ジロ2018 プレビュー<3>逃げ切りはグランツールの華 今ジロ注目、逃げのスペシャリスト9人を紹介

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 三大グランツールの一つである「ジロ・デ・イタリア」が5月4日、大会史上初ヨーロッパ外のイスラエルにて開幕する。山岳ステージが多く組み込まれているジロでは、逃げ切りが決まる頻度が多い。今回はジロに出場する逃げのスペシャリストを紹介していきたいと思う。

根性で激坂が駆け上がるジェニエス

 アレクサンドル・ジェニエス(フランス、アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)は、ブエルタ・ア・エスパーニャで2回逃げ切り勝利を挙げている30歳の選手だ。

 圧巻は2016年ブエルタ第3ステージだ。ラスト1.5kmは平均勾配16%の激坂になっていたが、ジェニエスは根性で上りきり、迫りくるメイン集団の選手から21秒差をつけてステージ優勝を飾った。

2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ第3ステージで勝利したアレクサンドル・ジェニエス。ジャージのジッパーを閉める余裕がないほどの激走だった Photo : Yuzuru SUNADA

 2017年のトレ・ヴァーリ・ヴァレシーネというワンデーレースでは、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とティボー・ピノ(フランス、エフデジ)とのスプリント勝負を制して勝利した。今シーズンもすでに3勝を挙げる活躍を見せている。

 独走力、登坂力、スプリント力を兼ね備え、最後まで力を出し切る根性を合わせ持つジェニエスは逃げ切り勝利に必要な要素を全て持ったライダーだといえよう。

年々登坂力向上中のルツェンコ

 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナプロチーム)は、2012年にU23の世界チャンピオンになり、ワールドツアーでは通算3勝を飾るなど、大器の片鱗を見せている25歳の選手だ。

 2016年パリ〜ニース第5ステージでは、残り30km地点からメイン集団より飛び出し、平坦基調でアシストも大勢残っているメイン集団を振り切って、21秒差で逃げ切る離れ業を演じた。

2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージで勝利したアレクセイ・ルツェンコ。母国カザフスタンのスター選手だったアレクサンドル・ヴィノクロフの後継者になり得る潜在能力の持ち主だ Photo : Yuzuru SUNADA

 また2017年ブエルタ第5ステージでは序盤から逃げに乗り、ラスト3.8km区間は平均勾配8.7%の上りをこなして独走逃げ切り勝利を決めた。

 さらに今シーズンは例年総合系の選手が勝利しているツアー・オブ・オマーンで総合優勝を飾り、年々登坂力が向上しているように思われる。

 今大会では、エースのミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)のアシストが最優先任務と思われるが、ルツェンコの独走力や登坂力を生かして逃げに乗るシーンも見られることだろう。

昨年のレース走行距離は世界一のモホリッチ

 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)も、2013年にU23世界チャンピオンになった23歳の逸材である。

 この2013年のU23世界選手権は、モホリッチ以外にも逸材が多く揃ったレースで、トップ10に入った選手全員が後にワールドチームに所属している黄金世代だ。その強力なメンバー全員を抑えて勝利したのがモホリッチだ。

「モホリッチ乗り」とも形容されるトップチューブにまたがりながら、超低姿勢でペダリングする技術を持ち合わせているマテイ・モホリッチ Photo : Yuzuru SUNADA

 2017年シーズンは95日間のレースに出場し、レース走行距離は1万5500kmを越え、いずれも全選手中最多だ。特筆すべきは出場した全てのレースを完走するという、とんでもないタフネスぶり。さらにブエルタ第7ステージでは、逃げ切り独走勝利を飾る活躍を見せていた。

 今シーズンはボルタ・ア・カタルーニャでは上りで積極的に動く姿も見られ、独走力に加えて登坂力も高まっているように見られる。

 そしてトップチューブにまたがりペダリングする乗り方。これを世界で最初に披露したのはモホリッチだといわれているように、ダウンヒル技術は天下一品であり、グランツールの逃げに打ってつけの脚質の持ち主なのだ。

20大会連続グランツール完走を狙うハンセン

 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・フィックスオール)は2011年のブエルタから、2017年のブエルタまでのグランツールに19大会連続出場し、全て完走する大記録を打ち立てている36歳の鉄人だ。

 だが、その偉大な記録も今回のジロ限りで打ち止めになる可能性が高い。

レース中にカメラマンを見つけてはピースサインを送るお茶目な一面も持つアダム・ハンセン。一昨年のサイクルモードで来日したこともあり、ジャパンカップへの出場を熱望しているそうだ Photo : Yuzuru SUNADA

 けがや衰えのためといった理由ではなく、「これまでは毎年同じプログラムだったので、変化をつけたい。違うことに挑戦したい」と語り、新たな自身の野望のために走りたいという意欲を持っている。

 大雨のなか逃げ切りを決めた2013年ジロ第7ステージや、スプリンターチームのコントロールをかいくぐって残り5kmで独走に持ち込み勝利した2014年ブエルタ第19ステージの再現に期待したい。

ユイの壁ラスト300mまで逃げたシャフマン

2016年世界選手権U-23個人TT部門で銀メダルを獲得したマキシミリアン・シャフマン Photo : Yuzuru SUNADA

 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)は、2016年のU-23世界選手権個人タイムトライアルで2位になった24歳の選手で、今大会がグランツール初出場となる。

 今シーズンは、ボルタ・ア・カタルーニャ第6ステージで、雪予報のためコースが短縮され、さらに冷たい雨が降るような悪コンディションのなか、シャフマンは逃げ切りでプロ初勝利を飾った。

 フレーシュ・ワロンヌでは、終盤にメイン集団から抜け出してラスト300mまで逃げ続ける働きを見せ、チームメートのアラフィリップの勝利に大きく貢献した。

 巡航能力に加えて、ユイの壁クラスの上りでもスピードを落とさず上る力を持っているため、山岳ステージでの逃げ適性は高いだろう。

無尽蔵のスタミナを持つベルハネ

 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)は、アフリカ大陸ロード王者、エリトリア国内王者に輝いた経歴を持つ27歳の選手だ。

ナトナエル・ベルハネの母国エリトリアはいまやロードレース新興国として着々と選手を輩出しつつある。写真は昨年のジロ・デ・イタリア第14ステージ Photo : Yuzuru SUNADA

 2016年ツール・ド・フランスでは、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のために延々と集団を牽引する姿が目立っていたが、2013年にはツアー・オブ・ターキーのクイーンステージを制して、総合優勝(※総合1位が失格になったため繰り上げ)を飾ったこともあるように総合力も高い。

 今大会では総合エースのルイス・メインチェス(南アフリカ)の護衛が最優先任務ではあるが、山岳ステージではベルハネに逃げのオーダーが出る可能性が高い。黒人初のワールドツアー勝利を十分に狙える選手だろう。

未舗装路や上りに強いブランビッラ

 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)は、身長170cmと小柄ながらパワフルな走りが持ち味の29歳の選手だ。グランツールでは2回逃げ切り勝利を飾っている。

2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージで勝利したジャンルーカ・ブランビッラ Photo : Yuzuru SUNADA

 特に2016年ジロ第8ステージは未舗装路区間を含むテクニカルなコースだったが、独走勝利を決めて総合首位に立つ走りを見せた。

 今大会の最難関(クイーン)ステージである第19ステージでは、6.2kmの未舗装路の上り区間を含むフィネストーレ峠が登場する。

 2016年ブエルタ第15ステージではラスト1級山岳の山頂にフィニッシュする難関コースで、同大会で総合優勝を果たすナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスターチーム)に食らいつきステージ優勝を飾った。ブランビッラならば、ジロのクイーンステージでも逃げ切りのチャンスは十分あるだろう。

山頂フィニッシュで2度逃げ切ったポランツェ

 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチーム・エミレーツ)は、独走力と登坂力に優れた25歳の選手だ。

 ジロでは2015、2017年に2度逃げ切り勝利を飾っている。いずれも平均勾配6〜7%前後の上りを経て、山頂フィニッシュとなる山岳ステージでの独走逃げ切りだ。

2017年ジロ・デ・イタリア第4ステージで独走逃げ切り勝利を決めたヤン・ポランツェ Photo : Yuzuru SUNADA

 昨年はスロベニア国内TT王者にも輝き、巡航能力にも磨きがかかっている。第6、8、18ステージあたりが狙い目かもしれない。

115km独走逃げ切りを決めたプラサ

 ルーベン・プラサ(スペイン、イスラエルサイクリングアカデミー)は、通算26勝を誇る38歳の大ベテラン選手だ。

2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで115km独走の大逃げを決めたルーベン・プラサ Photo : Yuzuru SUNADA

 グランツールでは3度のステージ勝利を飾っており、なかでも2015年ブエルタ第20ステージでは115kmにわたって独走を試みて、ステージ優勝を挙げている。

 直近のスペインで行われた3日間のステージレースで総合優勝しており、38歳にしてまだまだ第一線で戦えることを証明した。

 地元イスラエルのチームの一員として、イスラエルステージでの逃げだけでなく、得意の山岳ステージでの大逃げにも期待したい。

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