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栗村修の“輪”生相談<126>18歳男性「将来地元で地域密着型チームを作りたいです!」

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将来地元で地域密着型チームを作りたいです!

 地域密着型のチームの多くは監督・代表は元選手が多いですが、自分は選手にはなる予定はありません。その場合作る時は地元などを説得するときに大変ですか? 地域貢献活動などはどのようにすれば多くの方の協力を仰げるでしょうか? また選手はどうすれば有名で強い選手をチームに呼ぶことができるでしょうか?

 ざっくりとした質問ですが、答えてくださるとありがたいです。

(18歳男性)

 とても嬉しいご質問ありがとうございます。「地域密着」という言葉は今の僕にとって非常に重要なキーワードになっているので、18歳と若い質問者さんの将来の目標のひとつになっていることは大きな意義があると感じます。

 僕も地域密着型チームの先駆けである宇都宮ブリッツェンで4年間、監督をしつつチーム作りに関わりましたし、今、大会ディレクターを務めているツアー・オブ・ジャパンも地域貢献・社会貢献を意識するようになってから伸びています。

 でも、どうするのがベストか、まだはっきりした答えは出ていないんです。常にトライ&エラーです。こういったご質問に答えたことは何度かあるんですが、お答えは以前とは変わってると思います。

 国内でいちばん大きな地域密着型チームが宇都宮ブリッツェンです。その売り上げは、2016年度の資料では、およそ2億円です。大金ですね。

 しかし、ブリッツェンが純粋に2億円をもうけているわけじゃないんです。これはあくまで売り上げです。もうけ(利益)は、売り上げマイナス経費ですから、経費分を差し引かなければいけない。売り上げのうち、一般的に皆さんが想像されるだろうスポンサー収入は半分以下で、残りはイベント事業や指定管理事業によるものですから、支出もそれなりにかさみます。2016年度のブリッツェンの利益は、実はマイナス400万円です。400万円の赤字なんです。

国内の地域密着型プロロードチームの代表的存在である宇都宮ブリッツェン。2018年で10年目のシーズンを迎えた Photo: Ikki YONEYAMA

 まあ、ビジネスですからそういう年もありますし、設備投資を行った結果ですからネガティブな内容ではありません。赤字を出しつつも、地元で多くの雇用を生み、チームも地元出身の雨澤毅明選手や小野寺玲選手の活躍など結果を出していますから、十二分に地域密着型チームの成功例と言えるでしょう。

 しかし、日本全体を見回すと、独り立ちできている地域密着型チームはブリッツェンくらい、とも言えます。地域密着型チームを作るということは、従業員十数人の企業を経営するのと同じですから、簡単じゃありません。毎年、数千万円〜数億の売り上げをあげ続けなければいけないんです。しかも普通の会社と違い、途中で業種を変えられません。自転車界が不況になっても、自転車界からは逃げられないわけです。

 だから質問者さんには、地域密着型チームを作るということは企業を経営することだ、という意識を持ってもらいたいですね。必要なのは、大学で経営を学んでMBAをとるとか、そういった経営や資本経済全般についての知識と経験を身に付けていただきたいのです(もちろん頭でっかちではダメですが…)。

 元選手じゃなくても、ぜんぜんいいと思いますよ。海外の大きなプロチームでも、元選手じゃない経営者ほど、安定したチーム運営に成功しているようです。選手になる予定がないことは、まったく悪いことじゃありません。

 もちろん、選手経験がないと、自転車界のコネには多少弱くなるでしょう。ですが、繰り返しになりますが、チーム運営はビジネスです。コネも大切ですが、それ以上に、きちんとした経営計画が、つまりビジネスのセンスがあるかどうかが重要です。いくら自転車への情熱にあふれていても、ビジネスの知識が皆無ではどうしようもありません。

世界の最強軍団、チーム スカイをGMとして率いるデイヴ・ブレイルスフォードは、プロ選手としてのキャリアを持たない Photo: Yuzuru SUNADA

 地域密着型チームは、地域からお金を集めて運営されていますから、地域のお金の出し手が魅力を感じる提案ができるかどうかがキモになります。自治体からお墨付きをもらうために「自転車で地域を盛り上げます」といったポジティブな切り口での提案が一般的ですが、逆に、放置自転車対策や交通マナー啓発などのネガティブな問題に対する具体的な提案を行ったりすることで活路が見いだせるケースも少なくありません。地域特有の自転車に関する諸問題をリサーチし、地域密着型チームがそれらの問題を解決していく。自治体もサポートしやすくなりますし、地元企業もCSR(企業の社会的責任)の観点でチームを応援してくれるはずです。

 おっと、選手を呼ぶにはどうするか、という問題が残っていました。強い選手を呼ぶにはお金が必要ですが、お金だけを積んで強豪選手を集めても、勢いは長続きしないでしょう。あのチームは選手を大切にするらしいぞ、とか、このチームなら強くなれるらしい、などの口コミがとても重要だったりします。選手はチームにとっての大切な資産であると考えてください。選手(候補)と地道に対話してください。チーム作りはビジネスです。でも、お金だけじゃないんですよ。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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