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栗村修の“輪”生相談<125>14歳男性「車道を走る恐怖を軽減するにはどうすればいいですか?」

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 クロスバイクを買って約半年たちましたが、いまだに車道を走るのが怖いです。

 車道を走る恐怖を軽減するにはどうすればいいですか?

 また、車道を走っていて怖かったエピソードはありますか?

(14歳男性)

 車道が怖いとのことですが、そもそも車道とは怖いものです。僕もかつて、15年間くらい選手をやっていましたが、引退間際になってもやっぱり、車道は怖かったです。プロでも怖いんですよ。車道は。

 じゃあどうするかというと、経験の長いプロ選手やサイクリストほど、幹線道路を避けて、車のいない道を走る傾向にあります。つまり、選手としての経験を積むほど、「道探し」のスキルも上がるということです。道探しの能力は、選手としても非常に大事ですよ。

 ご質問の「約半年経ちましたがいまだに車道を走るのが怖いです」というくだりからは、経験を積めば怖くなくなるだろう、という認識が見て取れますが、それは違います。怖いものは怖いんです。だから、怖いものを避ける能力を身に付けてください。車道への恐怖は、事故を防ぐという意味で必要でもありますしね。

 だから、最短ルートを通るのではなく、車が少なくて走りやすい道を探すために、寄り道する習慣をつけてください。最短ルートは幹線道路になりがちですが、車がびゅんびゅん通る幹線道路は、自転車にとっては最悪です。

 とはいえ、車道を走らなければならないことには変わりないので、恐怖を減らすテクニックも必要ですよね。

 車道とは、ひとつの社会なのです。質問者さんが通う学校が小さな社会であるのと同じです。どういうことかというと、それぞれの人が、それぞれの目的を持って生きており、ときには互いの利害がぶつかることもあるわけです。

 そんな社会を生き抜くコツの一つは、よく僕が言うことですが、意思を明確にすること。何をしたいのかわからないと、周囲も戸惑うんです。自転車なら、曲がりたいのか、直進したいのか。そういう意思を、ハンドサイン(手信号)などで明確に示してください。ドライバーと目を合わせることも大切です。目は口ほどにものを言いますから。

 もうひとつ大切なのは、世渡りのテクニックです。学校が小社会なら、廊下は公道です。先生や先輩など、いろいろな人が、それぞれの目的を持って廊下を移動しているわけです。ところが、その廊下でも、歩き方は人それぞれです。なかには、堂々と肩で風を切って歩いている子もいますね。自動車に例えるなら黒塗りのベンツ風でしょうか。

 何が違うのかというと、周囲への圧力です。こわもての番長(死語だったらすみません)みたいな生徒は、堂々と廊下の真ん中を歩くでしょう。それでも他の生徒との衝突事故も少ないに違いありません。一方、まだ成長過程にあるおとなしめの生徒(大人になったら立場は逆転するかもしれませんが…)なら、番長みたいな生徒には道を譲らざるを得ないこともあるでしょう。目が合って事故ったら大変ですしね。

 車道も同じです。たとえ自転車であっても、アンドレ・グライペルみたいにムキムキの人間が乗っていたら、煽ろうと思う自動車は少ないはずです。下手にクラクションでも鳴らしたら、最大出力1900Wのスプリントの末に…(汗)。

いかにも強そうなアンドレ・グライペル Photo: Yuzuru SUNADA

 ですが、自動車の怖さに悩む質問から推察するに、14歳の質問者さんは、おそらくですが、大人しく、心優しい少年だと思われます。まったく根拠はありませんが、色白で細身の、文化系の少年かもしれません。仮に僕の推測が正しいなら、車道で恐怖を感じるのもやむを得ない、と言うことになってしまいます。周囲への圧力が少ないでしょうから。

 しかし、再び学校という社会を思い浮かべてください。番長キャラじゃなくても、どういうわけか上手に世渡りができるヤツっていませんか? 愛嬌があったり、話が面白かったり、なぜか憎めない生徒です。

 車道でも同じなんです。上でお話ししたことと被りますが、車のドライバーと上手く意思の疎通をして、「あい〜す、ちょっと通りますよ」とか、「さ〜せ〜ん、路駐の車を抜きますね」といった自分の意思をうまく伝えられれば、憎まれないキャラを確立できる。そうなれば、上手く世渡りができ、車道も怖くなくなるはずです。

 そのためには、手信号を覚えるなど車道のルールを守るのはもちろん、スラローム走行や急ブレーキなどの基本的な走行テクニックを身に付けることも必要です。走行テクニックがあれば余裕を持って走れるため、世渡りにも不安がなくなるんです。ポイントは、意思疎通と愛嬌ですよ。

 「車道の愛されキャラ」を目指して少しずつ慣れていきましょう。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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