ジロ・デ・イタリア2018 第19ステージ【動画付き】チーマ・コッピに全てを賭けたフルーム 80km独走で大逆転のマリアローザ

by 平井久美子 / Kumiko HIRAI
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 ジロ・デ・イタリアは5月25日、第19ステージがヴェナリア・レアーレからバルドネッキアまでの185kmで争われ、レース中盤約80km地点のチーマ・コッピの上りから単独アタックを仕掛けたクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)がそのまま逃げ切り勝利を飾った。マリアローザを着用していたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は早い段階で失速し、38分遅れの79位と大ブレーキ、総合18位まで沈んだ。

王者の貫禄。完全復活勝利を飾ったフルーム Photo: Yuzuru SUNADA

チーマ・コッピ決戦がスタート

 この日は山頂フィニッシュ3連戦の第2ラウンド。明日のクイーンステージに匹敵する厳しいコースだ。

 最初に登場するカテゴリー山岳は約50km地点の2級山岳。そこをクリアした後に、今大会のチーマ・コッピ(最高標高地点)である、登坂距離18.5km・平均勾配9.2%・最大勾配14%のフィネストレ峠が待ち受ける。フィレネスト峠の後半は、未舗装区間。その数字以上に選手の脚を苦しめる。その後は3級山岳のセストリエーレをこなし、最大勾配14%の1級山岳・バルドネッキアを駆け上がってゴールとなる。

コースには雪が残る部分も Photo: Yuzuru SUNADA

アタック合戦の応酬

 レースはスタート直後からアタック合戦がスタート。決定的な逃げが決まらないまま2級山岳に突入する。スタートから1時間の集団のペースは時速40km弱、速いペースで進んでいった。その2級山岳では、UAEチーム・エミレーツのエース、ファビオ・アル(イタリア)がリタイア。ジロ総合表彰台2回、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝の経験もある地元イタリアの星だが、まるで活躍できず今年のジロを去ることになった。

ジロから姿を消したアル Photo: Yuzuru SUNADA

 ようやく逃げができたのは、2級山岳を過ぎた頃。メンバーはローレンス・テンダム(オランダ、チーム サンウェブ)やマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ プロチーム)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、クリッツ・ネイランズ(ラトビア、イスラエル サイクリングアカデミー)らの15人。強力な逃げとなる。

 しかしタイム差は大きく開かず、その後も数人がメイン集団からアタックしては合流という、落ち着かない展開が続く。この動きに、ミッチェルトン・スコット率いるメイン集団はペースを上げざるを得ない状況に。1分以内のタイム差でコントロールしていたものの、脚を削られる状況となった。

マリアローザのイェーツが脱落

 レースが動いたのは、チーマ・コッピに差し掛かる頃、サンチェスがアタックを仕掛けて単独で抜け出した。後ろに迫るメイン集団はサンチェス以外の逃げメンバーを次々に吸収される。また、メイン集団はミッチェルトン・スコットに代わってチーム スカイがコントロールしペースを上げていた。

 集団の緊張感が高まる中、マリアローザのイェーツに異変が発生した。フルームの直後、集団前方に付けていたイェーツが徐々に後退し、そのままメイン集団から脱落してしまったのだ。ミッチェルトン・スコットのアシストが何とかペースを作って引き戻そうとするが、そのペースにすら付いていくことができない。厳しい山岳でのレースをまだ半分以上残しての後退は、あらゆる意味において絶望的な意味を持つ。

レース中盤で絶望的な遅れを喫した、マリアローザのサイモン・イェーツ Photo: Yuzuru SUNADA

 数日前までは今ジロの絶対的リーダーとしての威光を誇っていたイェーツ。しかしその輝きはこの日完全に失われ、マリアローザからの転落は決定的となった。

大一番の勝負に出たフルーム

 イェーツ脱落のニュースが無線を通して集団に伝わると、サンチェスは逃げを中止して集団に合流。イェーツを引き離すことに全力を注ぎ始める。スカイの集団コントロールは続き、未舗装路区間に入っても変わらずペースを保ち続ける。

 さらにスカイはケニー・エリッソンド(フランス)、ワウト・プールス(オランダ)がフルームを引き連れてスピードをアップ。このペースアップによって総合3位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)までもが遅れ始めていた。

レースをまだ約半分残してアタックを仕掛けたフルーム。大逆転をかけての大勝負に打って出た Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、残り80km地点、早くもフルームがアタック。単独でチーマ・コッピに挑む。この動きを追うのは、トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)、ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)、リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター チーム)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)という総合トップ10に入る4人のみ。

 ディフェンディングチャンピオン、現在総合2位のデュムランが主に追走を担うが、最初は十数秒だった差は徐々に開き、フィネストレ峠の山頂ではフルームと約1分差となっていた。デュムランら4人からさらに1分ほど遅れてポッツォヴィーヴォらの集団、そしてイェーツは、この時点で暫定の総合表彰台すら失うほど大きく遅れていた。

フルームを追いかけるデュムランら4人の追走グループ Photo: Yuzuru SUNADA

 下りでもペースを落とさないフルーム。一方、この下りで第1追走グループにセバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマ・エフデジ)がジョイン。5人でフルームを追う体制を整える。しかし、タイム差は約1分半。フルームは得意の下りで差を広げ続ける。さらに、その後の3級山岳も淡々と上りタイム差を約2分に拡大、難なくこの山岳をクリアした。

フルームが劇的勝利で総合も大逆転

 ゴール前に立ちはだかる1級山岳・バルドネッキア。フルームがここに到達する頃、デュムランがいる追走集団とは3分以上の差がついていた。

総合3位のポッツォヴィーヴォだがチーマ・コッピで上位陣から遅れ、総合6位まで後退 Photo: Yuzuru SUNADA

 約80km地点という早い段階で飛び出したフルーム、終盤でもテンポよくこの1級山岳を上る。追走集団はフルームを追うがその差は開くばかりだった。ゴール前、その追走集団内でも動きがではじめる。残り5.5km地点でピノが、残り3.2km地点でロペスがアタック。そこに新人賞ジャージを争うカラパスが反応するなど、集団は活性化する。ただ、ここまで追走を引き続けていたデュムランは失速してしまう。

 一方、フルームは依然として淡々とペースを刻み優勝を目指す。残り1kmを切ったところで登場する勾配12%部分、ここも苦しそうな表情をしながらもダンシングでクリアした。そして、最後は勝利を確信し渾身のガッツポーズ。見事な逃げ切り優勝を飾り、大逆転でマリアローザも獲得した。また、総合2位に付けていたデュムランはフルームから3分23秒遅れの5位でゴール。ボーナスタイムも獲得ならず、総合2位は変わらないもののフルームとは40秒差となった。

この日に全てを賭け、その賭けに勝ったフルーム。レース中盤からエース同士の直接対決に持ち込み、大きなタイム差を一気に逆転した Photo: Yuzuru SUNADA

 今大会のフルームは、第1ステージのタイムトライアルの試走で落車。万全とはいえない状況でスタートし、その後のステージでも本調子とはいえない走りが続いていた。しかし、この日は完全復活を遂げて優勝。劇的勝利でマリアローザを獲得した。

ピノは総合3位に。表彰台獲得なるか Photo: Yuzuru SUNADA
明日のステージにかけるデュムラン Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし、ジロ・デ・イタリアの戦いはまだ終わらない。第20ステージは、山頂フィニッシュ3連戦の最後を飾るクイーンステージだ。214kmという長丁場に加え、レース後半に1級山岳を2つ連続で越えてから、さらに1級山頂ゴールという地獄のような設定。フルームが第19ステージに続く強さでマリアローザを死守するか、ディフェンディングチャンピオンのデュムランが意地を見せるか。マリアローザをかけて、運命の最終決戦が始まる。

今大会初めてマリアローザに袖を通したフルーム Photo: Yuzuru SUNADA

ダイジェスト動画(期間限定公開)

第19ステージ結果
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 5時間12分26秒
2 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター チーム) +3分0秒
3 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +3分7秒
4 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +3分12秒
5 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) +3分23秒
6 セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマ・エフデジ) +6分13秒
7 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) +8分22秒
8 サム・オーメン(オランダ、チーム サンウェブ) +8分23秒
9 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
10 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ プロチーム)

個人総合(マリアローザ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 80時間21分59秒
2 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) +40秒
3 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +4分17秒
4 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +4分57秒
5 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター チーム) +5分44秒
6 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) +8分3秒
7 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ プロチーム) +11分8秒
8 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +12分19秒
9 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNL・ユンボ) +12分35秒
10 サム・オーメン(オランダ、チーム サンウェブ) +14分18秒

ポイント賞(マリアチクラミーノ)
1 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) 290 pts
2 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 232 pts
3 ダヴィデ・バレリーニ(イタリア、アンドローニ・シデルメク・ボッテキア) 119 pts

山岳賞(マリアアッズーラ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 123 pts
2 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 91 pts
3 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) 70 pts

新人賞(マリアビアンカ)
1 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) 80時間26分56秒
2 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター チーム) +47秒
3 サム・オーメン(オランダ、チーム サンウェブ) +9分21秒

チーム総合
1 チーム スカイ 241時間43分8秒
2 アスタナ プロチーム +17分6秒
3 グルパマ・エフデジ +39分16秒

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