好調クイックステップ勢は最後に落とし穴サガンが集団スプリントを制して2年ぶり3度目のヘント〜ウェヴェルヘム優勝

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
  • 一覧

 ベルギー・フランドル地方を舞台にしたクラシックレース「ヘント〜ウェヴェルヘム」(UCIワールドツアー第11戦)が3月25日、251.1kmで争われ、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が集団スプリントを制し、2年ぶり3度目の勝利を飾った。この日もレースの主導権を握っていたクイックステップフロアーズ勢は、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)が惜しくも2位となり、ベルギーのワンデーレース7連勝を逃した。昨年大会の勝者であるグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)は先頭集団に残ったもののスプリントには絡めず14位に終わった。

精鋭集団によるスプリント勝負を制したペテル・サガン。2年ぶり3度目の勝利となった Photo : Yuzuru SUNADA

クイックステップが先制攻撃を仕掛ける

 ヘント〜ウェヴェルヘムは、モニュメント(5大クラシックレース)級の250kmオーバーという長距離のレースであり、激坂・石畳・未舗装路はもちろんのこと、風が強く吹くことも多い、非常にタフなレースだ。オースト=フラーンデレン州の州都・ヘント近郊の町、ダインゼをスタートし、パリ〜ルーベでもお馴染みのルーベ北西部のフランス国境付近の激坂地帯を通過して、ウェヴェルヘムにフィニッシュするコースレイアウトとなっている。

 途中、130km過ぎから220km手前までの激坂地帯では、大小の周回を組み合わせてその地域を塗りつぶすように、11回もの激坂が待ち受ける。その後半に2度通過するケンメルベルグ(登坂距離3km・平均勾配4%・最大勾配22%)は、上りだけでなく下りも険しい。2度目の通過は残り34kmと激坂区間の最後に位置するため、重要な勝負どころになると予想されていた。

このように開けた場所を走っていると、気まぐれな風が集団を襲うことが多々ある Photo : Yuzuru SUNADA

 この日はスタートして20kmを過ぎたところで、6人の逃げが決まった。メンバーはフレデリック・フリソン(ベルギー、ロット・スーダル)、フィリッポ・ガンナ(イタリア、UAEチーム・エミレーツ)、ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、ジミー・ドゥケノワ(ベルギー、WB・アクアプロテクト・ヴェランクラシック)、ブライアン・ファンフーテム(オランダ、ルームポット・ネーデルランセローテライ)、ヤンウィレムス・ファンシップ(オランダ、ルームポット・ネーデルランセローテライ)で、最大10分程度のタイム差をつけてレースは進行した。

 残り66km地点、1回目のケンメルベルグの上りで、メイン集団を率いるクイックステップフロアーズがペースアップを開始。決定的な動きには繋がらなかったものの、開戦の火蓋が切った落とされたかのように、以降断続的に集団分裂と吸収を繰り返すような状況が続いた。

 ケンメルベルグを下ったところでは、横風の影響で集団が4つに分裂するシーンも見られたが、継続してペースアップするチームは現れなかったため、再び一つの大集団に戻った。

 残り60km地点からは未舗装路「プラグストリート」に突入。集団からアタックを仕掛ける選手は何人か見られたものの、決定打にはならず。ただし、ハイペースから集団後方では脱落する選手も見られ、徐々に集団は人数を減らしていた。

ケンメルベルグで集団が絞り込まれる

 最後の勝負どころである2回目のケンメルベルグに向けて、ペースの上がるメイン集団からジュリアン・ヴェルモート(ベルギー、ディメンションデータ)ら4人の選手が飛び出しに成功した。先行する6人の逃げグループに追いついて、10人で逃げる展開となる。しかし、メイン集団とのタイム差は1分程度まで縮まっていた。

 そうして、いよいよこの日最後の激坂区間、ケンメルベルグに逃げ集団、メイン集団が到達した。逃げ集団内の脚の残っていない選手は即座に脱落し、ヴェルモートを含む6人に人数を減らした。

昨年大会の勝者、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート Photo : Yuzuru SUNADA

 メイン集団では、フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)がアタック。クイックステップは積極的にレースの主導権を握っていた。

 ジルベールのペースアップは非常に強烈で、激坂区間で集団はバラバラとなり、20人ほどまで絞り込まれることとなった。

 この精鋭集団には、サガン、ヴァンアーヴェルマート、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、セプ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)といったエース格の選手に加え、クイックステップはジルベール、イヴ・ランパールト(ベルギー)、ゼネク・スティバル(チェコ)、そしてヴィヴィアーニの4人を残していた。

 一方、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチーム・エミレーツ)、マグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナプロチーム)、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)らは、サガンの集団に入り損ねてしまう。クリストフの集団には、ニキ・テルプストラ(オランダ)、フロリアン・セネシャル(フランス)らクイックステップ勢が2人おり、抑え役として集団復帰を効果的に妨害していた。

 サガンの集団は、逃げていた6人を吸収し、クリストフら第2集団とのタイム差を30秒以上に開いた。

サガンが早仕掛けでスプリントを制す

 残り20kmを切り、まずは後続集団とのタイム差を決定的なものとするために、先頭集団内ではエース自ら集団牽引に入る姿も見られていた。

 後続集団からは、クリストフとコルトニールセンら3人が飛び出して、先頭集団への必死のブリッジを試みるものの、10人以上でローテーションしている先頭集団とのタイム差を詰めることはできなかった。

先頭固定で集団を牽くフィリップ・ジルベール Photo : Yuzuru SUNADA

 残り10kmを切ってくると、いよいよ先頭集団内で決着が着く可能性が高くなり、エース級の選手は先頭交代に入らず、残ったアシスト選手が中心になって集団のペースを作っていた。

 残り5km地点からは、ジルベールが集団牽引を開始。残り2km地点まで先頭固定で引き倒す。序盤から逃げ続けていたファンフーテムがアタックを仕掛けたが、この動きもジルベール自らチェックして対処した。続いてヴァンアーヴェルマートが仕掛けるも、独走には持ち込めず。残り1kmを切ってヴァンマルクが仕掛けたが、ランパールトが差を詰めて対処した。クイックステップ勢が直近の数戦同様に、レースを掌握している状態だ。

 万全の体勢でスプリントを迎えたクイックステップのスプリンター、ヴィヴィアーニの背後にはデマール、サガンと続いていた。すると、残り200m付近でサガンが最初にスプリントを開始した。

 続いてデマールもスプリント体勢に入ったが、ヴィヴィアーニは進路を他の選手に塞がれる格好となり、やや出遅れてしまう。ようやくスプリント体勢に入ったヴィヴィアーニは、猛加速してデマールをかわし2番手に出るものの、先行したサガンにはわずかに及ばず、サガンが同大会2年ぶり3度目となる勝利を飾った。

仕掛けのタイミングがピタリとハマったサガン。一方、敗れたヴィヴィアーニはハンドルを叩いて悔しさを露わにしていた Photo : Yuzuru SUNADA

 2日前のレコードバンク・E3ハーレルベーケでは力なく失速する姿が見られたサガンだったが、この日はまさに世界チャンピオンらしい強い姿を取り戻していた。翌週のクラシックの王様「ツール・デ・フランドル」に向けて、仕上がりは上々だといえよう。

 ヴィヴィアーニは、完璧な仕事をしたチームの期待に応えられなかった悔しさからか、フィニッシュ後は地面に体育座りになって涙を流す姿が見られた。今季チームがあげた19勝のうち、チーム内最多の6勝をあげているヴィヴィアーニではあるが、エースの重圧が伝わるワンシーンであった。

左からエリア・ヴィヴィアーニ、ペテル・サガン、アルノー・デマール Photo : Yuzuru SUNADA

ヘント〜ウェヴェルヘム レース結果
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 5時間53分34秒
2 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) +0秒
3 アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ)
4 クリストフ・ラポルテ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)
5 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・スーダル)
6 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)
7 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
8 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)
9 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
10 ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

UCIワールドツアー

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載