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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<4>サイクリストの天敵、犬 「噛まれるわけにはいかない」海外自転車旅の恐怖

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 世界中で数えきれないほどの野生動物を見た。道路脇でブルーベリーを頬張るグリズリーの横を、自転車で通る恐怖。アメリカンバイソンの群れ。威圧感を持って行進してくる蟻。象のテリトリーでのキャンプ。ただ、海外を走る自転車乗りにとって一番気を付けなければならない動物は、なんと言っても犬だ。

街で見る犬はとても可愛く大人しいが、狂犬病を考えるとうかつには触れない Photo: Gaku HIRUMA

一番の対処法は「そっと語り掛ける」

 犬と言っても、激しい剣幕で狂ったように自転車目掛けて全速で向かってくる姿は、日本の愛くるしいワンコとは同じ動物とはとても思えない狂気を帯びている。狂犬病の恐れもあり、ほんの少しも噛まれるわけにはいかないから本当に恐ろしい。

クルマや犬、強盗などに常に気を配って走行する Photo: Gaku HIRUMA

 世界中どこでも襲ってくる犬だが、特に注意が必要なのはペルーやトルコ、中東など放牧が盛んな国だ。牧羊犬は主人が傍にいればいいのだが、いない場合には家畜を守ろうと、容赦なく牙を向けてくる。これにビビり、スピードを上げて逃げたりしようものなら、一層激しく吠え掛かってくる。

 これに対し色々な対策を練った。石や木の棒を持ったりもしたが、一瞬ひるむくらいであまり効果はなかった。ベアスプレーをかけたという人もいたが、当然犬には使うべきではないし、それが原因で住民とトラブルになったケースもあったらしいのでその方法は避けた。

 結局はスピードを落とし、そっと語り掛けるのが一番だった。僕はムツゴロウさんのように「おー。よしよしよし。怖くないよ~大丈夫だよ~」と、スピードを落とし犬の興奮を鎮めるようにそっと語り掛ける。簡単ではないが慣れると割とこの方法で対処できる。

大型動物の脇を通るのは毎回緊張するが、襲われる危険性は高くない Photo: Gaku HIRUMA
放牧が盛んな所は犬に注意が必要だ Photo: Gaku HIRUMA

“世界最強”の牧羊犬に包囲

 ところがトルコの中部で襲われたのは、ただの野良犬や牧羊犬ではなく、野生化した5~6匹の大型犬だった。完璧に統制の執れた群れで、それはまさに狩りだった。

見通しの良い丘陵地帯。まさにこの場所でカンガール犬に襲われた Photo: Gaku HIRUMA

 逃げ場のない直線で自転車の周りを取り囲まれた。ただすぐには襲ってこない。ただならぬ雰囲気を感じて蹴散らそうとしても、一定の距離を保たれどうしようもなかった。

 リーダーの犬が一言「ワン!」と吠えると、堰を切ったように他の犬が四方から一斉に吠え掛かり、自転車に付けていたバックに食いついてきた。ただ狙いはバックではない。完全に自転車ごと倒しにきていた。狙いは生身の人間の僕だろう。

 犬からはっきりと意志が伝わってきて、背筋が冷たくなり、ヤバいと思った瞬間、前方から偶然クルマが来た。激しいクラクションに怯んだすきに、なんとか逃げ切り事なきを得た。

 襲ってきた野犬は世界最強と名高い、トルコ原産の牧羊犬カンガール犬だった。トルコ中部では何人ものサイクリストが犬に襲われているので、この地域は本当に注意が必要だ。

世界最強のカンガール犬。襲われないことを切に願う Photo: Gaku HIRUMA
昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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