獲得標高4000mのアルデンヌクラシック初戦終盤にアスタナの猛攻、ヴァルグレンがアムステル初優勝 連勝を狙ったサガンは4位

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 アムステル・ゴールド・レース(UCIワールドツアー第16戦)が4月15日に263kmで争われ、最終盤にアタックを成功させたミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナプロチーム)がマッチスプリントを制して優勝を飾った。先週のパリ〜ルーベで優勝したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は巧みなレース展開を見せるも表彰台には届かず4位でフィニッシュ。唯一今大会に出場した日本人選手である小林海(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)は途中リタイアだった。

優勝したミケル・ヴァルグレン。デンマーク人の勝利は1997年のビリャヌ・リース以来21年ぶり Photo : Yuzuru SUNADA

35カ所の上りと1000のコーナー

 アムステル・ゴールド・レースは、アムステル社というオランダのビール会社がスポンサードするレースで、同社の代表商品が「ゴールド」だ。

 オランダは国土の大半が平地であるが、レース開催地である南部の都市マーストリヒト近郊は、オランダ国内で最も標高が高い地域となっている。最高でも標高300m程度ではあるものの、263kmのコースには細かい上りが無数に続き、名の付いた上り坂は35カ所も設定され、獲得標高は4000mに達する。

スタート前には、先週のパリ〜ルーベのレース中に心臓発作を起こして亡くなった、マイケル・ホーラールツに黙祷を捧げていた。写真中央はミカル・クウィアトコウスキー Photo : Yuzuru SUNADA

 さらに、1000のコーナーがあるともいわれ、自動車1台ようやく通ることができるような狭い道も走破する非常にテクニカルでタフなレースになっている。

 この日の逃げは、スガブ・グルマイ(エチオピア、トレック・セガフレード)、マッテーオ・ボーノ(イタリア、UAEチーム・エミレーツ)、ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、オスカル・リースベーク(オランダ、ルームポット・ネーデルランセローテライ)、プレベン・ヴァンヘッケ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)ら9人だ。

昨年のイル・ロンバルディア以来、2度目のワールドツアー出場を果たした小林海 Photo : Yuzuru SUNADA

 逃げ集団はメイン集団に対して最大で10分以上の差を付けたが、残り100kmを切ったあたりから徐々に縮まり、残り50kmで3分程度となっていた。

 残り38.7km地点のクルイスベルグ(登坂距離600m・平均勾配8.8%・最大勾配15.5%)を迎えると、メイン集団ではトッシュ・ヴァンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)が強烈なペースアップを仕掛けた。昨年大会で勝利したフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)らが集団から抜け出した勝負ポイントであり、警戒したロット・スーダルがアシストを使って有力選手の動きを封じ込めた。

 しかし36.7km地点のアイセルボスウェグ(登坂距離900m・平均勾配9.3%・最大勾配17%)で、ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)のアタックを皮切りに有力選手によるアタック合戦が勃発。集団はみるみるうちに人数を減らしていった。

クロイツィゲルとガスパロットが逃げる

 残り27km地点付近、平坦区間で2013年大会勝者のロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)が集団から飛び出した。すると、2012・2016年大会勝者のエンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ)のみがチェックして、2人は集団からリードを築いて、先頭を走る逃げ集団を追った。

 メイン集団はピーター・セリー(ベルギー、クイックステップフロアーズ)が1人でけん引。強い向かい風が吹くなか、クロイツィゲルたちとの差を25秒程度に留める働きを見せていた。

 残り18km地点には、アムステル・ゴールド・レースの名物区間ともいえるカウベルグ(登坂距離1200m・平均勾配5.8%・最大勾配12%)が待ち受けていた。

アムステル・ゴールド・レース名物の難所「カウベルグ」。フィニッシュ地点から近いこともあり、沿道を観客が埋め尽くしている Photo : Yuzuru SUNADA

 先頭の逃げ集団から15秒ほど遅れてクロイツィゲル、ガスパロットが麓に到達。さらに25秒ほど遅れてセリーが率いるメイン集団がやってきた。

 クロイツィゲルとガスパロットは勢いよく坂を駆け上がり、先頭集団をあっという間に捉えた。もともと逃げていた選手もどんどん脱落しており、先頭はグルマイ、クラドック、リースベーク、ヴァンヘッケ、ボーノ、そしてクロイツィゲルとガスパロットの7人になっていた。

集団内で落ち着いたレース展開を見せていたペテル・サガン Photo : Yuzuru SUNADA

 後方のメイン集団では、セリーがけん引を終え、代わる代わる有力選手がアタックしながらスピードを維持。カウベルグの上りを終えて、先頭集団とのタイム差を15秒まで縮めていた。

 残り13.7km地点のグールヘンメルベルグ(登坂距離1200m、平均勾配4.6%、最大勾配8%)で、集団からアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)がアタック。追従できたのは、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ヴァルグレンのみ。前年度王者のフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)は遅れてしまった。

 バルベルデらは10秒先の先頭集団に一気に追いつくと、やや遅れてティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナプロチーム)もジョインし、勝負を懸けた先頭集団は12人となった。この中にアスタナが唯一、ヴァルグレンとフルサングと複数人の選手を送り込み、数的優位を築いた。

アスタナの波状攻撃からヴァルグレンが勝利

 残り9km地点、先頭集団では序盤から逃げているリースベークが飛び出し、フルサングとボーノがブリッジ。3人で抜け出すと、フルサングが積極的に引いて、集団とのタイム差を開きにかかった。

 残り6.9km地点、35番目最後の上りであるベメレルベルグ(登坂距離900m、平均勾配4.5%、最大勾配7%)を前にして、フルサングら3人のグループは、いったん集団に吸収された。すると今度は序盤から逃げているヴァンヘッケがアタックを仕掛けた。リースベークがチェックして、再びフルサングも集団から抜け出して先頭に合流した。

 ベメレルベルクの上りに突入すると、フルサングが2人を振り切って独走体勢に。集団からはバルベルデが追いかけ、アラフィリップ、サガンと続き、フルサングを再度集団に引き戻した。

 激しい応酬が続く先頭集団。序盤から逃げ続けていた選手は全員脱落していた。残った選手たちの多くは苦悶の表情を浮かべながら、アスタナの猛攻に耐えねばならない状況だった。

1回目のヴァルグレンの仕掛けのポイント。フルサングとの連携が光った Photo : Yuzuru SUNADA

 そして、集団内でずっと力をためていたヴァルグレンは、虎視眈々と仕掛けのタイミングをうかがっていた。

 残り4.7km、満を持してヴァルグレンがアタック。ウェレンスとサガンがチェックに入り、残り4km地点でヴァルグレンは集団に吸収された。

 このまま集団スプリントに持ち込まれるかと思われた残り2.2km地点付近、再びヴァルグレンがアタックを仕掛けた。集団からはクロイツィゲルのみが反応して2人で抜け出すと、一気に集団との差を開いた。

集団からはブリッジを試みてガスパロットが飛び出したが、残されたサガンやバルベルデたちは互いにお見合い状態になっていた。

 余力を残していたヴァルグレンは、クロイツィゲルと共に逃げ切りに成功。最後はマッチスプリントを制して、念願のアムステル・ゴールド・レース優勝を飾った。

クロイツィゲルとのスプリント勝負を制したヴァルグレン。今季2勝目をあげた Photo : Yuzuru SUNADA

 ヴァルグレンはオンループ・ヘット・ニュースブラッド以来、今季2勝目となった。数的優位を生かして、残り2kmで飛び出して勝利するパターンも、オンループと同様の展開だった。

 また、2016年のアムステル・ゴールド・レースでは、優勝したガスパロットに敗れて、惜しくも2位だった。そこから2年たち、成長したヴァルグレンは集団内での巧みな駆け引きを制して、雪辱を果たしたのだった。

表彰台ではアムステルビールで乾杯!レース直後のためかさすがに一気飲みはせず、グラス4分の1程度を飲んでいた。左からクロイツィゲル、ヴァルグレン、ガスパロット Photo : Yuzuru SUNADA

 3位にはガスパロットが入り、サガンは集団内での先頭でフィニッシュして4位だった。

アムステル・ゴールド・レース レース結果
1 ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナプロチーム) 6時間40分07秒
2 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット) +0秒
3 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ) +2秒
4 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +19秒
5 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)
6 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
7 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)
8 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナプロチーム) +23秒
9 ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +30秒
10 イエール・ヴァネンデル(ベルギー、ロット・スーダル) +36秒
DNF 小林海(日本、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)

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