイヨジョーヌを獲得した場合、リーダーチームとして集団コントロールを担うことで選手の疲労蓄積が懸念される。

一方で山岳アシストは全チーム見渡してもトップクラスの充実ぶりだ。最も期待がかかる存在はラトゥールだろう。前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、バルデをアシストしながらステージ上位に食い込む走りを見せて、総合7位で新人賞を獲得した。ツールでもマイヨブランの有力候補となる。
ヴィエルモーズとドモンは5月にスペイン・シエラネバダ山脈で、バルデとラトゥールと共に高地トレーニングを行った。今季からチームに加入したガロパンの存在も心強い。
しかし、チームタイムトライアルにおいては、2017年フランス国内TT王者になったラトゥールがいるものの、全体的にTTが苦手なメンバーが多い。とはいうものの、ドーフィネのチームTTでは、ステージ7位に入る走りを見せており、改善傾向にある。
■総評
強力なクライマーを揃え、総合を狙う上で非常にバランスの良い布陣となっている。
そして特筆すべきポイントは、バルデとナーセンのダウンヒル能力がずば抜けて高いことだ。
バルデは2015年第18ステージ、2016年第19ステージとダウンヒルでの好走が光り、ステージ優勝を飾っている。ナーセンはスプリンターとは思えない登坂力を発揮して、長いダウンヒル区間で先頭に立ってペースアップを図るナーセンの姿がたびたび見られた。ダウンヒルでの攻撃オプションはアージェードゥーゼールの切り札になるだろう。
デマールのスプリントを最優先
グルパマ・エフデジ出場メンバー
アルノー・デマール(フランス)
ダヴィ・ゴデュ(フランス)
ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)
オリヴィエ・ルガック(フランス)
トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン)
ルディ・モラール(フランス)
ラモン・シンケルダム(オランダ)
アルテュール・ヴィショ(フランス)
■得意シーン
集団スプリント :★★★★★
山頂フィニッシュ:★★★☆☆
ロングエスケープ:★★★☆☆
石畳・未舗装路 :★★★☆☆
デマールでスプリントを勝つために編成したチームといっても過言ではない。デマールは昨年大会はステージ1勝をあげたものの、体調不良に伴い第9ステージでリタイアとなった。
本来は総合エースまたは山岳ステージでのステージ勝利狙いでティボー・ピノが出場予定だったが、ジロ・デ・イタリアで患った肺炎からの回復状況が思わしくないため欠場となった。代わりに白羽の矢が立ったのが2016年に若手登龍門レースであるツール・ド・ラヴニールで総合優勝したゴデュだ。グランツール初出場であり、経験を積む目的もあるだろうが、他に有力なクライマーがいないチームにおいて、自由に走ることが許されるだろう。マイヨブランの有力候補の一人だ。
ヴィショは今季ステージレースで1回総合優勝を飾り、前哨戦のツール・ド・スイスでは総合10位に入るなど、好調を維持している。山岳ステージでの勝利を狙いたい。
■チーム力
平坦アシスト :★★★★★
山岳アシスト :★★☆☆☆
タイムトライアル:★★★☆☆

デマールのリードアウトは、シンケルダムとグアルニエーリが務める。位置取りに向けたトレイン要員としては、スウェーデンTT王者のルドヴィグソン、ルガック、ヴィショらが務め、非常に手厚い陣容となっている。
もしゴデュがマイヨブランを争う展開になった場合の山岳アシストはモラールが務めるだろう。そのモラールはパリ〜ニース第6ステージで集団の隙を突いたアタックを決まり、ステージ優勝を飾っておりパンチ力のある選手だが、さすがに1人では心もとない。
チームTTでは前述したルドヴィグソンが中心選手となるが、全体的にはやや厳しいメンバー構成かもしれない。
■総評
昨年大会は、完走者が9人中わずか2人だった。今シーズンもパリ〜ニースは7人中1人完走、ジロ・デ・イタリアは8人中5人完走と、どうにも体調不良に陥る選手が多いイメージが強い。
しかし、前哨戦のドーフィネとスイスはそれぞれ7人全員が完走した。特にデマールは地元フランスを代表するチームのエースとして、最終ステージのシャンゼリゼ通りのスプリントで勝負に絡みたいところだろう。
エース級4人の共存に注目
ロットNL・ユンボ出場メンバー
プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)
ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)
ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)
ティモ・ルーセン(オランダ)
パウル・マルテンス(ドイツ)
ロベルト・ヘーシンク(オランダ)
アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー)
アントワン・トルホーク(オランダ)
■得意シーン
集団スプリント :★★★★★
山頂フィニッシュ:★★★★☆
ロングエスケープ:★★★☆☆
石畳・未舗装路 :★★☆☆☆
昨年大会の最終ステージ、シャンゼリゼ通りでの集団スプリントを制したフルーネウェーヘンが今年もエーススプリンターを担う。今季は非常に好調で、既に9勝をあげている。
総合エースはクライスヴァイクとログリッチェのダブルエースとなるだろう。特にログリッチェは今季ステージレース3連続総合優勝を飾っており絶好調だ。昨年はジャパンカップ参戦のため来日したトルホークもドーフィネで総合11位になるなど、登坂力がとても向上している印象だ。
ヘーシンクはグランツールでは近年ステージを狙う走りに徹しており、山岳ステージで逃げ切り勝利を狙ってくるだろう。
フルーネウェーヘンとヤンセンは石畳を得意としているが、総合系の選手たちは石畳を走る経験が少ない。しかし、ログリッチェは体格が良く、パワーもあるため、石畳への適性は高いのではないかと推察している。
■チーム力
平坦アシスト :★★★★☆
山岳アシスト :★★★☆☆
タイムトライアル:★★★★☆
フルーネウェーヘン、クライスヴァイク、ログリッチェ、ヘーシンクと複数人のエースが混在するチームであるため結果的にアシストの人数が少なく負担も大きくなり、総合的なチーム力の低下を招きかねない。

フルーネウェーヘンのリードアウトは、ルーセンとヤンセンが担う。特にルーセンは、今季フルーネウェーヘンが出場した全てのレースに帯同しており、最終発射台として極めて重要な働きを何度も見せていた。今や世界屈指のリードアウトマンへ進化したといえよう。
山岳アシストは、スタート時点ではトルホークとマルテンスが担うものと思われるが、ステージが進んで総合成績次第では役割が入れ替わることも十分考えられる。またトルホークはマイヨブラン対象選手であるため、アシストに力を使い果たして総合タイムを失うような走りを避ける可能性もある。
タイムトライアルでは、ログリッチェのTT能力がずば抜けて高いものの他の選手は概ね平均クラスである。
■総評
フルーネウェーヘンは、パワー全開のスプリントを持ち味としており、リードアウトさえうまくいけば高確率で勝利することができる。しかし、リードアウトに繋ぐまでのスプリントトレインの人員不足が否めない点が大きな不安要素だ。
︎
ログリッチェはTTスペシャリストながら、短い上りでは際立った強さを見せている。一方で長い上りを苦手としており、果たしてツールの超級山岳に対応できるかどうか注目していきたい。もし対応できれば、一気に総合優勝の超有力候補になることだろう。