ストラーデ・ビアンケ2018泥まみれのストラーデ・ビアンケを23歳ベノートが制しプロ初勝利

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 イタリアのシエナで2018年UCIワールドツアー第5戦「ストラーデ・ビアンケ」が3月3日に行われ、ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)が最後の未舗装路区間でアタックを決め独走で逃げ切り、ベノート自身にとって念願のプロ初勝利を挙げた。世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は優勝争いには絡めず、8位でフィニッシュした。

「信じられない」といったようなジェスチャーで頭を抱えながらフィニッシュするティシュ・ベノート。待望のプロ初勝利となった Photo : Yuzuru SUNADA

雨が降り、未舗装路が泥まみれの悪路に

 ストラーデ・ビアンケはイタリア語で「白い道」を意味する。その由来は、合計63kmもの未舗装路区間を走ることにある。ところが、ヨーロッパを襲った大寒波の影響で、開催地のシエナでは雪が降り積もり、別の意味で「白い道」になっていた。レース当日は気温が上昇し、雪ではなく雨が降ったため、未舗装路はぬかるみ泥まみれの「茶色の道」へと変貌を遂げていた。

 しかし、選手たちは泥道を信じられないようなスピードで駆け抜ける。前を走る選手の後輪から跳ねた泥が降りかかり、全身泥にまみれながらレースが展開していったのだ。

沿道の観客が傘を差すほどの雨のなかを突き進むプロトン Photo : Yuzuru SUNADA

 そのレースが大きく動いたのは、大会通算3勝を誇るレジェンドである「ファビアン・カンチェラーラ」の名が付けられた第8セクターへ向かう残り60km地点付近の舗装路だった。

シクロクロス世界王者が積極的な攻撃

 序盤から逃げ続けていたピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、ヴァランタン・マデュア(フランス、エフデジ)らの逃げ集団に、メイン集団からシクロクロス世界選手権3連覇中のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)らがブリッジをかけた。

 そのまま、今大会で2番めに長い11.5kmの未舗装路区間である第8セクターに突入すると、メイン集団の選手たちが先頭グループにばらばらと追いついてきた。ここで急勾配の上りを利用してヴァンアールトが積極的にペースアップを図ると、真っ先に反応したのは、昨年の覇者であるミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)だった。

 この動きには他の有力選手たちも対応せざるを得ない。バルベルデ、ベノートらが先頭に追いつき、しばらくしてサガンも合流して9人の先頭集団ができ上がった。

 ヴァンアールト、クウィアトコウスキー、バルベルデ、ベノート、サガン、ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、チームサンウェブ)、ロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシングチーム)の9人だ。

 後方の集団からは、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)が単独でブリッジを試み、第8セクターの後半に差しかかる残り47km地点で先頭集団に追いついた。

未舗装路区間を走る集団。前方にはペテル・サガンの姿も Photo : Yuzuru SUNADA

 バルデ以外の選手も続々と先頭集団に復帰してくるなか、集団のペースが緩んだ隙を狙って、バルデがカウンターアタックを仕掛けた。バルデの動きをチェックしたのはヴァンアールトだけ。2人は泥でぬかるむ下り坂をかっ飛ばして、サガンやクウィアトコウスキーのいる集団からリードを築く。

 第8セクターを抜ける頃には、サガンのいるメイン集団に多くの選手が追いついて40人近くに膨れ上がっていた。20秒程度のリードを持って、バルデとヴァンアールトが逃げる展開となった。

単独でブリッジをかけたベノート

 残り38km地点で、メイン集団からジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)がアタック。ベノートとピーター・セリー(ベルギー、クイックステップフロアーズ)がチェックに入り、さらにメイン集団からはヴィスコンティたちを追ってアタック合戦が勃発した。

 ここまでに50km以上の未舗装路を走破してきているため、体力を残している選手はそう多くはない。アシストを使って組織的に集団をコントロールするような動きは不可能であり、集団はまたしてもバラバラになった。

 残り31km地点、先頭の2人を追いかけるヴィスコンティ、ベノート、セリー、キュング、ジャンニ・モスコン(イタリア、チーム スカイ)ら10人による第1追走集団、その後方にはサガン、クウィアトコウスキー、バルベルデ、ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)ら10人以上の第2追走集団が形成されていた。先頭から第1追走集団とのタイム差は1分、さらに30秒遅れて第2追走集団という構図だ。

フィニッシュ後のグレッグ・ヴァンアーヴェルマート。顔中に泥が付着している Photo : Yuzuru SUNADA

 アシストを残しているチームはほとんどなく、どちらの追走集団もうまく協調体勢がとれていなかったため、先頭2人とのタイム差は縮まらないどころか、徐々に拡大傾向にあった。

 痺れを切らしたベノートとセリーが、第1追走集団から飛び出した。相変わらずペースの上がらない追走集団を尻目に、ベノートとセリーは協調しながら先頭2人とのタイム差を縮めていった。

 残り19km地点、先頭を走るバルデ、ヴァンアールトから40秒遅れて、ベノート、セリーの2人は第10セクターに突入した。長さ2.4kmで、最大勾配15%の上りを含んでいた。

 この勾配が厳しい区間で、ペースが上がらなくなったセリーを置き去りにして、ベノートが単独で追走を開始。40秒ものタイム差を一気に縮めて、残り15km地点で先頭の2人をついに捉えた。

積極的な走りで掴んだプロ初勝利

 局面はいよいよ大詰めを迎えた。3人になった先頭集団は、残り13km地点から始まる最終第11セクターへ到達した。

 最大勾配18%の激坂を含む難所に差し掛かるやいなや、ベノートがアタックを決行。体力の限界に近づきつつあるヴァンアールトだけでなく、クライマーのバルデをも置き去りにすることに成功した。ベノートはバルデたちとのタイム差を一気に20秒ほど広げて独走に持ち込んだ。

 バルデたちの後方には、ヴィスコンティ、パワー、セリー、バルベルデ、スティバルが追走集団を形成していたが、単独で逃げるベノートのペースの方が勝っていた。

 そうして、ベノートはバルデたちとのタイム差を40秒まで広げて、残り1km地点から最後の上り区間へ突入した。

ベノートが下りきってのフィニッシュへ Photo: Yuzuru SUNADA

 最大勾配18%の激坂の沿道を大勢の観客が埋め尽くしており、ベノートは大歓声に応えるかのように軽快なダンシングで難所をクリアした。あとはフィニッシュ地点のカンポ広場まで下るだけである。スリッピーな石畳の路面を警戒しながら、慎重にコーナーをこなしていく。最終コーナーが見えると、勝利を確信。ガッツポーズを繰り出しながらフィニッシュラインを越えた。

 2015年ツール・デ・フランドルでは21歳ながら5位に入るなど、ベルギー期待の新星として常にアグレッシブな走りを見せていた。ステージレースでは、総合系選手に肩を並べる登坂力を発揮するなど、非凡な才能は大いに感じさせられていたが、なかなかポディウムの頂点を掴むまでには至らなかった。

 この日も、ライバルのアタックをすぐにチェックするなど常に集団前方でレース展開していた。ベノートの持ち味である積極性をいかんなく発揮して掴んだプロ初勝利だ。

表彰台での一幕。左からバルデ、ベノート、ヴァンアールト Photo : Yuzuru SUNADA

 2位にはバルデが入った。今年のツール・ド・フランスでは石畳や未舗装路が登場するため、予行練習のために出場したストラーデ・ビアンケで思わぬ悪路適性を示す結果となった。

 3位のヴァンアールトは、ワールドツアーでは初の表彰台獲得となった。シクロクロス世界王者のテクニックを存分に発揮した。今後はツール・デ・フランドルやパリ〜ルーベへの出場も予定されているので、ロードでも注目していきたい。

 サガンは終盤に追い上げを見せたものの8位に終わった。クウィアトコウスキーは30位に沈んだ。公式の完走者は53人。NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニから初山翔が出場し、ゴールしたものの制限時間オーバーだった。

ストラーデ・ビアンケ2018結果
1 ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル) 5時間03分03秒
2 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +39秒
3 ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン) +59秒
4 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム) +1分25秒
5 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1分27秒
6 ロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) +1分29秒
7 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ) +1分42秒
8 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +2分08秒
9 ピーター・セリー(ベルギー、クイックステップフロアーズ) +2分11秒
10 グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +2分16秒

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