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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<257>ツールに向け有力選手が順調な調整ぶり ポート、サガン、ウランらが前哨戦で手ごたえ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 6月に入って各地で行われてきたレースが大詰めを迎えている。Cyclistで連日レポートをお届けしてきた クリテリウム・ドゥ・ドーフィネツール・ド・スイスのほかにも、ツール・ド・スロベニア(UCIヨーロッパツアー2.1)やルート・ド・オクシタニー(フランス、同)などで、ツールの主役候補たちが顔をそろえた。そこで、今回は本番さながらの熱戦が繰り広げられた各地のレースをおさらい。注目される選手たちの動向もピックアップする。

ツール・ド・スイス2018の総合上位3選手。左から2位ヤコブ・フルサング、1位リッチー・ポート、3位ナイロ・キンタナ。いずれもツール・ド・フランスに向けて手ごたえをつかんでいる =2018年6月17日 Photo: YSP

ポートを中心にまとまりを見せるBMCレーシングチーム

 6月9日から17日まで、9ステージで争われたツール・ド・スイスは、迫るツール本番でのマイヨジョーヌ候補たちが順当に上位進出。個人総合優勝のリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)、2位ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)、3位ナイロ・キンタナ(スペイン、モビスター チーム)は、そのままツールの表彰台へ上がっても不思議ではない顔ぶれだ。

ツール・ド・スイス第1ステージ、チームタイムトライアルで快勝したBMCレーシングチーム。ここから勢いに乗った =2018年6月9日 Photo: YSP

 レース詳細は各ステージのレポートをご覧いただくとして、改めて振り返ってみるとBMCレーシングチームの独壇場ともいえる今年のスイスだった。第1ステージのチームタイムトライアルを制して以降、リーダージャージを着用したのはシュテファン・キュング(スイス)とポートのBMC勢2人。リーダーだった大会前半のキュングは危なげない走りが光り、最終日の個人タイムトライアルでも快勝。ジャージを受け継いだポートは、ステージ優勝こそなかったが、要所で攻撃に転じ、好調であることを示す走りだった。

ツール・ド・スイスを制し、来るツール本番への弾みとしたリッチー・ポート =ツール・ド・スイス第6ステージ。2018年6月14日 Photo: YSP

 メインスポンサーのBMC社のお膝元での戦いであることに加え、来シーズンのスポンサーが不透明な情勢から、チーム力をアピールするねらいもあり、意識的に今大会に注力したBMCレーシングチーム。とはいえ、山岳やタイムトライアルで強さを発揮し、これらの比重が高まると見られるツール本番に向けて、好材料を得られたといえそうだ。

 スイスを戦ったポートやキュング、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)、サイモン・ゲランス(オーストラリア)に加え、ツールではドーフィネ総合5位のダミアーノ・カルーゾ(イタリア)が合流予定。メンバーの充実で、戦術の幅が広がりそうだ。

フルサング、キンタナ、サガンもツールで活躍の兆し

 表彰台の一角を確保し、調整が順調であることをうかがわせたのがフルサングとキンタナ。それぞれ、ポートとの総合タイム差は1分2秒、1分12秒だったが、数字だけではなくその仕上がりに満足をしている様子だ。

ツール・ド・スイス個人総合2位のヤコブ・フルサング。この時期のコンディショニングには一日の長がある =ツール・ド・スイス第9ステージ、2018年6月17日 Photo: YSP

 昨年はドーフィネで個人総合優勝、今年はスイスで2位となったフルサングは、「ツールに向けて仕上がりは上々」とコメント。この時期のコンディショニングに自信を深めているよう。

 一方で、キンタナは「レースこそがツールのチームリーダーを決める要素になる」と述べる。というのも、モビスター チームはシーズン当初からキンタナに加え、アレハンドロ・バルベルデとミケル・ランダ(ともにスペイン)による“トリプルリーダー態勢”を組んでツールに臨むと公言。本来であれば、スイスにもこの3人がそろって出場する予定だった。

ツール・ド・スイス第7ステージで勝利したナイロ・キンタナ(左)。“トリプルリーダー態勢”の一角としてツールへと乗り込む =2018年6月15日 Photo: YSP

 ステージ1勝に加えて総合表彰台に上ったキンタナに対し、ランダは個人総合16位。本人は調整途上であることを示唆しているが、ツール本番では果たして。現状では3人のうち誰を中心に戦術を組み立てるかは決まっていないといい、戦いを進める中から判断されることになるようだ。

 そのほか総合系ライダーでは、5位のウィルコ・ケルデルマン(チーム サンウェブ)、8位のステフェン・クライスヴァイク(ロットNL・ユンボ)のオランダ勢もしっかりとまとめている。ここに、ジロ・デ・イタリア個人総合2位のトム・デュムラン(チーム サンウェブ)が加わる可能性が高まっており、オランダ人オールラウンダーがツールで躍進する期待が膨らんでいる。

 スプリンターでは、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が貫録のポイント賞でツールへの足掛かりを作った。ステージ優勝こそ1つにとどまったが、スプリントステージではコンスタントに上位進出を果たし、ポイントを積み重ねる得意のパターンに持ち込んだ。やはりツール本番でもこのような戦い方になるだろう。もちろん、ステージ優勝へのこだわりも見せるだろうが、何といっても歴代トップタイとなる6度目のマイヨヴェール獲得へ、そして失格となった昨年の雪辱を期して臨むことになる。

 サガンは6月24日にスロバキア選手権ロードレースに出場。その後はさらなる調整を進めて、ツール開幕に備える予定としている。

ツール・ド・スイス第2ステージを制したペテル・サガン。6度目のマイヨヴェールを目指してツールに臨む =2018年6月10日 Photo: YSP

ログリッチェ、バルベルデがヨーロッパツアー勝利

 有力選手が参戦したツール・ド・スロベニア(6月13~17日)は、地元の期待を受けて出場したプリモシュ・ログリッチェ(ロットNL・ユンボ)が個人総合優勝。リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が同2位に続いた。

地元開催のツール・ド・スロベニアを制したプリモシュ・ログリッチェ Photo: Tour de Slovénie

 総合争いは、山岳にカテゴライズされた第3ステージで、ウランが勝利し個人総合首位に浮上。しかし、続く山岳の第4ステージでログリッチェが後続を大きく引き離す圧勝劇。リーダージャージ奪取に成功する。最終の第5ステージは21.5kmの個人タイムトライアル。ここはスペシャリストのログリッチェが貫録勝ち。総合リードを広げて、優勝を確定させた。

 最終的な総合タイム差は1分50秒だったログリッチェとウラン。それでも、ウランはステージ優勝を挙げられたことを収穫とし、タイム差は気にしていないと話す。春のクラシック以降、久々のレースで体調の良さを実感できたことに満足しているようだ。個人総合2位と躍進した昨年のツールに続くことができるか。自国でのうれしいタイトル獲得となったログリッチェは、4月のイツリア・バスクカントリー(スペイン)、ツール・ド・ロマンディ(スイス)に続く、出場したステージレースで3連勝。ツールではクライスヴァイクの山岳アシストのほか、タイムトライアルステージを中心にステージ優勝を狙う構えだ。

 また、この大会にはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)とマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)の両スプリンターが出場したが、ともに不発。スプリントで争われた第1、第2ステージでは、好位置から勝負に出たカヴェンディッシュだったが、加速しきれず途中で踏みやめてしまった。この後、7月1日のイギリス選手権ロードレースに出場を予定しており、ツールへの最終準備を急ぐことになる。

フランスで行われたルート・ド・オクシタニーはアレハンドロ・バルベルデが個人総合優勝。体調の不安を払拭した Photo: La Route d'Occitanie / H.Jean

 14日から17日までフランス南西部で行われたルート・ド・オクシタニーは、バルベルデが個人総合優勝した。昨年まではルート・ドゥ・スッドとして知られた、フランス伝統のレース。今回から大会名を新たに開催された。

 バルベルデは、全4ステージで唯一の本格山岳となった第3ステージを“予定通り”制覇。続く第4ステージへはスプリントに加わると、2位でボーナスタイムを獲得。個人総合2位のダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ)に対し、14秒差で今年の覇者となった。

 出場を予定していたツール・ド・スイスは体調不良で回避したが、急遽出場したこの大会で回復ぶりをアピール。キンタナやランダとの共闘となるツールへ、視野は明るい。

今週の爆走ライダー−クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 日頃のトレーニングで思い描いていたというシチュエーションが、思いがけずやってきた。ツール・ド・スイス第4ステージ。強い雨の影響でスプリント態勢が整わないメイン集団を尻目に、ペダルにひたすら力を込めて走った。飛行場の滑走路がコースとなった最後の2kmも独走。想像し続けていたという、自らが勝つ瞬間を現実のものとしたのだった。

ツール・ド・スイス第4ステージ、逃げ切りで真っ先にフィニッシュに飛び込んだクリストファー・ユールイェンセン。「フィニッシュラインをトップ通過する」という希望を成就させた瞬間だった =2018年6月12日 Photo: YSP

 2012年のプロ入り以来、アシストしての働きに限らず、チャンスを生かして上位進出する走りを高く評価されてきたが、本人はいまひとつしっくりきていなかった。意外にも、トップでフィニッシュラインを通過した経験がなかったのだという。2015年にはデンマーク王者になったが、それは個人TTでのもの。また、同年にはツアー・オブ・デンマークで個人総合優勝に輝いたが、ステージ優勝は挙げていなかった。そして、ついにきた記念すべき日はスタート直後から逃げ続け、後続を振り切っての快勝。まぎれもなく、キャリア最大の勝利となった。

 ジロを走り終えて、シーズン前半戦の締めとして臨んだスイス。集中力を保つことが大変だったというが、一方でイタリアでの3週間を通じて体調のよさ感じていたとも。逃げている間も、ステージ優勝争いに転じることができると考えていたというから、彼にとって勝つための条件がすべてそろっていた1日だったのだろう。

 2月のシーズンイン以降レース数を多くこなし、慌ただしい日々が続いたが、まもなく開催される国内選手権が終われば、しばしの休息を迎える。バカンスの前にもう一仕事、ロードでのデンマークチャンピオンジャージ獲得を目指す。プロ7年目、やっとの思いで「フィニッシュラインをトップ通過すること」が実現したが、案外早く次の機会がめぐってくるかもしれない。

逃げや堅実なアシストでビッグネームからの信頼も厚いクリストファー・ユールイェンセン。今年は2月のシーズンインから数々のレースに出場している =ジロ・デ・イタリア2018第8ステージ、2018年5月12日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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