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力を引き出すアミノバイタル<2>世界最高齢85歳のアイアンマン・稲田弘さん 猪野学さんに愛のムチ「成長に限界はない」

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 スイム3.8km、バイク180km、ラン42.195kmという3種目を走破するレース「アイアンマン」。想像を絶する過酷さだが、もっと信じ難いことに、このレースを80代で走り切る現役アスリートがいる。稲田弘(ひろむ)さん。御年85歳、世界最高齢の“鉄人”だ。完走すれば最高齢記録が塗り替えられるギネス記録保持者の稲田さんだが、いまなお「バイクはまだ速くなっている」と日々練習に励む。かたや、40代半ばにしてヒルクライマーとしての限界を感じているという“坂バカ”俳優の猪野学さん。強靭な肉体と精神をもつ大先輩の“鉄人”に教えを乞うべく、稲田さんの元を訪れた。

「バイクパートは日々進化している」という85歳のアイアンマン・稲田弘(ひろむ)さんと、稲田さんのペダリングに驚く猪野学さん =稲毛インターナショナルスイミングスクール Photo: Naoki OHOSHI

69歳でロードバイクをスタート

猪野 トライアスロンを始められたきっかけは?

稲田 まず、60歳の定年で退社した3日後に水泳を始めました。その3、4年後に水泳とランニングを組み合わせた「アクアスロン」という競技が初めて行われて、それに水泳仲間と遊び半分で出場したんです。学生時代は山岳部で、練習の一環で走っていたのでランは苦手じゃなかったのでね。

稲田さんとの初めてのご対面に感激する猪野さん Photo: Naoki OHOSHI

 すると、その会場にトライアスリートがバイクに乗って颯爽と現れたんです。その姿がものすごくかっこよくて!それが自転車との出会いでした。そこで「自転車乗りたい!」って思ったんです。当時69歳で、さすがに今から始めるのはちょっとカッコ悪いかなと思って悩んだんですけど、思い切って20万円ほどの「インターマックス」のロードバイクを購入しました。

 乗ってみたらものすごく楽しくて! あんなに風を感じる乗り物ってそれまで知らなかったので、その気持ち良さにすっかりハマっちゃって毎日サイクリングロードを走っていました。こうしてスイム、ラン、バイクが揃った翌年、千葉の幕張トライアスロンが開かれるというので、じゃあやってみようということで軽い気持ちで出場したのがきっかけでした。

稲田弘さん。1932年生まれ。60歳で水泳を始め、69歳からロードバイクを始める。翌年70歳でトライアスロンに初出場し、2009年に76歳で五島列島で開催されたアイアンマンジャパン(当時)に出場するもランで制限時間オーバーとなり失格、初めて挫折を味わう。2012年、80歳でアイアンマン世界選手権を初完走し、83歳のとき2度目の完走で世界最高齢アイアンマンとなる Photo: Naoki OHOSHI

猪野 僕も3種目できなくはないんですけど、全てを一度にやるトライアスロンには、まだ「壁」を感じてしまうんです。

稲田 私にとっては自分がしていることの“延長”でした。スイム、ラン、そこにバイクが加わって3種目揃った。もっとも、最初に出たときは脚がつってバイクでこけたりもして、ちょっとみっともなかったんだけど(笑)。

数々のレースをともにしてきた相棒「CEEPO」(シーポ)の「KATANA」 Photo: Naoki OHOSHI

猪野 初トライアスロンは完走したんですか?

稲田 完走しちゃったのがまずかったかなって(笑)。それでまた出たいという気持ちになって、年間大体3~4カ所くらい出場していました。達成感は…とくになかったですね。限りなくビリに近かったんで(笑)。制限時間内に完走できたことにほっとしたけれど、嬉しいという気持ちはなかった。でも僕より若い人がうしろに2、3人いたから「俺もまだまだいけるかな?」という気持ちになりましたね(笑)。

76歳でアイアンマン初挑戦

猪野 そこからアイアンマンになるまでの道のりは?

稲田 76歳のときに初めて長崎県の五島列島で開催された「アイアンマンジャパン」(当時)に出場しました。それまではアイアンマンのおよそ半分の距離にあたる「ミドル」という種目に出場していましたが、「まだできるな」という気持ちがあったんで、その翌年に軽い気持ちでアイアンマンに出場したんです。

すごいことをさらりと話す稲田さんに思わず唖然とする猪野さん Photo: Naoki OHOSHI

 けっこうバイクにも乗れるようになっていたし、ランのタイムもそんなに落ちていなかったので、自分としては軽い気持ちで出場しました。でも見事に失敗しちゃって(笑)。んもー、とにかくバイクがね! 180kmだけど平地がなくてほとんど坂ばっかり! バイクに8時間以上かかって制限時間ぎりぎり。ランに入ったらあと5時間しかありませんでした。

 フルマラソン単独だったら走れるけど、バイクで脚を使っちゃってるし体もダメージを受けている。こりゃやばいなーと思っていたら、ランに入った途端にやっぱり脚がつっちゃった。少なくとも完走だけはしたいと思ったんだけど、21kmあたりで制限時間となってしまいました。それが自分にとって初めての失敗でした。

初挑戦のアイアンマンを完走できなかったことで、新たな道が開けた Photo: Naoki OHOSHI

 タオルを頭からかぶって、うつむいていたところに、たまたま大会役員の人が通りがかり、「自己流でやっていたんではダメだ。千葉の稲毛にトライアスロンクラブがあるから、そこで教わるといい」といって、ここのクラブを紹介してくれたんです。ただ、ここはオリンピアンも育成しているクラブで、そんなものすごいところに僕みたいな年寄が入れるわけないと思って迷いました。

 3カ月間考えて、ようやくクラブの門を叩いたところ「会費さえ払ってくれれば良いですよ」って(笑)。それでここに通い始めました。そしてコーチに教わり、作ってもらった練習メニューがオリンピアンと同じメニューでした。

猪野 どんな練習内容なんですか?

稲田 朝6時からスイムが始まるんですけど、75分泳いだ(3000m)あと、朝食を摂り、それからバイクのトレーニング。アップダウンが激しい道を70km走ったり、100~150kmのロングライドを走ったり、強度を変えて週に3回トレーニングを行います。バイクは一斉スタートで僕はすぐにちぎれて、そのあとは完全に一人旅(笑)。自転車は皆の倍時間がかかります。

2016年のアイアンマン世界大会でバイクセクションを走る稲田弘さん 画像提供: Hiromu INADA

 その後、体を休ませながら4kmほどジョギングします。これらを続けて行うということに意味がある。疲れているときにどれくらい走ることができるか。スイム、バイク、ランの流れに体を慣れさせないといけないんです。

猪野 すごいですね! それが1日の練習で、週何回行うんですか?

稲田 週に1回、仕事でNHKラジオの国際ニュースを手伝っているんですけど、日曜日にその仕事があるのでそこだけは完全休養です。あとは何かしら練習しています。

猪野 仕事ですけど、筋肉の休養日ってことですね(笑)。最初からそのメニューをこなせたんですか?

稲田 最初はできなかった。でも、とにかくやらないとダメだって言われて、やっていくうちに徐々にね(笑)。途中に休憩を挟みつつ、時間配分とペースを考えながら走ります。最近は瞬発力はなくなってきたけれど、しぶとく粘ることはできるので、長時間パフォーマンスを持続するための練習ばかりしています。

パフォーマンス維持の源

猪野 85歳の方と話をしているとは思えませんが…(汗)。それだけ厳しいトレーニングをしたあとはどのように体をケアされているんでしょうか?

レース中にもアミノ酸を摂るという稲田さん。「アミノ酸を摂ると摂らないでは後半が大きく変わってきます」 Photo: Naoki OHOSHI

稲田 プロテインやアミノ酸は必ず摂っています。プロテインはトレーニング後に。レースのときはアミノバイタルのジェルを必ず使っている。レース中はとくにBCAA(必須アミノ酸)を意識して摂るようにしています。

 アミノ酸を摂ると、摂らないでは調子が違う気がします。バイクに乗ってる間は補給食を食べますが、アミノ酸は必ずスタート前とレース中に摂るようにしています。バイクセクションではボトルにアミノ酸のジェルを少し水で薄め、そこに塩を加えたものを携行しています。もう一本のボトルは水で、この2つを手元のボトルケージに入れておきます。

猪野 そういうスペシャルドリンクって、自分で考えるんですか?

稲田 いえいえ、人の真似です(笑)。長い距離はそういう工夫をしないとね。時間も自分で考えて15分おきに摂るようにしています。夢中になって補給を忘れてしまうときがあるんだけど、そうすると後半確実に脚が回らなくなったり、脱水が起こる。でもこれがあると極端なエネルギー切れのような状態にはなりません。

「『アミノバイタルGOLD』、BCAA(必須アミノ酸)が3600mgも入ってる」と稲田さん。栄養に関する知識も豊富 Photo: Naoki OHOSHI

猪野 食事も相当量召し上がるんですか?

稲田 僕の年齢にしては少し食べ過ぎかもね(笑)。でも食べないともたない。やたら腹が減るんです。でも栄養のバランスは気を付けています。

猪野 ご自身で料理されるんですか?

稲田 そう、僕はいま一人住まいなんで。暇なように見えてけっこう忙しいんです(笑)。トレーニングのために朝は4時半頃に起きるんで、前日夜は21時には寝ます。とにかく睡眠が一番大事だから。練習から帰ってきて、料理して食べてとやってるとすぐ夜になっちゃうので、大体朝と夜に食べるものは決まっています。昼食はいつもコンビニですが、そこでも栄養素は気にして豚肉の素焼きと麦ごはんの弁当を選びます。周りからは「稲田さん、またそれ食べてる」って言われますけどね(笑)。

チームメイトの食べるものを参考にしながら食品を考え、選んでいるそう Photo: Naoki OHOSHI

 基本的にそのとき摂らなきゃいけない栄養素は必ず摂るようにしています。豚肉も疲労回復効果があるビタミンB1が入ってるから選ぶ。もちろん牛肉や鶏肉も良いタンパク質なので食べますが、いまの自分の身体に必要なのは何かといったら選ぶのは豚肉になるんです。

 トライアスロン選手の上田藍ちゃん(ペリエ・グリーンタワー・ブリヂストン・稲毛インター)が同じチームなんですけど、あの小さい体ですごい量を食べます。他の選手と比べてもすごい。彼女のスタミナはああやって作られてるんでしょうね。そうやってチームメイトの食べるものを見たり聞いたりして、それを参考にしながら自分でも食べられて、低カロリー、かつ栄養バランスの良いものを選んでいます。

 ごはんは基本的に玄米。朝食はライ麦パンと14種類の野菜を入れた温野菜スープを食べています。生だとあまり食べられないからね。でもとにかくワンパターン。夜も決まっていて、夜は肉を食べずに、骨付きで食べられるめざしなど魚を選びます。それから納豆とキムチは必須です。

2016年アイアンマン世界大会で見事ゴールを飾った稲田さん 画像提供: Hiromu INADA

猪野 稲田さんの体は僕より若々しい気がします。関節痛などもないんですか?

稲田 2年前、脊柱管狭窄症になりました。ハワイ・コナで行われたアイアンマン世界選手権の3カ月前に痛くて歩けなくなって。一時は手術が必要とまで言われたんですけど、痛み止めを打ってなんとか凌いでいました。

 筋肉を鍛えれば痛みが和らぐと言われ、自分なりに一生懸命鍛えました。その甲斐あってか、いまはなんともなくなりました。大会も無事完走できて、83歳で世界最高齢の完走者になりました。ちなみにアイアンマン世界選手権を初完走したのは80歳のとき。コースレコードで優勝しちゃいました。その世界記録はまだ破られていません。

「まだまだ自分は進化している」

猪野 アイアンマンの楽しさって何ですか?

「挑戦できることが嬉しい」という稲田さん Photo: Naoki OHOSHI

稲田 「楽しい」というより、長い距離に挑戦できることが嬉しいんですよ。レースの最中は楽しいどころか本当につらいですよ。苦しいばっかりです。「なんで俺はこんなバカなことやってるんだ」っていつも思います(笑)。でも、それができることが嬉しい。若い人にとっては当たり前の話かもしれないけど、年を取ってくると極端に衰えてきますから、それでもできるということが幸せだと感じています。「俺はいま生きている!」っていうことを実感するんです。

 練習はもっと楽しい。練習のときは課題があって、今日はこれをやってみようとか、アドバイスをもらったらそれをやってみる。すると「あ、これいいな!」という発見が必ずあるんです。だからいつも『チャリダー★』に感謝してるんです。必ず何か発見があるからね。番組で教わったことを翌日の練習のときに実践してみるんですよ。そうすると「これか!」っていう手応えがある。これは嬉しいですよ。これでもっと楽に速く走れるってね。

『チャリダー★』のファンという稲田さんに、恐縮しつつ嬉しそうな表情を浮かべる猪野さん Photo: Naoki OHOSHI

猪野 編集さん、ここ絶対使ってくださいね(笑)。それにしてもすごい向上心ですね。

稲田 まだまだ自分が進化していると感じます。他のスポーツを見ながら、体の使い方をいろいろ試してみたりもしています。でも、体力が落ちてきているのは確実に感じています。極端な話、昨日と今日で違うという感じすらする。疲れ方が違う。それをどうカバーしていけば、いまのパフォーマンスを維持できるかをずっと考えています。それが日々の食事や新しい知識を得る原動力になっているんだと思います。

「やればできる」の繰り返し

猪野 次なる目標は?

稲田 今年も10月にハワイ島のコナで開かれるアイアンマン世界選手権に出るので、いまはその完走が最大の目標です。去年はバイクは完走したんだけど、5分オーバーしてランに入れなかったので。

猪野 さらにその先の将来的な目標ってあるんですか?

稲田 いま僕自身がもってる世界最高齢の記録を更新する。とくに今年は更新したいですね。2年前にギネス記録になったので、そのギネスを塗り替えて最年長記録を伸ばしたいと思っています。

2016年アイアンマン選手権の表彰式。当時83歳11カ月。年代別80-84歳で優勝し、世界最高齢記録更新 画像提供: Hiromu INADA

猪野 ご自身が完走すればギネス更新になるんですね!すごいなぁ~。

稲田 だからハワイ行ったら大変ですよ。超有名になっちゃって(笑)。

猪野 そういう存在になったことをどう感じているんですか?

稲田 好きでやってるわけだし、僕自身は大した人間ではないと思っているんですけど。結果的にこういう人間が他にいないということが、僕の評価を高めているんでしょうね。だからそういう意味では、嬉しいことは嬉しいです。

 あとは歳とってもできるということを他の人に見てもらうことで、それが励みになればという気持ちも最近出てきました。僕を見てトライアスロンを始めたり、「やめようと思っていたけれど再開した」と言われることが増えてきたんで。

猪野 はあ~、僕も「45歳で体力が…」とか言ってられないですね。

稲田 45歳なんて僕の半分じゃないですか!(笑)

猪野 はい…(苦笑)。ちなみに僕みたいな、頭打ちしちゃってるヒルクライマーに一言いうとしたら何て言います?

「頭打ちって思うことがおかしい」という稲田さんの言葉にぐうの音も出ない猪野さん Photo: Naoki OHOSHI

稲田 頭打ちって思うこと自体がおかしいんじゃないですかね(笑)。僕なんかしょっちゅう頭打ちになってるんだけど、それを乗り越える楽しさがある。能力の限界だと思ったことを超えられるおもしろさがあるから続けられているんだと思います。それに、いまも進化し続けていると感じるのは自転車だけなんですよ。6年前から毎年仲間と「筑波8時間耐久レース」に出ていますが、去年より今年の方が若干タイムが良かったしね(笑)。

猪野さん直伝の「楽な坂の上り方」を食い入るように見つめる稲田さん Photo: Naoki OHOSHI

 「やればできる」というのが僕のモットーなんですけど、大抵の人はやる前に「やれない」と思ってしまう。やってみると案外できるものなんだけどね。僕はいつも「やればできる」の繰り返し。それが大事。明日はひょっとしたら今日より速くなっているんじゃないかって、そういう楽しさが毎日あるんです。

猪野 バイクは身体能力に加えてスキルとかも必要だったりしますもんね。

稲田 そう。だから猪野さん、どうすれば坂を楽に上れるのかを教えてよ。

猪野 ええっ!? 恐縮です!(汗)

Photo: Naoki OHOSHI

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