コース紹介と注目選手をプレビュー”太陽のレース”パリ〜ニースがあす開幕 チーム スカイの4連覇を阻むのは?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 2018年、ワールドツアー第6戦目となるパリ〜ニースがいよいよ3月4日に開幕する。「ミニ・ツール・ド・フランス」と称される本格的なステージレースで、スプリンター、パンチャー、クライマー、TTスペシャリストなど様々な脚質の選手に見せ場があるバランスの良いコースレイアウトになっている。開幕直前に、コース紹介と有力選手のプレビューをお届けする。

「太陽のレース」と呼ばれているパリ〜ニース。プロトンはまだ寒さの残るフランス北部・パリ近郊から南下しながら、温暖な地中海沿岸の街・ニースを目指す Photo : Yuzuru SUNADA

 フランス北部・パリ近郊から、フランス南部の地中海沿岸の街・ニースへと至る全8日間・総走行距離1186.9kmのステージレースとなっている。ニースは一年を通して比較的温暖な気候となっており、3月の平均最高気温は15度だ。そのためパリ〜ニースは別名「太陽のレース」とも呼ばれている。

パリ〜ニース2018 全8ステージのコースマップ ©ASO

 しかし2017年大会の第2ステージでは、最高気温が2度と寒いなか冷たい雨と強風が吹きすさび、集団は真っ二つに割れる荒れたレース展開となった。2016年大会の第3ステージでは、雪合戦に興じることができるほどの大雪が降り積もり、98km地点でレースはキャンセルとなった。

 というようにニースへ至る道中は、まだまだ冬の気配が色濃く残る地域、天候のなかを走ることもあるのだ。今年はパリ中心部から西へ10kmほど行った、セーヌ川のほとりにある街・シャトゥをスタートし、中央山塊を沿うように南下しながらニースへ向かうコースレイアウトになっている。

 本記事執筆時点での3月4日のパリの天気は予想最高気温9度、7日のサンテティエンヌの予想最高気温は8度、10日のニースの予想最高気温は14度となっている。いずれも雨の予報となっているが、極寒のレースは避けられそうな見込みだ。

 また総合争いにおいて、2017年は優勝のセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)に対して、2秒遅れでアルベルト・コンタドールが2位。2016年は優勝のゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)に対して、4秒遅れで同じくコンタドールが2位となったように、僅差での争いが続いている。

 TTスペシャリスト、クライマー、アタッカーそれぞれの持ち味が発揮できるバランスの良いステージ構成になっており、今年も接戦が期待できるだろう。

 では、各ステージの見どころの紹介とレース展開を予想していきたい。

第1ステージ:シャトゥ〜ムードン(135km)

パリ〜ニース第1ステージ コースプロフィール ©ASO
第1ステージ ラスト5km区間のプロフィール ©ASO

 一見すると平坦ステージに思えるが、残り1.9km地点から始まる上りが曲者だ。平均勾配は6%ほどある上に、残り500m区間は石畳が敷き詰められているからだ。

 ピュアスプリンターが勝負に絡むには厳しいと思われる。上れるスプリンターやパンチャーによるステージ優勝争いが繰り広げられると予想したいところだが、積極的に総合争いを仕掛けたいクライマーが勝負してくる可能性も十分ある。

第2ステージ:オルソンヴィル〜ヴィエルゾン(187km)

第2ステージ コースプロフィール ©ASO
第2ステージ ラスト5km区間 ©ASO

 山岳ポイントが一つも設定されていない完全な平坦ステージ、ラスト2kmが非常にテクニカルになっている。

 残り1200m地点付近にはラウンドアバウトが設置され、そこから90度のコーナーを2つクリアしてから、残り500mから5%程度の上りフィニッシュとなる。

 上り区間が500mと短いために、スプリンターがパワーで押し切る集団スプリントの展開が予想される。上りに強いスプリンターや、軽量級スプリンターに勝機が訪れることだろう。

第3ステージ:ブールジュ〜シャテル=ギヨン(210km)

第3ステージ コースプロフィール ©ASO

 3級山岳が3ヶ所に設定されている丘陵ステージだ。

第3ステージ ラスト5km区間 ©ASO

 残り30km地点には登坂距離4.6km・平均勾配4.7%の3級山岳がある。上り自体は10km近く続き、高度が上昇する区間の平均勾配は3.5%ほどある。

 さらに残り2.5km地点からは登坂距離1.5km・平均勾配4.5%の上り区間が登場する。ラスト1kmはフラットとなっているものの、またしてもピュアスプリンターには厳しいコースレイアウトになっている。

 基本路線は、上れるスプリンターたちによるスプリント勝負となるだろう。しかし、似たようなコースレイアウトだった昨年の第1ステージは、上り区間がアルノー・デマールとジュリアン・アラフィリップが抜け出して、マッチスプリントをデマールが制した。後続集団には9秒の差をつけており、このようなアタックから絞り込まれた小集団スプリントに持ち込まれるかもしれない。

第4ステージ:ラ・フイユーズ〜サンテティエンヌ(個人TT、18.4km)

第4ステージ(個人TT)コースプロフィール ©ASO

 プロフィール図を見ると、なだらかな丘に見えるが、実際は登坂距離6km・平均勾配4%の上りとなっている。さらに、残り4km地点には登坂距離1km・平均勾配6%の上りも配置されていて、18.4kmのなかに細かなアップダウンを含むテクニカルなコースになっている。

 とはいえ、TTスペシャリストが優位であることには変わりない。総合勢にとっては、タイム差がつく重要なステージとなる。

第5ステージ:サロン・ド・プロヴァンス〜シストロン(163.5km)

第5ステージ コースプロフィール ©ASO

 いよいよ山岳ステージの登場だ。76.5km地点には1級山岳ラガルド=ダプト峠が現れる。登坂距離は11km、平均勾配は

 その後、もう一つ3級山岳を越えてからフィニッシュ地点までは下り基調で60kmほど進む。大集団スプリント勝負に持ち込まれる可能性が高いだろう。

 残り13km地点には、登坂距離1.3kmながら平均勾配6.4%のそれなりにパンチ力のある3級山岳の上りが登場する。逃げ集団をこの3級山岳までに捉えている場合とそうでない場合で、レース展開がガラリと変わってくるかもしれない。

第6ステージ:シストロン〜ヴァンス(188km)

第6ステージ コースプロフィール ©ASO

 レース中盤から4つの2級山岳、そして1級山岳を経てフィニッシュする難関ステージだ。1級山岳は残り10km地点付近から始まり、登坂距離は1.8kmと短いものの、平均勾配は10%と破壊力抜群だ。

 クライマーを筆頭に登坂力のある選手たちが1級山岳で攻撃を仕掛けて集団を分断し、独走あるいは少人数で逃げ切りを狙う展開が予想される。

第7ステージ:ニース〜ヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌ(175km)

第7ステージ コースプロフィール ©ASO
第7ステージ 1級山岳ヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌ ©ASO

 今大会のクイーンステージの登場だ。フィニッシュへと至る上りは登坂距離16.3km・平均勾配6.2%とグランツールの超級山岳級の難関コースだ。

 上り始めからフィニッシュまで断続的に6%前後の坂が続いており、フィニッシュ地点は標高1500mに位置する。今シーズンのヨーロッパのレースでは最も高い標高へとフィニッシュし、最も長い距離を上ることになる。

 マイヨジョーヌを巡って、総合狙いのクライマー同士による山岳バトルが繰り広げられることだろう。

第8ステージ:ニース〜ニース(110km)

第8ステージ コースプロフィール ©ASO

 最終日は、ニース近郊のいくつもの峠を越えて、再びニースへと戻ってくるお馴染みのコースレイアウトであるが、昨年までとは若干のマイナーチェンジが加えられている。

 昨年は1級山岳エズ峠を越えて、フィニッシュ地点まで一気にダウンヒルを駆け抜けるレイアウトだったが、今年はエズ峠の後に2級山岳を挟んでフィニッシュへと至るコースになった。一方で越えるべきカテゴリー山岳の数は、昨年の5つから今年は6つへと増えている。

 110kmと短い距離のステージで、絶えずアップダウンが続くようなコースではドラマが起きやすい。逆転優勝を狙った総合勢の動きを中心に、激しいレース展開が予想されるだろう。

 続いて注目選手を紹介していく。

豪華メンバーが揃ったスプリンター

 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNL・ユンボ)は今季4勝をあげており、いま最も旬なスプリンターの一人だ。ドバイツアー第4ステージでは、そこまで難易度の高くない上りで遅れるシーンも見られたように、あまり上りは得意ではない。しかし、圧倒的なパワーでライバルたちを押さえつけるような爆発的なスプリントが何よりも魅力的だ。

パワースプリンターらしい筋肉隆々とした肉体を持つディラン・フルーネウェーヘン Photo : Yuzuru SUNADA

 最終発射台のティモ・ローセン(オランダ)とのコンビネーションも抜群であり、第2・5ステージを中心に勝利の期待が持てる。

早くも移籍して大成功といえるような活躍を見せているエリア・ヴィヴィアーニ Photo : Yuzuru SUNADA

 移籍して1年目のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)はスプリントで4勝、ドバイツアー総合優勝と合わせて5勝をあげている。世界最強レベルのクイックステップトレインにジャストフィットしている格好だ。同じく第2・5ステージでの勝利を狙いたいところだ。

 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチーム・エミレーツ)はツアー・オブ・オマーン、アブダビツアーでステージ1勝ずつあげている。2015年のツール・デ・フランドルで勝利を飾っているように、上りにも強いスプリンターだ。第1・2・3・5ステージで勝利を狙うことができるだろう。

欧州チャンピオンジャージがよく映えるアレクサンドル・クリストフ Photo : Yuzuru SUNADA

 大会通算3勝をあげているナセル・ブアニ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)は、今季はまだ勝利していない。ところが、チームメイトのクリストフ・ラポルテ(フランス)は3勝をあげており、ラポルテをエースに据えるという話も浮上しているそうだ。宿敵アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ)とのマッチアップだけでなく、エースの座をめぐるチーム内競争にも注目だ。

 他にもアブダビツアーで勝利したフィル・バウハウス(ドイツ、チーム・サンウェブ)、マジョルカシリーズで2勝をあげたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)、ツアー・ダウンアンダー2勝のアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)、今季1勝のマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ プロチーム)、上りスプリントに強いマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)など、大物から若手まで有力スプリンターが勢揃いしている。

活躍の機会は多くなるパンチャー

 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)は昨年大会で史上初めて新人賞とポイント賞を同時に獲得し、個人TTステージでも勝利するなど超万能ぶりを発揮していた。

スプリント、ヒルクライム、タイムトライアル、ダウンヒル、全ての能力が非常に高いジュリアン・アラフィリップ Photo : Yuzuru SUNADA

 特に中斜面のスプリントには滅法強く、第1・3ステージはアラフィリップの脚質にピッタリだ。長い上りはやや不得手にしているため、総合優勝を狙うためには序盤からボーナスタイムを多く稼いでおきたいところだ。

アルデンヌクラシックでの活躍が期待されるティム・ウェレンス Photo : Yuzuru SUNADA

 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)はブエルタ・ア・アンダルシア第4ステージで石畳の上りフィニッシュを制しており、似たようなコースレイアウトの第1ステージでの勝利が期待される。一撃必殺のアタックと独走力の高さが武器の選手で、総合上位も十分狙えることだろう。

 2009年総合優勝、今大会の出場予定選手のなかでは最多の通算ステージ4勝を飾っているルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)にも期待がかかる。今季はブエルタ・ア・ムルシアで勝利をあげており、ツアー・ダウンアンダー総合8位、ブエルタ・ア・バレンシアナ総合2位、ブエルタ・ア・アンダルシア総合5位と上りでも強さを見せている。

リリアン・カルメジャーヌは、昨年のツール第8ステージで脚をつりながらも逃げ切り勝利をあげた Photo : Yuzuru SUNADA

 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)は難関山岳ステージでの逃げを得意とする選手だ。後半の第5〜8ステージでは、逃げ切り勝利を狙った動きを見せてくるかもしれない。

 他にも激坂スペシャリストのディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング チーム)、昨年のジロ・デ・イタリア第17ステージでは逃げ切り勝利を飾ったピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、元世界チャンピオンのルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチーム・エミレーツ)らも、虎視眈々とステージ勝利を狙っているだろう。

例年混戦となる総合争い

 チーム スカイは2015年からパリ〜ニースを3連覇中だ。昨年の王者セルジオルイス・エナオ(コロンビア)も出場するが、ブエルタ・ア・アンダルシア総合2位に入ったワウト・プールス(オランダ)がエースを務めるものと思われる。

総合力が高いワウト・プールス(写真は2016年リエージュ~バストーニュ~リエージュで勝った時のもの) Photo : Yuzuru SUNADA

 プールスは安定した登坂力、高いTT力、そしてアルデンヌクラシックを制したこともあるパンチ力を兼ね備えたオールラウンダーだ。チームとして大会4連覇を狙う。

かつてツールで新人賞を獲得したものの伸び悩んでいたティージェイ・ヴァンガーデレン。昨年ジロでステージ勝利をあげるなど復活の兆しが見えている Photo : Yuzuru SUNADA

 昨シーズンは怪我に苦しんだエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)であったが、ヘラルド・サンツアー第4ステージで格の違いを見せつける独走勝利をあげ総合優勝を果たし、復活の兆しをアピールしている。苦手のTTを補うような山岳での支配的な走りを見せられるか注目していきたい。

 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)はツール・ド・フランスでリッチー・ポート(オーストラリア)のアシストを務める予定だが、パリ〜ニースのような1週間程度のステージレースではエースを担い総合優勝を狙っていく。ボルタ・アン・アルガルベでは、上り・TTともに高いパフォーマンスを見せ総合3位表彰台を射止めた。

逃げに乗ることも得意としており、昨年ツールでは2勝をあげたワレン・バルギル Photo : Yuzuru SUNADA

 昨年のツールでステージ2勝&山岳賞を獲得し、ヒーローとなったワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)はかつてトレーニーとして所属していた古巣へ移籍した。自身がチームの中心選手となってステージレース、グランツールで絶対的エースとして君臨するためだ。ワールドチームが集うビッグレースで、爪痕を残す走りを見せたいところだろう。

 他にも ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥゼール ラモンディアル)、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)、ヘスス・エラダ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)らが出場予定となっている。

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