ラ・フレーシュ・ワロンヌ 2018アラフィリップが悲願のクラシック初優勝 バルベルデの5連覇を阻む渾身アタック

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2018年シーズンのアルデンヌクラシック第2戦、ラ・フレーシュ・ワロンヌは4月18日、ベルギー南部のワロン地域を舞台に行われた。名物「ユイの壁」での優勝争いは、フィニッシュ手前150mで先頭に立ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)が前を譲らず、キャリア初となるクラシックレース優勝を果たした。昨年まで4連覇していたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)は2位と、連勝記録は今大会で途切れた。

フィニッシュ手前150mで加速しラ・フレーシュ・ワロンヌ初優勝を決めたジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

新コースでの激坂王座攻防戦

 ラ・フレーシュ・ワロンヌといえば、1983年以来コースに組み込まれているユイの壁(登坂距離1.3km、平均勾配9.8%)で勝者が決まっていた。数十人の集団で上りに入り、フィニッシュ手前数百メートルでのパンチ力に長けた選手に栄冠が与えられる、毎年ほぼ同じレース展開。ユイの壁が誇る最大勾配26%、場所によっては29%ともいわれる“激坂”であることが最大の要因となっている。

レース前にスタートサインと合わせてチームプレゼンテーションが行われた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ここ数年は細かなコース変更がなされてきたが、今年も幾分の変化がなされている。ベルギー南部のワロン地域の都市・スランを出発し、ユイの壁の頂上を目指す198.5kmの中に、11の登坂区間を設定。さらに、この地域特有のいくつものアップダウンが含まれる。ユイの壁は、スタートから140.5km、169.5km、そしてフィニッシュラインと、例年通り3回の登坂。その直前には、2回通過するコート・ド・シュラヴ(登坂距離1.3km、平均勾配8.1%、最大勾配15%)が立ちはだかる。

 さらに、今回は65km地点にコート・ド・ラ・ヴェケ(登坂距離6.7km、平均勾配4.9%)と82km地点にコート・ド・ラ・ルドゥット(登坂距離2km、平均勾配8.9%)が組み込まれる。リエージュ~バストーニュ~リエージュで採用されている区間として知られるが、この大会にも“進出”。フィニッシュまでの距離があることから勝負どころとはならないが、選手たちの脚を消耗させるには十分すぎるほどのポイントといえる。

 主催者によって、新たな風を吹き込むべく設定された新コースで行われるレースは、5連覇を狙うバルベルデと、打倒に燃えるクラシックハンターとの勝負との、激坂王座攻防戦の構図となった。

1回目のユイの壁をきっかけにメイン集団が活性化

 この日のワロン地域は快晴で、気温が25℃を超える夏日。季節外れの高温のもと、レースがスタートした。

コート・ド・ラ・ルドゥットを上る逃げグループ Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 逃げが決まったのは6km地点。チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ロメン・コンボー(フランス、デルコ・マルセイユプロヴァンス・カテエム)、ロマン・アルディ(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)、アントニー・ルー(フランス、グルパマ・エフデジ)、パトリック・ミュラー(スイス、ヴィタルコンセプト サイクリングクラブ)が抜け出すと、さらにアントニー・ぺレス(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)、ケヴィン・ファンメルセン(ベルギー、ワンティ・グループゴペール)、アントワーヌ・ワルニエ(ベルギー、WBアクアプロテクト・ヴェランクラシック)が合流。この8人がリードし進行していった。

 逃げグループとメイン集団との差は、5分を境に徐々に縮小傾向となる。集団は逃げる8人に大きなリードは許さず、射程圏内にとらえながら着々と進んでいく。

ユイの壁を上るプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 やがて1回目のユイの壁へ。メイン集団はここでロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)がペースアップ。これにミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)、ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチーム・エミレーツ)らが続く。ここは決定打とはならなかったが、続いてタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チーム スカイ)がカウンターアタック。ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシングチーム)やジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)らが反応。集団が活性化したことで、バルベルデ擁するモビスター チームがコントロールを始めた。

 だが、集団は落ち着くことなく次々と動きが発生。ミヒャエル・ゴグル(オーストリア、トレック・セガフレード)のアタックに続き、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)も飛び出す。特に、ニバリの動きは力がある選手たちの仕掛けを誘発。逃げグループはベネデッティとルーを残して吸収され、代わってニバリら6人がレースを先行した。

2選手のリードで最後のユイの壁へ

 後半に入りリードしたのはニバリのほかルー、ベネデッティ、ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ プロチーム)、マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)。集団に対し徐々にリードを広げていき、50秒近い差とする。

先頭グループを牽引するヴィンチェンツォ・ニバリ Photo: Yuzuru SUNADA

 形勢はそのままに、2回目のユイの壁へ。タイム差45秒で最終周回を迎える。メイン集団はこの登坂で人数が一気に絞られる。昨年2位のダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ)、ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ワウト・プールス(オランダ、チーム スカイ)らが遅れ始めた。

 ニバリらを追いたいメイン集団だが、ここまでコントロールしてきたモビスター勢に消耗の色が見え始めた。先頭グループに選手を送り込んでいないディメンションデータやロット・スーダル、チーム スカイなどが牽引に加わり、ペースアップを図る。フィニッシュまで10kmを切って、少しずつ差が縮まっていった。

 先頭グループでは、残り6.7kmで迎えた2回目のコート・ド・シュラヴでシャフマンがペースアップ。ニバリ、カンゲルト、ヘイグが対応する。その直後の下りでヘイグがスピードに乗ると、これについていくことができたのはシャフマンだけ。2人が先行したまま、最後のユイの壁へと急いだ。

残り150mで一気の加速 ライバルを振り切る

 メイン集団もコート・ド・シュラヴ通過後は、ユイの壁に向けてスプリントさながらの位置取り争い。有力チームが前を固め、エースを好位置へと引き上げる。

 そして運命のユイの壁へ。先頭ではシャフマンがヘイグを振り切って単独先頭に立った。数秒差でメイン集団が追いかける。

 約40km逃げ続けたシャフマンだったが、急坂に入っても驚異的な粘りで先頭を走り続ける。徐々に人数が減るメイン集団は、イエール・ヴァネンデル(ベルギー、ロット・スーダル)を先頭に勝負どころを見定める。そのままヴァネンデルが最も勾配の厳しい区間から攻撃を開始。これをチェックできたのはアラフィリップだけだった。

 残り300mを切ったところでヴァネンデルがシャフマンをキャッチ。逃げ切りはならずシャフマンはチームメートのアラフィリップに勝負を託す。そのアラフィリップが後ろとの差を確認しながら、ヴァネンデルをかわすタイミングを計る。

 そして、その瞬間は残り150mだった。アラフィリップが満を持してアタックを繰り出し、難なくヴァネンデルをパス。後ろではバルベルデが猛然と追ったが、フィニッシュライン手前の緩斜面で失速。最後まで勢いが衰えなかったアラフィリップが初優勝を決めた。

トップでフィニッシュラインを通過したジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

アラフィリップ「バルベルデに先着して優勝したかった」

 昨年は直前のレースでの落車負傷により、アルデンヌクラシック全休だったアラフィリップ。その雪辱を果たす快勝だった。レース後の記者会見では、「バルベルデに先着してラ・フレーシュ・ワロンヌで優勝したいと思っていた」と、念願かなった勝利であることを強調。一方で、ユイの壁直前に集団がニバリを吸収していたことに気づいていなかったといい、「フィニッシュラインを通過するまで勝ったとは思っていなかった」と打ち明けた。

 次戦となる22日のリエージュ~バストーニュ~リエージュに向けては、「少しだけ休んだら、レースに完全集中する」と宣言。連勝なるかに注目が集まる。

 5連覇を阻まれ、2位に終わったバルベルデは、さばさばした表情ながら「自分も勝利にふさわしい選手だったはず」とコメントに悔しさがにじむ。また、「プロトン内ではほとんどのチームが自分とモビスター チームをマークしている状態だった」と振り返り、「難しいレースにあっての2位は満足すべきだ」と続けた。何より、昨年のツール・ド・フランス第1ステージでの落車で負った大けがからの回復を喜び、「38歳が近づいている今こそ、キャリアのベストタイミングじゃないかと思っている」と、この先のレースへの自信を見せた。

 アラフィリップ、バルベルデに続き、3位となったのはユイの壁での攻めの走りが利いたヴァネンデル。記者会見では「本当にうれしい」と笑顔がはじけた。最終局面については、「ティム(ウェレンス)を上位に送り出すことが役割だったが、残り200mで彼が近くにいないことに気が付いた。最後は自分のテンポで、イメージ通りの走りができた」と振り返った。

ポディウムに立った上位3選手。左から3位イエール・ヴァネンデル、1位ジュリアン・アラフィリップ、2位アレハンドロ・バルベルデ Photo: Yuzuru SUNADA

女子レースはファンデルブレッヘンが4連覇

アンナ・ファンデルブレッヘン(左)とジュリアン・アラフィリップ、男女の優勝者がそろい踏み Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 男子に先だって行われた女子レース(118.5km)は4選手による優勝争いとなり、最終局面で加速の違いを見せたアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールス・ドルマンスサイクリングチーム)が優勝。2015年からの4連覇を達成した。

 このレースには日本人選手が2人出場。與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)はファンデルブレッヘンから1分8秒差の30位、萩原麻由子(アレ・チポッリーニ)は8分41秒差の68位でそれぞれフィニッシュしている。

ラ・フレーシュ・ワロンヌ結果
男子(198.5km)

1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 4時間53分37秒
2 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +4秒
3 イエール・ヴァネンデル(ベルギー、ロット・スーダル) +6秒
4 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)
5 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)
6 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
7 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
8 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)
9 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)
10 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)

女子(118.5km)
1 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールス・ドルマンスサイクリングチーム) 3時間10分14秒
2 アシュリー・ムールマン(南アフリカ、サーヴェロ・ビグラプロサイクリングチーム) +2秒
3 ミーガン・ガルニエ(アメリカ、ブールス・ドルマンスサイクリングチーム)
4 アンネミーク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) +6秒
5 アマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) +17秒
6 シャラ・ジロー(オーストラリア、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) +19秒
7 サブリナ・ストゥルティエンス(オランダ、ワオウディールスプロサイクリング) +22秒
8 ソフィア・ベルティッツォーロ(イタリア、アスタナ ウィメンズチーム)
9 アナスタシーア・イアコヴェンコ(ロシア、BTC シティリュブリャナ) +25秒
10 マルガリータ・ヴィクトリア・ガルシア(スペイン、モビスター ウィメンズチーム) +28秒
30 與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) +1分8秒
68 萩原麻由子(アレ・チポッリーニ) +8分41秒

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