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舗装路でのアタックでライバルを置き去りサガンが念願のパリ~ルーベ初優勝 210kmを逃げ切った伏兵・ディリエとの一騎打ち

by 平澤尚威 / Naoi HIRASAWA
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 北のクラシックを締めくくる「パリ~ルーベ」(UCIワールドツアー)が4月8日に開催され、現世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が初優勝を飾った。荒れたパヴェ(石畳)が代名詞の大会だが、舗装路でのアタックでライバルを置き去りにして逃げ集団に合流。序盤から逃げながらも最後までサガンに食らいついたシルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)とのマッチスプリントを制した。

パリ~ルーベ初優勝を飾ったペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADA

 今年で第116回目を迎えたパリ~ルーベは“クラシックの女王”や“北の地獄”とも称され、パンクや落車が頻発する荒れたパヴェを走り抜ける過酷なレースだ。コースはパリ郊外のコンピエーニュからルーベのベロドローム(自転車競技場)までの257kmで、ほぼ平坦ながらコースにちりばめられた、29から1まで番号が振られたセクター(パヴェ区間)が最大の特徴。各セクターは難易度が星で表され、このレースの名物ともいえる最高難度・5つ星のセクターが3区間設けられている。雨が降ればコースは泥にまみれ“地獄”と化すパリ~ルーベ。この日は快晴だったが、一部には泥が混じる区間があり、選手たちを苦しめることになった。

 パリ~ルーベは集団の先頭を走ることや逃げ集団内で走ることが、一般的なレースに比べると不利ではないとされている。石畳は舗装路に比べ先頭を走る際の空気抵抗によるデメリットが少ないこと、また集団内で落車が起こるリスクが高いため前方にいた方が比較的安全に走れることがその理由だ。そして、パヴェ区間のない序盤に生まれた9人の逃げ集団に、この日の主役の一人であるディリエが入った。

前年王者のグレッグ・ヴァンアーヴェルマート Photo: Yuzuru SUNADA

 最初のパヴェ区間であるセクター29は93.5km地点、レースが中盤に差し掛かったところで登場する。例年なら走りやすい道路脇に泥で走りにくくなっている個所があり、困難なレースとなった。その影響か、メイン集団内で落車が発生。ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)が巻き込まれ脱落。集団が分断され、前年王者のグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)、アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ)ら有力選手も数人遅れることとなり、集団に復帰のため脚を使うことを余儀なくされた。

(右から)ニキ・テルプストラ、フィリップ・ジルベール Photo: Yuzuru SUNADA

 集団の前方はトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)や、前週のツール・デ・フランドルを制したニキ・テルプストラ(オランダ)のほかゼネク・スティバル(チェコ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー)らを擁するクイックステップフロアーズがけん引する場面が多く見られたが、シュティバルのパンクによってクイックステップがペースアップをやめたことで、遅れた有力選手たちは集団に復帰することに成功した。

 最初の難易度星5、森の中の石畳をまっすぐに駆け抜けるセクター19「アランベール」は大きなアタック、落車はなく通過。次の星5は残り47.5kmから始まる11セクター「モン・サン・ペベル」だ。しかし、残り約54km、12セクター前の舗装路区間でヴァンアーヴェルマートがアタック。これは失敗に終わったが、サガンが仕掛けたカウンターアタックが決まり、単独で抜け出すことに成功した。サガンは誰も反応できない追走集団を尻目にブリッジを図り、12セクターでディリエら3人に減った先頭集団に合流を果たした。サガンは舗装区間で先頭交代できる“仲間”を得て、他の優勝候補たちからリードを奪いにかかった。

森の中の「アランベール」 Photo: Yuzuru SUNADA

 モン・サン・ペベルではジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)とワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダ スヴィレムス・クレラン)の2人がメイン集団から抜け出し先頭を追走。メイン集団はテルプストラやセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)ら優勝候補が先頭に出て追い上げを図った。しかし、サガンが先陣を切って突き進む先頭グループは1人が脱落しただけで、追走選手を寄せ付けることなくモン・サン・ペベルを切り抜けた。

約210kmを逃げ続けたシルヴァン・ディリエ Photo: Yuzuru SUNADA

 セクター7に入るとサガンの引きで、いよいよ先頭はディリエとの2人に。さらにサガンがペースを上げたことで追走集団とのタイム差を広げていく。40秒台だった差は、この時点で1分30秒まで開いていた。

 最後の大きな関門となる5つ星のセクター4「カルフール・ド・ラルブル」。サガンが先頭を走り続け、ディリエは後輪を石畳にとられスリップしかける場面もあったがコントロールを取り戻し、必死に食らいついた。有力選手たちも遅れていくなか、メイン集団はテルプストラ、ヴァンアーヴェルマート、ヴァンマルク、ストゥイヴェンの4人に。テルプストラを先頭に追ったが差は縮まらず。サガンとディリエは1分ほどのリードをもったまま、カルフール・ド・ラルブルを突破した。

泥まじりの石畳を走るペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADA

 難易度3のセクター2は走りやすい道路脇に障害物が設けられパヴェの上を走らなければならない厳しい石畳区間となったが、サガンとディリエはここも無事にクリア。追走集団との差は1分ほどに開き、優勝争いは2人に絞られた。北のクラシックで残された唯一の未制覇タイトル獲得を目指すサガンと、ジロ・デ・イタリアでステージ優勝経験はあるものの北のクラシックでは一度も目立った成績を残していなかったディリエ。互いに独走に持ち込むようなアタックを繰り出すことはなく、2人はベロドロームでのスプリント勝負を選択した。

 ベロドロームにはディリエが前で突入し、ベロドローム1周半の戦いが始まった。ディリエは常にサガンに目を配り、トップスプリンター並みの脚をもつサガンは特に揺さぶりをかけることもなく落ち着いた様子で残りの距離を消化していく。そしてフィニッシュまでの最終コーナーでついにサガンが動いた。ベロドロームのバンクを利用して急加速。一気に前に出ると、その差を詰めることも許さず、持ち前のスプリント力で一騎打ちを制した。ゴールした直後にサガンが手を差し出すとディリエはそれに応え、互いの激闘を称えるように握手を交わした。3位には追走集団から単独で抜け出したテルプストラが入った。

握手を交わしたペテル・サガンとシルヴァン・ディリエ Photo: Yuzuru SUNADA

 サガンは、北のクラシックではツール・デ・フランドル、ヘント~ウェヴェルヘム、レコードバンク・E3ハーレルベーケと3大会で優勝をしていたが、念願のパリ~ルーベ優勝で全てを制覇したこととなる。そして五大クラシックレース“モニュメント”のうち、フランドルに続く2つ目のタイトルとなった。

パリ~ルーベ表彰式。(左から)シルヴァン・ディリエ、ペテル・サガン、ニキ・テルプストラ Photo: Yuzuru SUNADA

パリ~ルーベ2018結果
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 5時間54分6秒
2 シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +0秒
3 ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ) +57秒
4 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) +1分34秒
5 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
6 セップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
7 ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) +2分31秒
8 テイラー・フィニー(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
9 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)
10 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・スーダル)

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