ツアー・オブ・ジャパン2018 第5ステージ終盤にアタックのルバが逃げ切り勝利で総合首位に浮上 山岳賞ジャージは小石祐馬が奪還

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 日本最大のステージレース、ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)は5月24日、第5ステージが長野県飯田市周辺で開催され、トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)が終盤逃げた2人でのマッチスプリントを制して初勝利を飾り、総合リーダージャージも獲得した。注目の山岳賞争いは小石祐馬(チームUKYO)がポイント加算に成功して、山岳賞ジャージを奪還した。

ステージ優勝を飾ったトマ・ルバは、TOJ初勝利だった Photo: Yuu AKISANE

丘陵地帯の激しいアップダウンコース

 第5ステージは「南信州ステージ」というな名称で広く知れ渡っており、飯田の丘陵地帯を走るアップダウンの激しい難関コースだ。斜度10%を超える長い上りを含む周回路を10周する計123kmで争われる。

スタート地点に4賞ジャージが集結 Photo: Yuu AKISANE

 特に周回コース序盤のKOMに至る「下久堅」(しもひさかた)の上り区間は距離は1.9kmながら平均勾配が7.1%とパンチ力のある上りになっている。この上りを10回も通過するため、周回を重ねるごとに選手たちの脚を削りとるサバイバルレースの展開が、例年繰り広げられていた。

 周回コースを終えると、フィニッシュ地点までのラスト1kmは一直線の平坦路となっている。上りに強くスプリント力のある選手や、ワンデーレースで逃げ切りを得意にしているようなパンチャー系の選手にピッタリのステージだ。

 JR飯田駅前からパレードランを経て、周回コース直前、天竜川にかかる「水神橋」の上でレースがスタートした。

飯田駅前をスタートするプロトン一行。パレード走行しながら周回コースを目指す Photo: Yuu AKISANE

 山岳賞を争うポイントリーダーの草場啓吾(日本ナショナルチーム)、1ポイント差で追う木村圭佑(シマノレーシングチーム)、小石らだけでなく、逃げに乗りたい選手が続出したため、集団はアタック合戦を繰り広げながら、下久堅の上り区間を越えていった。1周目のKOM地点を通過しても逃げは決まらず、集団はひとかたまりのまま2周目へと入った。

9人の逃げが形成

 2周目、名物「TOJコーナー」へ至るダウンヒルの途中で集団内で落車が発生。10人ほどの選手が巻き込まれてしまった。ほぼ同じタイミングで、集団先頭からは9人の選手が飛び出した。落車の影響もあってメイン集団のペースが落ちたため、9人の逃げが決まった。

序盤に逃げを形成した9人 Photo: Yuu AKISANE

 メンバーはマーク・デマール(オランダ、チームUKYO)、ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ)、ハミッシュ・シュルーズ(ニュージーランド、イスラエル サイクリングアカデミー)、シモーネ・ポンツィ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)、サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム)、ディラン・サンダーランド(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス)、鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)、エドモンド・ブラッドバリー(イギリス、JLT・コンドール)、フェリックスアレハンドロ・バロン(コロンビア、チーム イルミネート)で、欧米の海外チームや国内有力チームから1人ずつメンバーを送り込んでおり、強力な集団となっていた。

集団内を走行するマルコ・カノラ。ポイント賞ジャージは繰り下げで着用している Photo: Yuu AKISANE

 一方で、山岳賞ポイントを持つ選手は1人も逃げに乗ることができなかった。メイン集団はリーダージャージを擁するバーレーン・メリダがコントロールしながら、タイム差は1分30秒程度まで広がった。

 3周目に設定されている1回目の山岳ポイントは、鈴木譲が先頭通過を果たした。メイン集団とのタイム差はさらに広がり、2分25秒となった。

 するとメイン集団では、JLT・コンドールがコントロールを開始。逃げに選手を送り込んでいるが、構わず集団のペースアップを図る。下久堅の上り区間でペースアップしたため、集団から千切れる選手が続出し、メイン集団は一時、20人程度まで人数を減らすこととなった。

集団をけん引してペースアップするJLT・コンドール Photo: Yuu AKISANE

 その後、集団復帰を果たす選手が何人が出てくるものの、逃げ集団とのタイム差はどんどん縮まり、5周目にはタイム差15秒となった。先頭では集団への吸収を嫌った鈴木譲、シュルーズ、バロンの3人が飛び出し、残った6人はメイン集団に吸収された。

 3人は20秒程度のタイム差をもって、2回目の山岳ポイントが設定された6周目に入った。

小石が山岳賞ジャージを奪還

 メイン集団からは山岳ポイントを狙った小石や、昨年の南信州ステージ勝者のマルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)ら4人が飛び出した。下久堅の上りでは、先頭から脱落したシュルーズを加えた5人で、鈴木譲ら先頭2人を追走した。

 先頭2人は何とかKOMまで持ちこたえ、鈴木譲が2度めの先頭通過を果たした。そして、追走集団の小石が3位で通過したため、草場の山岳ポイント数を1ポイント上回り、計16ポイントで山岳賞ジャージを奪い返した。

2回目のKOMも鈴木譲が先頭通過 Photo: Yuu AKISANE
KOM3番手通過を果たした小石は山岳賞ジャージを奪還 Photo: Yuu AKISANE

 KOMを越えてまもなく、逃げ集団すべてがメイン集団に吸収された。すると今度はメイン集団からダミアン・モニエ(フランス、愛三工業レーシングチーム)がアタック。独走に持ち込んだ。

 モニエは快調に飛ばし、8周目に集団とのタイム差を2分45秒まで広げる。

 9周目に入ると、メイン集団からルバとホルヘカミロ・カスティブランコ(コロンビア、チーム イルミネート)がアタックして追走集団を形成。さらに序盤に逃げに乗っていたシュレーズとサンダーランドも、メイン集団から飛び出して第2追走集団となった。

終盤に独走するダミアン・モニエ Photo: Yuu AKISANE

 一方でメイン集団はNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニが前を固めて先頭を追うが、そのペースは今一歩上がりきらない。最終周回に入る頃には、第1追走集団はルバとのタイム差を10秒にまで縮め、メイン集団とのタイム差は1分25秒となっていた。

 下久堅の上り区間で、ルバとカスティブランコはモニエに追いつくと、モニエは2人のペースについていけず先頭から脱落。第2追走のサンダーランドは、シュレーズを振り切って単独で前を追いかけていた。

 先頭2人とメイン集団とのタイム差は1分45秒に広がり、逃げ切りが濃厚になってきた。

マッチスプリントをルバが制す

 ダウンヒルを終え、TOJコーナーを曲がったあたりでは、先頭2人から25秒遅れてサンダーランド、さらに1分20秒遅れてメイン集団となっていた。ルバとカスティブランコは逃げ切りに向けて快調な走りを見せ、フィニッシュ地点のホームストレートに入った。

マッチスプリントで競り合うトマ・ルバとホルヘカミロ・カスティブランコ Photo: Yuu AKISANE

 逃げを積極的に引いていたルバだが、ホームストレートに入るとカスティブランコを前に出して様子をうかがう。ルバに付かれたカスティブランコが先行する形でマッチスプリントが開始されたが、残り100mでルバがカスティブランコをかわして勝負あり。ルバがTOJ初勝利となるステージ優勝を飾った。

 単独で追走していたサンダーランドが20秒遅れでフィニッシュし、ステージ3位。メイン集団は1分19秒遅れでフィニッシュに到達し、集団先頭はリーダージャージを着るグレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ)の4位だった。日本人選手は窪木一茂(チーム ブリヂストンサイクリング)の6位が、ステージ最上位だった。

ステージ3位のディラン・サンダーランドは苦しそうな表情をしながらフィニッシュ Photo: Yuu AKISANE
メイン集団先頭はグレガ・ボーレが先着し、マルコ・カノラはステージ5位だった Photo: Yuu AKISANE

 勝利したルバは「例年どおりハードなコースだった。日本のチームで走って7シーズン目だが、ツアー・オブ・ジャパンでの勝利はこれが初めてなので非常にうれしい。チーム戦略がうまくはまって、リーダージャージを獲得できた。チームに感謝したい。明日の富士山だけでなく1日1日をしっかり戦って、リーダージャージを守れるようにしたい」と語った。

 UCIアジアツアーにおいて区間、総合ともに優勝経験のあるルバだが、意外にもUCIカテゴリー1クラス以上のレースではキャリア初となる勝利となった。上りに強く、ライバル勢にこの日1分の差を付けたことで、総合争いにおいて大きく優位に立った。

総合首位に浮上したトマ・ルバ。上りにも強い選手で、総合優勝の期待がかかる Photo: Yuu AKISANE

 山岳賞ジャージを奪還した小石は「無事に山岳賞暫定トップに立ててホッとしている。最初からスピードが速くて、今大会で一番キツいレースだった。最初は逃げに乗れなかったが、その後追いついて3番手でKOMを通過できて良かった」と語り、南信州ステージはチームUKYOのホームステージということもあって、「沿道のファンからの『がんばれ!UKYO!』と声援を耳にして、力になった。応援のおかげでジャージが取れたと思うので、ファンの皆さまに感謝したい」とファンへのメッセージも送っていた。

山岳賞ジャージを奪還した小石祐馬。しかし2位以下も激戦の様相を呈しているため、今後のレースでの攻防も見どころだ Photo: Yuu AKISANE

 ボーレは総合ジャージを失ったものの総合2位でポイント賞ジャージはキープ。新人賞ジャージはサム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス)が首位に再浮上した。

 翌第6ステージは「富士山」で争われる。例年総合争いを決定づける「ふじあざみライン」のヒルクライムは標高差1160m、最大斜度22%の激坂を含む超難関ステージだ。今年は富士スピードウェイがスタート地点となり、レース距離が増えた影響が展開にどのような影響を与えるかも注目ポイントとなっている。

第5ステージ結果
1 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 3時間13分35秒
2 ホルヘカミロ・カスティブランコ(コロンビア、チーム イルミネート) +0秒
3 ディラン・サンダーランド(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス) +20秒
4 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +1分19秒
5 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)
6 窪木一茂(チーム ブリヂストンサイクリング)
7 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム)
8 横山航太(シマノレーシングチーム)
9 キャメロン・パイパー(アメリカ、チーム イルミネート)
10 中根英登(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)

個人総合時間
1 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 12時間42分16秒
2 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +1分1秒
3 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +1分4秒
4 ホルヘカミロ・カスティブランコ(コロンビア、チーム イルミネート) +1分6秒
5 イアン・ビビー(イギリス、JLT・コンドール) +1分9秒
6 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス) +1分18秒
7 ロビー・ハッカー(オーストラリア、チームUKYO) +1分21秒
8 ディラン・サンダーランド(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス)
9 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +1分24秒
10 中根英登(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +1分27秒

ポイント賞
1 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 72 pts
2 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) 70 pts
3 ミヒケル・レイム(エストニア、イスラエル サイクリングアカデミー) 50 pts

山岳賞
1 小石祐馬(チームUKYO) 16 pts
2 草場啓吾(日本ナショナルチーム) 15 pts
3 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) 14 pts

新人賞
1 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス) 12時間43分34秒
2 ディラン・サンダーランド(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス) +3秒
3 ベンジャミン・ペリー(カナダ、イスラエル サイクリングアカデミー) +11秒

チーム総合
1 キナンサイクリングチーム 38時間9分50秒
2 チームUKYO +1分14秒
3 ベネロング・スイスウェルネス +1分15秒

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