ツール・デ・フランドル2018ニキ・テルプストラが28kmを独走し初優勝 クイックステップ勢がレースを完全掌握

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレース春のクラシックの目玉、第102回ツール・デ・フランドルが4月1日、ベルギー北部のフランドル地域を舞台に開催され、レースはフィニッシュまで28kmを残したタイミングでアタックを成功させたニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)が独走に持ち込み、この大会初優勝を決めた。さらに、前回覇者のフィリップ・ジルベール(ベルギー)も3位に続き、クイックステップフロアーズ勢がワン・スリーフィニッシュを達成した。

独走でツール・デ・フランドル初優勝を果たしたニキ・テルプストラ Photo: Yuzuru SUNADA

5つのパヴェと18カ所の急坂が待つクラシックの最高峰

 全世界のロードレースファンが熱狂する「北のクラシック」。2018年シーズンも盛り上がりがピークに差し掛かろうとしている。ベルギーを中心に石畳(パヴェ)がコースに組み込まれるビッグレースの中でも、ひときわ威光を放ち、ワンデークラシックの最高峰に位置するといわれるのが、このツール・デ・フランドルだ。現地フランドル地域では「ロンド・ファン・フラーンデレン(フランドル一周)」の名で愛され、このレースを制した選手こそ最高のライダーとして称えられる。

ファンが見守る中で出走サインへ向かうペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADA

 同時に、レースは極めて過酷で、どんな実力者といえども勝つことは容易ではない。アントウェルペンをスタートし、アウデナールデにフィニッシュするが、レース距離は267kmと長丁場なうえ、その間に5つのパヴェと18カ所の急坂区間(パヴェをともなう箇所あり)が前半から終盤まで立て続けに待ち受ける。

 なかでも注目は、3回通過するオウデ・クワレモント(登坂距離2.2km、平均勾配4.2%、最大勾配11%)と、2回通過するパテルベルグ(同400m、12.5%、20%)。連続して登場する区間でもあり、3回目のオウデ・クワレモントと2回目のパテルベルグは終盤の勝負どころとなる。ここで生き残った選手たちが、フィニッシュまでの最後の14kmで優勝争いを繰り広げることになる。

 そんな驚異のコース設定に加えて、この日はスタート前から強い雨が降り続く悪コンディション。より厳しさを増した条件下でレースの始まりを迎えることとなった。

優勝候補ヴァンマルクやナーセンがクラッシュ

 レース序盤、プロトンから次々とアタックが起こるが、クイックステップフロアーズやアスタナ プロチームといった力のあるチームがチェックに動き、なかなか逃げグループ形成には至らない。出入りが繰り返される間、スタートから13km地点で優勝候補のセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が落車するなど、全体が慌ただしいままレースは進行。スタートから1時間以上経っても、集団は1つのままだった。

 逃げが決まったのは、70km地点を過ぎた直後。10人が先行を許され、最大で5分以上のリードを確保した。逃げグループを形成したのは以下のメンバー。

イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)
ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ)
マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ・アルペシン)
パスカル・エーンクホーン(オランダ、ロットNL・ユンボ)
フィリッポ・ガンナ(イタリア、UAEチーム・エミレーツ)
エメ・デヘント(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)
マイケル・ホーラールツ(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)
ディミトリ・ペイスケンス(ベルギー、WBアクアプロテクト・ヴェランクラシック)
フローリス・ヘルツ(オランダ、ルームポット・ネーデルランセローテライ)
ジミー・テュルジス(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)

 逃げが決まった直後のメイン集団では落車が発生し、またもヴァンマルクが巻き込まれる。さらに、実力者のエドワード・トゥーンス(ベルギー、チーム サンウェブ)が冷雨で体調を崩してリタイア。レースは早くもサバイバルの様相を呈し始めた。

パヴェを走るグレッグ・ヴァンアーヴェルマート Photo: Yuzuru SUNADA

 1回目のオウデ・クワレモント(121km地点)は、逃げグループが5分台のタイム差を維持して通過。メイン集団ではパヴェや急坂区間をめがけてポジション争いが激しくなるシーンは見られるものの、各セクションをクリア後にはすぐにペースダウン。スピードの上げ下げを繰り返しながら、距離をこなしていく。

 落ち着いていたかに見えたメイン集団にトラブルが発生したのは、フィニッシュまでちょうど100kmを切ろうかというタイミング。このレースの名所であるミュール・カペルミュールに向けてスピードが上がりつつあったところで、大規模なクラッシュが発生した。集団前方に位置していた選手の落車をきっかけに、後続の選手たちが多数巻き込まれてしまった。ここにはベルギー期待のオリバー・ナーセン(アージェードゥーゼール ラモンディアル)や、好調のミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ プロチーム)が含まれた。ともに時間がかかりながらも、何とか再出発。しばらくして集団へと復帰している。

ニバリに反応したテルプストラが抜け出し

 170km地点のミュール・カペルミュールに差し掛かった逃げグループでは、ガルシアが力強い登坂を見せた。ここまで一緒に走ってきた選手たちのうち数人が力尽き、逃げのメンバーを絞りながら先行を続ける。しばらくしてやってきたメイン集団では、通過直後に逃げグループへの合流を狙って数人がアタック。そのまま追走グループが形成された。

 この追走は190km地点を前に逃げグループへの合流に成功。しかし、直後に迎えたカナリエベルグ(1km、7.7%、14%)の上りに入ると、ガルシアと後から加わったトム・デヴリーント(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)の2人に絞られる。

 後方では、メイン集団が先頭の2人とのタイム差を約1分30秒差とし、いつでもキャッチできる態勢へ。やがてやってきた2回目のオウデ・クワレモント(211km地点)や1回目のパテルベルグ(214km地点)では、有力選手が集団の前方をキープし、次なる動きに備える様子が見られるようになる。

レース前方で果敢な走りを見せたマッズ・ペデルセン Photo: Yuzuru SUNADA

 220km地点を目前に、逃げグループでは一度ジョイントしながらカナリエベルグで遅れていたマッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)が再合流。さらにはマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ プロチーム)、セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ディラン・ファンバーレ(オランダ、チーム スカイ)も加わる。直後にやってきたコッペンベルグ(221km地点)で逃げメンバーの脚の差が明確となり、ペデルセン、ラングフェルド、ファンバーレの3人に絞られた。

 メイン集団でも駆け引きが始まる。ターイエンベルグ(229km地点)ではグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が、その後にはゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)がアタック。いずれもライバルのチェックにあうが、優勝を狙う選手たちの動きが活発になってきた。

 そして、レースを決定づける瞬間は、240km地点のクルイスベルグ(1.875km、4.8%、9%)で訪れた。散発するアタックの中からまず、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が抜け出すことに成功し、テルプストラが対応。集団に対し2人が着々とリードを広げていく。だが、このまま行くかと思われたニバリにパンクトラブルが発生。テルプストラは単独走となったが、先頭で逃げる3人を目指してスピードを上げていった。

メイン集団から抜け出し逃げグループを追うヴィンチェンツォ・ニバリとニキ・テルプストラ Photo: Yuzuru SUNADA

クイックステップ勢が追走を抑え込む

 テルプストラを追いたいメイン集団だったが、この頃には有力選手の多くがアシストを失っていたこともあり、自ら動くことを嫌って牽制が繰り返された。一方で、テルプストラを前へと送り出したクイックステップフロアーズは、ジルベールとスティバルを残しており、この2人が追走を図るライバルの動きを封じ込める役割を担った。

3回目のオウデ・クワレモントでトップに立ったニキ・テルプストラ Photo: Yuzuru SUNADA

 そしてフィニッシュまで残り17kmで迎えた3回目のオウデ・クワレモント。ここでついにテルプストラが逃げ3人に追いつき、そのままパスして先頭に立った。ペデルセンだけが懸命に食らいついたが、上り終える頃にはテルプストラが数秒のリードを開始し、独走態勢へと持ち込んだ。メイン集団では、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)が仕掛けるが、ジルベールやスティバルがきっちり対応。追走は許さない。

2回目のパテルベルグで追撃を試みたペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADA

 続く2回目のパテルベルグも、テルプストラが単独でトップ通過。約20秒差でペデルセンが続く。さらに約20秒の差でメイン集団。頂上目前でサガンがアタックし追撃を試みるが、4kmほど進んだところで単独追走を諦め集団へと戻った。

 終盤の難所をクリアし、フィニッシュへと急ぐテルプストラ。後続とのタイム差はほぼ変わらず、逃げ切りが濃厚となる。集団ではチームメートのジルベールがサガンを徹底マーク。さらにはスティバルとともに先頭交代のローテーションに割って入り、追い上げムードを再三再四崩してみせた。残り2kmでのヴァルグレンのアタックもジルベールが対処。完全に抑え込んだ。

 28kmにわたる独走劇。最後までしっかりとペダリングを続けたテルプストラは、フィニッシュライン直前でようやくガッツポーズ。この大会自身初優勝、クイックステップフロアーズにとっては昨年のジルベールに続くフランドル制覇を決めた。

ニキ・テルプストラの歓喜のフィニッシュ。クイックステップフロアーズにとっては2年連続のフランドル制覇となった Photo: Yuzuru SUNADA

 9日前には“フランドル前哨戦”といわれるレコードバンク・E3ハーレルベーケを制したテルプストラ。フランドル本番でも自慢の独走力とパヴェのテクニックを見せつけ、インパクトある走りを演じた。2014年にはパリ~ルーベを制しており、オランダ人としては史上3人目となるルーベ・フランドル両レース覇者となった。

 後続は、テルプストラの後ろで粘り続けた22歳のペデルセンが殊勲の2位。好アシストでチームに貢献したジルベールが3位。優勝候補筆頭と目されていたサガンは6位に終わっている。

 地元ベルギーが誇るクイックステップフロアーズの独壇場となった今回。戦力の充実によって、勝負どころでは数的優位な状況を作り出せたことが勝因といえそうだ。ゼネラルマネージャーのパトリック・ルフェーブル氏にとっては、自身のチームから11人目となるフランドル覇者の誕生。名将にさらなる勲章が加わった。

レースを掌握したクイックステップフロアーズ勢。会心の勝利に選手たちが喜び合う Photo: Yuzuru SUNADA
ニキ・テルプストラと喜び合うパトリック・ルフェーブル氏(右)。自身のチームから11人目のフランドル覇者が誕生した Photo: Yuzuru SUNADA

 なお、このレースと併催された女子レース(153.3km)では、アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールス・ドルマンスサイクリングチーム)が後続に1分8秒差をつける圧勝。日本勢唯一の参戦となった與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)は、集団牽引に努めるなどアシストとしてチームに貢献。役割を果たし、トップから5分41秒差の66位で完走している。

 2018年の「北のクラシック」は残すところ2レース。4日のシュヘルデプライス(ベルギー、UCIヨーロッパツアー1.HC)を経て、8日のパリ~ルーベ(フランス)でフィナーレを迎える。

ポディウムに上がった上位3選手。左から2位マッズ・ペデルセン、優勝ニキ・テルプストラ、3位フィリップ・ジルベール Photo: Yuzuru SUNADA

ツール・デ・フランドル2018結果
男子

1 ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ) 6時間21分25秒
2 マッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード) +12秒
3 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) +17秒
4 ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ プロチーム) +20秒
5 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) +25秒
6 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
7 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
8 ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)
9 ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)
10 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)

女子
1 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールス・ドルマンスサイクリングチーム) 4時間8分46秒
2 エイミー・ピータース(オランダ、ブールス・ドルマンスサイクリングチーム) +1分8秒
3 アンネミーク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)
4 アシュリー・ムールマン(南アフリカ、サーヴェロ・ビグラ プロサイクリング)
5 シャンタル・ブラーク(オランダ、ブールス・ドルマンスサイクリングチーム)
6 マウォルジャータ・ヤシンスカ(ポーランド、モビスター チーム)
7 エレン・ファンダイク(オランダ、チーム サンウェブ)
8 リサ・ブレナウアー(ドイツ、ウィグル・ハイファイブ)
9 カタリーナ・ニエフィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラムレーシング)
10 ミーガン・ガーナー(アメリカ、ブールス・ドルマンスサイクリングチーム) +1分11秒
66 與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) +5分41秒

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