1泊2日の「スーパーハード」なルートバイクロア白州まで、グラベル、地元野菜、テントサウナを満喫「キャニオン・ダーティーローディー」

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 険しい山梨の山々を、1泊2日で「白州の森バイクロア4」(以下、バイクロア)を目指しながら走る「キャニオン・ダーティーローディー」が5月末、山梨県甲州市から北壮市を舞台に行われました。キャニオンの新しいグラベルバイク「GRAIL」(グレイル)に乗ったライドリーダーとともに白州の新鮮な食材を集めながら、アップダウンを堪能。自転車とアウトドアの祭典「バイクロア」に合流し楽しみ尽くした2日間を同行レポートします。

新緑に包まれたグラベルの上りを軽快にキャニオン「グレイル」で走る Photo: Kenta SAWANO

110km、獲得標高3660m

 自転車の楽しみ方は多様化し、一口にロードバイクと言ってもレースやオンロードのロングライドイベントを楽しむだけでなく、オフロードや森の中を走る人も多くなってきた。それにキャンプなどアウトドアのアクティビティ要素も取り入れたのが「バイクロア」というイベントだ。

 今回のイベント「ダーティーローディー」は、バイクロア初の金曜日開催イベントで、白州まで向かう上りの多いダイナミックな地形と荒れた路面を2日間で走破すると共に、その大地が生み出す食材を途中の農園で収穫、最後はバイクロアに参加し、夜のBBQで味わうという、夢のようなライドだ。昨年、バイクロアの中の1イベントとして初開催されたもので、直接的には「ダートを含むロードライドイベント」という意味だそう。バイクロア主催者の1人で今回の企画を、キャニオン・ジャパンとともに考えた「もんじゃさん」こと武井良祐さんは「いわゆるセンチュリーライド系のライドイベントとは違う、バイクロア的なインパクトある名前を付けようとしました」とのこと。

スタートはJR塩山駅前にある「歴史公園・甘草屋敷」前で記念撮影。左から齋藤秀行さん、キャニオンジャパンの石山幸風さん、ラファジャパンの窪田博英さん、大森美紀さん、岩波信二さん、筆者 Photo: mon_jya

 コースは、2階建てハンドルが話題になっている「グレイル」に乗ったライドリーダーと共に走る2日間計116km、獲得標高3661mの「スーパーハード」なルート。「とにかくスーパーハードなルートを、ともんじゃさんに頼まれました」とメッセンジャー時代からの友人だった地元在住Rapha Japanの窪田博英さんが腕を振るったルートだ。金曜日にもかかわらず、集まった参加者は「ハードなルート」を楽しみに、新宿駅から特急で1時間半のJR塩山駅前を出発した。ルート終盤までコンビニや商店は一つもないため、グレイルのトップチューブにつけたフレームバッグと、ラファのカーゴビブショーツのポケットにありったけの補給食を詰め込み、出発した。

ライドリーダーを努めてくれたラファ・ジャパンの窪田さん(手前)とバイクロア実行委員会の武井良祐さん。2人はメッセンジャー時代からの友人だ Photo: Kenta SAWANO 
ラファのカーゴビブショーツのポケットに、たくさんの補給食を準備 Photo: Kenta SAWANO

 甲府盆地の外縁に位置する塩山をスタートすると、すぐに上りが始まり、やがて丘陵に沿ったブドウ畑の間を進む、のどかなアップダウンになる。左手遠くに富士山を見ながら沿線に桃やブドウなど果実の栽培が続く広域農道「フルーツライン」を気持ちよく進む。上ったと思えば下り、その勢いで気持ちよく上れるアップダウンが続いた。

ブドウ棚とその奥に富士山を見ながら走る Photo: Kenta SAWANO

 東京から参加した齋藤秀行さんは、バイクパッキングや、山歩きに精通した「ハードな」サイクリスト。バイクはアメリカ・ポートランドの「トニック・ファブリケーション」のフレームを、BlueLugで組み上げたもの。地元山梨から参加した大森美紀さんは東京の名店「盆栽自転車店」で組んだ「インディペンデント・ファブリケーション」。バイクにもこだわりがぎっしり詰まったお二人を、グレイルに乗ったライドリーダー含むスタッフ3人がサポートした。

 出発してから24㎞、標高約900m地点からフルーツラインに別れを告げ、本格的な上りが始まった。民家も全くなくなり、植物も栗や松の森など、植生も変わってきた。ルートもつづら折れが続き貧脚の筆者は徐々に健脚の皆さんに置いて行かれ始めた。

東京から参加した齋藤秀行さん Photo: Kenta SAWANO
地元山梨から参加した大森美紀さん Photo: Kenta SAWANO

 さらに10㎞ほど上った30㎞地点で一行に再合流すると、ライドリーダーの2人が動物避けのフェンスを開け、「地獄への道へようこそ」と手招いてくれた。といっても、小石の間から芝生が生えるような、やさしく緑に包まれた極上のグラベルだ。5月終盤、初夏を迎える雑木林からは通常より早い時期に鳴くヒメハルゼミの声と、グラベルを楽しむ5人の笑い声だけが響いた。

 グラベルを進みながら、グレイルの特徴的な2階建てハンドルの上部分を握ると、クッションのように吸収してくれる。下りのグラベルに差し掛かって、ステムから近い「下ハン」を握ると、通常のドロップハンドルの下ハンより、ややアップライトなポジションで、安心して続くグラベルの下りも思い切って進むことができた。

新緑のグラベルをロードバイクで進む大森美紀さん。新緑の森に緑のBonsai Cycle Worksのジャージが一体化する Photo: Kenta SAWANO 

 贅沢なグラベルは4㎞も続いた。グラベルバイクの「グレイル」の真価を試そう、とばかりにライドリーダーの窪田さんとキャニオン・ジャパンの石山幸風さんは、下ハンを握ったりしながら、スピードを緩めずに下っていく。あっという間に再び遅れた筆者はセミの音と森の音を聞き、白州へ向かう森の大自然を感じながら、再合流した。

岩が隆起した山々を前に立ち止まる Photo: Kenta SAWANO 

 贅沢な下りのグラベルの下りの後は、再びこのライドのタイトル通り「ハードな」上りが待っていた。丁度、初日のルートの中間となる標高1100mの35km地点から、この日の最高地点である標高1600mの45km地点まで上りっぱなし。針葉樹もまばらになり、高地らしい景色となってきた。日陰も少なくなってきたが、その分、心地よい涼しい風が、下から吹き上げてきた。

グラベル+上り=「スーパーハード」なライドを体感 Photo: Yukikaze ISHIYAMA

 上りきると、そこがこの日最初の補給ポイント。もんじゃさんが持ってきてくれたパンや、水、そして山梨名物の「くろ玉」に全員が飛びついた。信玄餅は知っていたが、エンドウ豆の餡を羊羹で包んだ真っ黒な御菓子は初体験という参加者も多く、真っ黒な見た目とは裏腹のさっぱりとした甘さを味わいながら木陰で一休みした。

山梨の銘菓「くろ玉」を、みんなで補給 Photo: Kenta SAWANO 
特徴的なグレイルの「2階建てハンドル」 Photo: Kenta SAWANO

 ここから、イベント最高地点の標高1700mに到達し、約10kmのアップダウンを終えると、遠くに日本百名山にも選ばれた「瑞牆山(みずがきやま)」が見えるポイントに到着。荒々しい岩山を眺めながら最後の補給を済ませ、待ちに待った、この日2度目となる下りのグラベルに入る。「最高のご褒美だ」と歓声を上げながら参加者は曲がりくねった荒れた路面を楽しんだ。地元山梨在住の大森さんは「初めて走る林道でした。高地らしい植生と傾きかけた陽射しが素晴らしかった」と感激していた。

夕日の木漏れ日の中、最後のグラベルを進む Photo: Kenta SAWANO 

 木々の間から差し込む夕日に照らされながら、5人の「ダーティー・ローディー」は、道を急いだ。初日のゴールとなるのは、ラジウム温泉でも有名な増富町。最後に待ち受けたのは、宿泊先となる旧増富中学校の上り坂だ。最後の最後に「スーパーハード」な坂を笑顔で上り、1日目のライドが終わった。

廃校となった旧増富中学校のコンピューター室に寝袋を敷いて1泊 Photo: Kenta SAWANO
朝ごはんは地元の食堂で作ってもらったお弁当で腹ごしらえ Photo: Kenta SAWANO 
廃校ながら電源完備の「コンピューター室」で快適な一夜を過ごし、2日目のライドへ出発 Photo: Kenta SAWANO

見所いっぱいの廃校に宿泊

 泊まることになった廃校は昭和30年代に建設、平成16年まで使われていた木造の趣のある建物で、カーペットも敷いてあり、電源も充実した快適な宿だった。町の食堂で夕食を食べながらハードな1日目を振り返ると、各自準備したシュラフに潜り込んで、眠りについた。

体育館いっぱいに絵を描いた画家の工藤輝日(てるひ)さんの作品を鑑賞してから出発 Photo: Kenta SAWANO

 2日目は、初日のハードなルートとは一転。大自然の恵みを味わうライドとなった。中学校に住み込み体育館いっぱいに絵を描いた画家の工藤輝日(てるひ)さんの作品を解説していただき出発。北杜市の明治・大正・昭和の校舎でパンや食事が楽しめる「おいしい学校」、大滝神社から豊富に流れ落ちる「大滝湧水」などをロードバイクで結んで走りながら、各地のグルメを楽しんだ。

2日目に、まず一行が立ち寄った「おいしい学校」。明治時代に建てられた「津金学校」で一休み Photo: Yukikaze ISHIYAMA
涼しげな大滝湧水とわさび田にも立ち寄る Photo: Yukikaze ISHIYAMA
アウトドアを楽しみながら自転車も存分に楽しめる天国「バイクロア」 Photo: Kenta SAWANO

土曜朝から楽しめる「バイクロア」

 筆者は2日目は朝から、メーンイベントのバイクロアへ移動。朝9時過ぎの木々に囲まれた森には、東京のスポーツ好きのDJ集団「JAZZY SPORT」の心地よい音楽が響き、少しずつ会場が暖まってくる。朝10時30分のアドベンチャーラリーに始まり、迷彩柄のウェアが必須アイテムの「カモカモレース」など、速く走ることだけが目的でない、「楽しんだもの勝ち」といった雰囲気が会場に満ち溢れている。大人だけでなく、家族連れも多く、自転車の楽しみ方が広がってきていることを実感した。

森の中の一本橋を渡る楽しいレース Photo: Kenta SAWANO
地元の食材を楽しめるブースもいっぱい Photo: Kenta SAWANO

 中でも筆者が楽しみにしていたのが、全国に移動式サウナを運んで大自然で北欧のように楽しむ「Tent Sauna Party」(テントサウナパーティー) を体験することだった。駒ヶ岳を源流に、名水百選に選ばれた水が流れる尾白川のほとりに小さな6角形のテントが立てられていた。

尾白川の滝の音を聞きながら入る川岸のテントサウナは「最の高」としか言いようがない Photo: Kenta SAWANO 

話題の「テントサウナ」を満喫

 主宰者の藤山誠さんに「ととのいました」と招いていただき、テントサウナ内へ。中には一辺40cmほどのコンパクトなサウナストーブの中で薪がくべられ、その上でサウナストーンがどんどん熱くなっていた。先客の2人に、同じく主宰者の林由利子さんも入り、5人で膝を合わせるように会話が始まった。知らないもの同士、自然に自己紹介が始まり、一緒に汗を流しながら会話が弾むと、いつの間にか一体感が生まれた。

テントサウナパーティーは知らない者同士がいつの間にか親しくなる不思議な空間 Photo: Kenta SAWANO
乾いた白樺の葉を水に浸してから「ロウリュ」を行う Photo: Kenta SAWANO

 熱くてそろそろ我慢できなくなってきた頃、「それでは仕上げの『ロウリュ』を始めます」と藤山さんが白樺の枝を持ってバケツの水につけた。「ロウリュ」とは水をサウナストーンにかけ、蒸気でサウナ内の温度を上げること。「ジュワー」という音とともに、室内の温度が一気に高くなった。暑さが苦手な私は、テントの窓から見える、涼しそうな滝を見てヤセ我慢。藤山さんが白樺の枝で背中や胸を軽く叩いてマッサージしてくれると「じゃあ、川に入りましょう」とメンバーに声をかけた。

テントサウナパーティーで、サウナでギリギリまで熱くした体を名水百選にも選ばれた尾白川の冷たい水に飛び込んで冷やす Photo: Kenta SAWANO

 全員で川までの階段を下り、冷たい水に足を入れた。名水百選の川はかなり冷たかったが、全身はサウナでアツアツだ。誰からともなくエメラルドグリーンの川に飛び込んだり、滝の下で頭に冷水を浴びたりした。体が心地よく引き締まる感覚、透き通った川にビブショーツだけで飛び込む爽快感が病みつきになった。本来は、サウナ→冷水を繰り返すのがサウナの気持ちよさだが、筆者はバイクロア会場を離れ、近くでメーンイベントに臨む「ダーティー・ローディー」本体に合流した。

白州の森BIKELORE4

「白州の森で一体化しよう。」2018 5/26~27 白州の森バイクロア4。花崗岩の渓床をくぐりぬけ磨き上げられた名水軟水「尾白川」でととのいました。#hakusu_bikelore4 #tentsaunaparty #bikelore #バイクロア #テントサウナ

Tent Sauna Partyさんの投稿 2018年5月28日(月)

みんなでビンディングシューズ、サイクルウェアのまま農作業。こんな経験は人生でもう一度あるだろうか Photo: Kenta SAWANO
指導してくれた白州杜苑の中嶋勇一郎さん Photo: Kenta SAWANO

 「ダーティー・ローディー」一行のメーンイベントは、バイクロア会場近くの農場「白州杜苑(はくしゅうとうえん)」での収穫作業と、それを使ったバーベキューだ。無農薬で有機肥料だけを使い、人参やサニーレタスなどをメーンに2ヘクタールの畑で年間20品目ほどの作物を栽培している、若手の農家だ。「ダーティー・ローディー」の5人は、都内から移住し、安心、安全な野菜を作っている中嶋勇一郎さんの指導で人参の間引きを行った。

大森さんが収穫した大根の香りをかいだ窪田さんは「採れたての野菜は違う!」 Photo: Kenta SAWANO
間引いた人参や、株をトラックに載せて出発 Photo: Kenta SAWANO

 ビブショーツとビンディングシューズでサイクリストが畑に入る姿は、ユーモラスで「バイクロア」だからこそ実現した風景だった。無農薬の農場のため、たくさん生えた雑草を抜き、次は多く生えすぎた人参を抜いていく。地味な作業で、かなりきつい中腰の作業。もっと楽しい作業を想像していた筆者に、中嶋さんは「あえて無農薬野菜を育てる大変なところを体験してほしかったのです」と話してくれた。その言葉通り、参加者の齋藤さんは「この人参はもっと高い値段をつけていいですね。もっと大事に食べないといけない」と実感していた。

駒ケ岳に向かってまっすぐ伸びる「べるが通り」。バイクロアに近づいてきたことを感じる風景だ Photo: mon_jya

 最後に一行は、旧甲州街道にある台ヶ原宿の蔵元「七賢」と信玄餅で有名な「金精軒」に立ち寄ると、ゴールとなるバイクロア会場の「白州・尾白の森名水公園・べるが」へ。「お疲れ様でした」とグレイルを展示するキャニオンブースで笑顔で握手を交わした。

2日間のハードなルートを走り切り握手する「ダーティーローディー」の5人 Photo: Kenta SAWANO

 うっすら森が暗くなってきた午後6時過ぎ、2日間の行程を閉める「バーベキュー」が始まった。採れたての人参、レタス、大根などの地元野菜を、お世話になった白州杜苑の皆さんと一緒にドレッシングからサラダを作る。炭火で貴重な採れたての鹿肉もいただくと、みんなのお酒も進み、夜が深まっていった。

自分たちで間引いて収穫した野菜がバーベキュー会場へ Photo: Kenta SAWANO 
地元産の新鮮な鹿肉も振舞われた Photo: Kenta SAWANO
それぞれのグループがそれぞれの過ごし方を楽しみ、夜がふける Photo: mon_jya

 「ダーティー・ローディー」を2日間バックアップしてくれた武井さんは「地元のヒロ(窪田さん)や岩波さんの協力、キャニオン・ジャパンのバックアップがあって、ダーティーローディーの理想とするような、激しく楽しく美しく面白いライドができたと思います。白州の森バイクロアは「べるが」という素晴らしい会場で開催できるのですが、実はその周辺全てが、自転車に乗るのに素晴らしい環境になっています。走りがいのある道だけでなく、温泉や美味しいレストラン、その食材を作る田畑や農場などをめぐり、地元の人と話し、より広く白州や北杜市、山梨の魅力を感じる事ができました」と振り返った。

グレイルの試乗に対応していたキャニオン・ジャパンの海老名歩さん(左)と竹内豪さん Photo: Kenta SAWANO
ランタンの光を眺めながらライドを振り返るBBQで盛り上がる一行 Photo: Kenta SAWANO 

 さらに今後は、「前夜祭的なイベント」や「ショートルート」での前日ライドも考えているという。回数を重ねるごとにイベント内容も充実してくるバイクロア。周囲を回るイベントも増え、金曜日から始まった今回の「ダーティー・ローディー」も大成功だったと言えよう。今後は金曜日から3日間で楽しむくらいの余裕が日本人にも必要だ、と感じる2日間だった。

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