ツール・ド・熊野2018 第3ステージ最終日は佐野淳哉がマッチスプリントを制す マーク・デマールが史上初の個人3冠

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 4日間の日程で行われた、第20回ツール・ド・熊野(UCIアジアツアー2.2)は、6月4日に和歌山県太地町で最終の第3ステージが行われ、終盤に飛び出しを図った佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が、トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)とのマッチスプリントを制してステージ優勝。サバイバル化したレースは、総合成績のシャッフルを誘発。個人総合2位でスタートしてマーク・デマール(オランダ、チームUKYO)が逆転し、初の個人総合優勝。同時にポイント賞、山岳賞も獲得し、大会史上初の個人総合3冠を達成した。

最終ステージでの逆転で個人総合優勝、さらにはポイント賞、山岳賞を獲得。ツール・ド・熊野史上初の個人3冠を達成したマーク・デマール。大会主催の角口賀敏・SPORTS PRODUCE 熊野理事長と記念撮影に収まる ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

序盤から有力チームが総攻撃

 世界遺産の熊野路を駆けてきた大会はいよいよ最終日。この日は、クジラを目玉とする観光振興で知られる太地半島をめぐる1周10.5kmのサーキット。これまで採用されてきた対面通行区間が撤廃され、わずかな距離ながら国道42号線を通過する新ルートでのレースとなった。それでも、コースの注目ポイントは変わらず、太地港からの上りや、テクニカルなコーナーが待ち受けるダウンヒルなど、細かい変化に富んだルート設定。全10周回、104.3km(パレード区間は含まず)でレースは行われた。

スタート地点最前列に並んだ4賞選手。中央がリーダージャージの入部正太朗 ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

 三重県熊野市で行われた第2ステージは、この大会名物の「熊野山岳ステージ」として争われ、入部正太朗(シマノレーシング)がサバイバルレースを制して優勝。そこで得たリーダージャージを着用して最終ステージへと臨む。個人総合で2位に続くデマールとの総合タイム差は7秒。また、同9位までが1分以内にひしめく大接戦。1つのミスが命取りとなる勝負に、レース会場はスタート前から緊張感に包まれた。

 それを象徴するかのように、アクチュアルスタート直後から有力チームが次々とアタックを繰り出し、ノーガードの攻撃戦となる。実力者が自ら動くような状況となり、1周回目終盤に個人総合でトップから57秒差の8位につけるマルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)が抜け出す。これに阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が続き、集団に対し徐々にその差を広げていく。しかし、2周回目に入って登坂区間で阿部がペースを落とし、集団へと戻る。1人逃げを嫌ったガルシアも集団へと下がり、プロトンは再びアタックの応酬となった。

太地湾を見晴らすビュースポットを選手たちが通過する ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

 3周回目に入ると、上りを利用して岡篤志(宇都宮ブリッツェン)が抜け出す。これに、ガルシアや個人総合9位につけるホセビセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ)らが合流。徐々に人数を増やし、9人の逃げグループとなる。

 4周回目には、メイン集団のペースが緩んだタイミングでルバがアタック。これに続いた選手たちが追走態勢となり、やがて逃げていた9人に合流。最大で23人の先頭集団へと変わった。次の周回ではトリビオがアタックし、しばらくしてルバが合流。逃げはこの2人となり、メイン集団に対し約15秒のリードを得た。

チームUKYOがコントロールを開始したメイン集団 ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

 6周回目、大きな局面がやってくる。デマール擁するチームUKYOが集団のコントロールを本格的に始めると、リーダージャージの入部が後方へと下がっていく。出入りの激しい展開で早々にアシストを失い、以降は入部自ら他選手の動きに合わせていたが、ジャージの防衛が危うくなってくる。そして、そのまま先頭集団へは復帰できず、トップから陥落することとなった。

逃げるルバに佐野が単騎合流

 チームUKYOがコントロールするメイン集団は、スピードを上げてルバらの逃げに合流。再び先頭集団へと変わり、20人以上の選手がレースを先行。一時ガルシアが単独アタックを試みたが、これは集団が冷静に対処。入部の脱落により、デマールがバーチャルリーダーとなり、チームUKYOがアシスト陣総動員でレースを支配する。

再三アタックしていたトマ・ルバが7周回目に単独で飛び出す ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

 アタックと吸収が繰り返されていたが、7周回目の後半に序盤から再三動きを見せていたルバがアタックに成功。前日の第2ステージを終えて、総合でトップから15分以上遅れていることもあり、集団がこれを容認。8周回目の後半には佐野が集団から飛び出し、ルバを追走。9周回目に入って佐野がルバに追いつき、2人がフィニッシュに向けて先を急ぐことになった。

 佐野、ルバともにステージ優勝にフォーカスし、協調体制を組んで後続とのリードを保つ。その後方ではチェン・キンロ(香港、HKSIプロサイクリングチーム)が単独で先頭2人を追いかけるが、その差は30秒前後で推移。さらに約30秒差でメイン集団が続く。等間隔の差のまま、最終周回へと突入した。

8周回目に佐野淳哉(左)がトマ・ルバに追いつき、そのままステージ優勝争いへと移る ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

 スピードの衰えを感じさせない逃げの2人。結局そのままトップをキープし、ステージ優勝争いへとシフトしていく。3番手のチェンは変わらず、さらに後ろでは窪木一茂(チーム ブリヂストンサイクリング)がアタックするも成功とはならず、集団へと引き戻されている。

 いよいよステージを懸けたマッチアップへ。フィニッシュまで残り1kmを切って、ルバが前に立ち、佐野が背後にピタリとつく。両者は出方をうかがいながら、残り距離を減らしていく。そして残り200m、佐野が前に出るとルバはつききれず、じりじりと2人の差が広がっていく。フィニッシュライン手前で勝利を確信した佐野が両手を挙げて歓喜のステージ優勝を決めた。

残り200mから仕掛けた佐野淳哉(左)が鮮やかにステージ優勝を果たした ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

デマール「美しく素晴らしいレース」

 佐野のフィニッシュから12秒後、チェンがステージ3位を決めた。さらに12秒後、メイン集団がなだれ込むようにしてフィニッシュラインを通過した。その中に、個人総合優勝を確信し喜ぶデマールの姿もあった。入部がこのステージで大きく後退したこともあり、デマールがこの大会初出場で初優勝を決めた。

メイン集団内でフィニッシュしたマーク・デマールは個人総合優勝を確定させ喜ぶ ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

 今年、チームUKYOに加入したデマールは、かつてラボバンクやクイックステップ(現・クイックステップフロアーズ)などのトップチームに所属し、ビッグレースを数々経験した34歳。ジロ・デ・イタリア1回、ブエルタ・ア・エスパーニャ3回のグランツール出場経験を誇り、ステージレースの戦い方を熟知している。第2ステージではすべての山岳ポイントを1位通過し、山岳賞を確定させていたばかりか、このステージを終えて逆転でポイント賞も獲得。ツール・ド・熊野史上初めて、個人総合・ポイント・山岳の3冠を達成。レース後のポディウムでは、「美しく素晴らしいレース、また必ず帰ってくる」と活躍の再現を約束した。

 そのほか、25歳以下の選手が対象のヤングライダー賞では、個人総合15位となった野本空(愛三工業レーシングチーム)が獲得。開催地・熊野地域を拠点とし、この大会をホストチームとして臨んだキナンサイクリングチームは、サルバドール・グアルディオラ(スペイン)の個人総合5位がチーム最上位だった。また、厳しいレースの連続だったこともあり、全ステージ完走者は36人と、サバイバルレースを裏付けるものとなった。

ヤングライダー賞を獲得した野本空 ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU
チーム総合1位のセントジョージコンチネンタル ©︎Tour de KUMANO 2018 / Syunsuke FUKUMITSU

 第20回の記念大会として行われた今年のツール・ド・熊野。インターネットによるライブ配信がこれまで以上に精度アップしたことや、現地ではレース終了後恒例の「餅投げ」といったイベントで選手とのふれあいを楽しめるなど、この大会ならではの魅力が詰まった4日間となった。また、熱い応援はもとより、主催の「SPORTS PRODUCE 熊野」をはじめ、地元の人々による運営や大会成功に向けた尽力も、出場チーム・選手・スタッフのモチベーションとなった。

 第1ステージでは、コース内トンネルに設置されたフェンスが倒れ、レース続行不可能となる事態が起きたが、すでに改善策が話し合われるなど、第21回大会以降へも視野が広がっている。UCI(国際自転車競技連合)公認大会としてすっかり定着しているが、今後はより地位や国際的な注目度が増すステージレースとなることが期待される。

ツール・ド・熊野 第3ステージ(104.3km)結果
1 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) 2時間35秒39
2 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +2秒
3 チェン・キンロ(香港、HKSIプロサイクリングチーム) +12秒
4 ライアン・キャバナ(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +24秒
5 黒枝士揮(愛三工業レーシングチーム)
6 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)
7 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) +26秒
8 ホセヴィセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ)
9 野本空(愛三工業レーシングチーム)
10 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)

個人総合時間賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 5時間22分47秒
2 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +18秒
3 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +35秒
4 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) +38秒
6 マーカス・カリー(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +39秒
7 ホセヴィセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ) +47秒
8 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +50秒
9 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) +1分10秒
10 ライアン・キャバナ(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +3分46秒

ポイント賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 29pts
2 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) 25pts
3 入部正太朗(シマノレーシング) 25pts

山岳賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 24pts
2 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) 12pts
3 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) 8pts

ヤングライダー賞
1 野本空(愛三工業レーシングチーム) 5時間28分11秒
2 タナカン・チャイヤソンバッ(タイ、タイナショナルチーム) +6分18秒
3 カーデン・グローヴス(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +7分7秒

チーム総合
1 セントジョージコンチネンタル 16時間13分4秒
2 キナンサイクリングチーム +15秒
3 宇都宮ブリッツェン +3分15秒

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