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MSN産経ニュースwest【関西の議論】より自転車事故で「免停150日」厳重処分の背景 問われる法令順守意識

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 自転車でバイクと接触事故を起こし、相手を負傷させたまま現場を立ち去ったとして、奈良県警が11月、自転車の男性に運転免許停止(150日間)という異例の処分を下した。自転車は健康や環境に優しい乗り物として利用が増えているものの、歩行者が絡む事故も増えている。今回の事故は、免許証がいらない自転車が“容疑車両”だったが、運転者について、車やバイクの運転時でも同様に無謀な運転をする可能性を見越して処分が出された。自転車による人身事故で高額な賠償責任が生じるケースも増えており、利用者の法令順守意識が問われている。(産経新聞奈良支局 山本考志)

ひき逃げ車両は「自転車」

 奈良県警初の自転車利用者への免停処分は、5月10日午後7時ごろに事故を起こした奈良市の無職男性(61)に対してだった。

自転車によるひき逃げ事故が起きた現場付近の道路。自転車の男性はガードレール側から横断しようとした =奈良市自転車によるひき逃げ事故が起きた現場付近の道路。自転車の男性はガードレール側から横断しようとした =奈良市

 県警によると、男性は事故当時、買い物から帰宅中で、市内の県道(幅約6メートル、片側1車線)の路側帯近くをスポーツタイプの自転車で走行していた。

 後ろからはバイクが迫っていたが、男性は振り返って確認したり、手信号で右折の意思を示したりすることなく、道路横断のため突然右折。バイクと接触し、双方が転倒した。

 自転車の男性は相手の様子を確認することなく、そのまま自転車で逃走。バイクの男性は鎖骨骨折など全治約2カ月の重傷で、通行人に救助を要請し、病院に搬送された。

 自転車の男性は帰宅後、事故を知らされた家族に説得され、最寄りの警察署に出頭した。重過失傷害と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで10月に書類送検され、運転免許停止150日の処分が下された。

 男性は県警の調べに対し「自分のけがが大したものではなかったため、相手も大丈夫だろうと思い込み、立ち去ってしまった。相手にけがをさせてしまい、申し訳なかった」と話したという。

 県警の担当者は、処分の理由について「被害が大きく、事故後に逃走もしている。乗っていたのは自転車だったが、車の運転中にも同様の無謀運転やひき逃げをする可能性がある」と説明する。さらに「今回は珍しいケースだが、自転車も軽車両。利用者には、道交法を順守しなければならないことをしっかり認識してほしい」と呼び掛けている。

死亡事故も

 自転車の無謀走行が原因の事故は、平成23年5月に大阪市内でも起きていた。

 事故は同月12日朝、浪速区の国道25号で発生。自転車の男が片側2車線の信号のない場所を横切ろうと飛び出したため、自転車を避けようとワゴン車が急に車線変更した。

 さらに、ワゴン車に割り込まれたタンクローリーが急ハンドルを切って歩道に突っ込み、いずれも大阪市内の運送アルバイトの男性=当時(75)=と派遣社員の男性=当時(49)=がはねられ、死亡した。

 自転車の男は、事故を誘引したとして大阪府警に重過失致死容疑で逮捕され、禁錮2年の実刑判決が確定。中型車と二輪車の運転免許停止処分(180日)を受けた。

高額な賠償

 自転車事故を起こした場合、刑事処分や行政処分だけでなく、被害者への賠償責任も負わされる。

 過去の訴訟では、横浜地裁が17年11月、夜間に携帯電話を操作しながら無灯火運転して女性にぶつかり、歩行困難の障害を負わせた女子高生側に、5千万円の支払いを命じた。

 こうした高額賠償事故を受け、自転車の車体に貼り付ける、被害者への賠償責任保険が付帯された「TSマーク」の加入者が増えているという。

 発行元の日本交通管理技術協会(東京)によると、マークは自転車の購入時や点検時、千円程度の整備費を支払うと入手できる。有効期限は1年。加入者が自転車事故で被害者を死亡させたり重度の障害を負わせたりした場合、賠償額に応じて最大2千万円が支払われる。

 同協会が自転車店などに交付したマークは、22年度の約148万2300枚から、23年度には約196万9500件と3割近く伸びた。

 環境への配慮などを目的に、自転車利用を促している奈良県生駒市は今年4月、自治体としては全国で初めて、自転車通勤の職員が保険会社などの自転車保険に加入すれば、通勤手当を1500円増額する改正条例を施行した。市によると、これまでに26人が加入。市の担当者は「職員が率先して自転車保険に加入することを促すのが狙い。今後も加入者を増やしていきたい」と意気込む。

 一方で、自転車と歩行者が絡む事故は後を絶たない。

 警察庁の統計によると、自転車が関連する事故は、13年の約17万5200件から、23年の約14万4千件に減少する一方、自転車と歩行者が絡む事故は、同じ期間で逆に約1800件から約2800件に増えている。

 こうした状況を受け、各都道府県警は自転車利用者の交通違反取り締まりを強化している。警察庁は10月、有識者懇談会を設置。道交法違反で摘発した悪質な自転車利用者に対し、安全講習の義務付け導入などを議論している。

道路“シェア”を

 自転車の利用者側でも、交通安全への自発的な取り組みが進んでいる。

 全国47都道府県のサイクリング協会と連携し、自転車イベントなどを開催している日本サイクリング協会(東京)では、各地で自転車利用者を対象にした安全講習などを開催している。約2万人の賛助会員には入会時、「サイクリスト宣言」をしてもらい、車道の左側通行や歩行者の安全最優先、夜間点灯などの徹底を呼び掛けている。

 同協会は「それぞれの立場で道路を“シェア”するという気持ちが必要」とし、「自転車利用者の側から歩行者やドライバーに対する共感を深め、楽しいだけでなく正しいサイクリングを広めていきたい」と話している。

MSN産経ニュースwestより)

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