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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<7>首絞め強盗に遭った日 踏み込んでしまったパナマの旧市街

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 北中米のゴール地点であるパナマのパナマシティでゴール翌日に首絞め強盗に遭った。パナマシティは他の中米の都市よりも非常に都会だが、治安のいい新市街と治安の悪い旧市街が隣接している所だった。この街では南米に渡るヨットの情報を集めるため旅人が集まるホステルを目指したのだが、目星を付けていたホステルが閉まっており、とりあえず適当な安宿をとってホステルを探していた時だった。その宿はネットが無く、仕方なく「iPod touch」でネットを探しながら歩いていた。

ラスアメリカス橋で感慨に浸るも数センチ横を猛スピードで車が過ぎる Photo: Gaku HIRUMA

蛇のように首に巻き付いてきた手

国道の横道。治安の悪い雰囲気満載で、絶対に近寄ってはならない Photo: Gaku HIRUMA

 今思えばありえないくらい不注意だが、ホステルを探せないとこの先の旅が行き詰まるので焦っていた。画面を見ながら歩いていると、新市街ではなく旧市街に入り込んでしまった事に気づき、次の交差点で新市街に戻ろうと思っていたら、後ろから慌ただしい足音が聞こえた。

 急いでる人が居るのかと道を譲ろうとした次の瞬間─。ぬるっとした汗でにじんだ褐色のキメの細かい肌が、まるで蛇に巻き付かれたかのように後ろから僕の首に巻き付いてきたかと思うと、間髪入れずもう一人がポケットの中をまさぐってきた。

 「やばい。首絞め強盗だ」

 反射的にポケットを手で押さえたが、すぐに弾かれた。面白いもので、いざ危機に直面すると、逆に頭がクリアで冴えわたり、現在の状況と手持ちの貴重品を瞬時に判断できた。取られて困る貴重品は全て宿に置いてきて持っていない。となると抵抗するのは無意味だ。

パナマ運河は観光の目玉だ Photo: Gaku HIRUMA

 そう思うと逆にひも付きの小銭入れを必死にちぎろうとする犯人がまぬけで滑稽に思えてきた。長く感じたが数秒の犯行だったのだと思う。結局最後まで小銭入れの紐は切れずiPodとデジカメだけを持って旧市街の奥へと消えていった。

 もちろん追いかけなんて絶対にしない。すぐに人通りの多い新市街に逃げ込んで声を出した。助けを求めるためではなく、声帯を確認するためだった。大抵首絞め強盗に遭うと気絶させられるか、声帯を痛めると聞いていたからだ。

得体の知れない第6感

パナマ運河にかかるラスアメリカス橋。中米のゴールをここに定めた Photo: Gaku HIRUMA

 声も体も無事だと解ると、安心感と共に恐怖が襲ってた。とりあえず宿に戻って気持ちを落ち着かせてから警察へ向かった。どうせすぐに警察に行ったところで、事態は大して変わらないのだが。

 近くの警察の詰所に行き状況を話すと、大きい警察署へ連れていかれて、日本大使館の方を交えてポリスレポートを作成してもらった。恐縮するくらいパナマの日本大使館の方達には良くしていただき、宿まで送ってもらって一日が終わった。

旧市街にあるホステルから新市街を望む。中米の終わりを肌で感じる Photo: Gaku HIRUMA

 実は首絞め強盗に遭う前日のパナマシティに着いた日、もしかしたら明日首絞め強盗に遭うかもしれないから、カメラのデータをバックアップを取って、パスポートを含む貴重品は全て宿に置いていこうと思った。その得体のしれない‟第六感”のおかげで、被害はバックアップ済みの安いカメラと、すぐに買えて同期できるiPodのみだったのが不幸中の幸いだった。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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