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新型グラベルバイク②実走テストキャニオンの新型グラベルバイク「GRAIL」で南仏を試走 2階建てハンドルの使い心地は?

by 森本禎介 / Teisuke MORIMOTO
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 ドイツのバイクブランド「CANYON」(キャニオン)が発表した新型のグラベルロードバイク「GRAIL」の紹介第2弾は、2月にフランス・ニースで行われたメディア発表会に日本から唯一参加したTKC Productions(ティーケーシープロダクションズ)代表の森本禎介さんの試乗レポートをお届けします。「上ハン」部分が2階建て構造になった、専用のステム一体型ドロップハンドル「ホバー・バー」を含め、特徴的なモデルの走り心地とは?

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夏には多くの観光客で埋め尽くされるであろう、美しいビーチにヨットハーバーと並ぶ「グレイル CF SLX 8.0Di2」 Photo:Teisuke MORIMOTO

雨の中、カンヌの南東で試走

 プレスキャンプの試乗日に設定された土曜日は朝から冷たい雨だった。南仏というと太陽が燦々と降り注ぐリゾートを想像していてたが、このプレスキャンプ期間が大変天気が悪く、タクシーの運転手に同情されるほどだった。海外でこのようなイベント開催される際、雨の影響でライドが中止されることはほとんど無い。朝8時半にホテルのロビーに集合するとキャニオンのスタッフにより粛々と大型バスに案内され、総勢25人のメディアはニースから西に移動し、カンヌの南東に位置するテウル・シュル・メールという美しい港町のビーチ沿いに設営されたテントの前でバスは停車した。

ビーチの駐車場にキャニオンのテントがセットアップされ、試乗車が並ぶ Photo:Teisuke MORIMOTO

 まずはバイクラックに掛けられた大量のグレイルからプロ選手のようにトップチューブに貼られた自分の名前のステッカーを探す。キャニオンのプレス担当には事前に身長、股下、ブレーキの左右、ペダルのメーカーなどを伝えていたので、細かいシート高調整だけですぐ走り出せるように仕上げられている。身長178cmの筆者にはMサイズが用意された。ハンドルにはガーミンEdge1030が装着済で、電源を入れるとこの日のルートが表示される。至れり尽くせりだ。

カメラを向けられたので笑顔を作るが、雨と寒さで上手く笑えない ⒸCANYON
グラベルでも恐るべき速さを見せたファビアン・バレル ⒸCANYON

世界王者3度、ファビアン・バレルも

 軽食が用意され、簡単なブリーフィングが行われる。eMTBに乗ったスタッフが同行し、パンクなどのトラブルに対応してくれるとのことだ。参加者の中に賑やかな、いかにもマウンテンバイカーというショーツを履き、体幹の太い、疑う事なきトップアスリート然としたライダーが立っている。全身マヴィックのウェアに包んだその姿、どこかで見たことがあると思って記憶をたどると、世界王者に3度輝いたファビアン・バレルだった。

 MTBのダウンヒル競技から引退し、現在はキャニオンのダウンヒルとエンデューロチームの監督を務め、自らエンデューロに参戦しながら製品開発にも携わっている。ファビアンはニース近郊ペイユの生まれで、同じく世界選手権で10勝したフランスの英雄ニコラ・ブイヨズも同じ町の出身だ。地元のファビアンが知り尽くしたグラベルを案内してくれるという贅沢なライドではあるが、雨は降り続いていた。

チャンスなので少し砂浜も走ってみたが、さすがに40Cとは言え容易ではなかった Photo:Teisuke MORIMOTO

チューブレス化で8.22kg

 筆者に与えられた「グレイル CF SLX 8.0Di2」は公称8.22kgで、ペダルにボトル2本、ガーミンとフェンダーを取り付けても余裕の9kg台を保っている。バイクの出荷時には品質管理の問題でホイールにはチューブが使われるが、試乗車はチューブレス化されていた。ヘイダー氏から念押しされたのは空気圧を上げ過ぎないという点だ。なので推奨されたフロントに2気圧、リアは2.5気圧に調整する。

雨の南仏をヒルクライム。路面が綺麗でダンシングで気持ち良く登れたが、表情からそれは伺えない ⒸCANYON

 走り出してまず感じるのはその軽さだ。そして見た目が一種異様なハンドルバー、ホバー・システムの違和感はすぐに消える。海岸から山側に走り出してすぐ登りになるが、軽くバイク振ってダンシングを入れてもロードバイクとそれほど変わらない軽快さを感じる。走り出して数kmですぐグラベルに突入。斜度は緩く、比較的締まった砂地のような路面であるため走りやすい。

 早速、自慢のホバー・システムを試すために上ハン部分を持って登るが、実際の所はフレックスを感じることもなく、機械式サスペンションのような動きを期待すると裏切られる。垂直方向に7倍のフレックス、という説明だったが、ランチ時にプロダクト・エンジニアのヘイダー氏から、あくまでも衝撃のピークを除去する程度の役割だとの説明を受ける。

ホバー・バーの握り方

ルートは岩盤が割れて小石や砂状になったグラベルが多かった Photo:Teisuke MORIMOTO

 ホバー・バーとVCLS2.0シートピラーの組み合わせは素晴らしく、どちらかというと筆者にはシートピラーのフレックスの効きの方を強く感じた。ガレた登りでも後輪にしっかりとトルクを掛けることが可能で、ライドの後半でも腰に来るようなことはない。ルートは標高543mから180mまで一気に下るダウンヒルがあったが、ここで驚いたのはシュワルベ製のタイヤだ。雨の中、完全なウェットな路面でも予想以上のグリップ力で、自分が思うよりさらにコーナーのインを突ける。

 さらに、ホバー・バーの下ハンを握ると左右を繋ぐカーボン部分に親指を引っかけて、よりハンドルを強固に握ることができる。そして、高いハンドル剛性と安定感のあるタイヤのグリップと相まって、700Cのホイールで下る雨のグラベルでもまったく恐怖感を感じなかった。これは、同社のエンデュランスロードよりも40mm延長されたホイールベースの恩恵も強い。延長されたフロントセンターの効果は絶大だった。

雨のグラベルでも恐怖感を感じなかったホバー・バー Photo:Teisuke MORIMOTO 

 幸か不幸か、この雨のせいでルートはショーットカットされ、50kmほどのライドでこの日を終えた。しかし結果的には過酷なコンディションを走ることにより、グレイルの性能を十分に味わうことができた。ここまでグレイルを絶賛してきたが、ネガティブなポイントも書いておかなけばフェアではないだろう。グレイルは標準のステムのポジションからスペーサーを抜いて最大15mmしか下げることができず、逆に高くすることは不可能だ。当然、気軽にステム長も交換できない。筆者は標準のステム長で問題は無かったが、これは同社が完璧なフィットを目指したという自信の裏返しでもある。

後半に登場したいかにも南仏と言った感じの納屋。落ち着いたカラーのグレイルが景色に馴染む Photo:Teisuke MORIMOTO

 英語には「転がる石に苔むさず」ということわざがあるが、ヘイダー氏は「石を転がせ続けたかった」という表現でグレイルをデザインした動機を語ってくれた。同社の保守的な姿勢と革新的なアプローチがバランス良く同居したグレイルは新時代を築くことができるのだろうか? 残る問題は長期間の休みを取るという峠を越えるだけだ。

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