ツアー・オブ・ジャパン2018 第2ステージ【詳報】逃げからさらにアタック、雨澤毅明がUCIレース初勝利 総合首位はボーレに

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 集団スプリントかと思われたメイン集団から、残り2kmから抜け出した9人。それも飲み込まれようかと思われた瞬間、わずかな可能性に賭けてアタックした23歳が、ゴールラインを先頭で駆け抜けた。5月21日に京都で行われたツアー・オブ・ジャパン(TOJ)の第2ステージは、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)が自身初となるUCI(国際自転車競技連合)公認レースでの勝利を挙げた。また、追い込んで2位に入ったグレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ)が、ボーナスタイム獲得により総合首位に浮上した。

残り600mからアタックして抜け出した雨澤毅明が、メイン集団の追走から逃げ切って国際レース初優勝 Photo: Ikki YONEYAMA

現れないユキヤ

 第2ステージは京都の京田辺市と精華町にまたがるコース。「普賢寺ふれあいの駅」からセレモニーラン(パレード)を経てスタートが切られ、1周16.8kmのアップダウンコースを6周半する105.0kmで行われた。フィニッシュラインが置かれる「けいはんなプラザ」周辺は2車線の直線路だが、上り区間には道幅の狭い曲がりくねった道が点在する。集団でのロードレース初日にして、展開次第では大きくタイム差がつく流れもあり得る難コースだ。

スタート地点の「普賢寺ふれあいの駅」前の道路にチームカーが並ぶ Photo: Ikki YONEYAMA
スタート地点の京田辺市は、玉露のお茶が知られる Photo: Ikki YONEYAMA

 午前9時のセレモニー開始を前に、8時頃から徐々に選手がスタート地点に集まってくる。平日にもかかわらず駆けつけたファンの、一番のお目当ては新城幸也(バーレーン・メリダ)だ。チームのテント前に人だかりができるものの、他の5人の選手が準備を進めるなか、新城はなかなか現れない。

スタート前にレースの作戦を練るイスラエル サイクリングアカデミー Photo: Ikki YONEYAMA
他の選手より遅く、集中した表情で現れた新城幸也 Photo: Ikki YONEYAMA

 ようやく新城が姿を見せたのは、8時半になってから。そこからはファンとの記念撮影やサインに応じていたが、表情からはこの日のレースに向け集中している様子がうかがえた。

チームピットを取り囲むファンに応じる新城幸也 Photo: Ikki YONEYAMA
出走サインをする、総合首位のビビー Photo: Ikki YONEYAMA
スタートラインの前列に、各リーダージャージと、ホームチームのマトリックスパワータグが並ぶ Photo: Ikki YONEYAMA

 スタートセレモニーには西脇隆俊京都府知事が駆けつけてスピーチ。京田辺市の石井明三市町の合図で、セレモニーランがスタートした。同志社大学のキャンパスを通過するなど5.5kmを走り、周回コース入口で一旦停止した後に、本スタートが切られた。

スタートライン前で、同志社大学の応援団チアリーダー部がパフォーマンス Photo: Ikki YONEYAMA
西脇隆俊京都府知事が「勝利を目指して素晴らしい戦いを繰り広げて」とエール Photo: Ikki YONEYAMA
セレモニーランを進む集団 Photo: Ikki YONEYAMA

ホームチームのマトリックスが先行

 スタート直後アタックしたのは、京都ステージのホームチーム、マトリックスパワータグの安原大貴だ。独走で最初のフィニッシュラインを通過し、追走してきた3人と合流して、4人の逃げグループとなった。

逃げる4人 Photo: Ikki YONEYAMA

 逃げは安原のほか、木村圭佑(シマノレーシングチーム)、コナー・ブラウン(アメリカ、チーム イルミネート)、草場啓吾(日本ナショナルチーム)。快調に先頭交代をしてペースを上げ、タイム差を2分、3分と広げていった。

 メイン集団では、総合首位のイアン・ビビー(イギリス)を抱えるJLT・コンドールがコントロールを行わず、小さな追走が何度か抜け出て吸収されるなど、ラップタイムは上がらない一方で、ペースが安定しない状況が続いた。

スローペースで進む序盤のメイン集団 Photo: Ikki YONEYAMA
上りを進むメイン集団 Photo: Ikki YONEYAMA

 2度の中間スプリントは、ともに安原が先頭で通過した。一方山岳ポイント争いは、1回目を木村、2回目を草場が先頭で通過した。両者は同ポイントとなったが、後で取ったポイント数を優先するルールにより、草場が山岳賞首位のリーダージャージに袖を通すことになった。

ホームチームとして、積極的な走りをみせた安原大貴 Photo: Ikki YONEYAMA
2回目の山岳賞争い、草場啓吾が先頭通過 Photo: Ikki YONEYAMA

勝負は集団での戦いへ

 メイン集団からは中盤、ディラン・サンダーランド(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス)、シモン・ペロー(スイス、チーム イルミネート)の2人が追走で抜け出した。2人が5周目の後半で逃げグループに追いつくと、直後に安原が遅れて先頭は5人になり、最終周回へと突入した。

後半、追走で飛び出した2人 Photo: Ikki YONEYAMA
徐々にペースを上げて先頭を追うメイン集団 Photo: Ikki YONEYAMA

 メイン集団もレース後半、ようやく複数の有力チームが追走のペースアップを行い、タイム差を1分半弱まで詰めてきた。

 先頭ではコース前半の上り区間でペローがペースを上げると、他の選手は次々と脱落してペローが単独先頭となった。しかしペースを上げたメイン集団がペローに襲いかかる。粘ったペローもついに集団に吸収され、土壇場にきてレースは振り出しに戻った。

山岳ポイントを前にマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)がアタック。メイン集団のペースが上がる Photo: Ikki YONEYAMA

 コース後半は下りと小さなアップダウンを経てゴールへと戻る。上りで20人ほどが遅れたものの、まだメイン集団は大きく、このまま集団ゴールスプリントになる可能性が高くなった。しかし残り2kmで、新城がアタックを仕掛けた。

一瞬の空白を突いた雨澤

 「京都ステージで勝利を狙う」と公言していた新城のアタックは強力で、これに反応した8人の選手と合流して、土壇場で9人の逃げ集団を形成した。メイン集団も追走の動きをみせ、これにより後続も真っ二つに分かれて前の9人を追走する。一度はメイン集団から差をつけた逃げの9人だが、残り1kmを切って若干けん制気味となる。やはり吸収かと思われた瞬間、残り600mから雨澤がアタックした。

ホームストレートに入って後ろを振り返る雨澤毅明。新城幸也が追うが、そこにメイン集団が襲いかかる Photo: Ikki YONEYAMA

 直角コーナーの先頭通過から一気に加速した雨澤は、共に逃げた8人、そしてメイン集団から数秒のアドバンテージを稼ぎ出し、そのままの勢いで最終コーナーを通過した。雨澤を追う新城、それを飲み込んで迫るメイン集団だが、雨澤への距離は遠い。

 何度も後ろを振り返って確認した雨澤は、勝利を確信すると、感情を爆発させるように何度もガッツポーズをしながら、勝利のフィニッシュラインを通過した。

ゴール後の新城幸也(右)。強力なアタックでレースを動かしたが、勝利にはつながらなかった Photo: Ikki YONEYAMA
グリーンジャージを失うことになったビビー。暑かった一日、ジャージに汗の跡が目立った Photo: Ikki YONEYAMA

23歳の若武者、開くか本場への扉

 ゴール後、笑顔で勝利を喜ぶ一方で、「信じられない」と繰り返す雨澤。チームはこの日、集団スプリント狙いで臨んでいたという。「けん制気味になったので、チャンスかと思って」繰り出したアタックだが、自身の勝利につながったのは、うれしい想定外だ。

TOJの栗村修・大会ディレクター(左)は、宇都宮ブリッツェンの前監督。雨澤毅明の優勝を祝福して並んでポーズ Photo: Ikki YONEYAMA

 日本人選手のTOJ勝利は、2016年の伊豆ステージでの新城以来2年ぶり、また日本国内チームに所属の日本人選手としては、2014年の東京ステージで優勝した西谷泰治(現・愛三工業レーシングチームテクニカルディレクター)以来4年ぶりとなる。

 雨澤は昨年、U23(23歳未満)の日本代表で、U23の世界最高峰レース「ツール・ド・ラヴニール」をエースとして走った。ここでの上位進出は逃したものの、10月のジャパンカップではチームの地元でのビッグレースで念願の3位表彰台を獲得する活躍。本場の海外チームへのステップアップも模索したが、実現には至らず今季も宇都宮ブリッツェンでエースの一翼を担っている。

ステージ優勝の雨澤毅明がワインで乾杯! Photo: Ikki YONEYAMA

 ブリッツェンの清水裕輔監督は、今回のTOJの目標を「個人総合優勝」と断言する。その重責を担うのは雨澤。一週間にわたる日本最大のステージレースで結果を残したとき、焦がれ望んだ本場への扉が開くはずだ。

表彰式を終えても「まだ信じられない」という雨澤毅明 Photo: Ikki YONEYAMA
ブリッツェンもう一人の総合エース、増田成幸は終盤の落車でこの日10分遅れてゴール。総合狙いは雨澤一人に託されることに Photo: Ikki YONEYAMA

総合首位のボーレ「新城にも勝たせたい」

 個人総合首位のリーダージャージは、ビビーからボーレへと移った。ビビーも先頭と同タイムの集団内でゴールしたが、区間2位に入ったボーレがボーナスタイム6秒を得て、ビビーを逆転した。同じく3位に入ったマルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)も、4秒のボーナスを得て総合2位に浮上している。

ボーナスタイムにより総合首位に立ったグレガ・ボーレ Photo: Ikki YONEYAMA
雨澤毅明は総合ポイント賞のブルージャージも獲得 Photo: Ikki YONEYAMA
山岳賞ジャージを獲得した草場啓吾。前日のチームプレゼンテーションでは「逃げて山岳賞を取る」と公言しており、有言実行を果たした Photo: Ikki YONEYAMA
新人賞ジャージはオリバー・ウッドがキープ Photo: Ikki YONEYAMA

 首位のグリーンジャージに袖を通したボーレは、どちらかと言えばステージ優勝に届かなかったことが悔しい様子。「グリーンジャージを取れたことには満足している。まだ先は長いが、このジャージは何日か守りたい。チームには強い選手がそろっているし、新城もいるので、彼が勝てるようにもしていきたい」と今後への展望を語った。

 第3ステージは翌5月22日、三重県いなべ市で開催される。アップダウンコースを経て、最後は急勾配の上りを越えたところでゴールとなり、集団内でもタイム差がつく展開が予想される。

第2ステージ結果
1 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) 2時間49分29秒
2 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +0秒
3 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)
4 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO)
5 オリバー・ウッド(イギリス、JLT・コンドール)
6 ミヒケル・レイム(エストニア、イスラエル サイクリングアカデミー)
7 ロビー・ハッカー(オーストラリア、チームUKYO)
8 シモーネ・ポンツィ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)
9 新城幸也(バーレーン・メリダ)
10 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)

個人総合時間
1 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 2時間52分37秒
2 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +1秒
3 イアン・ビビー(イギリス、JLT・コンドール) +4秒
4 オリバー・ウッド(イギリス、JLT・コンドール) +5秒
5 ミヒケル・レイム(エストニア、イスラエル サイクリングアカデミー)
6 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
7 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO) +6秒
8 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス) +7秒
9 キャメロン・ベイリー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネス)
10 ロビー・ハッカー(オーストラリア、チームUKYO)

ポイント賞
1 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) 25 pts
2 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) 25 pts
3 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 24 pts

山岳賞
1 草場啓吾(日本ナショナルチーム) 8 pts
2 木村圭佑(シマノレーシングチーム) 8 pts
3 コナー・ブラウン(アメリカ、チーム イルミネート) 2 pts

新人賞
1 オリバー・ウッド(イギリス、JLT・コンドール) 2時間52分42秒
2 ミヒケル・レイム(エストニア、イスラエル サイクリングアカデミー) +0秒
3 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)

チーム総合
1 JLT・コンドール 8時間38分7秒
2 チームUKYO +7秒
3 宇都宮ブリッツェン

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