TKCプロダクションズ・森本禎介さんのレポート「シーオッター・クラシック」 世界で最も人気のあるMTBエンデューロ参戦記

  • 一覧

 今年で26度目を迎える、全米最大の自転車の祭典「シーオッター・クラッシック」が4月11~14日、アメリカ・カリフォルニア州で開催されました。全米だけでなく、世界中から自転車好きが集まる大会や、アメリカの最新事情を、TKC Productions(ティーケーシープロダクションズ)代表の森本禎介さんにレポートしてもらいました。

◇         ◇

 Photo: Teisuke MORIMOTO

7万観客集まる「ラグナセカ」が舞台

 シーオッター・クラッシックをご存じでしょうか? 1993年よりカリフォルニア州モントレーにあるレーシングサーキット、ラグナセカにて開催されている自転車イベントで、サーキットを使用したロードレースからサーキットの外に広がるトレイルを走るMTBレース、デュアルスラロームからエンデューロ、さらにはシクロクロスまでとありとあらゆるレースがスケジュールに組み込まれており、さらにはグランフォンドのような非レースのバイクライドさえも開催されています。

 エキスポブースには50社、900ブランドが出展し、9800人のアスリートに7万4000人の観客が集うという、世界最大規模の自転車イベントです。国内で例えるなら、鈴鹿ロードとシマノ・バイカーズフェスティバルとサイクルモードを一緒にしたようなイベントと言えるでしょう。

 Photo: Teisuke MORIMOTO

エントリー費は60ドル

 筆者はこの15年間、シーオッター・クラッシックには断続的に参加していましたが、撮影であったり取材であったり、あくまでも仕事としてであったので、常に「いつかは参戦したい」という思いを抱き続けていました。今回は、シマノのマウンテンバイク用コンポーネントの新型XTRが発表されるとの噂を小耳に挟み、ならワシントン州やオレゴン州でのトレイルライドを挟みながら、弊社の取引先の多いポートランドへも足を伸ばす出張にしてみようと言うことで、急遽MTBエンデューロ種目へのエントリーを決めました。

 あまりに直前だったため、60ドルのエントリー費にはレイトフィー20ドルが加算され、合計80ドルとなりました。さらにプロクラス以外に参加する場合にはアメリカの競技団体であるUSAサイクリングのワンデイライセンスを購入する必要があったため、現地で10ドルを支払い購入しました。

 Photo: Teisuke MORIMOTO

 4月18日の夕方に出国して同日昼頃にサンフランシスコ国際空港に到着。そのままレンタカーをピックアップして2時間ほど南下するとラグナセカに到着します。くしくもサーキットの命名権を保持していたマツダの契約が2018年3月で終わり、ウェザーテックへと変わったばかりのサーキットはまだ改修中で、入り口には別れを惜しむようにルマン24時間を制したレナウン・チャージカラーの787Bを模した巨大なボードが置かれていました。

前日レジストレーションに40分

 Photo: Teisuke MORIMOTO

 会場でまずすべきはレジストレーション(受付)です。明日のレースのためゼッケンとリストバンドを受け取る必要があるのですが、巨大な駐車場に車を置いてから向かったレジストレーションの建物は参加者で溢れており、主にそれは筆者のエントリーしたエンデューロの列でした。40分以上は待ったと思うのですが、我慢強いのがアメリカ人です。

 ゼッケンを受け取るとラグナセカから30分ほど内陸に入ったサリナスという街のモーテルにチェックインし、手早くMTBを組み立ててから長距離移動でカチコチになった足をほぐすためにトレイルライドへと向かいました。夕方7時から日没の8時まで1時間のクイックなライドでしたが、最高の風景の中走る最高のトレイル、明日への最高のウォーミングアップとなりました。

 Photo: Teisuke MORIMOTO

朝5時起床、タコベルへ

 Photo: Teisuke MORIMOTO

 レース本番の朝は早いです。5時に起床、30分後には出発して近隣のタコベルでドライブスルーして車内で食べながら会場に向かいます。MTBの世界でエンデューロというと長時間の耐久レースではなく、ダウンヒルのステージレースを意味します。ステージ間の移動は計測されないリエゾン区間ですが、存分に上りや下りが含まれる場合が多く、そこでのパンクやトラブルなどにも全て自分で対処する必要があり、基本的にはサポートはありません。

 この日のエンデューロは4ステージあり、最初のステージはDHコースをフルに使い、第2ステージと第3ステージは試走ができない未知のトレイル、第4ステージはデュアルスラロームのコースを使います。

 Photo: Teisuke MORIMOTO

 第1ステージの試走が7時30分からなので、用意をして少し早めの7時前にDHコースのスタート地点に向かうと、驚くべきことに既に試走待ちの大行列で参加者の高い意識に驚かされました。行列の前の方を見るとスペシャライズド・レーシングチーム所属のエンデューロ第一人者ジャレッド・グレイブスなどの姿も見え、プロからアマチュアまで等しく試走開始を待ちます。

 このDHコースは何十年にも渡り使われているクラシックなコースで、比較的イージーなコースだと一般的には言われているのですが、いざ自分がこのコースをハードテイルで走ると非常にハードなコースで、チューブレスホイールがリム打ちを繰り返し、油断すると勝手に飛ばされてしまうようなジャンプや、確信を持って曲がれないようなバンクが連続し、フィニッシュラインを通過した時には全ての自信を失っていました。

数々の激闘を繰り広げた名コース

 Photo: Teisuke MORIMOTO

 失った標高150mを再び自走で登り返し、試走2本目はもう少し押さえてコースを覚えながら確実に走ることを目標としたのですが、狭いセクションでも他のライダーにどんどんと抜かされます。よく分からないままに2本目の試走を終えると、次は第4ステージで走るデュアルスラロームのコースに向かいます。シーオッタークラッシックと言うとこのバンクが深く作り込まれたデュアルスラロームのレースが有名で、世界的なトップレーサーが数々の激闘を繰り広げた名トラックです。エンデューロではスタートから見て右側のコースをのみを使用します。

 試走1本目は深いバンクに張り付くような横方向にGに感動し、コース後半の左右に旗門を縫うように走るセクションの難しさを痛感します。計3本走ったのですが、感想としては最初の2コーナーがフラットコーナーで曲がりにくい、というのと途中の小さなドロップオフが危ないという2点だけ注意すれば最高に楽しいコースということでした。

 Photo: Teisuke MORIMOTO

 そうこうしているうちにレース時間が近づいてきました。第1ステージのスタート地点で再び並ぶのですが、既にプロ男子は9時にスタートしており、筆者のオープン男子40-49は11時30分スタートで、ゼッケン順ではなく、並んだ順となるので試走と同じく相当早くから多くの選手が並んでいました。同じクラスの選手も多くはチームジャージで決めており、バイクもビシっと決まっており、全員が速く見えます。しかし、長年アメリカのMTBレースを見ているので筆者は知っています。見た目ほど速くはないし、彼らも同じ人間ということを。ここで怖気付くとメンタルゲームで負け、そしてレースでも負けることになるのです。

 カウントワンでスタートを切るとすぐ変速し、最初の直線ですぐにDi2のシフターが「ピッ」となり34×11が回り切ってしまいます。テーブルトップも飛ばされないように極力抑え、バンクは慎重に曲がり、緩い上り返しはなるべくダンシングを入れます。途中の直線で一人の選手に抜かれるのですが、その彼はイケイケな走りであっと言う間に見えなくなります。

 「落車しない」という目標を優先に、その範囲で全開走行してフィニッシュラインを切ったのですが、残念ながらハイタッチをする友人もいないため、黙々と第2ステージのスタート地点を目指して登り返します。リアにサスペンションを持たないハードテイルという、今や絶滅危惧種での参戦であるため、登りは他の選手に比べて軽く、ゴボウ抜きです。

 第2ステージのスタート地点まではサーキットから離れて自然公園の中のような雄大な景色を見ながら走ることになるのですが、起伏も多く、路面も意外と荒れており、パンクに注意を払いながら向かいます。移動のリエゾン区間はレースではないのですが、手を抜いて走っている選手はいません。

 Photo: Teisuke MORIMOTO

 これは後から分かったのですが、リエゾンで頑張って前に行けば行くほど前にスタートしている速いクラスに混じって走ることができるため、シングルトラック区間など狭い所で遅い選手に詰まってタイムを失うことがないのです。しかし、筆者は逆にハードテイルという特性上、下りではタイムが遅い割にリエゾン区間でタイムを稼いでしまい、結果的に前後に速い選手に挟まれることになり、この第2ステージでは1人の選手がシングルトラックで筆者に追いついて、数十秒に渡って譲ることができなったため、相当のタイムを失ったものと思います。5分22秒でフィニッシュした後に謝りに行ったのですが、彼はイライラを噛み殺していました。

 第3ステージは筆者で4分21秒のタイムでフィニッシュしているのですが、スタートからいきなり上りで、全開でダンシングです。下りに入ってからも心拍は上がりっぱなしで、この初見の状態でタイトなカリカリに乾いたシングルトラックを走るのは相当難しく、さらにフィニッシュまで再び登り返してゴールです。既にDHコースのフィニッシュから3回登り返し、3ステージを消化しながらリエゾン区間を移動してきたので疲れが蓄積しているのですが、第4ステージのスタート地点までの間に待ち受ける獲得標高250mの峠はゾンビの様に登ることになります。

来年は4月11日から、ぜひ参加を

 Photo: Teisuke MORIMOTO

 かのマーク・マルケスやバレンティーノ・ロッシが大胆なオーバーテイク見せたコークスクリューが見えてくるとそこはスタート地点間近です。ようやくウィニング・ランのようにリラックスしてスラロームを走りレースを無事終えました。翌日にはオンラインでリザルトが確認できるのですが、103人出走して67位という予想以上に良い結果を残すことができました。

 シーオッター・クラッシックのエンデューロ種目はDHコースとデュアルスラロームコースを含む4ステージを60ドルで走ることができ、満足度は非常に高かったです。これで満足できないライダーはいないでしょう。レジストレーションの行列でも明白でしたが、世界的に現在最も人気のあるMTBの競技種目がエンデューロというのは納得できました。もし5日間ほどのオフが取れるなら、ぜひ参戦をお奨めします。来年は4月11〜14日の開催となります。

 そういえば、新型のXTRは発表されませんでした。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

マウンテンバイク

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載