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栗村修の“輪”生相談<130>25歳男性「自転車って何が楽しいんでしょうか」

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 いつも、そういう考え方もあるのか〜と読ませていただいてます。その中で、自転車に乗っている人と乗っていない人でよく出る質問についてお聞きします。

 自転車って何が楽しいの?

 同窓会とか久しぶりに会った友達に聞かれると、私は、移動中にも車とは違った景色や四季の移り変わりが見えてくる、なんて答えています。

 栗村さん何か良い回答ありませんか?

(25歳男性)

 ありそうでなかった、意外な質問ですね。そういえば、僕もよくこういったことを聞かれますが、輪生相談に寄せられる質問の中にはありませんでした。

 自転車は何が楽しいのか。たしかに、自転車を知らない方から見ると、ヒルクライムのように苦しさが伴うものは何が楽しいのか不思議かもしれませんね。

 定番の答えは、健康にいいというものですよね。あと、移動とフィットネスを同時に兼ねられるので、一石二鳥。運動のおかげでメンタル的にもポジティブになって一石三鳥。一般的な回答はこんなところでしょうか。しかし、せっかくの機会ですから、もうちょっと突っ込んで考えてみます。

 ご質問者さんは「マズローの欲求5段階説」なるものをご存知でしょうか。有名なのでお聞きになったこともあるかもしれませんが、アメリカの心理学者、アブラハム・マズローが、人間の欲求を5段階に分けたモデルです。

 まず、一番下というか、ピラミッドの底辺にあるのが超基本欲求。どちらかというと原始的な欲求で、睡眠や食事といった「生理的欲求」になります。それが満たされたら、人は次に、生命を脅かされないという意味での「安全の欲求」を求めるそうです。現代の日本人を地球規模でみるならば、まあこの2つはクリアしている部類に入るでしょう。

 次は、社会的な居場所を求める「社会欲求」で、その次には認められたいという「承認欲求」。そして最後に、自分がなりたいものになるという、「自己実現の欲求」があります。

自転車は究極の自己実現だ! Photo: Yuzuru SUNADA

 自転車という趣味って、マズローの5段階の欲求の、上の3つに対応している気がするんですよ。しかも、上位に行くほど自転車との相性が良くなる。たとえば、社会欲求や承認欲求は、クラブやチームに所属したりレースで結果を出したりすれば満たされますよね。

 一番重要なのが、最上段の欲求である「自己実現の欲求」です。自転車は、これとの相性がばっちりなのです。トレーニングをし、レースに出る。あるいは、苦しい思いをしながらヒルクライムや長距離サイクリングに挑戦する。こういう行動のモチベーションは、「なりたい自分になる」という、自己実現の欲求の表れに他なりません。

 つまり自転車とは、あらゆる欲求が満たされた人が最後に行きつく趣味なのです。たぶん…。

 ですから質問者さんは、今後「自転車のどこが楽しいの?」と聞かれたら、こう答えてください。「そうですね。私は人間の欲求の頂点にある自己実現と向き合っているのです。そして、そのためには自転車がベストなんですよ」と。どうでしょうか? くれぐれも言い方には気をつけてくださいね。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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