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2013新春スペシャルインタビュー<5>「コグウェイ」を台湾でも開催へ 人と人をつなぐサイクリスト山田美緒さん

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 日本列島縦断、アフリカ大陸縦断、女性だけで中東を走るイベント、四国を自転車でめぐるイベント――山田美緒さん(30)が成し遂げてきた旅やイベント、それを実現するバイタリティーは、たびたび注目を集めてきた。著書には、これまでの自転車旅の様子がイラストを交えながら生き生きとつづられている。2013年には、いよいよ海外でのイベント主催にも臨む。山田さんの原動力、そして目指すものは何か、話をうかがった。(聞き手 柄沢亜希)

自転車が世界を平和に――「コグウェイ」設立の背景

耕士郎くんを抱く山田美緒さん耕士郎くんを抱く山田美緒さん

 神奈川県の自宅で、1歳の長男、耕士郎くんとともに出迎えてくれた山田さん。エネルギッシュな行動力を感じさせないおだやかな物腰に、記者は思わず肩の力が抜けた。

 ただし、軒先に無造作に置かれたスペシャライズドのシクロクロスバイクが、ただものでないオーラを放っている。「シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナといった中東を駆け抜けた自転車です」と説明をする山田さんは、「行って、見て、伝え、行動する」ことで中東の平和を願う「Follow The Women」(フォロー・ザ・ウーマン、本部イギリス)の日本支部代表を務める。

 「世界30カ国から集まった200~300人ほどの女性が、中東各国を自転車で走る活動です。メディアから注目されることにより、情勢不安が続くこのエリアの問題を世界から忘れ去られないようすることが目的です」

 かつて出版社で営業職を務めていた山田さんは、新しいことを始めようと携わったフォロー・ザ・ウーマンで、体験することの大切さを実感したという。「パレスチナの女性から聞いた、『外国で自分たちの問題がどのように捉えられているのかわからないので、いっしょに走ることができるのは素晴らしい機会』という言葉が印象に残っています」

シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナを共に駆けたスペシャライズドのシクロクロスバイクシリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナを共に駆けたスペシャライズドのシクロクロスバイク

 中東での体験にインスパイアされて始めたのが「コグウェイ四国」だ。毎年秋に四国をめぐる自転車旅「四国ディスカバリーライド」を開催。2012年5月には、一般社団法人コグウェイを設立し、活動の基盤を固めた。「自転車をこいで道を切り拓く」という意味に由来するコグウェイ。根底には、相互に思いやることが平和な世界へつながっていくという山田さんの信念がある。

 2013年には、コグウェイの活動を海外に広げる。「手始めに3月、台湾でコグウェイを行なうことになりました。また、1~2日といった短期間のライドイベントを都市近郊で開催し、認知度を高めていきたい」と、一歩ずつ着実に前進していく考えだ。

 また山田さんは、「コグウェイは出逢いの場を提供するお見合い仲介人みたいなところがある」とも評する。「実際に、“チャリ婚”を実現すべく、イベントを企画中です」と笑顔で話した。

「私は、サイクリストです」

 肩書きは“サイクリスト”と名乗っている山田さん。その定義は「自転車をつうじて社会的な活動をする人」だという。「ただ自転車に乗るだけじゃなく、メッセージを発信し続け、誰かに影響を与えたい」

山田美緒さん

 もともと国際協力を志していた。大学での専攻はアフリカ地域文化学科。「どうせ勉強するなら英語でないものを」とスワヒリ語を学んだ。

 そんな学生時代に出会ったのが、自転車だ。「アフリカを旅行しようとした時に、自転車を使うことを思いつきました。それから、まずは国内で長距離の走行を訓練したり、整備を覚えたりして。気づいたら“自転車旅”の魅力にすっかりハマっていました」

 広大なナミブ砂漠で知られるナミビアを旅した際には、300kmも砂漠が続いたが、「5000kmの総距離のうち、10分の1もないですから」と明るく笑い飛ばす。そして「確かに人も水もないけれど、月面のようなボコボコした岩に上に砂がかかった“道”はあるので、大丈夫」と、さらりと言ってのけた。

 2010年にはシルクロードを訪ね、西安からウルムチまでを走破した。「3000m級の山岳路や、ゴビ砂漠の乾燥地帯など過酷なコースが続きました。そのうえ、湿度があるため衛生環境が悪く、アフリカより大変な部分もありました」と振り返る。

 お腹をこわすなど苦労した旅だったが、今度はいっしょに走った仲間がいた。「以前にベトナムで出逢った“老王”(ラオワン)こと王洛中(おう・いちゅう)さん(68)と走りきりました。老王はコグウェイ四国にも走りに来てくれたことがあるんですよ」

 自転車は、社会的な活動を支える道具であり、アドベンチャーへ繰り出す足、さらには人と人とをつなぐ“鍵”――自転車の持つ様々な役割と可能性を、山田さんは行動をつうじて体現している。

チャレンジ精神をいつも胸に

 2005年に、アフリカ大陸縦断記をまとめた著書『マンゴーと丸坊主』を出版。また2011年には、女性サイクリストたちとの旅や交流の体験記『満点バイク』を著した。いずれも手描きのイラストがかわいらしく、「“すごい”と思われるよりも、チャレンジする楽しさを伝えたい」という山田さんの想いが込められている。

山田美緒さんが描くイラスト山田美緒さんが描くイラスト

 線画タッチのイラストは、山田さんが「ごちゃごちゃしたものを描くのが好き」と話すとおり、街並みや人々が細かく描写されている。特に目を引くのは、人々が集う場面で、写真には写すことができないような雰囲気をとらえたイラストの数々。それぞれにストーリーがあり、今にもざわめきが聞こえてきそうだ。

 1月には、台湾でも『満点バイク』が出版された。初めての翻訳と海外出版。山田さんは「英語で出したいと思っていたのですが、先に台湾からオファーをいただきました。自転車文化が発達する地で販売できるなんて興奮しますね」と喜びを語った。

 最近チャレンジしていることは「子育て」。忙しく働いているにもかかわらず、子供を安心して預けられる場所がないといった問題に直面しており、保育園の新設を働きかけるなど、こちらも積極的に行動している。

チャリオットを組み立てる山田美緒さんチャリオットを組み立てる山田美緒さん

 サイクリストであることも、あきらめてはいない。講演などへ出向く際には、耕士郎くんがお気に入りというカナダの牽引型ベビーカー「チャリオット」を用いて、自転車で身軽に出かけている。「耐衝撃性に優れ安心ですし、わくわくしながら子供と出かけられます。四国もこれで1周できました」

 チャリオットを実際に見せてもらうと、思った以上にバランスが良く、どこまでも走って行けそうだ。手際よく組み立てる山田さんの姿に、母の頼もしさとサイクリストの冒険魂を感じた。

「コグウェイin台湾」案内ページ

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2013新春スペシャルインタビュー 台湾 山田美緒 旅する満点バイク

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