池田祐樹選手による独占レポート南アフリカのMTBステージレース「トランズ・ケープ」で5位入賞 大自然を駆け抜けた7日間

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 南アフリカで2月4~10日に開催されたマウンテンバイク(MTB)のUCIステージレース「トランズ・ケープ」に、池田祐樹選手(トピークエルゴンチームUSA)が出場しました。世界で最も過酷なMTBステージレース「ケープ・エピック」の初期ルートを使った歴史ある大会で、日本では珍しいデュオチームを組んでの出走。ハイレベルな戦いの合間にもキリンに遭遇したり美しい景色に癒されたり…。南アフリカの大自然を相手に全力で挑戦した池田選手本人によるレポートです。

南アフリカのダイナミックな大自然。地平線へ向かって爆走する先頭集団 ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

◇         ◇

実はMTB大国の南アフリカ

 これはあまり知られていないことかもしれないが、南アフリカは他に類を見ないほどのMTB大国だ。MTB人口、競技レベル、専門誌の数、走る場所、大会数など全てが世界トップレベル。特にステージレースは、なんと毎年60回近く開催されているほどだ。今回参戦した「トランズ・ケープ」はその中でも歴史ある古い大会だ。

厳しいコースだけれど独特でとても美しいランドスケープの山岳地帯 ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 レースルートは、ナイズナという町からスタートして内陸と海岸線を繋ぎ、7日間かけてフランシュフックという町でフィニッシュする総距離614km、獲得標高1万200m。南アフリカの中でも最も美しいエリアの一つであるが、厳しいコースとしても知られている。

コース上で遭遇したキリンのカップル。野生動物と遭遇できるのも南アフリカのレースならでは ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 世界で最も過酷なMTBステージレースと謳われる「ケープ・エピック」の初期ルートであることも見逃せない。様々な野生動物が生息する広大な国立公園内も通過する。実際にレース中にもキリン、ガゼル、ダチョウなどに何度も遭遇し、「アフリカに来ているのだな〜!」と感動する場面が多々あった。

 今年から大会はUCI認定クラス2レースとなったことでポイントを求めて世界各国からプロレーサーが集まり、レース史上最も競技レベルが高い大会となった。UCIエリートは2人1組のチーム戦。日本ではあまり馴染みはないが、海外ステージレースではソロよりもデュオチーム戦の方が一般的だ。

パートナーのグラント・アシャー選手とツーショット。親友であり最強のライバル。今回もお互いの限界を引き出し合った ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 私のパートナーは、南アフリカのグラント・アシャー選手。アシャー選手は親友であり、最強のライバルでもある。昨年、南米コロンビアで開催されたUCIステージレース「ラ・レイェンダ・デル・ドラド」でもチームを組み、8位入賞している。

配慮の行き届いた大会運営

 大会中の宿泊には名物の「ラグジュアリ・テント」と「プレミア・ホテル」のチョイスがあり、今回私たちは大会オススメの「ラグジュアリ・テント」プランをチョイス。テントと言っても‟ラグジュアリ”だけあって、ただのテントではない。

充実しているラグジュアリーテントの内部。日中は暑いが、夜はとても快適に眠ることができる ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 テント内は2人でも余裕で立てる広さがあり、簡易ではあるがシングルベッドが2つ(マットレス・枕・ブランケット付)、タオル、ランタン、コンセント完備。シャワーやトイレもすぐ隣に十分な数があり、待ち時間もほぼなく使えるので不便なく、快適に過ごすことができる。大会中の食事も充実していて、3食付きの基本ビュッフェスタイルで自分で量やバランスを調整できる。ベジタリアン用メニューもリクエストで対応してくれた。

初日の夕食はボリューム満点のハンバーガー。ベジバーガーのチョイスもある。様々な食スタイルに対応することもレース運営上大切なポイント ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward
とある日のビーガン食オプションのランチプレート。とても美味しく、お代わりも自由 Photo: Yuki IKEDA

 よく聞かれる質問が「レース中、荷物はどうしているのですか?」。持ち込んだバイクケースや大会中に不要なものは大会受付に預け、フィニッシュ地点まで輸送してもらい、最後に受け取れるサービスとなっている。

 大会中の着替えなどの私物は大会が用意するダッフルバッグに入れて毎朝レース前に預け、その日のフィニッシュ地点でまた受け取るというシステムが一般的。この大会ロゴが入ったヘリー・ハンセン製ダッフルバッグはそのままもらえるので、実用的かつ記念品としてもとても嬉しい。

大会から提供されるオリジナルのヘリーハンセン製ダッフルバッグで大会中の私物を管理。レース後も実用的に使用できるのでありがたい Photo: Yuki IKEDA
プロフィールステッカーにエイドステーションポイントを書き込み、補給ポイントを計画する Photo: Yuki IKEDA

 各ステージのコースプロフィールを表示したステッカーも細かい部分ではあるが、とても嬉しいサービス。ハンドルバーやトップチューブに貼り付けて乗車しながら上りのポイントなどをチェックできる。

酷暑に大雨、メカトラ、アクシデントを乗り越え

 私とアシャー選手の目標は、もちろん優勝、そしてUCIポイント獲得。しかし、何が起こるかわからないのが7日間という長丁場のステージレース。今シーズン最初のレースということで気合いは十分だが、レース直前に不覚にも体調を崩してしまい思うように身体を仕上げられなかったことも事実。しかし、出場する以上レースに言い訳は通用しない。現状のベストを尽くし、結果を残すのみ。「シーズンがいよいよ始まるな」と武者震いと共に気が引き締まる思いでスタートに並んだ。

先導モトに迫る勢いの先頭集団のスピードアップ。一瞬でも怯むと砂埃と共に置いて行かれてしまう ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 1~3日目は、南アフリカの暑い夏気候(大会中の最高気温は47℃!)、そして久々に味わうレースの超高強度に身体が悲鳴をあげるが、堪えて耐えて心身をレースに慣らしていった。

必死に先頭集団に食らいつく。夏の南アフリカの日中の気温は、場所によっては40℃を超える ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 南アフリカの季節は初夏でレースシーズンがピークに近いので皆のフィットネスレベルはとても高い。5位の入賞圏内にギリギリ留まるのが精一杯だ。非常に辛い展開だが、そのハイスピードに必死について行くことで自身のレベルを引き上げられることもまた事実。

 4日目は大雨の悪天候となり、顔も判別できないほどの泥んこ100kmレース。大きなメカトラブルも重なり、想像以上の過酷な展開となるが5位を死守しつつ後半戦へ突入した

 5日目。コースサインが何者かによって外されるというアクシデントがあり、私を含む先頭集団は17kmほどコースからロスト。結果、この日は順位が付かないニュートラルステージとなった。レーサー同士で話し合い、ステージのトップ5に贈られる賞金は全て南アフリカのチャリティーに寄付することとなった。

ウェスタンケープの美しい海岸線を駆け抜ける。美しい景色は過酷なレース中の束の間のリフレッシュ ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 6日目、終始爆風に煽られる超強風ステージ。一時大きく遅れるが、後半にある得意なテクニカルなシングルトラックで前のチームに差を詰めることに成功。前大会優勝チームASGと最後までデッドヒートとなるが、スプリントで今大会ベストの3位でゴールした。

激しいアップダウンの山岳地帯の入り口。やはり勝負の分かれ目は力の差が出る上りとなる ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward
コース上に幾度となくあるリバークロス。大抵は乗車でクリアできるが、時に腰くらいまでの深いところもあり、十分な注意が必要 ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 7日目最終日。前日の勢いを保ち、前を見失うことなくレースを進める。今日も3位を狙うが一歩届かず4位でフィニッシュ。悔しくもあるが、今持てる全てを出し尽くすことはできた。

一人では出せなかった底力

 最後の2日間で定位置となっていた5位から3位、4位と順位を上げたことはこれから始まる本格シーズンに向けて良い流れをつかむ事ができたと思う。7日間共に戦い、一人では決して出せなかった底力を引き出してくれたパートナーのアシャー選手には心から感謝。ありがとう。

トップ5チームでの記念撮影。皆とても強かった。また彼らと戦える日を楽しみに、トレーニングを重ねてもっともっと強くなりたい ©Liberty TransCape MTB Encounter/Robert Ward

 今回も国内外からたくさんの熱い応援をいただきました。おかげさまでこの遠征でアスリートとして、人としてまた成長することができました。この場を借りて、ありがとうございました!

■レース順位
1日目(距離71km、獲得標高1350m):5位(2時間36分5秒)
2日目(距離86km、獲得標高1900m):5位(3時間31分20秒)
3日目(距離102km、獲得標高1600m):5位(4時間30分59秒)
4日目(距離106km、獲得標高1500m):5位(4時間57分50秒)
5日目(距離100km、獲得標高1200m): ニュートラル
6日目(距離75km、獲得標高1050m):3位(3時間51秒)
7日目(距離75km、獲得標高1850m):4位(3時間11分25秒)
7日間総合:5位
獲得UCIポイント:50ポイント

■大会リザルト
優勝:ASG/エルズワース(南アフリカ)
2位:ハッピーサーモン(ノルウェー)
3位:チル-マグラ/キャニオン(フランス/ドイツ)
4位:ASG/エルズワース(南アフリカ)
5位:トピークエルゴン/スプロケット&ジャック(日本/南アフリカ)

池田祐樹池田祐樹(いけだ・ゆうき)

1979年東京都生まれ。トピーク・エルゴンレーシングチームUSAに所属するプロMTBアスリート。MTBの長距離、耐久レースの国内第一人者とされる。7年連続でMTBマラソン世界選手権日本代表を務める。日本で開催されたシングルスピード世界選手権の親善大使を務め、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも多数出演。執筆や講演会も行い、マウンテンバイクの普及活動も積極的に行なっている。東京都青梅市在住。

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