田中セシルさんと三船雅彦さんが走る守山から彦根・近江八幡を巡る琵琶湖サイクリング 湖東の景色や歴史、グルメを満喫

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 琵琶湖一周サイクリング「ビワイチ」を推進する滋賀県守山市が、サイクリングルートやお勧め観光スポットを紹介した「ビワイチ推奨コースマップ」を2017年に刊行しました。琵琶湖一周をはじめ魅力的な7コースが収録。モデルの田中セシルさんが、マップ制作にアドバイザーとして参加した元プロロードレーサーの三船雅彦さんと共に、守山市起点の湖東サイクリングを楽しみました。三船さんのお勧めコースや守山市の宮本和宏市長との対談など3回連載でお届けします。

湖面と岬、島、雪山が複雑に織りなして絶景を作る Photo: Ikki YONEYAMA

ビワイチ推奨コースマップを参照

 今回走るのは、初級コースにあたる「守山〜近江八幡〜彦根ルート」。琵琶湖の景色と湖東の街道沿いの歴史に触れられるコースだ。アップダウンは抑えめで初級に分類されているが、それでも距離は97.3kmと、走りごたえは十分だ。

守山を起点とした魅力的なサイクリングコースを紹介する、ビワイチ推奨コースマップ Photo: Ikki YONEYAMA

 マップを手に取ると、よくある観光マップよりも一回り小さいのに気付く。畳んだ状態で縦14cm、横7.5cmのサイズは、サイクルジャージのポケットにすっぽりと収まる大きさだ。

 しかも防水の紙を使うことで、ライド中に汗や突然の雨などで濡れても、マップが傷みにくくなっている。コストは上昇してしまうが、サイクリングでの使い勝手に細部までこだわったという。

琵琶湖マリオットホテルからライドへ出発 Photo: Ikki YONEYAMA

 起点は琵琶湖マリオットホテル。宿泊や入浴だけでなく、「ジャイアントストアびわ湖守山」が併設されていて、駅からのシャトルバスも運行されるなど、ビワイチの発着点に便利。本格ロードバイクのレンタルを利用することもできる。

 まずはすぐ近くの「第一なぎさ公園」へ。ここの菜の花畑では、早咲きの菜の花がちょうど満開。湖岸の堤防に立つと、一面の菜の花のイエローと、琵琶湖をはさんで対岸の比叡山の雪山が、贅沢な景色を演出してくれる。まだスタートしたばかり。この先どんな景色にめぐり合えるのだろう。

菜の花畑が美しく咲き誇る Photo: Ikki YONEYAMA
自慢の開脚ポーズを披露する田中セシルさん Photo: Ikki YONEYAMA
セシルさんの真似をするも「49歳にはこれが限界!」と三船雅彦さん Photo: Ikki YONEYAMA

 しばらくは湖岸道路(県道559号線)を防風林沿いの道を進む。ここは車道沿いの管理道路が自転車通行可となっていて、車道とは分離され初心者でも走りやすい。また車道も、一部で路肩のスペースを広げて自転車レーンを設置する工事が行われていた。ビワイチの走行環境は日進月歩で進化している。

青空と湖面のブルーが溶け合う中を走る Photo: Ikki YONEYAMA
路肩の植栽を削って自転車レーンが作られている Photo: Ikki YONEYAMA

パワースポットや由諸ある長命寺に立ち寄り

 近江八幡市に入ってしばらくすると、湖岸道路が右に曲がり内陸方面へと向かっていく。ここを湖沿いに左へ逸れ、未舗装路をしばらく入ると、藤ヶ崎龍神がある。

厳かな気配が漂う藤ヶ崎龍神 Photo: Ikki YONEYAMA

 琵琶湖のパワースポットとして有名なポイントで、湖に向かって岩が突き出したところに、小さなお社が建てられている。

 平安時代前期の宮廷画家、巨勢金岡(こせのかなおか)がこの地を訪れた際、風景を描こうとしたものの、あまりの絶景ぶりに、描くことができずに筆を折ったという伝承が残っている。今も素晴らしい景色を堪能することができる。

 神社から海沿いを進んで再び湖岸道路へ。3kmほど走ると、また大きな道路からは逸れて海沿いへと進路をとる。ここには長命寺がある。

八百八段の石段が山上へと伸びる長命寺の入口 Photo: Ikki YONEYAMA

 ここは西国三十三所の三十一番札所にあたり、史料に残っている限りでも900年以上の歴史がある、由緒あるお寺だ。湖岸からは「八百八段」と呼ばれる石段の参道が伸びている。

 長命寺から先はしばらく、岬のアップダウンコースを進む。木々に囲まれた中、長めの上り坂では思わずペダルに力がこもる。そして今度は下り坂。スピードに乗ったところで湖岸に出ると、琵琶湖に浮かぶ沖島と対岸の風景が一体になった絶景が現れた。下りの爽快感も手伝って、サイクリングの快感を味わえるひとときだ。

ほぼ湖岸沿いに走っているが、木に囲まれ峠道の気分 Photo: Ikki YONEYAMA
視界が開けるとそこは絶景 Photo: Ikki YONEYAMA
コンビニ前には備え付けのバイクスタンドが Photo: Ikki YONEYAMA

 これまでカーブが多かった湖岸だが、ここから彦根にかけては、ほぼまっすぐになる。複雑な景色を見せていた琵琶湖は、対岸との距離も広く、海のようにシンプルな景色が広がる。防風林もなく湖面は間近。爽やかな湖畔の空気を吸い込み、ひた走る。

「ひこにゃん」にほっこり

 右手の山や丘が徐々に近くなってくると、彦根の市街地はもう近い。滋賀大学への案内看板が出たところで右折し、しばらく進んでいくと、左手に国宝・彦根城のお堀が現れる。お堀に架かった京橋を渡り、石垣に挟まれたクランクを抜けると、内堀沿いの優雅な景色が広がる。自転車を停めて城内へ向かうと、ちょうど表御殿では「ひこにゃん」のパフォーマンスが行われていた。

城下から京橋を渡り城内へ Photo: Ikki YONEYAMA
石垣に囲まれたクランクは少々通りづらいが、つまり防御の要所になる Photo: Ikki YONEYAMA
内堀には白鳥が。思わず駆け寄る田中セシルさん Photo: Ikki YONEYAMA
近年は激しいゆるキャラも少なくないが、ひこにゃんはとてもゆるい佇まい Photo: Ikki YONEYAMA

 彦根城は関ヶ原の合戦後、西軍の中心人物だった石田三成の領地を与えられて井伊家が、彦根に入って新たに築城したもの。明治の廃城令のもとでも破壊を免れ、今も美しい姿を残しており、天守が国宝に指定された五城のうちの一つだ。城が築かれた彦根山は低く、サイクリングシューズでも散策可能。戦国真っ盛りの時代の城ではないためか、「あまりこの城で戦う気はなさそう」とは三船さんの評。今は街のシンボルとなっている天守閣にも登ってみる。

彦根城の天守前。ひこにゃんのパネルと記念撮影ができる Photo: Ikki YONEYAMA
天秤櫓へと廊下橋が架かる。非常時には橋を落とし、簡単には中へ入れないようにすることができる Photo: Ikki YONEYAMA
三層の天守の最上階では、彦根の城下を東西南北に一望することができる Photo: Ikki YONEYAMA

 間近で見た3層の天守はやや小ぶりだが、最上階からは彦根の街を東西南北に一望でき、さすがの名城。また、天守のいたるところに鉄砲狭間があったり、各層の階段が非常に急な作りだったりと、いざという時の堅牢性に気を配った作りを各所に見ることができるのは、現存天守ならではの醍醐味だ。

彦根の城下町で、おやつタイム

どら焼きの黒い生地は、竹炭を練り込んだもの Photo: Ikki YONEYAMA

 城下町をイメージした夢京橋キャッスルロードでは、しばしおやつタイム。地元の銘菓や食材を生かした食べ物やグッズなどが並ぶ。迷った末に選んだのは、「黒どら」の看板を出していた「御菓子司 おおすが」。竹炭を練り込んだという黒い生地に、バニラとチョコレートのアイスクリームをはさんだ。少しクリームが溶けるのを待って食べると、甘みが口一杯に広がって美味しいという一品だ。

 ここからは復路。今度は内陸の道からゴールを目指す。琵琶湖は見えないが、県道2号線を走ると時折歴史の古そうな町並みがあり、古くから街道として賑わった地域の空気を感じることができる。途中、能登川駅付近からマップのルートをしばし外れて、東近江市の五個荘金堂の町並みを楽しんだ。

五個荘金堂の町並みを走る Photo: Ikki YONEYAMA
近江商人屋敷が建ち並ぶ。狭いままの道路が歴史を感じさせる Photo: Ikki YONEYAMA

 県道2号線に戻り、カーブとともに迫ってきた小山の間を抜けると、右手に見えるのは安土城跡だ。

安土城の天守跡も山の上にある。入口では杖の無料レンタルも Photo: Ikki YONEYAMA

 安土城はあの織田信長が、天下統一を目前にした絶頂期に築城した、幻の名城だ。贅を尽くして1579年に完成したものの、1582年の本能寺の変が起きてすぐ後に天守が焼失。その後数年で廃城となってしまった。今も石垣や天守の礎石などが残るなど興味深いが、城山は彦根城と比べて明らかに険しい。健脚で1時間コースとのことで、この日の散策は諦めて先を急いだ。

ラ コリーナ近江八幡で絶品オムライス

 近江八幡市に入り、この日の昼食スポット「ラ コリーナ近江八幡」に到着した。ここは和菓子の「たねや」、バームクーヘンが全国的に人気の「クラブハリエ」などで知られる、たねやグループのフラッグシップ店であり、本社を構える拠点でもある。

自然と調和した食のテーマパーク「ラ コリーナ近江八幡」 Photo: Ikki YONEYAMA

 エントランスにもなっているメインショップは、屋根一面が芝に覆われ、季節ごとに屋根の色が表情を変える。建築家・建築史家の藤森照信氏が建物や中庭を手がけ、自然との共生を意識しつつもどこか遊び心のある、不思議な空間が広がっている。中庭の中央には水田が設けられ、中庭を取り囲むように、いくつかのショップや、たねや本社社屋が点在する。まるで自然と食のプチ・テーマパークといった趣だ。実はまだ「発展途上」だそうで、今後も奥に新しいショップが開設予定だという。

竹で作られたバイクラックがある Photo: Ikki YONEYAMA
小人の国へ迷い込んだ気分? Photo: Ikki YONEYAMA

 ランチはカステラショップのカフェで、「カステラたまごのオムライスセット」を頂いた。ランチタイムに限定約100食用意されるオムライスは、カステラに使うものと同じこだわり卵を使用。セットに付く「八幡カステラ」は、通常のカステラと違う製法で、焼きたてでも冷めても美味しく食べられるという。

 出てきたオムライスは、一般にイメージする“オムライス”とは少し違う上品なたたずまい。一口食べたセシルさんは「これ、和食だ!」と驚きの声を上げた。ケチャップではなく香ばしい鰹といりこのだしあんかけに、ふわふわの卵の中身はチキンライスならぬ赤米・黒米の古代米入りのごはん。デザートのカステラ、コーヒーと合わせて、上品ながらしっかり満足のボリュームだった。

見て爽やか、食べると驚きのオムライス Photo: Ikki YONEYAMA
カステラたまごのオムライスセット(税込1620円) Photo: Ikki YONEYAMA

ラ コリーナ近江八幡

営業時間
【メインショップ/カフェ】9:00~18:00 (オーダーストップ17:00)
 ※焼きたてバームクーヘンが無くなり次第、ドリンクオーダーのみ
【フードガレージ】ギフトショップ / 9:00~18:00
 フードコート / 10:00~17:00
 ※パンショップは、パンが届き次第OPEN(10:30頃)
 ※状況により、予定時間より早く閉店する場合も
定休日:年中無休
住所:〒523-8533 滋賀県近江八幡市北之庄町615-1
電話番号:0748-33-6666

野洲川沿いサイクリングロード

 近江八幡の市街地を抜けて、サイクリングもいよいよ終盤。途中回り道もあったので、野洲川を渡ったところでまたマップのルートを離れて、野洲川沿いに少しショートカットした。堤防上の管理道路は今も走りやすいが、実は堤防下に、さらにサイクリング用道路が整備中だという。

野洲川の堤防にも、ビワイチをアピールするロードペイントが Photo: Ikki YONEYAMA

 琵琶湖への河口部で湖岸道路をくぐって上に出ると、一段盛り上がった「しあわせの丘」がある。周囲を一望できる小さな丘は、実はサイクリングを楽しむ人向けに作られたもの。そばに駐車場もなく、民家やホテルなどからも遠い。こんな一見不便な場所の小さなスペースが立ち寄りスポットになるのが、自転車ならではといったところだろうか。

川辺が一気に開けて再び琵琶湖へ Photo: Ikki YONEYAMA
「しあわせの丘」で周囲を一望 Photo: Ikki YONEYAMA

 起点の琵琶湖マリオットホテルの向かい、第二なぎさ公園についにゴール。ここにはサイクリストが空に向けて脚を伸ばす、「琵琶湖サイクリストの聖地碑」がある。どこかで見たポーズのこの像、実はセシルさんがモデルだ。サイクリングの終わりに、碑の前で開脚ポーズの競演を見せてくれた。

サイクリングの終点は「サイクリストの聖地碑」 Photo: Ikki YONEYAMA
琵琶湖の雄大な景色への感動をしなやかに表現する Photo: Ikki YONEYAMA

 琵琶湖で走るのは3度目だったというセシルさんは、「途中の上りが少し辛かったけど、その後の下りと景色が最高の瞬間でした。まだ知らない琵琶湖の景色がたくさんあったことに気付きました」とライドを振り返った。

 コースを先導してくれた三船さんは、「滋賀県と言えばとにかく琵琶湖というイメージだけど、寺社が多く歴史街道の魅力がある。湖北は日本海側がすぐだし、一方三重県側は山が深い。ビワイチをきっかけに、色々な滋賀の魅力をアピールしていきたい」とマップに込めた思いを明かしてくれた。

◇         ◇

サイクリストにやさしい「琵琶湖マリオットホテル」

 今回、セシルさんが前泊した琵琶湖マリオットホテルは、世界約50カ国に500軒のホテルとリゾートを展開するホテルブランド「マリオットホテル」の新店舗として2017年7月にオープン。琵琶湖のレイクビューが自慢の前身のラフォーレ琵琶湖の建物を引き継ぎながら、全面改装し、マリオットクオリティーのホスピタリティーを受けられる新しいホテルに生まれ変わった。

「ジャイアントストアびわ湖守山」は、いつも笑顔の佐藤店長が女性スタッフとともに対応してくれる Photo: Kenta SAWANO
琵琶湖マリオットの開放感あるロビーに愛車をそのまま持ち込む Photo: Kenta SAWANO
琵琶湖マリオットの客室には自転車をそのまま持ち込みスタンドに立てておくことができる ※部屋によってスタンドは異なります Photo: Kenta SAWANO

 サイクリストにうれしいのが自転車をそのまま部屋に持ち込めること。今回は、併設する「ジャイアントストアびわ湖守山」からロードバイクをレンタルすると、そのまま部屋に持ち込み、大好きな自転車との滞在を楽しむことができた(※スタンドの形は部屋によって異なる)。もし翌朝にエレベーターで自転車ごと下りるのが億劫なサイクリストは、ホテル受付に自転車を預けることもできる。

 女性サイクリストはもちろん、男性にもうれしいのが、3月1日から始まった「AfternoonTea~SAKURA Strawberry~(アフタヌーンティー・サクラストロベリー)」のサービス。ホテル12階のレストラン「Grill & Dining G」では、アメリカ・サンフランシスコ発祥の紅茶ブランド「マイティー・リーフ」のティーセレクション(9種)を飲みながら、春の味覚「桜とイチゴ」をテーマにしたスイーツや、近江牛を使用したローストビーフの桜スライダーバーガーなど4種のセイボリー(軽食)プレートを堪能。琵琶湖を眺めながら優雅な時間を過ごすことができた。「ピンクがいっぱい詰まった春満開の桜プレートは女子なら絶対テンションUP間違いなし!甘党男子やサイクリストの糖分補給にも最高だと思います」とセシルさんは翌日のライドに向け盛り上がった。

最上階の「Grill & Dining G」で「AfternoonTea~SAKURA Strawberry~」をおいしくいただく Photo: Kenta SAWANO
「AfternoonTea~SAKURA Strawberry~」には、近江牛ロースとビーフの桜スライダーバーガーなど4種類のセイボリーも提供 Photo: Kenta SAWANO
温泉付プレミアルームでは、浴室から琵琶湖の水面を眺められる Photo: Kenta SAWANO

 2017年12月には全274室のうち、42室が「温泉付きの部屋に生まれ変わった。部屋の外には琵琶湖、部屋には愛車と、最高の景色を見ながら温泉を楽しむことができる。セシルさんは「部屋付き露天風呂に温泉が流れ込む音が心地よかったです。時間を問わず24時間入れる露天風呂の温泉は少し熱めの温度設定で、身体の芯まで温まりました。露天風呂からみる朝陽はため息が出るほど気持ちが良かったです」と振り返った。

琵琶湖マリオットホテル

住所:滋賀県守山市今浜町十軒家2876
電話:077-585-6100

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