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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<247>好調なエース格の走りで上位戦線の常連に ロットNL・ユンボ 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 パリ~ニース第2ステージを制し、早くもシーズン5勝目としたディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)。最大勾配20%のティレーノ~アドリアティコ第3ステージを制したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)。勝負強さに定評のある選手を擁し、今シーズンの上位戦線をにぎわせているのがロットNL・ユンボの存在だ。エースクラスのライダーを複数擁立し、来る春のクラシックシーズン、そしてグランツールへと勢いを増すばかり。この好調なチームについて、今後の動向も含めて展望していこう。

ティレーノ〜アドリアティコ第1ステージ、チームタイムトライアルを走るロットNL・ユンボの選手たち。隊列を引っ張るのは期待のプリモシュ・ログリッチェ Photo: Yuzuru SUNADA

スプリンターズクラシック制覇を夢見るフルーネウェーヘン

 ロットNL・ユンボは、長年にわたりオランダ自転車界を支えたラボバンク、それを継いだベルキン プロサイクリングなどの流れを汲む伝統のチームだ。自国の有望株を早くから育成し、多くのオランダ人ライダーがトップシーンへと羽ばたいた。現在はサイクルロードレース界の流れもあり、このチームも国際色が豊かになっているが、それでもオランダ人ライダーを確実にエースクラスに育てあげ、しっかりと結果を残している。

ロットNL・ユンボのエーススプリンター、ディラン・フルーネウェーヘン。パリ〜ニース第2ステージでも強さを発揮した Photo: Yuzuru SUNADA

 その代表格が、押しも押されもせぬエーススプリンターのフルーネウェーヘン。小チームから数年かけて這い上がってきたスピードスターは、加入1年目の2016年にオランダロード王者に、2年目の昨年はツール・ド・フランスのシャンゼリゼ(第21ステージ)を制するなどシーズン8勝。今年も歴史あるセミクラシック、クールネ~ブリュッセル~クールネ(2月25日、UCIヨーロッパツアー1.HC)を制するなど5勝を挙げ、量産態勢に入っている。

 フルーネウェーヘンの強さともいえる、フィニッシュライン手前150mからの急加速はプロトン随一。そこに至るまでのハンドリングやポジショニングはもちろんだが、先頭から2~3番手に入ることさえできれば勝負あり、といったシチュエーションを作り出すセンスも、最終局面での圧倒的スピードを後押ししているポイントだ。

 この活躍にともない、発射台を務めるティモ・ローセン(オランダ)の評価も急上昇中だ。自身もスプリント勝利を狙えるだけの実力者は、フルーネウェーヘンを解き放つまでに、確実に集団先頭付近へと引き上げる仕事でその価値を高めている。このホットラインが、今シーズンは再三輝きを放つことだろう。

ドバイツアー第1ステージを制し喜ぶディラン・フルーネウェーヘン。2018年はスプリンターズクラシックのタイトルを目指すシーズンとなる Photo: Yuzuru SUNADA

 フルーネウェーヘンは、先のパリ~ニースで1勝を挙げた後、第4ステージを終えて離脱。クラシックに向けた調整のため、終盤の山岳ステージを前に大会を終えている。すでに「ワンデークラシックに集中する」と公言しており、狙うは3月25日のヘント~ウェヴェルヘム。「スプリンターズクラシック」の1つとして、スピードマンが勝利を夢見るレースでの活躍を誓う。その意気たるもの、同様にスプリンターにチャンスのあるミラノ~サンレモ(3月17日)を回避するほど。平坦基調ながら、パヴェ(石畳)が組み込まれるコースという点では、クールネ~ブリュッセル~クールネの優勝がプラスに働くかもしれない。

 昨年経験済みのパリ~ルーベ(4月8日)にも、続いて出場の予定。今シーズンはスプリントとあわせ、パヴェ適性が計られるシーズンとなるか。その後はツールを見据えて動いていく見通し。ツールでは、スプリントステージでの複数勝利に期待が膨らんでいる。

3年ぶりにツールへ挑むクライスヴァイク

 シーズンが進むにつれて、グランツールレーサーやステージレーサーにもスポットが当たることになるだろう。そう予感ができるほどに、長い戦いで計算できる戦力が整っているのだ。

ツール・ド・フランスでの総合上位進出を目指すステフェン・クライスヴァイク。写真は個人総合7位で終えたブエルタ・ア・アンダルシアでのひとこま Photo: Vuelta a Andalucia

 個人総合4位で終えた2016年ジロ・デ・イタリアの活躍が印象的なステフェン・クライスヴァイク(オランダ)は今年、ツールへと目標をシフトすると宣言。過去3度総合トップ10入りを果たし、相性抜群のジロには出場せず、満を持してツールでの上位進出を目指すこととなる。

 集団を粉砕するほどの爆発的なパワーやアタックこそ見る機会が少ないが、急峻な山岳もペースで淡々と上りきるスタイルでチャンスを見出してきた。今年のツールでは、アルプスやピレネーで新たな勢力としてマイヨジョーヌ争いに飛び込むことになる。ハイスピードで展開すると予想される山岳ショートステージや、フィニッシュめがけて突き進むダウンヒルも、どうこなしていくかが見もの。特に、決して得意とはいえないダウンヒルは課題の1つ。どれだけ改善して本番を迎えられるか。

 クライスヴァイクに代わってジロの総合エースを務めるのが、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)。

チームの総合エースの1人、ジョージ・ベネットはティレーノ〜アドリアティコでまずまずの走りを見せた Photo: Yuzuru SUNADA

 2015年のチーム加入時から総合力を高く評価され、ステージレースでエースを務めることが多いが、グランツールでは総合トップ10入りは1回にとどまっている。もっとも、大会途中に体調を崩したり、落車負傷に見舞われるケースが多く、昨年は出場したツール、ブエルタ・ア・エスパーニャともに途中リタイアに終わっている。とはいえ、昨年のツアー・オブ・カリフォルニアで個人総合優勝を果たすなど、着々と実績を積み上げている段階。今年4月で28歳と、いよいよ脂の乗ってくる時期に差し掛かろうとしている。

 このオフに腹部の手術を行ったため、調整不足でシーズンインしたものの、1月のサントス・ツアー・ダウンアンダーでは総合11位、ティレーノ~アドリアティコでも最難関の第4ステージで優勝争いに加わり3位と、まずまずの走りでまとめている。

 無理のない調整で、ジロの勝負どころにはしっかりと調子を合わせてくることだろう。シーズン後半にはブエルタ、そして山岳コースで争われるロード世界選手権と、ビジョンは明確だ。アクシデントなく走ることができれば、ベネットの名を見聞きする機会が今年は多くなるはずだ。

 さらに、ログリッチェとベテランのロベルト・ヘーシンク(オランダ)がジロ、ツールともに参戦し、エースを支える役割を担う方針だ。

ティレーノ〜アドリアティコ第3ステージ優勝のプリモシュ・ログリッチェ。グランツールでの活躍に期待が高まる Photo: Yuzuru SUNADA

 ティレーノ第3ステージを制するなど、気鋭のオールラウンダーとして注目されるログリッチェには、個人タイムトライアルの走りにも注目が集まる。特にイスラエル・エルサレムで行われるジロ第1ステージは9.7kmの個人TTは優勝候補の1人として臨むことになる。昨シーズンは個人TTだけで3勝を挙げ、ロード世界選手権でもこの種目で2位と大躍進。レース距離や平坦・アップダウン問わず好リザルトを残しているだけに、細かなアップダウンのコースが設定されるエルサレムでも対応することだろう。

 かたや、かつてはグランツール総合トップ10の常連だったヘーシンクは、「自由を与えてもらった方が走りやすい」という現在のスタンスに満足しているという。総合成績のために苦手な局面でリスクを負う必要がなく、狙ったステージに集中する姿勢で、今年も2つのグランツールへと臨む。もちろん、ベネットやクライスヴァイクのアシストにも従事し、レース展開次第でステージ狙いに切り替えることになる。意外にもグランツールでのステージ優勝は、ブエルタの1勝のみ。「すべてのグランツールでステージ優勝したい」というターゲットも頭に置きながら走るつもりのようだ。

ファンポッペルの加入でスプリント路線が多様化

 新加入組は4選手。なかでも実績で一段階上のレベルにあるのが、ダニー・ファンポッペル(オランダ)だ。

新加入のダニー・ファンポッペル。スプリントで存在感を発揮している =アブダビ・ツアー2018第4ステージ、2018年2月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ヴァカンソレイユ・DCM時代の2013年に、「19歳でグランツールデビュー」と話題になった逸材は、トレック ファクトリーレーシング、チーム スカイで2年ずつ過ごし、より多くの出番を求めて自国のトップチームへ“帰還”。今シーズンはすでに1勝している。

 ティレーノ~アドリアティコではエーススプリンターを任され、平坦ステージではアシスト陣がメイン集団の牽引に努めるなど、ファンポッペルを立てて勝負する意思を随所で見せていた。ステージ優勝には一歩届かなかったが、環境を新たにしたこともあり、スプリントに向けた組み立ては徐々に構築していくことだろう。発射台は、ベテランのロバート・ワーグナー(ドイツ)が担当する。

 この後はミラノ~サンレモで勝負を任される予定。また、ジロもレースプログラムに入っており、シーズン前半はイタリアのレースで重要な仕事をこなすことになる。

上り、スプリントともに得意とするエンリーコ・バッタリーン =サントス・ツアー・ダウンアンダー2018第2ステージ、2018年1月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのほかでは、上れるスプリンターのエンリーコ・バッタリーン(イタリア)や、クラシックやTTで実績のあるラルス・ボーム(オランダ)も勢いづくチームにあって、奮起したい選手たち。ボームはこのオフに不整脈の治療を行ったが、パリ~ニースでシーズンインし、北のクラシックに向けて急ピッチで仕上げている状況だ。

 TTスペシャリストのスタフ・クレメント、逃げや集団牽引で職人芸を見せるトム・レーゼル(ともにオランダ)、コース問わず堅実な働きを見せるパウル・マルテンス(ドイツ)といった、長年このチームで走るベテランも健在。迫る北のクラシックでは、マールテン・ワイナンツ(ベルギー)が目立つシーンも見られるだろう。屋台骨となる彼らがいてこそ、次々と好結果が得られていることも忘れてはならない。

ロットNL・ユンボ 2017-2018 選手動向

【残留】
エンリーコ・バッタリーン(イタリア)
ジョージ・ベネット(ニュージーランド)
ラルス・ボーム(オランダ)
クーン・ボウマン(オランダ)
スタフ・クレメント(オランダ)
フローリス・デティエ(ベルギー)
ロベルト・ヘーシンク(オランダ)
ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)
アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー)
ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)
トム・レーゼル(オランダ)
ベアトヤン・リンデマン(オランダ)
パウル・マルテンス(ドイツ)
ダーン・オリヴィエ(オランダ)
プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)
ティモ・ローセン(オランダ)
ブラム・タンキンク(オランダ)
アントワン・トルホーク(オランダ)
ヨス・ファンエムデン(オランダ)
ハイス・ヴァンフック(ベルギー)
ロバート・ワーグナー(ドイツ)
マールテン・ワイナンツ(ベルギー)

【加入】
パスカル・エーンクホーン(オランダ) ←BMCデヴェロップメントチーム(アマチュア)
セップ・クス(アメリカ) ←ラリーサイクリング
ニールソン・ポーレス(アメリカ) ←アクセオン・ヘーゲンズバーマン
ダニー・ファンポッペル(オランダ) ←チーム スカイ

【退団】
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー) →ロット・スーダル
トワン・カストランツ(オランダ) →引退
マルティン・ケイゼル(オランダ) →未定
ステフェン・ラメルティンク(オランダ) →ヴィタルコンセプト サイクリングクラブ
フアンホセ・ロバト(スペイン) →NIPPO・ヴィーニファンティーニ
ユルゲン・ヴァンデンブロック(ベルギー) →引退
アレクセイ・ヴァーミューレン(アメリカ) →インタープロ・ストラダリサイクリング

今週の爆走ライダー−ティモ・ローセン(オランダ、ロットNL・ユンボ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 チーム全体で年間6勝に終わった2015年シーズン。あまりの惨状に、チームは大幅な改革を断行。その切り札となったのが、地元の小さなチームから勝利を重ねていたフルーネウェーヘンだった。

リードアウトマンとして欠かせない存在となったティモ・ローセン =ツール・ド・フランス2016 チームプレゼンテーション、2016年6月30日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな、スピードと勝負強さを兼ね備える若きスプリンターを支える存在として白羽の矢が立ったのが、同い年のローセン。自身もジュニア時代からスプリンターとして鳴らしてきたが、プロ2年目の2016年からはフルーネウェーヘンの発射台として自らの価値を高める日々を送る。

 ペアを組んだ当初は失敗も多かったが、経験の積み重ねによってコンビネーションは正確性を増した。いよいよ、2人のホットラインは花開きつつある。それが顕著に見られたのが、2月に行われたドバイ・ツアー(UAE、UCIアジアツアー2.HC)第1ステージ。ローセンが先頭に立ち、残り150mでフルーネウェーヘンを発射。追い求めてきた理想形に近いスタイルで得た勝利だった。その勢いはパリ~ニースでのステージ1勝にも続いた。

 リードアウト向きの脚質について、「長い時間トップスピードを保つことができるのが一番の要因」と自己分析。スプリントに向けて、集団の中から抜け出すべく加速をしたうえで、フルーネウェーヘンを放つ“勝利の方程式”は、自らの特徴を存分に生かしたもののようだ。

 勝利を量産している今も、「もう少し一緒に仕事をしていきながら、ツールへと備えたい」と謙虚な姿勢は崩さない。昨年のツールではフルーネウェーヘンがシャンゼリゼで勝ったが、自身は2日前にリタイアしてしまい大仕事に立ち会うことができなかった。「リードアウトの精度を高めるために何をすべきかは理解している」との言葉には、雪辱を期す彼なりの強い意志が込められているのだろう。

ドバイ・ツアー第4ステージスタート前のひとこま。身長194cmという大きな体もティモ・ローセンの特徴だ =2018年2月9日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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