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全日本選手権ロードレース男子エリート【詳報】山本元喜が佐野淳哉を振り切る独走勝利 チーム力を生かしてキナンがワン・スリー

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 全日本のタイトルを射止めたのは、チームの戦略を生かし、終盤に数的有利を築いたキナンサイクリングチームの山本元喜だった。背後に迫る佐野淳哉(マトリックスパワータグ)を振り切り、独走でフィニッシュラインへと飛び込んだ。3位にはチームメートの新城雄大が入り、チームが持つ力を存分に発揮したレースとなった。

山本元喜(中央)と新城雄大(右)のワン・スリーとなった全日本自転車競技ロードレース選手権 Photo: Noriko SASAKI

30人強の逃げ集団が序盤に形成

 レースが大きく動くきっかけになったのは1周目。数人がアタックを仕掛けて抜け出す展開が続き、それぞれが合流したことで30人に迫る大集団が形成された。各有力チームが選手を出し合って逃げに乗せた影響で後続のペースはダウン。また、マークされていたディフェンディングチャンピオンの畑中勇介(チームUKYO)や窪木一茂(チーム ブリヂストンサイクリング)がメイン集団内にとどまったこともあり、先方とのギャップは開く一方となる。その差は周回を重ねるごとに広がり、最大9分10秒となった。一方の前方集団では、人数が多いことと、チームの戦略の相違もあり、ローテーションを積極的に行うチームと、消極的なチームが混在。ローテーションに乱れが生じ、分裂と合流が繰り返された。

大逃げをつくった最終便には新城雄大(キナンサイクリングチーム)が乗り、後に仕事を果たす Photo: Noriko SASAKI
序盤から30人以上の大逃げが形成される展開 Photo: Noriko SASAKI
後続はシマノレーシングチームが積極的に牽引 Photo: Noriko SASAKI

 動きが生じたのは11周目。後続のメイン集団では、逃げグループをキャッチするためようやく組織的な動きがみられる。シマノレーシングが積極的に選手を前に集めて牽引。逃げグループのペースが緩んだこともあり、その差は1周に1分以上詰められていった。しかし逃げグループ内では、単独でやや抜け出した樋口俊明(那須ブラーゼン)を追って、上りで石橋学(チーム ブリヂストンサイクリング)と徳田優(チームUKYO)が上りでアタック。これを機に活性化した集団は、下り直後の急な上り返しで岡篤志と鈴木龍(宇都宮ブリッツェン)がペースアップし、セレクションがかけられた。これにより30人ほどの逃げグループは半分近く選手の数を減らした。

活性化する逃げグループ Photo: Shusaku MATSUO

小石のアタックで集団は割れる

活性化した集団から抜け出す小石祐馬(チームUKYO)と山本元喜(キナンサイクリングチーム) Photo: Noriko SASAKI

 勢いそのままに12周目へと入った逃げグループからは、周回路に入って直後、最も長い上りのはじめから小石が鋭いアタックを仕掛ける。山本と小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)が反応するも、小野寺が直後にドロップ。山本と小石がレースをリードした。その後方、約1分後ろでは佐野、小野寺、新城、石橋が2人を追うも、前にチームメートが逃げる新城はローテーションには加わらず脚をためた。

逃げる2人を追う追走集団 Photo: Noriko SASAKI

 2周回を残すのみになった14周回、佐野と新城のみが小石と山本に合流した。アタックが頻発するも、決定的となったのは佐野の動きだ。コース内で最も斜度がある急坂区間、パンチの効いたペースアップで抜け出すと、反応できたのは山本のみだった。小石はやや遅れながら2人を追ったが、追いつきかけた瞬間に後方に控えていた新城が前方へと合流するためアタック。新城は小石を振り切り、合流に成功し、小石は脱落した。

佐野淳哉(マトリックスパワータグ)らのアタックから遅れた小石祐馬(チームUKYO) Photo: Noriko SASAKI
追走からこぼれた石橋学(チーム ブリヂストンサイクリング) Photo: Noriko SASAKI

 3人でファイナルラップへと入った直後の上り、山本が最後のアタックを仕掛けた。佐野とは10秒ほどの差を築き、下りが続く区間へと突入した。「コースは月曜からの走り込みで完ぺきに頭に入り、パワーメーターで今できる最大のペースで踏んだ」と後に振り返った山本は、ペースを崩すことなく佐野を引き離した。ラスト500mに差し掛かる頃、山本の背後に佐野の姿を確認することはできない。独走状態でフィニッシュラインを切った山本は、自身初の男子エリートカテゴリーでの優勝を飾った。2位には32秒差で佐野、3位には山本の勝利に貢献した新城が入り、チームでワン・スリーでの好成績を残した。

独走でフィニッシュラインを切る山本元喜(キナンサイクリングチーム) Photo: Noriko SASAKI
2位の佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が肩を落としてフィニッシュ Photo: Noriko SASAKI
チームメートの優勝を喜びフィニッシュする新城雄大(キナンサイクリングチーム) Photo: Noriko SASAKI
チームの連携が活き、結果に繋がったキナンサイクリングチーム Photo: Noriko SASAKI

 山本はU23(23歳未満)時代、全日本のタイトルに2度輝いた経験を持つが、エリートカテゴリーでは初タイトル。「登坂力に優れた小石をマークして臨みました。彼が動いたタイミングを逃すことなくともに抜け出した後、新城が後続でチェックに入ってくれたのがいいアシストになりました。数的有利だったので勝たなければならないプレッシャーはありましたが、結果を残すことができました」と話し、3位でフィニッシュした新城と喜びを分かち合った。

佐野「キナンに対して策がなかった」

 冷静に状況を判断し、山本の走りを支えた新城は「ロードレースができた」と総括した。「逃げ集団内では山本さんとコミュニケーションを取り合いました。活性化に備えて脚を温存し、山本さんが抜け出した後、自分の仕事をこなしました。自身はエリートカテゴリー1年目で表彰台に乗れてうれしいですね」と好成績に笑顔をこぼした。

「勝つためには集団を木っ端みじんにする脚が必要だった」と振り返る佐野淳哉(マトリックスパワータグ) Photo: Noriko SASAKI

 2位に入った佐野は「石橋と自分には策がなかった」と振り返る。終盤、積極的な走りでレースに絡んだ佐野だったが、キナンサイクリングチームの動きに阻まれる形となった。「序盤にできた逃げ集団内ではローテーションに参加するチームとしないチームに分かれました。自分は前を引きすぎたかもしれません。最後の展開に絡んだ選手はうまく脚をためられた選手です」と解説。「キナンの2人に対して自分ができることはありませんでした。勝利を目指すなら木っ端みじんにする破壊力が必要でしたが、自分に力は残されていませんでした」と続けた。

 優勝を見据えレースを動かすも6位に沈んだ小石は「山本と抜け出したあと、後続が追っていることはわかっていましたが、キナンの選手が入っていたのは想定外でした。そこにウチ(チームUKYO)の選手も乗っていれば違う展開にできたかもしれない。補給には気を付けていたが、最終周回では力を使い果たしてしまった」と悔しさをみせる。

レースを動かすも、望む結果に結び付けられなかった小石祐馬(チームUKYO) Photo: Noriko SASAKI
エリート1年目で大役を果たした新城雄大(キナンサイクリングチーム) Photo: Noriko SASAKI

 メイン集団から終盤猛烈に追い上げ、4位に食い込んだ入部正太朗(シマノレーシング)は「(逃げを見送ったことについては)最初ちょっと割り切っている部分がありました。ちょっと大丈夫かと思っている自分がいたんですかね。正直勝てる脚はあった。チャンスはあったと思うので、4位は悔しいです。自分の最初の判断と、追い切れなかったチーム力全部合わせて、悔しさが残るレースになりました」と自身のレースを振り返った。

6日前から現地入りし、コースプロフィールを熟知して臨んだ山本元喜(キナンサイクリングチーム) Photo: Noriko SASAKI

 ナショナルチャンピオンジャージに袖を通した山本。キナンサイクリングチームは国内最高峰のロードレース「Jプロツアー」にも参戦しているほか、海外のUCIレースにも出場しており、国内外でさらなる活躍が期待される。

全日本選手権ロード・男子エリート(リザルト)
1 山本元喜(キナンサイクリングチーム) 5時間46分53秒
2 佐野淳哉(マトリックスパワータグ)+32秒
3 新城雄大(キナンサイクリングチーム)+2分43秒
4 入部正太郎(シマノレーシング)+4分26秒
5 平塚吉光(チームUKYO)+4分32秒
6 小石祐馬(チームUKYO)+4分39秒
7 中島康晴(キナンサイクリングチーム)+4分44秒
8 井上亮(Magellan Systems Japan)+5分20秒
9 阿曽圭佑(愛三工業レーシングチーム)+5分37秒
10 小森亮平(愛三工業レーシングチーム)

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