逃げ、位置取り争い…終盤の攻防に注目最大勾配26%を誇るユイの壁での大決戦 フレーシュ・ワロンヌ、バルベルデの5連覇なるか

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
  • 一覧

 アルデンヌクラシック2戦目となるフレーシュ・ワロンヌが4月18日に開催される。「ユイの壁」は最大斜度26%に達する激坂がフィニッシュ地点となっており、クライマー・パンチャーらによる一大決戦が繰り広げられる。大会4連覇中のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)に打ち勝つ選手が登場するかも注目ポイントだ。

昨年、大会史上最多を更新する5勝目、かつ前人未到の4連覇を達成したアレハンドロ・バルベルデ。もちろん狙うは5連覇のみ Photo : Yuzuru SUNADA

ユイの壁を前に番狂わせも

 今年は、リエージュから南西へ10kmほどの場所にあるセランをスタートし、リエージュ南部の丘陵地帯を巡ってから、フィニッシュ地点のユイの周回コースを2周するコースレイアウトとなっている。

フレーシュ・ワロンヌ2018のコースマップ ©ASO

 名物は最大斜度26%の「ユイの壁」だ。登坂距離1.3km、平均勾配は9.6%と非常にパンチ力のある上りとなっており、選手たちは3度上ることになる。3度目のユイの壁を最初に上りきった選手が栄冠を手にする。

 上位でフィニッシュするためには、登坂力と同じくらい位置取りが重要な要素となってくる。ユイの壁の道幅は、決して広いわけではないうえに、大集団のままユイの壁に突入する展開になることが多い。

 つまり、相当数の選手が細い激坂に殺到することになり、集団に埋もれてしまうと前に出て勝負に絡むことが難しくなるのだ。ユイの壁に向かうまでの熾烈な位置取り争いにも注目しておきたい。

ユイの壁を駆け上がる集団。写真は2015年大会のもの Photo : Yuzuru SUNADA

 勝負どころはユイの壁になることが多く、実際2003年以来、逃げ切り勝利は一度も決まっていない。

 ただし周回コースには、2つの大きな上りが設定されている。一つはユイの壁まで16.5km離れた場所にコート・デレッフ(登坂距離2.1km、平均勾配5%)、もう一つはユイの壁まで5.5km離れた場所にコート・ド・シュラヴ(登坂距離1.3km、平均勾配8.6%、最大勾配15%)。激坂が組み込まれており、ユイの壁まで一筋縄ではいかないような工夫もなされているのだ。

フレーシュ・ワロンヌ2018 コースプロフィール ©ASO

 2016年はボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)、ヨン・イサギレ(スペイン、当時はモビスターチーム、現在はバーレーン・メリダ)がコート・デレッフで飛び出し、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)がコート・ド・シュラヴでアタックを仕掛けたものの、3人は残り2km地点で吸収されてしまった。

あわや逃げ切りか、というところまで独走劇を見せたボブ・ユンゲルス。今年もルクセンブルクチャンピオンジャージを着て出場予定だ Photo : Yuzuru SUNADA

 また2017年はユンゲルスが最終周回に単独アタックを仕掛け、フィニッシュまで残り500m地点まで粘って吸収された。あわや逃げ切りか、と期待させる走りを見せた。

 逃げ切りのロマンを狙って、勇気ある飛び出しが集団に与える影響も見逃すことができない。

 とりわけ、目下4連覇中のバルベルデに対して真っ向勝負を挑んでも勝ち目がないと判断するチームが多ければ多いほど、逃げ切り狙いの動きが活発になることが予想され、ユイの壁での決戦をもくろむチームの計算を狂わすことも十分に考えられる。

 続いて、有力選手の紹介をしたいと思う。

無敵のバルベルデを打ち破る者が現れるか

 なんといっても、最有力候補はバルベルデだろう。4連覇の内容も抜群に素晴らしく、どうあがいてもバルベルデに勝ちようがないと思わせるほどの圧倒的な強さを見せつけていた。2014、2017年とバルベルデに及ばず2位だったダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ)は「私がフレーシュ・ワロンヌに勝つためには、バルベルデの引退を待つしかない」と語るほどだ。

フレーシュ(Fleche)はフランス語で「矢」を意味する。4連覇を果たしたバルベルデは矢を放つポーズで喜びを表現した Photo : Yuzuru SUNADA

 そして、今シーズンもバルベルデは絶好調をキープしている。昨年はフレーシュ・ワロンヌまでに9勝を挙げていたが、今季も同じくここまで9勝。加えて例年は出場していない石畳のクラシックでも最後までメイン集団で走り切るなど脚質の進化が見られ、直近のアムステル・ゴールド・レースでは昨年19位を上回る5位でフィニッシュした。つまり、昨年以上に調子が良いということだ。

 今月25日に38歳を迎えるとは思えない圧倒的大本命だ。バルベルデをいかにして打ち破るか、ということが他の全てのチームに与えられた課題となる。

 バルベルデの対抗馬としては、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)、ダニエル・マーティンの名が挙げられる。

激坂登坂力は世界トップクラスのジュリアン・アラフィリップ。スプリント力も高く、バルベルデに真っ向勝負を挑む Photo : Yuzuru SUNADA

 アラフィリップは昨年膝のけがのため欠場したが、2015、2016年と連続して2位に入っており実績十分だ。

 25歳と若いうえに、今シーズンはすでに3勝を挙げる活躍を見せている。特にイツリア・バスクカントリーでは激坂区間で名うてのクライマーを置き去りにする走りを見せており、昨年まで以上に登坂力が向上しているように見受けられる。

 また、ユイの壁に突入する際は、集団前方で激しい位置取り争いが繰り広げられる。アラフィリップはスプリントトレインの一員を務めることもあるように高速域での巡航能力が高く、自分で位置取りもできる。混戦のなかでも、より有利な位置でユイの壁を上り始められることはアラフィリップの強みになるだろう。

 トゥーンスは昨年大会で3位に入るなど、シーズンを通してチーム最多の8勝を飾った。8勝はいずれも激坂を制して挙げたもので、新星激坂ハンターとして名を轟かせた。今シーズンはパリ〜ニースで総合6位に入るなど、総合的に登坂力が向上している様子だ。

ディラン・トゥーンス(右)はチームからの期待も大きい激坂ハンター。ダニエル・マーティン(左)はチームを移籍してそろそろ結果を残したいところだ Photo : Yuzuru SUNADA

 マーティンは一桁順位を5回経験しており、実績面ではバルベルデに次ぐ存在の一人だ。しかし、今シーズンのマーティンの走りは全く良いところが見られていない。

 これがフレーシュ・ワロンヌやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに向けての調整であれば良いのだが、直前のアムステル・ゴールド・レースでは途中リタイアとなっており、コンディション面にやや不安が残る。

その他の有力候補の紹介

 ティム・ウェレンスも注目の一人だ。独走力に注目されがちであるが、ブエルタ・ア・アンダルシア第4ステージでは、登坂距離1.3km・平均勾配10%・最大勾配19%と、ユイの壁に引けを取らない石畳の激坂フィニッシュを制して勝利しているように、今シーズンは登坂力の高さも目立っている。

今シーズンはここまで4勝を挙げており、好調のティム・ウェレンス Photo : Yuzuru SUNADA

 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)は、昨年20歳ながら9位に入った。2016年には若手登竜門レースのツール・ド・ラヴニールで総合優勝を飾った逸材なだけに、よりいっそう成長した姿を見たいところだ。

 他には2013年2位、昨年は4位に入ったセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)も有力候補だが、今シーズンは上りで今ひとつ存在感を示しきれていない点がやや心配だ。

昨年大会では先制アタックを仕掛けたダヴィ・ゴデュ(右)。その背後にバルベルデ、クウィアトコウスキーと続いた Photo : Yuzuru SUNADA

 2014年3位、昨年は7位に入ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)も下馬評は高いものの、期待されていたアムステル・ゴールド・レースでは不発に終わり31位に沈んだことが懸念される。

 ワレン・バルギル(フランス、フォルテュネオ・サムシック)も移籍してから目立った活躍はできていないが、フレーシュ・ワロンヌは2016年9位、2017年6位と相性の良いレースで上位入賞の期待が高まる。

 バルベルデと同い年のミカエル・アルバジーニ(スイス、ミッチェルトン・スコット)は2012年2位に入り、2014年から4年連続で一桁順位でフィニッシュしている。フレーシュ・ワロンヌまでのレースでパッとしない成績が続いていても、本大会では表彰台を獲得した年もあるため要注意な存在だ。

 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナプロチーム)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)といったグランツールレーサーも、もちろん決してあなどれない存在となるだろう。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。
  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載