ツール・ド・スイス2018 第7ステージキンタナが超級山岳ゴールを独走して優勝 ポートは手堅く区間3位で総合首位堅守

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 ツール・ド・スイスは6月15日、第7ステージがエッシェンバッハからアローザまでの170kmで行われ、ゴールへ至る27kmの超級山岳の麓からアタックしたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)が、最後は独走へと持ち込んで区間優勝を挙げた。個人総合首位のリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は3位でフィニッシュし、マイヨジョーヌをキープしている。

超級山頂フィニッシュを制したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)がステージ優勝 Photo: YSP

29人の逃げが先行

 今年のツール・ド・スイスの山岳3連戦、最終日となるこの日は、いよいよ超級山岳ゴールが登場した。レース前半は3級山岳1つを含むアップダウンをこなし、中盤から後半にかけてはほぼ平坦が続くが、最後に登坂距離27.4kmという長い長いアローザへの上りが待ち受ける。平均勾配は4.2%と高くないものの、上り始めの約5kmと終盤ゴール近くまでの約3kmは、ともに10%ほどの急勾配が続き、全体の距離の長さも相まって勝負を分ける大きなポイントだ。本格的な山岳はこの日が最後。ピュアクライマーにとっては、ライバルにタイム差を付ける最後のチャンスの一日となる。

30人近い逃げ集団が形成 Photo: Tour de Suisse

 レースは前半から29人という大人数の逃げが形成された。山岳賞ジャージを着るマーク・クリスティアン(イギリス、アクアブルースポート)や、ディレクトエネルジーのエースのリリアン・カルメジャーヌ(フランス)、地元スイスのベテラン、ミヒャエル・アルバジーニ(ミッチェルトン・スコット)といった有力選手が複数含まれ、リーダーチームのBMCレーシングもグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)という大物を送り込んだ。

 逃げには総合20位でタイム差も1分59秒というタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ プロチーム)といった比較的上位の選手も含まれたため、メイン集団は大きなタイム差を容認しなかった。BMCとモビスター チームのアシストが後半にかけて、タイム差を2分ほどにキープ。逃げ集団内での意思も、逃げ切ってのステージ優勝を狙う選手と、最後の山岳でエースをアシストするために“前待ち”をする選手と、異なる思惑をたたえながら、終盤のアローザの上りへとレースは進んでいった。

クリスティアンは山岳賞ジャージをほぼ手中に収めた Photo: YSP
マシューズがポイント賞ジャージを奪取 Photo: YSP

 途中2度の中間スプリントは、逃げに乗ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)がともに先頭で通過。ポイントランキングで首位に立ち、この日ポイント賞ジャージを獲得した。

キンタナが上り最初からアタック

 アローザの上りに入ると、先頭集団では徐々にセレクションがかかり、人数は半分ほどになった。序盤の急勾配区間の途中でジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)がアタックして単独に抜け出すことに成功した。

逃げ集団が最後の27kmの上りへと突入 Photo: Tour de Suisse

 2分差で上りに入ったメイン集団では、すぐさまキンタナがアタックを仕掛けた。軽快なダンシングで単騎抜け出し、後方からポート、そしてヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ)が追いかけ合流するものの、たちまちメイングループは4人のエースに絞られることになった。

 4人のグループになって少々様子を見ていたキンタナだったが、急勾配区間が終わる前に再度のアタックを仕掛けて抜け出した。ポートは自らの追走は行わず、いったん後方から追い付いてきたアシストのティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)に集団けん引を任せ、キンタナの先行を容認する構えをみせた。

山岳後半まで単独逃げたドンブロウスキーが敢闘賞 Photo: YSP

 一方のキンタナは、逃げ集団から下がってきたアシストのビクトル・デラパルテ(スペイン、モビスター チーム)と合流すると、デラパルテのけん引を使って、ドンブロウスキーを除いた逃げのメイングループまで追い付くことに成功した。デラパルテが力尽きた後は自ら集団の先頭に立ってペースを上げる。

 ポートの集団では、こちらも逃げに乗っていたヴァンアーヴェルマートが合流。上り中盤の緩斜面区間で、キンタナの集団を猛スピードで追いかけた。山岳スペシャリストのキンタナと、リオデジャネイロ五輪の金メダリストにしてクラシックハンターのヴァンアーヴェルマート。実力者2人の綱引きは、ほぼ互角で推移した。その間に先頭を行くドンブロウスキーはついにキンタナに捕らえられ、キンタナが正真正銘の先頭に立った。

キンタナ総合2位浮上も、ポートは“リード拡大”

 ラスト5kmを切って終盤の急勾配区間に入っても、キンタナは先頭でペースを緩めない。後ろに付いていた逃げグループの選手を振り切って、最終的には独走になった。

終盤の急勾配区間で独走へと持ち込んだキンタナ Photo: YSP

 追走するポートの集団では、急勾配区間の入口でヴァンアーヴェルマートが一気にペースを上げて離脱。そのままの勢いでポートが追走のアタックをかけた。30秒あったタイム差を一気に15秒差まで縮め、先頭のキンタナを追いかける。

キンタナを追ってアタックしたポート Photo: YSP

 両者の差は視界に捉えられるまで縮まっていた。ポートは後ろから追い付いてきたフルサングと合流。協調してキンタナを追うものの、残り2kmにきてタイム差は縮まらなくなった。最後まで軽やかで力強いヒルクライムをみせたキンタナが、後続を振り切って独走のゴール。ライバルに最大限のタイム差を付けるため、フィニッシュラインを越えてからのガッツポーズとなった。キンタナはボーナスタイムも得てこの日、ポートから17秒差の総合2位までジャンプアップに成功した。

 キンタナはツール・ド・スイスでは初勝利。レース後は「この山頂フィニッシュは自分にとって、ツール・ド・フランスに向けての大きなテストだった」とロングスパートの理由を語った。テストは成功。悲願のツール総合制覇に向けて仕上がりは上々だ。

2位、3位でゴールするフルサングとポート Photo: YSP

 ステージ2位はフルサング、ポートは3位に入った。ポートはキンタナには詰め寄られたものの、タイムトライアルに強いウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)らとのタイム差は逆に開くことに成功。キンタナはタイムトライアルを得意としないことから、ポートの個人総合首位の座は、より強化されたといえるだろう。

 なお日本から出場の初山翔、伊藤雅和(ともにNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)は、2人とも29分57秒遅れの最終グループで完走している。

キンタナは総合でも2位に浮上 Photo: YSP

 ツール・ド・スイスは残すところあと2日。最終日のタイムトライアルを前に、第8ステージはベッリンツォーナの周回コースを使った123kmで行われる。山岳ポイントは設けられないものの、ノコギリのような細かいアップダウンが続き、展開次第では選手の脚を削るだろう。まずはステージ争い、そしてポイント賞争いに注目の一日となる。

第7ステージ結果
1 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) 4時間1分39秒
2 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +22秒
3 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
4 グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +38秒
5 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)
6 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
7 イゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)
8 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +50秒
9 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)
10 サム・オーメン(オランダ、チーム サンウェブ) +59秒
129 初山翔(日本、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +29分57秒
130 伊藤雅和(日本、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)

個人総合時間賞
1 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム) 26時間6分10秒
2 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +17秒
3 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +52秒
4 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) +53秒
5 サム・オーメン(オランダ、チーム サンウェブ) +1分13秒
6 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +1分28秒
7 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +1分31秒
8 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +1分37秒
9 シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン) +1分48秒
10 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +2分26秒
131 伊藤雅和(日本、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +1時間38分1秒
138 初山翔(日本、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +1時間44分5秒

ポイント賞
1 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) 24 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 22 pts
3 カルヴィン・ワトソン(オーストラリア、アクアブルースポート) 19 pts

山岳賞
1 マーク・クリスティアン(イギリス、アクアブルースポート) 36 pts
2 ネイサン・ハース(オーストラリア、カチューシャ・アルペシン) 32 pts
3 ロマン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー) 24 pts

新人賞
1 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) 26時間7分3秒
2 サム・オーメン(オランダ、チーム サンウェブ) +20秒
3 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル) +2分22秒

チーム総合
1 アスタナ プロチーム 77時間45分41秒
2 アージェードゥーゼール ラモンディアール +1分42秒
3 モビスター チーム +3分50秒

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