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ジロ2018 プレビュー<1>過去5年間での逃げ切り回数は32回 ジロ・デ・イタリアでは”逃げ”も主役だ!

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 クライマー、オールラウンダーによる総合バトル、スプリンターによる集団スプリント勝負だけでなく、「逃げ切り」もグランツールの見どころだ。今回は5月4日に開催するジロ・デ・イタリアでの逃げ切りについて、過去の大会の実績を振り返りながら考察してみたいと思う。

TT以外では3日に1回が“逃げ切り”に

 まず、過去5年間のジロにおける逃げ切り勝利について調べてみた。

 独走で逃げ切った選手には★印をつけており、所属チームはすべて当時のチーム名とした。

●2017年

 第4ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):★ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチーム・エミレーツ)
 第6ステージ(中級山岳):シルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシングチーム)
 第8ステージ(中級山岳):ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスターチーム)
 第11ステージ(上級山岳):オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
 第17ステージ(中級山岳):★ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
 第18ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)
 第19ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):★ミケル・ランダ(スペイン、チーム スカイ)

ジロ・デ・イタリア2017第18ステージで勝利したティージェイ・ヴァンガーデレン。ミケル・ランダとのマッチスプリントを制す Photo : Yuzuru SUNADA

●2016年

 第6ステージ(中級山岳・山頂フィニッシュ):★ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
 第8ステージ(中級山岳):★ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
 第10ステージ(中級山岳・山頂フィニッシュ):★ジウリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)
 第13ステージ(上級山岳):★ミケル・ニエベ(スペイン、チーム スカイ)
 第18ステージ(中級山岳):マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
 第20ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):★レイン・ターラマエ(ベラルーシ、チーム カチューシャ)

ジロ・デ・イタリア2016第18ステージにて、終盤に猛烈な追い上げを見せ、勢いそのままにスプリントを制したマッテオ・トレンティン Photo : Yuzuru SUNADA

●2015年

 第4ステージ(上級山岳):★ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)
 第5ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):★ヤン・ポランツェ(スロベニア、ランプレ・メリダ)
 第8ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):★ベニャト・インチャウスティ(スペイン、モビスターチーム)
 第9ステージ(中級山岳):★パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナプロチーム)
 第10ステージ(平坦):ニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニCSF)
 第11ステージ(中級山岳):★イルヌール・ザカリン(ロシア、チーム カチューシャ)
 第18ステージ(上級山岳):★フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
 第21ステージ(平坦):イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)

ジロ・デ・イタリア2015第21ステージで勝利したイーリョ・ケイセ。最終ステージで逃げ切りが決まるのは非常に珍しいこと Photo : Yuzuru SUNADA

●2014年

 第9ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)
 第13ステージ(平坦):マルコ・カノラ(イタリア、バルディアーニCSF)
 第14ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):エンリコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF)
 第17ステージ(平坦):ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)
 第18ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):★ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)
 第20ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):★マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)

ジロ・デ・イタリア2014第13ステージで勝利したマルコ・カノラ。平坦ステージで逃げ切りが決まり、スプリントを制した Photo : Yuzuru SUNADA

●2013年

 第7ステージ(中級山岳):★アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)
 第9ステージ(中級山岳):★マキシム・ベルコフ(ロシア、チーム・カチューシャ)
 第11ステージ(中級山岳・山頂フィニッシュ):★ラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)
 第15ステージ(上級山岳・山頂フィニッシュ):★ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスターチーム)
 第16ステージ(中級山岳):ベニャト・インチャウスティ(スペイン、モビスターチーム)

ジロ・デ・イタリア2013第7ステージでは悪天候のなか独走勝利を決めたアダム・ハンセン。今年のジロではグランツール連続20大会完走に挑む Photo : Yuzuru SUNADA

 ということで、個人・チームのタイムトライアル(TT)やレースキャンセルとなったステージを除いた全91ステージ中、32回逃げ切りが決まっており、その確率は35%に達する。およそ3ステージに1回は逃げ切りが決まっているのだ。

 そして、1週間程度のステージレースに比べて3週間のグランツールの方が逃げ切りが決まりやすくなる傾向にある。

 今シーズン、ここまで開催されたワールドツアーのステージレースで逃げ切りが決まった回数は、TTを除いた全38ステージ中7回で、確率は18%となっている。今季のステージレースと過去5年のジロを比較すると、ジロの方が約2倍逃げ切りが決まりやすいといえる。

総合で遅れた選手は逃げ切りのチャンス

 逃げ切りを決める上では、総合首位とのタイム差も重要な要素である。基本的にはすでに10分以上総合首位から遅れていて、逃げ切ったとしても総合成績にあまり影響のない選手で構成される逃げ集団であれば、逃げ切りを容認されることが多い。

 しかし、そのコースの特徴に脚質が合った選手が逃げている場合は、総合首位とのタイム差が大きく離れていないとしても逃げ切りが決まることがある。

 2016年第8ステージのブランビッラがそのケースに該当する。

 このステージでは終盤に6.4kmの未舗装路の上り区間が設定されていた。ブランビッラは第7ステージ終了時点で1分56秒遅れの総合22位だったため、メイン集団は逃げ集団とのタイム差を3〜4分程度にコントロールしていた。

逃げ切り勝利を飾り、マリアローザに袖を通したジャンルーカ・ブランビッラ Photo : Yuzuru SUNADA

 ブランビッラは同年のストラーデ・ビアンケで3位に入っており、未舗装路を得意としていた。上りに入ってもペースは落ちず、むしろメイン集団が厳しい上りで崩壊し、有力選手同士による牽制になったことも影響して、ブランビッラは逃げ切ることができた。

 さらにブランビッラは、総合首位に浮上してマリアローザを獲得することにも成功。結果として2ステージの間、マリアローザを着用したのだった。たとえ1日でもグランツールのリーダージャージを着用することはとても名誉なことである。逃げている選手と総合首位とのタイム差も見ながらレース展開を追っていきたいところだ。

逃げ切りに必要な登坂力と独走力

 次に逃げ切りを決めた選手をおおよその脚質別に分けてみると、

 ルーラー:7
 クライマー:18
 パンチャー:6
 スプリンター:1

 となる。山岳ステージが中心のジロでは、クライマーによる逃げ切りが過半数を占めている。

 また32回の逃げ切りのうち21回が独走での勝利だ。数人ないし多いときは数十人にものぼる逃げ集団の中には様々な脚質をもった選手がいる。そこから最終的に勝利するためには、ライバルを振り切る力と、振り切ったあとに独走したままフィニッシュ地点にたどり着く巡航能力の高さが、とても重要な要素となってくる。

当時22歳のダヴィデ・フォルモロは、大舞台でプロ初勝利を飾った Photo : Yuzuru SUNADA

 例えば、2015年第4ステージで勝利したフォルモロは、登坂力は高いがスプリントは苦手な選手だ。20人以上の逃げ集団のままフィニッシュにたどり着くことを嫌い、残り10km地点に設定された3級山岳の手前でアタックを仕掛け、独走に持ち込んだ。

 そして得意の上りで後続との差を開き、ダウンヒルを経て独走勝利を飾った。

 一方で、2017年第11ステージで勝利したフライレは、登坂力・独走力に加えてスプリント力も兼ね備えている選手だ。積極的にアタックを仕掛けて、集団の人数を減らした上で、自分がスプリントで勝てる選手を残した状態でフィニッシュ地点に到達し、狙い通りスプリントで勝利を収めている。あえて集団スプリントに持ち込むために、積極的に動く駆け引きもあるのだ。

 逃げ集団内での選手の脚質の違いによって、仕掛けるタイミングが変わってくるため、コースプロフィールを見ながらどのタイミングで誰が仕掛けるのか予想したり、アタックの意図を推測したりしながら観戦するのも面白い。

グランツールでの勝利は最高のアピール

 逃げ切りを決めたのべ32人の選手のうち、勝利を挙げてから2年以内に他のチームへの移籍を決めた選手は14人もいる。より良い待遇を求め、あるいはステップアップのために好条件の契約を引き出すために、グランツールでのステージ勝利は格好の交渉材料になっているのだ。

2017年第11ステージで勝利したオマール・フライレはアスタナプロチームに移籍。今季は早くも2勝を挙げる活躍を見せている Photo : Yuzuru SUNADA

 公に移籍市場は8月1日以降に開かれるとされているが、実際はそれ以前に下交渉を行っている場合が多いといわれている。その年に契約更改を控えている選手にとっては、5月という早い時期に開催されるジロは、重要なアピールの場になるのだ。

 超級山岳でトップクライマーに勝てるような登坂力はない。大集団スプリントでトップスプリンターに勝てるようなスプリント力はない。タイムトライアルでスペシャリストに勝てるような独走力はない。といった選手は、逃げ切りに活路を見いだすのだ。

 プロとして生き残りを懸けた必死の逃げには心を打たれる。逃げている選手の来季以降の契約の有無やチーム内での立場を考えながら観戦していると、その選手に感情移入してしまうことだろう。

◇         ◇

 ジロ・デ・イタリアに限らずグランツールでは、「逃げ」もレースの主役だ。一見総合争いとは無縁に見える何気ないステージでも、劇的な展開を生み出すことがある。

 もしかしたら無名選手が一気にスターダムにのし上がる姿を見られるかもしれない。

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