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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<246>大型スポンサーを迎えて最高の船出 グルパマ・エフデジ 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 3月4日に開幕したパリ~ニース。混戦となった第1ステージの上りスプリントを制したのは、地元・フランスチャンピオンジャージをまとうアルノー・デマールだった。この日は大型スポンサー・グルパマ社のチーム合流初日。晴れの日にチームきっての役者が勝利を挙げる、メモリアルデーとなった。新生「グルパマ・エフデジ」は、デマールやティボー・ピノ(フランス)といったエースクラスがレースを盛り上げるだけでなく、潤沢な資金をベースに長期的視野でチームづくりを進める「フランス自転車界の希望」になろうとしている。

1月31日に行われたグルパマ・エフデジのチームプレゼンテーション。フランス国旗をモチーフにしたトリコロールカラーのジャージが発表された Photo: Équipe cycliste Groupama–FDJ

フランスの保険会社「グルパマ」がメインスポンサーに

 昨年12月、フランスの宝くじ会社「エフデジ」と同国の保険会社「グルパマ」とがそろって発表会を行い、共同スポンサーとなることを明らかにした。名将マルク・マディオ氏が率い、これまでエフデジとして活動してきたチームは、グルパマがメインスポンサーとなる形となり、チーム名は「グルパマ・エフデジ」となることも決定。両者の共同体制はひとまず2020年までの3シーズンとし、実際にグルパマ社が支援するのは現在開催中のパリ~ニースからで合意に達した。

チームプレゼンテーションのステージで記念写真に収まる選手・関係者 Photo: Équipe cycliste Groupama–FDJ

 チームは昨シーズン、UCIワールドツアー・チームランキングにおいて18チーム中17位と“惨敗”。これからチームが目指すのは、フランスナンバーワンになることに加え、世界でトップ10にランクされるチームになること。

 新たな目標へ向かうにあたり、必要となるのは資金。グルパマ社のメインスポンサー着任により運営費はこれまでより30パーセントアップし、年間で1800万ユーロ(約24億円)まで増額されたとフランスのメディアでは報じられた。また、来シーズンからは積極的な補強を進めるほか、プロを目指す選手たちによるデヴェロップメントチーム(育成チーム)を設立。女子チームであるエフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープの2020年までの活動も確定している。

チームプレゼンテーション会場に展示されたチームカー Photo: Équipe cycliste Groupama–FDJ

 グルパマ社はかねてからスポーツ支援に精力的な企業として知られる。近年では、国内外のサッカー専用スタジアムのネーミングライツ(命名権)の獲得や、世界最高峰の国際ヨットレース・アメリカズカップに出場するフランス艇のメインスポンサーを務めるなど、あらゆる競技に進出。満を持してサイクルロードレース界にも仲間入りを果たし、トップシーンへの貢献や活性化の起爆剤になろうと意気込んでいる。

デマール、ピノがビッグタイトルへ挑戦

 チームとしてランクアップを目指すうえで、カギを握るのがデマールとピノの両フランス人エースだ。

パリ〜ニース第1ステージで勝利を挙げて喜ぶアルノー・デマール Photo: Yuzuru SUNADA

 エーススプリンターのデマールは、パリ~ニースで連日マイヨジョーヌを着用。上りスプリントや、低い気温の中でのレースと、得意なシチュエーションでしっかりと結果を残してきている。

 デマールの魅力は、何といってもピュアスプリンターに匹敵するフィニッシュ前でのスピード。このところは彼を支えるリードアウトトレインも安定し、それによりルーラータイプの選手たちがレース中盤前後からプロトンのコントロールを担えるようになるなど、チームとしてデマールを勝たせる方程式が成り立っている。パリ~ニースでは、オランダチャンピオンジャージを着る大型スピードマンのラモン・シンケルダムからジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)へのつなぎが機能し、最終局面にかかるデマールを好位置へと引き上げることができている点も忘れてはならない。

ミラノ〜サンレモ2016を制したアルノー・デマール。今年は2年ぶりの優勝を目指す =2016年3月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 また、デマールは自身の脚質を「ルーラーやパンチャー寄り」と分析するように、少人数での勝負や、展開によっては独走となる状況にも対応が可能。2016年に優勝したミラノ~サンレモや、昨年6位となり初のトップ10フィニッシュを経験したパリ~ルーベでは自らのスタイルが有利に働くとの自信も見せている。クラシックシーズンはこの2レースをメインターゲットとし、その後はツールを中心としたスケジュールになりそうだ。

ジロ・デ・イタリア2017で個人総合4位と活躍したティボー・ピノ。今年もジロに比重を置くシーズンとなる =ジロ・デ・イタリア2017第20ステージ、2017年5月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 総合エースのピノは昨年、初出場のジロ・デ・イタリアで個人総合4位と活躍。第20ステージでの優勝を筆頭に、山岳ステージで再三上位フィニッシュ。フランス国内で1、2を争う人気ライダーゆえに、どうしてもツールで入れ込みすぎるところがここ数年見られていたが、ジロでの好走で新境地を開拓。上りのパンチ力に加え、総合系ライダーでは指折りのスプリント力の持ち主。そこに自国ではトップクラスの走力を誇るタイムトライアルがかみ合えば、2014年ツール以来のグランツール総合表彰台も見えてくる。

山岳に加え個人タイムトライアルも得意とするティボー・ピノ。すべてがかみ合えばグランツールの総合表彰台返り咲きも見えてくる =ツール・ド・フランス2017第1ステージ、2017年7月1日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今シーズンもジロへの参戦を表明。その後のツールにも出場する意向だ。比重的にはジロの方が高いようだが、ダブルでの好結果に意欲的だ。昨年はジロを経てツール臨んだが途中リタイアに終わっており、その反省から今年は意識的にゆっくりとしたスタートを切っている。2月17~18日のツール・ドゥ・オー・オーヴァル(フランス、UCIヨーロッパツアー2.1)で総合5位にまとめ、次戦は3月19~25日のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(スペイン)に出場。その後、4月16~20日のツアー・オブ・ザ・アルプス(イタリア、UCI2.HC)を走り、ジロへと向かう予定だ。

 両者ともに経験・実績は豊富。ビッグレースに向けた調整も不安はないと見てよいだろう。キャリア的にも脂が乗りつつある時期に差し掛かっており、新たなタイトル獲得の可能性も大いにありそうだ。

チーム力向上のポイントは“チーム2番手”の確立

 今シーズンは28選手が所属。デマールやピノにスポットがあたりがちだが、チーム力をアップさせていくためには、この2人に続く存在が出てくることが重要となる。

 チームがここまでに挙げている3勝のうち、2勝はマルク・サロー(フランス)が1月31日~2月4日のエトワール・ド・ベッセージュ(フランス、UCIヨーロッパツアー2.1)で挙げているもの。これまでビッグリザルトこそ挙げていないが、いよいよスプリンターとして花開くか。

総合力のあるセバスティアン・ライヒェンバッハもステージレースのエース候補 =ジロ・デ・イタリア2017第19ステージ、2017年5月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ステージレースでは、昨年のジロ総合15位、一昨年のツール総合14位のセバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス)が今年、いくつかのチャンスを得ることになるかもしれない。ステージ数問わず、総合10位台で確実にまとめられる安定感は魅力的。

 また、昨年はトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)のジロ制覇をアシストしたゲオルク・プライドラー(オーストリア)が加入。山岳・TTとも走りの評価が高いが、新たな環境での起用法に注目が集まる。ベテランクライマーのスティーヴ・モラビト(スイス)もアシストとして欠かせない存在だ。

 ワンデーレースに強いアントニー・ルーやアルテュール・ヴィショ(ともにフランス)が見せるいぶし銀の走りも見逃せない。ステージレースではアシストとしてもチームに貢献する実力者は、ピノを総合上位へと送り出すキーパーソンとなる。

注目のネオプロ、ヴァランタン・マデュア(左端)。ストラーデ・ビアンケで20位と健闘した =2018年3月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このストーブリーグでは、強化を図る他チームへ活躍の場を求めた選手が多かったが、一方でチームはネオプロ(新人)と実績のある選手とをバランスよく獲得。ネオプロでは、昨年のロード世界選手権アンダー23(23歳未満)ロードレースでブノワ・コズネフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)のマイヨアルカンシエル獲得に大きく貢献した、21歳のヴァランタン・マデュアへの期待値が高い。ツール・ドゥ・オー・ヴァールで個人総合4位に入ったほか、大荒れとなったストラーデ・ビアンケでも逃げに入りつつ最終順位でも20位と健闘し、早くも才能の片りんを示している。

グルパマ・エフデジ 2017-2018 選手動向

【残留】
ウィリアム・ボネ(フランス)
ダヴィデ・チモライ(イタリア)
ミカエル・ドゥラージュ(フランス)
アルノー・デマール(フランス)
ダヴィ・ゴデュ(フランス)
ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)
ダニエル・ホールゴール(ノルウェー)
イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア)
マチュー・ラダニュ(フランス)
オリヴィエ・ルガック(フランス)
トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン)
ルディ・モラール(フランス)
スティーヴ・モラビト(スイス)
ティボー・ピノ(フランス)
セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス)
アントニー・ルー(フランス)
ジェレミー・ロワ(フランス)
マルク・サロー(フランス)
ブノワ・ヴォグルナール(フランス)
アルテュール・ヴィショ(フランス)
レオ・ヴァンサン(フランス)

【加入】
ブルーノ・アルミライル(フランス) ←オクシタンCF(アマチュア)
アントワーヌ・デュシェーヌ(カナダ) ←ディレクトエネルジー
ヴァランタン・マデュア(フランス) ←UCナント・アトランティク(アマチュア)
ゲオルク・プライドラー(オーストリア) ←チーム サンウェブ
ロメン・シーグル(フランス) ←CCエトゥプ(アマチュア)
ラモン・シンケルダム(オランダ) ←チーム サンウェブ
バンジャマン・トマ(フランス) ←アーミー・ド・テレ

【退団】
アルノー・クールテイユ(フランス) →ヴィタルコンセプト サイクリングクラブ
オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー) →ワンティ・グループゴベール
マルク・フォルニエ(フランス) →ヴィタルコンセプト サイクリングクラブ
ヨアン・ルボン(フランス) →ヴィタルコンセプト サイクリングクラブ
ジェレミー・メゾン(フランス) →チーム フォルトゥネオ・サムシック
ロレンゾ・マンザン(フランス) →ヴィタルコンセプト サイクリングクラブ
セドリック・ピノー(フランス) →引退
ケヴィン・レザ(フランス) →ヴィタルコンセプト サイクリングクラブ

今週の爆走ライダー−ジェレミー・ロワ(フランス、グルパマ・エフデジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 プロ16年目、34歳となる今年でキャリアに終止符を打つと決めた。2月下旬に自らの口で発表し、固い決意のもと最後のシーズンを戦うと宣言した。

2018年シーズン限りでの引退を発表したジェレミー・ロワ =ジロ・デ・イタリア2017第14ステージ、2017年5月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2003年のデビュー以来、このチーム一筋で走ってこれたことが何よりの誇りだという。機械工学を専攻する学生だった2003年、いくつかのチームから誘いがあったなか、自ら掲げた「学業との両立」との条件に唯一理解を示してくれたのが現チームだったのだとか。そのチーム姿勢に、今でも感謝の思いを抱く。

 サイクリストとしては、平地系のステージを中心に逃げで魅せた。プロ初勝利は2009年のパリ~ニース第5ステージ。3人での逃げ切りは、トマ・ヴォクレール(フランス、当時Bボックスブイグテレコム)との共闘で、自国に勝利をもたらそうとチームの垣根を超えた走りの末で得たものだった。引退発表にあたり、この勝利を「魔法にかかったかのようだった」と振り返る。一方で、エースであるピノの成長とともに、戦術的に自身が逃げる機会が減ったことがキャリアの転換期になったことも明かしている。

 引退後のことはまだ何も決めていない。「美しいレースと美しい目標がある限り走り続ける」。だから引退レースがいつになるのか自分でも分からないという。これまでのように、レースとトレーニングに集中していく中で、いつか訪れる最後のレースを迎えようという構えだ。

 キャリアの中で、グルペットで山岳を乗り切ることも多かったが、コース脇で盛り上がる観客やファンの仮装する姿に多くの思い出があるというユニークな一面も。激しい戦いの末につかんだ勝ち星だけではなく、自分なりの視点や楽しみ方を持ったことも長く走り続けられた要因のなのかもしれない。引退までの残りの期間、自らのパフォーマンスを追求しながら、もう少しばかり印象的な光景を心にとどめることができそうだ。

キャリアの終了が迫るジェレミー・ロワ(右)だが、引退レースは定めず美しい目標がある限り走り続けるという =ジロ・デ・イタリア2017第17ステージ、2017年5月24日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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