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XMシリーズ、XUシリーズが大好評国産アシストユニットでe-BIKEを席巻 パナソニックサイクルテックの開発・製造の現場に迫る

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 電動アシスト自転車の国内大手・パナソニックサイクルテック(以下パナソニック)が昨年、全く新しい本格e-BIKE(スポーツ電動アシスト自転車)、「XM1」(エックスエムワン)を発売した。高いデザイン性と国内生産の高性能スポーツユニット搭載が話題を呼んでヒットとなり、今年はさらにクロスバイクタイプの「XU1」(エックスユーワン)など、e-BIKEの展開を加速するという。大阪・柏原市の本社・柏原工場を訪れ、製品の実力と魅力をつかさどるキーポイントに迫った。

国内工場で1台ずつ組み上げられる、パナソニックの最新e-BIKE Photo: Kenta SAWANO

1軸ユニットで可能になった本格スポーツモデル

 柏原市にある本社は、2万平方メートルの広い敷地内に、製造・開発・マーケティングに至る全ての機能を集約している。ここでパナソニックブランドの電動アシスト自転車全モデルが製造されているという。

パナソニックサイクルテックの本社・柏原工場 Photo: Ikki YONEYAMA

 パナソニックではこれまでも、スポーツタイプの電動アシスト自転車を販売していたが、シティサイクル向けの2軸ユニットを活用したモデルだった。だが欧州向けにはメーカーの要請から、スポーツタイプの1軸ユニットを4年ほど前から製造しており、これを国内でも活用したいという考えから、XM1の開発はスタートしたという。

 「海外へは部品メーカーとしてユニットを供給していますが、パナソニックは国内では完成車メーカー。やはりこのユニットを使った自転車を日本で最初に作るのは、パナソニック自身であるべきという思いがありました」と語るのは、設計を担当した技術部完成車設計課の名倉克尚さんだ。

技術部完成車設計課の名倉克尚さん Photo: Kenta SAWANO

 目指したのは本格的なスポーツバイク。クランクシャフトを直接駆動する1軸ユニットを採用したことで、よりダイレクトなアシストフィーリングが可能になった。またバッテリーのレイアウトを、シートチューブ後方からダウンチューブに移したことで、リヤセンター長が短くでき操作性が向上したという。

 ドライブユニットは、長い峠の上りや高回転のペダリングでも違和感なくアシストするように、一般車とは異なるモーターの味付けを行った。出力も一般車向けの1.5倍となり、高出力に対応する歯車を独自に設計した。フィールドテストも入念に行い、乗り味の最適化に時間をかけたという。

特徴的なセミインテグレートバッテリーは、フレームのダウンチューブとバッテリーの両方がL字型断面となり、かみ合うように一体化する Photo: Kenta SAWANO

 デザイン面で特徴的なのは、ダウンチューブと一体化した、セミインテグレートバッテリーだ。L型断面のダウンチューブとかみ合うように取り付けられる大容量のバッテリーは、緻密なカーブとエッジが印象的なハイドロフォーミングアルミフレームとマッチして、これまでのe-BIKEにないスマートな外観を実現している。

 パナソニックブランドとしてこだわるのは、品質と安全面の追求だ。長年蓄積した知見による、独自の基準と膨大なチェックポイントをクリアしているという。

 昨年登場した初代のXM1は、幅広い層にアピールできるよう、マウンテンバイク(MTB)タイプとして作られた。パナソニックでは長くMTBの製造から撤退していたが、今回の復活にあたっては、以前MTBの開発・製造に携わっていた社員からヒアリングし、試験項目や試験機械を新規に作り直したという。オフロード走行も可能な性能を持ちつつ、一方で街乗りにも使えるよう、ハンドル幅は600mm未満という、道路交通法で定められた「普通自転車」の規格に適合する(歩道通行も可能な)バイクに仕上げられた。

より本格的なオフロードスポーツに対応するXM2が登場。開発を担当した名倉克尚さん(右)と川上将史さん Photo: Kenta SAWANO

 今年はフロント内装2段変速のマルチスピードドライブユニットを搭載したXM2(エックスエムツー)が登場。通常のMTBと同様の走りが可能になった。またマイナーチェンジしたXM1とあわせて、ハンドル幅は一般的なMTBと同様の680mmを採用。XMシリーズはオフロードスポーツにより特化した。

ドライブユニットはモーターまで本社工場で組み立て

 工場ではXシリーズの、ドライブユニットの組み立て工程を見ることができた。1軸のスポーツユニットも、2軸の一般車向けユニットと同じフロアで作られている。意外なことに、両者の構造はそれほど違いはなく、共通の部品も多いという。内部的には1軸ユニットの方が歯車が2つ多く、その分やや重いそう。

この奥でドライブユニットが組み立てられている。当然ながら原則撮影禁止 Photo: Kenta SAWANO
ラインを流れて組み上がっていくドライブユニット。写真は一般車向けの2軸タイプ Photo: Kenta SAWANO

 モーターやトルクセンサーといった基本的部分も、市販品ではなく部品一つひとつを組み合わせて一から作られている。手作業とロボットを組み合わせ、効率的に組み上げられていく。各所でテストや最終的な調整までが行われる。テストではバラつきの範囲だけでなく、その分布までチェックしながらクオリティを上げている。

 今年発売のXM2で採用されたのが、ドライブユニット内に2段変速を搭載した新型ユニットだ。ユニットの設計を担当した開発部モータ開発課の川上将史さんによると、当初は通常の外装フロント変速機を付ける予定だったが、パワーアシストでチェーンの張力がかかった状態で満足な変速性能が得られず、内装変速のメカニズムをユニットに組み込むことにしたという。

内装2段変速のマルチスピードドライブユニットを指さす、開発部モータ開発課の川上将史さん Photo: Kenta SAWANO

 自転車の世界では、変速機は専門メーカーが作る部品を使うのが当たり前。完成車メーカーの範疇ではなく、上司には「できるわけがない」とも言われたという。だが自宅でオートバイの変速機を分解するなど研究して、自転車独自のノウハウも入れながら現在のユニットを完成させた。ちなみに「電動変速」だそう。

 続いて組み付けの工程も見学。こちらも一般車と同じスペースで行われている。一般車は工程ごとに流れ作業を行うライン生産だが、Xシリーズは1人の自転車技士が最初から最後まで一貫して組み立てを行う「セルライン」方式となっている。ドライブユニットの取り付けや変速調整も行い、ペダルのみを外した9分組の状態で、1台ずつ箱詰めして出荷される。

ドライブユニットやチェーンが組み付けられ、作業台から下ろされるXM2 Photo: Kenta SAWANO
ドライブユニットをフレームに固定する Photo: Kenta SAWANO
出荷を待つXM2 Photo: Kenta SAWANO

 生産現場で感じられるのは、「パナソニック品質」へのこだわりだ。パナソニックのロゴが入る限りは、品質の悪いものは作れない。

製造に携わる工場管理課の末吉健次さん(左)とPOS・フレーム製造課の福本保己さん Photo: Kenta SAWANO

 同時に感じたのは、最先端のe-BIKEを生産することに対する、現場の高揚感だ。スポーツ向けのドライブユニットはこれまでも数年間生産していたが、あくまで海外メーカー向けの部品供給だった。「Xモーターを国内で(完成車として)展開できる喜びがあります」とPOS・フレーム製造課の福本保己さんは説明した。

スタイリッシュなオンロードモデルが登場

 今年オフロードスポーツに特化したXMシリーズに対して、オンロード向けにクロスバイクタイプのXU1が新たに登場した。ハンドル幅は580mmという「普通自転車」に適合するサイズ。ドライブユニットやセミインテグレートバッテリー、センター液晶ユニット、スポーツLEDビームランプ、油圧ディスクブレーキなど、基本装備はXM1から受け継ぎながら、メインフレームはクロスバイクとして映える、なめらかなデザインが新しく作られた。

オンロード向けに新たなスタイルで登場したXU1。カラーはシャインパールホワイト Photo: Kenta SAWANO
ハンドル幅はXMシリーズより短い580mm。ハンドル中央には遠くまで照らせるLEDビームランプを装備 Photo: Kenta SAWANO
XU1は2色のカラーバリエーションを展開。深みのあるマットロイヤルブルー Photo: Kenta SAWANO

 また、アルミ製のキャリアとフェンダー(泥よけ)を標準で装備。専用設計でデザインにもこだわり、マットブラック塗装が上質な雰囲気を作り出す。全体のコンセプトとしてはドイツやヨーロッパの街に溶け込むようなバイクを目指したという。街乗り向けということで、サイドスタンドも標準装備する。

アルミ製で軽量かつスタイリッシュな、専用キャリアとフェンダーを標準装備 Photo: Kenta SAWANO
XU1のキャリアに合わせた、専用のパニアバッグもオプションで用意 Photo: Kenta SAWANO

 タイヤは700x50Cを装備。気張らずに乗れる高い走破性と良好な乗り心地を実現した。太いタイヤは重量が増えるため、通常の自転車では敬遠されることもあるが、電動アシストがその欠点を帳消しにしてくれる。

 バッテリーはパワーモードで44km、ロングモードなら82kmのアシスト走行が可能だ。バッテリーはXMシリーズと共通なので、XM2が標準搭載するタイプのバッテリーをオプション購入すれば、走行距離を約1.5倍にすることができる。

安心して走ることができる700x50Cのタイヤ Photo: Kenta SAWANO
速度や距離、アシストパワーなど8項目表示に対応するセンター液晶ディスプレイ Photo: Kenta SAWANO

 装備はXM1とユニットやバッテリーが共通で、キャリアやフェンダー、スタンドまで標準装備となるが、価格はXM1の税別33万円から、10万円以上安い22万5000円となった。MTBタイプのe-BIKEが一巡し、各ブランドが新たにオンロードモデルを続々投入するなか、普及を狙った戦略的価格を採用したという。

XM2、XU1の発表会で、国内にe-BIKEを普及させるための「サイクルツーリズム事業」について説明する、パナソニックサイクルテックの片山栄一社長 Photo: Kenta SAWANO

 戦略的なのはバイク本体や価格だけではない。パナソニックは新型Xシリーズの発表にあわせて、今年度中にサイクルツーリズム事業へ参入することを明らかにした。観光地などでe-BIKEをレンタル用に配置したり、e-BIKEを利用したガイドツアーも行ったりと、「モノ」だけでなく「コト」もカバーする。ソフト面の充実で、国内のe-BIKE市場を拡大させる狙いだ。発表以来、地域行政からは問い合わせが相次いでいるという。

 空前のロードバイクブームが国内で起こるなか、数年来、本格スポーツの先端からは離れていたパナソニック。いまe-BIKEという新たな武器とともに、再びスポーツサイクルの最前線へと躍り出た。

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